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ベトナムでは、大きなトラブルにならないように日常的に法務を意識して経営することが重要ですが、実際には何が問題になりうるのかや日本との違いもわからず、法的な事柄によって日々の業務に集中できないことも多く生じています。
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導入事例CASES
ニュースNEWS
- コラム
- 2025.02.18
- CastGlobal
【ニュース】ベトナムへの越境EC等の小口輸入品についての免税範囲の見直し(財務省提案の段階)
本日2025年2月18日より、100万VND以下の小口輸入品についての輸入税免税規定が廃止されています。
ベトナム決定01/2025/QĐ-TTg:小口輸入免税の廃止と新たな課税ルール
一方で、財務省は以下のとおり免税対象範囲の見直しと、それ以外の義務などを合わせて政令を提案中との報道がなされており、こちらが早急に検討されそうです。
一時混乱はありそうですが、新たな制度が始まる可能性が高いため越境EC業界含め要注目ですね。
下記が現在提案されている政令の要点です。
単品価格200万VND以下の商品にVAT免除
同一購入者における年間累計96百万VNDの上限
食品/化粧品等の消費財に限定(工業用部品は除外)
年4回まで検査免除可能
危険物・文化財等は除外対象
分割購入防止のためIPアドレス追跡システム導入
詳細は以下のとおりです。
財務省の新政令案:免税対象範囲の見直し
財務省は免税規定廃止後の新たなルールとして、越境ECを通じて輸入される小口商品の課税に関する政令案を準備中です。この案では、小額輸入品に一定の範囲で再び免税枠を設ける一方、悪用防止のため厳格な条件を付与する内容となっています。
免税対象の範囲拡大と上限設定
政令案によれば、オンラインプラットフォーム(ECサイト)経由で購入された1件あたりの商品価値が200万ドン(約1万〜1万2千円)以下の輸入品については、輸入関税および輸入段階のVATを免除することが提案されています。これは従来の100万ドンから閾値を引き上げるもので、小口輸入品に対する免税枠の拡大と言えます。
ただし年間の累計購入金額が9600万ドン(約55〜60万円)を上限とし、それを超えると免税措置は適用されません。。この年額上限は、一人の消費者または一企業が免税制度を利用できる総額に上限を設けることで、免税枠の乱用(大量の小口分割発注による免税適用の繰り返し)を防ぐ狙いがあります。
なお、1件あたり200万ドンを超える注文や、年間上限を超過した場合には、その注文の商品全価値に対して通常の関税・VATが課される仕組みです。部分的に超過分のみ課税するのではなく、閾値を超えた場合は全額に課税される点に注意が必要です。
対象となる品目
この免税措置の対象は「オンライン商取引を通じて購入された商品」とされています。すなわち、ShopeeやLazada、Alibaba系サイト、TikTok Shopなど越境ECプラットフォームを通じた個人輸入品が主な対象です。現時点で特定の商品カテゴリの除外は明記されていませんが、財務省案では2つの選択肢が示されています。
一つは(A)関係当局が指定する特定品目以外は免税対象外(通常どおり許認可・検査が必要)とする案、もう一つは(B)上記の金額基準に合致するもののみ一律に免税対象とする案です。後者の場合でも、たとえば禁制品や輸入に際し特別な許可が必要な医薬品・農薬等は従来通り規制対象となるとみられます(それらは別途の法律で輸入自体に許可が必要です)。
実際、ドラフトでは「輸入許可証や各種証明の取得・専門検査を免除する対象品目のリスト」を策定することも検討されており、このリストに載らない商品はたとえ少額でも通常の検査手続きを経る可能性があります
。最終的な対象品目の詳細については、関係省庁間の協議で確定する見通しです。
検査免除の条件と不正対策
新政令案には、通関時の検査(専門検査や許認可手続)の免除条件についても明確な条件が盛り込まれています。具体的には、価額が200万ドン以下の越境EC輸入品であれば、年間最大4回までは輸入の際に各種の許可申請や品質検査等を免除する方針です。ただし5回目以降の輸入や、上述の年間累計9600万ドンを超える場合には、たとえ1件ごとの金額が少額でも通常の検査手続が必要になります。
この「年4回までの検査免除」という頻度制限は、同一人物が免税枠を悪用して大量の小口発送に分散することを防ぐ効果を狙ったものです。財務省によれば、こうした回数制限と金額上限を組み合わせることで、利用者が政策の穴を突いて注文を細切れに分割する行為に歯止めをかける意図があります。
不正対策としては、購入者や送付先の識別情報を一元管理・追跡する仕組みづくりが欠かせません。
