下記のとおり、これまでは不動産事業について、200億VND(約1億円相当)の最低資本金が必要とされていました。
しかし、2021年施行の新投資法に基づき、不動産事業についての最低資本金の規定がなくなっております。
実務上、不動産事業のライセンスは必要なため、取得過程の運用でどのように扱われるかは明確ではありませんが、今後は小規模開発や小規模サブリースなども外資に認められることになりました。
具体的には以下のとおりです。
不動産事業法66/2014/QH13の第10条は、以下のとおり規定しています。
「Article 10 Conditions applicable to organizations and individuals engaged in real estate business
1. Any organization or individual engaged in real estate business must establish an enterprise or cooperative (hereinafter referred to as enterprise) and must have legal capital which must not be less than twenty (20) billion dong, except for the cases stipulated in clause 2 of this article.
2. Organizations, family households and individuals who sell, transfer, lease out or grant hire purchase of real estate on a small scale and not regularly are not required to establish an enterprise but must declare and pay taxes in accordance with law.
3. The Government shall make detailed provisions for this article.」
上記の規定によれば、不動産事業を行う組織、個人は、企業又は協同組合を設立し、法定資本金が200憶VND以上でなければなりません。
しかし、投資法61/2020/QH14の第75条第2項a号は、以下のとおり、2014年不動産事業法の第10条第1項を改正しました。
「 “1. Any organization or individual engaged in real estate business must establish an enterprise or cooperative (hereinafter referred to as an enterprise), except for the cases stipulated in clause 2 of this article.”」
投資法により置き換えられた規定では不動産事業の最低資本金に関する規定がそのまま抜かれており、「200憶VND以上の法定資本金が必要となる」という条件を撤廃したものと考えられます。
そのため、2021年1月1日から、不動産事業を行う企業、協同組合は法定資本金に関する条件を満たす必要はありません。
<前提>
設立する合弁会社をA社とします。
① オーナーの代理で、賃借人に対するVATインボイスを取得し、賃借人に送付
(発行名義はオーナー。現地にオーナーが住んでいないことが多いので、A社が対応)
② オーナーの個人所得税について、A社が代わりに申告する
③ 賃借人からA社が賃借料を代理で受け取り、オーナーのベトナム非居住者口座へ送金
A)賃借人から受け取ったお金を、そのままオーナーへ送金する場合
B) 賃借人から受け取ったお金から、A社の管理料金を控除(差し引き)して、オーナーへ送金する場合。
賃貸借契約は、オーナーと賃借人間で締結しますが、お金のやりとりだけ間にA社が入る、ということです。
<ライセンス>
A社は、日本人や外国人がベトナムで購入した物件を、ベトナムで管理する業務を実施する場合、A社は「不動産管理サービス事業」をビジネスライセンスに追加する必要があります。
①の業務について、A社は、A社とオーナーとの間で締結されるサービス契約でこの業務を実施することが可能です。
②については、本来会計ライセンスが必要。
(会計費以外でインボイス発行する場合、ライセンス上問題とされる可能性は大きくはないですが自社リスクでお願い致します。)
③の業務について、A社は、オーナーがA社に委託し、オーナーとの間のサービス契約という形で、オーナーに追加で支援することが可能というのが弊所弁護士の意見です。(詳細は下記)
この点は、I-Glocalは決済代行ライセンスが必要な可能性はあるという意見です。特に③Bは費用を明確に徴収するためリスクがあるといっています。
<金融ライセンス>
決済代行ライセンスは中央銀行管轄となります。
中央銀行にはヒアリングしましたが、回答はありませんでした。
決済代行にあたらないと考える根拠は以下です。
ベトナム国家銀行法46/2010/QH12号の第6条第10項に基づき、決済代行サービスとは、決済サービスを提供する組織と決済サービスを使用する者との間の決済取引に関する電子データの接続、送信および処理を目的とした仲介活動をいう。
「Payment intermediary services means intermediary operations aimed at connecting, transmitting and processing electronic data on payment transactions between payment service providers and payment service users.」
政令101/2012/NĐ-CP号の第4条第3項に基づき、非現金決済サービスを提供する組織(決済サービスを提供する組織)は、ベトナム国家銀行、銀行、外国銀行支店、 人民信用基金、マイクロファイナンスの組織及びその他の組織を含む。
「Institutions providing non-cash payment services (hereinafter referred to as payment service providers) comprise the State Bank of Vietnam, banks, foreign bank branches, people’s credit funds, micro-finance institutions and a number of other institutions.」
そのため、決済代行サービスの定義に基づき、単純にA社が代理で受け取るだけの業務について、上記の③業務(賃借人からA社が賃借料を代理で受け取り、オーナーのベトナム非居住者口座へ送金する業務)は、決済代行に当たらない。
もっとも、ベトナムでは当局の解釈次第の部分もあるため、リスクがゼロではありません。
金融ライセンスが必要な場合の条件は以下のとおりです。
政令101/2012/NĐ-CPに基づき、決済代行の金融ライセンス(payment intermediary services licence)の取得の条件は以下のとおりです。
2. Requirements for providing payment intermediary services
The organizations not being banks that wish to provide payment intermediary services must satisfy the following requirements:
a) Having a License for establishment or Certificate of business registration issued by competent State agencies, in which the provision of payment intermediary services is one of their primary businesses;
b) Having an approved plan for payment intermediary service provisions in accordance with the regulations on investment authority prescribed in their charter;
c) Having at least 50 billion VND of charter capital;
d) Requirements of human resources:
The legal representative, the General Director (Director) of the applying organization must have proficiency or experience in business administration or their discipline.
