ベトナムで不動産管理の決済代行を行う場合の条件
- 2018.07.09
- 投資
- 不動産
<前提>
設立する合弁会社をA社とします。
① オーナーの代理で、賃借人に対するVATインボイスを取得し、賃借人に送付
(発行名義はオーナー。現地にオーナーが住んでいないことが多いので、A社が対応)
② オーナーの個人所得税について、A社が代わりに申告する
③ 賃借人からA社が賃借料を代理で受け取り、オーナーのベトナム非居住者口座へ送金
A)賃借人から受け取ったお金を、そのままオーナーへ送金する場合
B) 賃借人から受け取ったお金から、A社の管理料金を控除(差し引き)して、オーナーへ送金する場合。
賃貸借契約は、オーナーと賃借人間で締結しますが、お金のやりとりだけ間にA社が入る、ということです。
<ライセンス>
A社は、日本人や外国人がベトナムで購入した物件を、ベトナムで管理する業務を実施する場合、A社は「不動産管理サービス事業」をビジネスライセンスに追加する必要があります。
①の業務について、A社は、A社とオーナーとの間で締結されるサービス契約でこの業務を実施することが可能です。
②については、本来会計ライセンスが必要。
(会計費以外でインボイス発行する場合、ライセンス上問題とされる可能性は大きくはないですが自社リスクでお願い致します。)
③の業務について、A社は、オーナーがA社に委託し、オーナーとの間のサービス契約という形で、オーナーに追加で支援することが可能というのが弊所弁護士の意見です。(詳細は下記)
この点は、I-Glocalは決済代行ライセンスが必要な可能性はあるという意見です。特に③Bは費用を明確に徴収するためリスクがあるといっています。
<金融ライセンス>
決済代行ライセンスは中央銀行管轄となります。
中央銀行にはヒアリングしましたが、回答はありませんでした。
決済代行にあたらないと考える根拠は以下です。
ベトナム国家銀行法46/2010/QH12号の第6条第10項に基づき、決済代行サービスとは、決済サービスを提供する組織と決済サービスを使用する者との間の決済取引に関する電子データの接続、送信および処理を目的とした仲介活動をいう。
「Payment intermediary services means intermediary operations aimed at connecting, transmitting and processing electronic data on payment transactions between payment service providers and payment service users.」
政令101/2012/NĐ-CP号の第4条第3項に基づき、非現金決済サービスを提供する組織(決済サービスを提供する組織)は、ベトナム国家銀行、銀行、外国銀行支店、 人民信用基金、マイクロファイナンスの組織及びその他の組織を含む。
「Institutions providing non-cash payment services (hereinafter referred to as payment service providers) comprise the State Bank of Vietnam, banks, foreign bank branches, people’s credit funds, micro-finance institutions and a number of other institutions.」
そのため、決済代行サービスの定義に基づき、単純にA社が代理で受け取るだけの業務について、上記の③業務(賃借人からA社が賃借料を代理で受け取り、オーナーのベトナム非居住者口座へ送金する業務)は、決済代行に当たらない。
もっとも、ベトナムでは当局の解釈次第の部分もあるため、リスクがゼロではありません。
金融ライセンスが必要な場合の条件は以下のとおりです。
政令101/2012/NĐ-CPに基づき、決済代行の金融ライセンス(payment intermediary services licence)の取得の条件は以下のとおりです。
2. Requirements for providing payment intermediary services
The organizations not being banks that wish to provide payment intermediary services must satisfy the following requirements:
a) Having a License for establishment or Certificate of business registration issued by competent State agencies, in which the provision of payment intermediary services is one of their primary businesses;
b) Having an approved plan for payment intermediary service provisions in accordance with the regulations on investment authority prescribed in their charter;
c) Having at least 50 billion VND of charter capital;
d) Requirements of human resources:
The legal representative, the General Director (Director) of the applying organization must have proficiency or experience in business administration or their discipline.
The employees that run the payment intermediary services must be proficient in their job;
dd) The technical and professional conditions include: facilities and technical infrastructure that suit the requirements for providing payment intermediary services and the regulations of the State bank; the back-up technical system independent from the primary system that ensures the safe and continuous service provision when the primary system has problems; the technical and professional process in the provision of payment intermediary services that ensures the safety, security, and suite the laws on electronic transaction; the process of internal inspection of payment intermediary services in electronic transactions as prescribed by current law.
結構難しいと思います。
なので、③の教務を実施するため、オーナーが賃借人との間の賃貸借契約にA社を賃借料の受け取りのためのオーナーの代理人として指名します。A社の管理料金の控除のについては、A社は、A社とオーナーとの間で締結されるサービス契約に基づき、管理料金を控除することが可能です。
また以下の会計上の処理も問題になります。
<会計上の処理>
会計上いえば、立替に関しては適切に証憑が備わっていれば、仮に売上として指摘を受けても対抗可能だと思いますし、リスクとしてはそれほど高いものではありません。
ただ手数料を差し引くということは、その手数料が売上になるので、貸主に対との間で役務提供契約の作成、インボイス発行が必要になることのほか、契約上で債権債務の相殺によって手数料を受領する旨の記載が必要になり、立替金と手数料の相殺合意書(具体的な金額を記載)も作成する必要があり、やや面倒ではあるかと思います。
それが備わっていて売上として認定されるのは不合理なので、何か指摘を受けた場合は抗弁をする他ないと思います。
なお、少なくともオーナーのベトナム口座との間でやりとりは必要になります。
(日本口座へA社から送ることはすべきでない。)