具体的には、個人識別番号(納税者IDや身分証情報)に基づいて年間免税枠の利用状況を管理することが想定されます。さらに、同一人物が複数のアカウントや住所を使って回数制限を逃れようとするケースへの対策として、ECプラットフォーム側でのデータ連携や、場合によってはIPアドレスなど技術的手段での検知も議論されています。
財務省はまた、免税対象となる商品をまとめ買い(「gom hang」)して国内で転売するような行為を禁止する規定も提案しており、越境ECの個人輸入制度を悪用した業者的行為には厳しい姿勢を示しています。
施行時期と政府・関係機関の見解
上述の免税廃止措置(100万ドン以下の免税枠撤廃)は2025年2月18日付で既に発効しています。一方、新たな政令案については現在パブリックコメントや関係省庁との協議を経ている段階で、正式な施行時期は未定です。
財務省は2023年からこの問題に取り組み、2023年6月には一度政府に対し同趣旨の政令案を提出していました。その後、越境EC取引のさらなる拡大を受けて内容を追加修正(年4回の制限規定などを盛り込み)し、2024年末〜2025年初頭に改めて策定した草案を発表しています。関係者によれば、司法省の審査を経て最終案が首相に提出・承認され次第、2025年中にも新ルールが施行される見通しです。
政府および関係機関も、この政策変更について明確な見解を示しています。国会では「小口だからといって免税するのは不公正であり、越境ECを利用した事実上の脱税を許すべきではない」との声が上がっていました。
実際、国内販売される商品には一律10%のVATが課税されますが、これまで海外ECからの直送品だけが免税されていたため、国内業者にとって競争上のハンデとなっていた面があります。財務省も「小口輸入品の免税は国内製造業や通常の輸入品との競争条件を歪め、不公平を生んでいる」と指摘し、現行制度をこのまま放置すれば「輸入EC商品への逆保護(逆差別)」につながりかねないとの懸念を表明しました。また、免税によって品質検査が省かれることで、低品質・模造品が無検査で大量流入するリスクも問題視されています。こうした理由から、政府としては免税措置の見直しは避けられないとの判断に至ったわけです。
国際的に見ても、越境ECに係る課税の強化は一つの流れです。例えばタイでは2024年5月1日から、輸入額にかかわらず全ての輸入商品にVATを課す制度を導入しました。。欧州連合(EU)も既に2021年に22ユーロ以下のVAT免税枠を撤廃し、少額でも確実にVATを徴収する仕組みに移行しています(関税については150ユーロ以下無税の枠が残っています)。
ベトナム財務省は、こうした近隣諸国や世界の動向も踏まえつつ、自国の電子商取引市場に適した制度設計を進めていると述べています。
日系企業への影響とまとめ
日本の越境EC事業者および日系企業にとっても、ベトナム市場戦略の見直しが必要になるでしょう。ベトナムの消費者向けに少額の商品を直送販売している場合、今後は顧客が税負担を負うことになるため、価格設定やマーケティングに配慮が求められます。
例えば「送料無料・消費税込み」のような形で、税負担込みの総額表示や事前徴収を行うなど、購入者に分かりやすい対応が重要です。
また、年間4回までの免税枠という制限から、リピーター顧客が頻繁に小口購入する業態では、まとめ買い割引や現地在庫の活用といった配送回数を減らす工夫も検討すべきでしょう。逆に高額商品の場合はもともと課税対象であったため、大きな影響はありませんが、通関手続きが厳格化されることで配送リードタイムが伸びる可能性には注意が必要です。
総じて、ベトナム政府の今回の措置は、越境EC市場の健全化と税収確保、国内産業保護を目的としたバランス策と言えます。免税の恩恵が縮小することで一時的な取引減少も予想されますが、長期的には透明で公正な競争環境の整備に寄与するでしょう。ベトナムの越境EC市場は東南アジアでトップクラスの成長率(年15〜20%)を示しており、市場規模は2024年時点で250億ドルを超えるとされています。
日本企業にとっても依然として魅力的な市場であることに変わりはなく、今回の制度変更を正しく理解し適応することが、今後のビジネスチャンスを活かす鍵となるでしょう。
- コラム
- 2025.02.11
- CastGlobal
【ベトナム】交通ルールの新規制に関する政令168/2024/ND-CPの解説
2024年12月26日に発行され、2025年1月1日から施行される政令第168/2024/ND-CP(以下「政令168」という)は、ベトナムにおける道路交通分野の秩序と安全を規定した新たな行政処分規制です。
この政令は、新たに違反者への点数減算および免許点数回復の仕組みを導入し、より厳格な処罰を実施します。以下に主要な内容を解説します。
自動車運転者についての規定は以下のとおりです。
1. 自動車運転者に関する規定
No.
