CastGlobal Law Vietnam
(CAST)についてABOUT US
私たちは、2013年にベトナムに設立した日本人弁護士とベトナム人弁護士の所属する日系の弁護士事務所です。
ベトナムでは、大きなトラブルにならないように日常的に法務を意識して経営することが重要ですが、実際には何が問題になりうるのかや日本との違いもわからず、法的な事柄によって日々の業務に集中できないことも多く生じています。
お客様に憂いなくビジネスに集中いただくため、"法務面からベトナムビジネスを伴走する身近なパートナー"として貢献していきます。
CASTの特徴FEATURES
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ビジネスの現状・ベトナムのスピード感に合わせたスピーディーかつ柔軟な対応
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タイムチャージに基づかないリーズナブルで相談しやすい顧問契約の設定
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ベトナムのM&A、不動産、企業運営に関わる法務、知財戦略などの専門分野の支援実績
活用例
- 現地の担当弁護士にチャット・メールでいつでも気軽に相談できる環境。
- 自社の担当・駐在員が変わっても、過去の経緯から把握してアドバイスしてもらうことが可能。
- 会社の総務・法務スタッフとも普段からやりとりし、社内のコンプライアンス体制・意識向上にも。
導入事例CASES
ニュースNEWS
- コラム
- 2022.05.24
- CastGlobal
【ベトナム労務】残業時間の引き上げについて
17/2022/UBTVQH15号(以下、「議決15号」という場合があります)を採択しました。当該議決により、法律45/2019/QH14号(以下、「労働法」といいます)第107条の残業時間についての規定が一部修正されます。
1)1年当たりの残業時間の上限
㋐ 上限の増加
労働法は1年あたりの残業時間について、特定の業種等のみ300時間以内の範囲で認められる(労働法第107条第3項)と規定しており、当該特定の業種等に該当しない場合は、その上限を200時間としていました。議決15号第1条第1項本文により、労働法第107条第3項に該当しない場合についても、残業時間の上限を300時間とできることとなりました。
ただし、上記の規定は、満19歳未満の労働者、妊娠して7か月以降もしくは生後12か月未満の子供を養育する女性労働者などには適用されません(議決15号第1条第1項但書。適用除外の詳細については同但書を確認してください)。
㋑ 残業実施の要件
ただし、同議決によっても労働法の原則に従い、労働者に残業させるには労働者の同意があることが前提となります(議決15号第1条第1項本文・労働法第107条第2項a号)。
また、200時間を超える残業を実施する会社は、労働法第107条第4項に従って、当該残業を労働者に実施させることについて省級人民委員会に属する労働専門機関に書面で通知を行わなければなりません(議決15号第3条第2項)。
2)1月当たりの残業時間の上限
労働法は1月あたりの残業時間が40時間を超えてはならないと規定していたところ(労働法第107条第2項b号)、議決15号は1月当たり60時間までの残業を認めています(議決15号第2条)。
この場合については、労働専門機関に対する通知は必要ありませんが、残業を実施させることの前提として労働者の同意が必要なことは同様です(議決15号第1条第2項・労働法第107条第2項a号)。
議決15号第1条(1年当たりの残業時間に関わる規定)は2022年1月1日から遡って効力が発生します(議決15号第4条第1項)。そのため、年あたりの残業時間を計算する際には、本年の1月から3月までの残業時間も含めて計算する必要があります。議決15号第2条(1月当たりの残業時間に関わる規定)は2022年4月1日から効力が発生します。
- コラム
- 2022.04.20
- CastGlobal
【ベトナム労務】2022年の最低賃金の変更についての議論状況
今月12日、ベトナム政府の諮問機関、国家賃金評議会は、最低賃金を今年の7月からおよそ6%引き上げることに合意しました。正式な決定は、政令の発布を待つ必要がありますが、当該合意のとおり、最低賃金の引き上げが実施されれば1年半ぶりの最低賃金の改訂となります。
国家賃金評議会が合意した地域別最低賃金:
第1地域
468万VND
5.88%(上昇率)
第2地域
416万VND
6.12%
第3地域
363万VND
5.83%
第4地域
325万VND
5.86%
※政令90/2019/ND-CP号の付録によれば、ホーチミン市、ハノイ市、ハイフォン省、ビンズオン省やバリアブンタウ省などの日系企業が多く所在する地域は第1地域に含まれています。また、ダナン市やバクニン省等が第2地域に分類されます。最新の地域分けについては新しく発布される政令を確認する必要があるのでご注意ください。
最低賃金については労働法(法律:45/2019/QH14)に以下の規定が存在します。
第91 条 最低賃金額
1 最低賃金額とは、経済・社会の発展状況に応じた、労働者とその家族の最低限度の生活水準を保障するために、通常の労働条件の下で最も単純な業務を行う労働者に対し支給される、最も低い賃金額である。
2 最低賃金額は地域ごとに定められ、時給・月給で決定される。
3 最低賃金額は、労働者及びその家族の最低限度の生活水準、最低賃金額と市場の賃金額との相関、消費者物価指数、経済成長の速度、労働需給関係、雇用及び失業、労働能率、企業の支払能力に基づき調整される。
4 政府は、本条の詳細を定め、国家賃金評議会の勧告に基づき最低賃金額を決定し、公表する
