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ベトナムにおけるシフト制勤務について

  • 2023.02.13
  • 労務
  • 労務管理

1. シフト制の定義 ベトナムにおいてシフト制勤務とは、「少なくとも二人または二グループ以上が、24時間以内に同じ仕事(作業)位置で、交代で仕事(作業)をするよう配置すること」をいいます(政令145/2020/ND-CP号(以下「政令第145号」といいます)第63条第2項)。上記でいう「同じ仕事位置で」とは原文では“trên cùng một vị trí làm việc”と記載されており、必ずしも意義が明確ではありません。したがって、二つ以上の勤務時間帯を設けている工場勤務や24時間対応のコールセンターなどの他、日勤勤務の他に夜間勤務帯(例えば外国企業への対応のためなど)を設けている事業形態についてはオフィス勤務であってもシフト勤務制に関わる規制について留意する必要があると考えます。 ...

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在宅勤務をする従業員の給料を減額することはできますか?
在宅勤務をする従業員の給料を減額するといった運用は可能なのでしょうか。本稿は在宅勤務をする従業員について減給することが問題ないか、減給ができるとしてどのような点に注意すべきか、どのように運用すべきかといった点について分かりやすく解説します。   目次1.減額は問題ないか2.最低賃金規制との関係3.運用について 原則として、在宅勤務を理由に、使用者が一方的に賃金を減額することはできません。 賃金や就業場所は労働契約の主要条項であり、変更には当事者の合意が必要です。合意なく減額すれば適切に支払っていないことになり(ベトナム労働法45/2019/QH14第94条、第95条)、行政制裁を受けたり、労働者からの予告なし解除されるリスクがあります(労働法第35条2項b)。紛争にも繋がる可能性があります。 従業員との間で合意する場合には、少なくとも3労働日前に通知し、合意できた場合は契約付属書の締結または新契約の締結で変更する必要があります。合意できなければ現契約のまま継続です(労働法第33条)。 1の合意をしたとしても、最低賃金を下回る減額はできません。 労働法90条1項・2項においては、「職務・職位に対する賃金=基本給」について最低賃金を下回ることはできないと記載があるため、基本給自体について減給する場合には、減給後の基本給が最低賃金を下回らないようにすることが必要です。 あくまで(手当やその他の金銭は含まない)基本給に関する定めであるため、手当を含めて最低賃金を上回ったとしても違反となることに注意が必要です。 その他の手当てについては、通勤を前提とする手当についてのカットは問題となりにくいですし、それ以外の手当てについても労働者と合意のうえ減額することは可能です。 *控除による減額 在宅勤務を理由として一方的に賃金を控除することはできません。賃金からの控除は、事業主の資機材等に損害を与えた場合の損害賠償など限定事由に限られ(労働法第102条1項・第129条)、控除総額は月の手取りの30%上限となっているためです。前述の通り、合意の上契約を改定してから減額する必要があります。 *参考となる条文 ベトナム労働法では、災害などの突発的事情がある場合の配転の場合には、30労働日は旧賃金維持、以後の新業務の賃金は少なくとも旧賃金の85%かつ最低賃金以上という下限が定められています(労働法第29条3項)。在宅勤務自体に適用がある条文ではありませんが、制度設計の際の参考になります。   法令上は在宅勤務を含めた柔軟な制度設計が推奨されている(労働法135条2項)ため、運用には注意する必要があります。 前述のように、減額自体は労働者の合意があれば可能ではありますが、業務上の支障がない場合にはできる限り在宅勤務を含む柔軟な職場環境設計が望ましいです。 最低賃金の基礎となる「賃金」とは?(基本給のみで最低賃金水準を超えていなければならないかどうか。) 【2021年労働法】従業員の給与を天引きすることは、ベトナムの法律上問題ありませんか。
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【2021年労働法】ベトナムでは労働者に健康診断を受けさせる義務があると聞いています。その内容を教えて下さい
会社は、毎年少なくとも1回、労働者に対して健康診断を受けさせなければなりません。 なお、労働者に未成年者(満18歳未満の労働者)、障がいがある者、高齢者(2021年現在においては60歳3ヶ月以上の者)がいる場合、これらの者に対しては、6ヶ月に1回、健康診断を受診させる必要があります(労働安全衛生法第21条第1項)。   労働者が健康診断を受診している時間も労働時間として加算されます(政令145号第58条第9項)。そのため、土曜日等の週末に健康診断を受診させた場合で、かつその日が会社の定める休日に当たる場合、休日手当の支払いが必要となるので、注意が必要です。 労働者に健康診断を受診させない場合、最大で1500万VNDの罰金が課される可能性があります(政令28号第21条第2項)。 受けさせるべき健康診断の項目については、通達14号別紙3に規定されています(通達14号第6条第3項)。
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労働者が研修後1年で退職してしまいました。研修費用の返還請求は可能ですか。
会社の費用でベトナム人労働者を一定期間日本等で研修させることがよく行われます。このような労働者がベトナムでの勤務に復帰後すぐに退職することを防止するため、退職時の研修費用の返還について会社と労働者の間で合意するケースが見られます。 研修費用返還のルールについて、労働法は以下のとおりになります。 まず、労働法第43条は、「労働者が法律に反して一方的に労働契約を終了」させた場合の労働者の義務を規定しますが、同条第3項は、「(労働者は)本労働法第62条に従って使用者に研修費用を返還しなければならない。」と規定します。 そして、労働法第62条以下では、両当事者が職業研修契約を締結しなければならないとされ、その内容として以下のものを規定しています。 a)研修する職業。 b)研修場所、研修期間。 c)研修費用。 d)研修後に労働者が使用者のために就労しなければならないと保証する期間。 e)研修費用の返還責任。 f)使用者の責任。 労働法でも、研修費用返還のルールは曖昧であるため、いかなる場合に研修費用返還が認められるかが明確でありません。労働法第43条によれば、「労働者が法律に反して一方的に労働契約を終了」した場合に研修費用返還が認められますので、労働者が有期労働契約の継続中に法定の事由がないにも係らず一方的に労働契約を終了すれば、研修費用返還が認められることは明らかといえます。 一方、労働者が使用者と無期労働契約を締結している場合、労働者は45日前の通知さえすれば労働契約を終了できますので(労働法第37条第3項)、当該通知さえあれば、「労働者が法律に反して一方的に労働契約を終了」したには該当しないように思われます。 そうすると、無期労働契約については事実上研修費用を返還させることが難しいようにも思われますが、これは結論としては明らかに不合理と思われます。 この点はいくつか考え方があり得るところですが、 ①労働法第43条は、「労働者が法律に反して一方的に労働契約を終了」した場合に「(労働者は)本労働法第62条に従って使用者に研修費用を返還しなければならない」と規定しているだけであって、それ以外の場合に研修費用の返還を認めないとは規定しているわけではないこと、 ②労働法第62条第2項は、職業研修契約の内容として、「研修後に労働者が使用者のために就労しなければならないと保証する期間」や「研修費用の返還責任」を含むと規定していることからすると、 使用者及び労働者の間で合意をすれば、「労働者が法律に反して一方的に労働契約を終了」した場合でなくとも、研修費用の返還は認められる余地が十分にあると考えられます。 よって、実務上は、労働者を一定期間日本等で研修させる場合には、労働者との間で職業研修契約を締結し、同契約において、就労を保証させる期間、研修費用の返還を求めるケース及び返還を求める研修費用の内訳・金額等を明確に規定しておくことが重要と考えられます。