違反行為
罰金額
政令100、123[1]
政令168
1
信号無視
400万~600万ドン
1,800万~2,000万ドン
2
一方通行の道路を逆走する、「逆走禁止」の標識のある道路を逆走する。
400万~600万ドン
1,800万~2,000万ドン
3
路地や枝道から幹線道路に向かうときは、速度を落とし(または一時停止)、道を譲らない。
交差点では、優先道路や幹線道路をどの方向からでも走行する車両に道を譲らない。
80万ドン~100万ドン
400万~600万ドン
4
横断歩道のある場所で歩行者や車椅子に道を譲らない。
30万 – 40万VND
400万~600万ドン
5
ドアを開けて、又は開けっ放しにして事故を起こす。
40万~60万VND
2000万~2200万ドン
6
規制に従って固定されていない輸送手段である物品、機械、技術機器、円筒状の物品の輸送。
60万 – 800千VND
1,800万~2,200万ドン
7
交通管制官の指示に従わない。
400万~600万ドン
1,800万~2,000万ドン
8
公務を遂行する職員に対する検査および管理の要求を妨害または遵守しない。
400万~600万ドン
3,500万~3,700万ドン
9
蛇行運転、速度超過、競争運転、足でハンドルを操作する。
1000万~1200万ドン
4,000万~5,000万ドン
10
血中または呼気中のアルコール濃度が以下の基準を超えている状態で車両を運転する:
血中アルコール濃度: 50 ミリグラム以上から 80 ミリグラム/100ミリリットル
呼気中アルコール濃度: 0.25 ミリグラム以上から 0.4 ミリグラム/リットル
1,600万~1,800万ドン
1,800万~2,000万ドン
11
所定の制限速度を35km/h以上超えて車両を運転する。
1000万~1200万ドン
1,200万~1,400万ドン
12
ナンバープレートが不鮮明な自動車を運転する。
ナンバープレートを偽造または変造した自動車を運転する。
登録されていないナンバープレートを装着した自動車を運転する。
400万~600万ドン
2000万~2600万ドン
13
道路を走行する車両を運転する際に、電話やその他の電子機器を保持したり使用したりする。
200万~300万ドン
400万~600万ドン
14
高速道路において四輪電動乗用車[2]又は四輪電動貨物自動車[3]を運行する。
1,200万~1,400万ドン
15
高速道路上で間違った場所に停止または駐車する。
1000万~1200万ドン
1,200万~1,400万ドン
16
高速道路を逆走する。
1,600万~1,800万ドン
3,000万~4,000万ドン
17
高速道路で後退する。
1,600万~1,800万ドン
3,000万~4,000万ドン
18
高速道路でUターンする。
1000万~1200万ドン
3,000万~4,000万ドン
特筆すべきは、運転中の携帯電話使用、ドアを開け放しにして事故を起こす、蛇行運転、速度超過、競争運転、足でハンドルを操作する等に対する罰則の強化であり、交通事故を未然に防ぐための厳格な取り組みが反映されています。
オートバイの運転者についての規定は以下のとおりです。
2. オートバイ運転者に関する規定
No.
違反行為
罰金額
政令100、123
政令168
1
信号無視
80万ドン~100万ドン
400万~600万ドン
2
血中または呼気中のアルコール濃度が以下の基準を超えている状態で車両を運転する:
血中アルコール濃度: 50 ミリグラム以上から 80 ミリグラム/100ミリリットル
呼気中アルコール濃度: 0.25 ミリグラム以上から 0.4 ミリグラム/リットル
400万~500万ドン
600万~800万ドン
3
血中または呼気中のアルコール濃度が以下の基準を超えている状態で車両を運転する:
血中アルコール濃度: 80 ミリグラム以上/100ミリリットル
呼気中アルコール濃度: 0.4 ミリグラム以上/リットル
600万~800万ドン
800万~1,000万ドン
4
所定の制限速度を20km/h以上超えてバイクを運転する。
400万~500万ドン
600万~800万ドン
5
バイクを高速道路に運転する
200~300万ドン
400万~600万ドン
6
一方通行の反対方向に進む
100万~200万ドン
400万~600万ドン
7
蛇行運転
600万~800万ドン
800万~1,000万ドン
8
交通事故を起こした場合、直ちに止めずに、現場を維持しない、被害者を救護しない等
600万~800万ドン
800万~1,000万ドン
9
歩道でバイクを運転する
40万~60万ドン
400万~600万ドン
アルコール基準値違反、赤信号無視、蛇行運転等に対する厳しい罰則は、飲酒運転撲滅への明確な意志を示しています。