The employees that run the payment intermediary services must be proficient in their job;
dd) The technical and professional conditions include: facilities and technical infrastructure that suit the requirements for providing payment intermediary services and the regulations of the State bank; the back-up technical system independent from the primary system that ensures the safe and continuous service provision when the primary system has problems; the technical and professional process in the provision of payment intermediary services that ensures the safety, security, and suite the laws on electronic transaction; the process of internal inspection of payment intermediary services in electronic transactions as prescribed by current law.
結構難しいと思います。
なので、③の教務を実施するため、オーナーが賃借人との間の賃貸借契約にA社を賃借料の受け取りのためのオーナーの代理人として指名します。A社の管理料金の控除のについては、A社は、A社とオーナーとの間で締結されるサービス契約に基づき、管理料金を控除することが可能です。
また以下の会計上の処理も問題になります。
<会計上の処理>
会計上いえば、立替に関しては適切に証憑が備わっていれば、仮に売上として指摘を受けても対抗可能だと思いますし、リスクとしてはそれほど高いものではありません。
ただ手数料を差し引くということは、その手数料が売上になるので、貸主に対との間で役務提供契約の作成、インボイス発行が必要になることのほか、契約上で債権債務の相殺によって手数料を受領する旨の記載が必要になり、立替金と手数料の相殺合意書(具体的な金額を記載)も作成する必要があり、やや面倒ではあるかと思います。
それが備わっていて売上として認定されるのは不合理なので、何か指摘を受けた場合は抗弁をする他ないと思います。
なお、少なくともオーナーのベトナム口座との間でやりとりは必要になります。
(日本口座へA社から送ることはすべきでない。)
投資
2018.06.07
不動産
ベトナムにおける強制火災保険制度の概要を教えてください(Decree23/2018/ND-CP)。
近時、ベトナムではアパートメントの火災が相次いでおり、デベロッパーや管理会社の責任も問われる自体になっています。
では、火災保険についてはどのように法令上規定されているのでしょうか。
新政令であるDecree23/2018/ND-CP(以下「Decree23号」といいます。)が2018年4月15日から施行されており、その重要なポイントは下記のとおりです。
消防法をガイダンスする政令(Decree79/2014/ND-CP)付録Ⅱに規定されている火災・爆発の危険性のある施設を保有する機関、組織及び、個人(以下「保険加入者」といいます)は、火災保険業務を経営する企業(以下「保険会社」といいます)の火災保険険(以下「火災保険」という)に加入しなければならないとされています。
では、マンションにおいて、保険加入の義務のある保険加入者は誰になるのでしょうか。
• マンションの部屋:
マンションの部屋の火災保険はマンションオーナー(購入者)となります。
• 共用部分に対して:
Decree23号には、共用部分の保険料に関して規定がありません。
また、政令(Decree 23/2018/ND-CP)が公布されたばかりであり、これに関する通達(Circular)もまだありません。
もっとも、効力が既にない前通達(No.214/2013/TTLT-BTC-BCA)の第3条第2項に定める規定が参考になると考えられます。
すなわち、「マンションの投資者又はマンションの管理組合は保険会社に連絡し、火災保険に加入する責任があるが、マンションオーナーはその共用部分の保険料を払わなければならない」という規定です。
この場合マンションの投資者は、マンションの管理組合に管理を移行するまで、共用部分の火災保険に加入する責任があると考えられます。
保険財産は、火災・爆発の危険性のある施設の一部分又は全ての財産であり、下記の対象を含むものです:
a) 家、工事及び家・工事の権利付き財産;機械;設備
b) 製品、物資(原材料、製品、半製品を含む)
保険財産及び保険財産の場所は、保険契約、保険証明書に書かれなければならないとされています。
a) 火災・爆発の危険性のある施設に対しては、全ての財産の総保険金が10憶ドン以下の場合、保険料の基準は、以下となります。
最低保険金 × 保険料の基準の割合(%)
※最低保険金とは、保険契約を締結する際の財産の時価
※保険料の基準の割合とは、Decree23号の付録Ⅱに規定されている。
火災・爆発の危険性のある施設の危険の基準によって、保険加入者及び保険会社は、保険料の基準の割合を相談することができるが、Decree23号の付録Ⅱに規定されている保険料の基準の割合以下になってはならない。
b) 原子核施及び火災・爆発の危険性のある施設に対しては、全ての財産の総保険料が10憶ドン以である場合、保険加入者及び保険会社は、法律に従い当事者の合意並びに再保険を受ける企業の承認に基づいて、保険料の基準の割合を決定する。
保険会社は、下記の原則通り補償することとされています。
a) 補償金は、Decree23号の第7条第2項に規定される控除基準を減額された保険金である。
補償金は、保険金額(保険契約、保険証明に書かれる)を超えてはいけない。
b) 火災・爆発の危険性のある施設が消防警察の調査報告の規定に従って十分に遵守されない場合、最大で補償金の10%を減額する。
c) 不正行為を原因として賠償金が増額する場合、保険会社は、その増額する賠償金を支払う必要はない。