ベトナムにおけるアルコール卸売・小売についての規制概要
- 2025.01.21
- コラム
- CastGlobal
本コラムでは、アルコール販売に関する政令105/2017/ND-CPとそえを修正する17/2020/ND-CPで規定された遵守事項を中心に、ベトナムにおけるアルコールの卸売業・小売業に求められる一般的な規制について解説します。
目次
1. 基本的な遵守事項
ベトナムでは外資による流通ビジネス(卸売・小売)は、法律上は可能とされています。ただし、「条件付きビジネス(conditional business)」として扱われるため、追加の許認可取得や規制遵守が必要です。アルコールはその中でもとくに管理が厳しい商材に該当します。
アルコールの卸売業者および小売業者は、以下の条件を満たさなければなりません。
1.1 ライセンス取得
卸売業者および小売業者は、それぞれの事業活動に応じたビジネスライセンスを取得する必要があります。
- 卸売業者は「アルコール卸売ライセンス」を取得。
- 小売業者は「アルコール小売ライセンス」を取得。
- ライセンスは地方の商工局(Sở Công Thương)または規模に応じて中央省庁によって発行されます。
1.2 アルコール度数による分類
アルコール度数により販売規制が異なります。
- アルコール度数5.5%以上は、特に厳格な規制対象。
- アルコール度数5.5%未満も条件付きで規制。
1.3 広告およびプロモーション
- アルコールの広告は禁止または制限されている場合が多く、特に未成年者を対象とする広告は禁止。
- プロモーション活動(イベントや割引)においては、特定の許可が必要。
2. 卸売業者が遵守すべき条件
卸売業者は、以下の条件を満たす必要があります。
2.1 流通網の構築
- 卸売業者は、販売地域をカバーする適切な流通ネットワークを構築する必要があります。
- 流通網は少なくとも2つ以上の省・都市をカバーし、各エリアに少なくとも1つの販売拠点を持つ必要があります。
2.2 契約の要件
- 卸売業者は、製造業者または他の卸売業者と有効な供給契約を締結する必要があります。
- 輸入アルコールを取り扱う場合、輸入許可と製造元の輸出許可が必要です。
2.3 保管および輸送基準
保管施設および輸送手段は、アルコールの品質を維持するための基準(温度管理、衛生条件など)を満たす必要があります。
2.4 販売先の管理
卸売業者は、小売業者または最終消費者に販売する際、適切な記録を保持し、規制対象外の販売が行われないよう管理します。
3. 小売業者が遵守すべき条件
小売業者は以下の要件を満たす必要があります。
3.1 販売地域の制限
小売業者のライセンスは特定の地域に限定され、他地域での販売には新たなライセンス取得が必要です。
3.2 販売対象の規制
- 未成年者(18歳未満)への販売は禁止。
- 販売時間および販売場所の規制がある場合は、それに従う必要があります。
3.3 店舗基準
アルコールを販売する店舗は、適切な衛生基準を満たし、必要な保管設備(冷蔵庫など)を備えている必要があります。
3.4 記録管理
売上記録および仕入れ記録を適切に管理し、必要に応じて監査に対応できる体制を整備する必要があります。
4. 共通の遵守事項
卸売業者および小売業者共通で以下の項目を遵守する必要があります。
4.1 ライセンスの表示
取得したライセンスを店舗や事務所に掲示すること。
4.2 税務および会計の遵守
アルコール販売に関する税務申告および納税を正確に行う必要があります。
4.3 輸入品の品質基準
輸入アルコールは、ベトナムの基準に適合し、適切な検査を受けている必要があります。
4.4 アルコール飲料の追跡可能性
すべての販売取引に関して、出所や販売先を特定できる記録を保持すること。
5. 違反時の罰則
105/2017/ND-CPおよび17/2020/ND-CPでは、以下のような違反時の罰則が定められています。
- ライセンスなしでの販売: 高額な罰金および営業停止。
- 未成年者への販売: 営業停止や追加の罰金。
- 広告規制の違反: 宣伝活動の差し止めおよび罰金。
総括
アルコールの卸売・小売事業を運営する際は、これらの規制を厳格に遵守する必要があります。ライセンス取得および維持の要件を正確に理解し、適切な流通管理を行うことで、法令違反のリスクを最小限に抑えることが可能です。
実務上は外資系がアルコール販売系のライセンスを取得する場合、難易度が高いといわれ、多くの時間がかかるケースも見られます。ある程度時間の余裕をみたうえで、取得を試みることを推奨します。