上記の規定に従い、最低賃金は物価水準等に応じて第1から第4の地域ごとに規定されます。最低賃金の決定過程については、草案が国家賃金評議会により審議され、了承を得た草案が首相府に提出されます。そして首相の最終判断を経た後、政令の形式で発布されます。
労働法によれば、賃金とは以下のように定義されています。
第90 条 賃金
1. 賃金とは、業務を実施するために、合意に基づき、使用者が労働者に対して払う金員であり、業務又は職位に応じた賃金額、手当その他の補助からなる
法文の原文も確認すると賃金とは、基本給(mức lương)、手当(phụ cấp lương)、その他の支給金(các khoản bổ sung khác)の三つにより構成されていると理解できます。
政令90/2019/ND-CP号の規定をみると、最低賃金では、mức lươngという用語を使用しているので、手当金を除いた基本給が最低賃金として予定されていると理解できます。そのため、手当金等を除いた基本給が最低賃金額を下回ってはいけないことになりますので、この点注意が必要です。
国家賃金評議会からは2022年7月1日からの変更ということで提案されていますが、報道によえれば多数の労働者を擁する8つの協会は、最低賃金の引き上げ時期を「2022年7月1日」から「2023年1月1日」に延期するよう要請する内容の要望書を政府に提出しています。
今後、政令としてどのように正式に発表されるかどうか注目となります。
*最低賃金引き上げ、8協会が23年からに延期要請(Vietjo)
- コラム
- 2022.04.05
- CastGlobal
【ベトナム】ベトナムの弁護士資格について教えて下さい。
時々、ベトナムの弁護士資格を保有しているのかと尋ねられることがあります。日本人弁護士は、通常ベトナムの弁護士資格を取ることはできません。日本の弁護士資格をベトナムの司法省に登録して外国人弁護士として活動しています。
また、ベトナムではどういった過程を経て弁護士になるのかと聞かれることも良くあります。この点について皆さん意外と関心があるようなので、今回はベトナムの弁護士資格(なり方)について書きたいと思います。
ベトナムで弁護士になることができるのはベトナム国籍の保持者に限られます。
また、法学士(法学部等を卒業している人)でなければなりません。そのため会計等その他の学位を有する人が、弁護士になりたいと思う場合には改めて学位を取り直す必要があります。
この点、日本国籍・法学士、双方の資格が不要な日本とは異なります。もっとも、日本で育った外国籍の方以外で日本の弁護士資格を取られている方は非常に稀です。外国人にとって日本語の読み書きのハードルが高いこと等が原因かもしれません。
まず、法学士を有する候補者は、弁護士業務研修施設において、12ヶ月間の弁護士業務の研修を受けなければなりません。
弁護士業務研修施設はベトナム国内でハノイに本部施設があり、ホーチミンに支部が存在します。施設としてはこの二つになりますが、ハノイ及びホーチミンの各施設は、他の各省でもクラスを開催しています。
弁護士業務の研修というと日本の司法修習のようなものを想像するかもしれませんが、従来は座学中心の学校で授業を受けるような形式のものでした。
しかし、現行の決定第873/QD-HVTP号により、単位取得のスキームが変更され、必修の39単位中、4単位は法律事務所等で実習を行うことになりました(期間は概ね2か月程度)。
この実習終了後、報告書を作成し、報告書の内容と面談により実習結果が評価されることになりました。
当該研修については、平日毎日受講するコースと週末に集中的に受講する2種類のコースがあり、12ヶ月間の間、祝日を除いて基本的に休みがありません。
多くのベトナム人は仕事をしながら当該研修に参加するのでこれを修了するのはなかなか大変で、途中で通えなくなって挫折したり、12ヶ月間の期間を延長して当該研修を修了する人も少なくないようです。
研修の最後に試験を受けて合格すると研修の修了証明書が付与されるというのが従来の方式でしたが、前記の単位取得のスキーム変更により、最後の試験はなくなりました。今では、必修の39単位を取ったら当該研修が修了し、修了証明書が付与されることとなっています(ホーチミン市では2020年から運用)。
弁護士業務の研修を修了した者は、弁護士事務所での12ヶ月間の弁護士実務研修に進みます。弁護士事務所は我々のような外資組織でも良いのですが、研修の責任者となる指導弁護士はベトナムの資格者(つまり、ベトナム人弁護士)でなければなりません。
指導弁護士となる者の条件は、3年以上の実務経験があることと弁護士会の懲戒の対象となっていないことです。
実務研修を受ける者は、修習先の弁護士事務所の本店所在地の弁護士会に、実務修習の登録をしなければなりません。
この登録の日から12ヶ月間が実務修習の期間となります。
当該期間中は指導弁護士の補助や、訴訟への同行ができ、日本の弁護士修習の内容と類似します。
もっとも、日本は法曹一元制度で、司法試験の合格者の中から、裁判官、検察官、弁護士の資格者を選定することになっていますから、弁護士の候補者は、弁護士の実務研修のみならず、裁判官・検察官の実務研修も受けます。この点は大きく異なっています(ベトナムで裁判官、検察官になるには異なる過程を経る必要があります)。
実務研修を修了した者は、実務修習結果の評価試験を受験します。試験は筆記と後述の試験です。
この試験に合格すると、弁護士免許の発行を申請できます。
弁護士免許の発行を受けても、まだ弁護士の業務を行うことはできません。
弁護士としての業務を行うためには弁護士会への入会が必要で、弁護士会への入会を経て、晴れて弁護士としての業務を行うことができます。
上記の評価試験の合格率については、年によっても異なるようなので一概にはいえませんが、基本的には50%を上回ります。
合格率だけみれば日本よりも資格取得が簡単といえますが(日本では2008年度開始の新司法試験以降、合格率は概ね20~30%の間で推移しています)、仕事をしながら研修所に通う等、資格の取得はけして簡単なものではないといえます。