歩行者も以下の交通ルールを遵守する必要があります。
横断歩道の使用
横断歩道は横断歩道線によって区切られています。横断歩道線とは、平行に引かれた白い実線(イメージ1)、または 横断歩道を判別する2 本の長い白い実線(イメージ2)のことです。
イメージ1
イメージ2
指定された区域外での道路横断の禁止
信号、道路線、歩道橋、歩行者用トンネルがある場所でのみ道路を横断することができます。中央分離帯を越えてはいけません[4]。
歩道の使用義務
歩行者は、歩道または歩行者専用の道のみを歩くことができます。歩道、路肩、または歩行者専用の道がない場合は、道路の右側端を歩く必要があります。
歩行者専用の道をはみ出て歩いたり、中央分離帯を越えたり、指定された横断歩道以外を横断したり、手信号なしで道路を横断した場合、15万から25万ドンの罰金が科せられます[5]。
新たに導入された点数減算および回復制度は、交通ルールの順守を促進する仕組みです。
制度
内容
点数減算
運転免許証の点数は、12点で構成されています。違反ごとに特定の点数が減算され、点数がゼロになると免許が一時停止または取消される[6]。
免許点数回復
免許の点数がゼロになってから少なくとも6か月後、警察官によって実施される道路交通法に関する知識の試験を受けることができます。試験に合格すれば、12点が回復されます[7]。
12ヶ月間違反がなければ、または点数がゼロにならなければ、点数が回復されます[8]。
(1)「非名義車両使用」違反の罰則追加
車の売買などで所有者が変わった際に、登録名義を変更しなかった場合に罰則が科されます。
(2)ヘッドライト点灯義務の時間変更
以下の時間帯・条件でのヘッドライト点灯が義務化されました。
18:00~翌06:00の間
霧、煙、ほこり、雨、悪天候で視界が悪い場合
(3)「3人乗り」の禁止と例外
緊急搬送、公務、12歳未満の子どもを同乗させる場合、高齢者や障がい者を介助する場合以外でのバイク・原付の「3人乗り」は違反行為となります。
(4)告発制度
今年初めから施行された新しい政令により[9]、交通違反を告発した場合、違反行為に対する行政罰金の最大10%、上限500万ドンが報奨金として支払われることがあります。具体的な支払方法については、関係機関が今後詳細を定める予定です。
[1] 政令100/2019/NĐ-CP、政令123/2021/NĐ-CP
[2] 四輪電動乗用車のイメージ画像:リンク
[3] 四輪電動貨物自動車のイメージ画像:リンク
[4] 道路交通秩序安全法36/2024/QH15第30.1条
[5] 政令168第10.1条
[6] 道路交通秩序安全法36/2024/QH15第58.1条
[7] 道路交通秩序安全法36/2024/QH15第58.3条
[8] 道路交通秩序安全法36/2024/QH15第58.2条
[9] 政令176/2024/NĐ-CP第5.11条
- コラム
- 2025.02.07
- CastGlobal
ベトナム投資に関連する最新ニュース・法務アップデート(2025年2月7日)
今後、日系企業にも関わる可能性の高いベトナムの経済ニュースや法務アップデートをメーリングリスト・コラムで行っていきたいと思います。有料会員(顧問企業)向けの内容とを分けていく可能性もありますが、内容が固まっていくまでは全体を公開していきたいと思います。
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2025年1月のベトナム経済は回復基調を示しました。
消費者物価指数(CPI)は前年同月比+3.63%とインフレは管理された水準にあり、国家財政も安定しています。輸出入は月間630億ドル超に達し、約30億ドルの貿易黒字を記録しました。
特に外国直接投資(FDI)の動向が顕著で、新規認可額は約43億ドルと前年同期比+48.6%の大幅増となり、実行額も15億ドル超(+2%)に達しています 。工業生産指数や小売売上高も前年を上回り、国内需要の持ち直しが見られます。
インフレ抑制下でマクロ経済の安定が維持され、FDI流入が力強く増加していることは、ベトナムの投資環境が改善傾向にあることを示しており、日系企業にとっても追い風となるでしょう。
関連ニュース:
Positive economic indicators recorded in early 2025: Gov’t spokesperson|VNS
ベトナム政府は2030年までの電力計画を見直す草案を発表し、ガス火力と洋上風力発電の導入目標を大幅に引き下げました 。
新たな草案によれば、当初2030年までに6GW設置予定だった洋上風力は今後10年間ゼロに先送りされ、液化天然ガス(LNG)火力も国内ガス供給不足などを理由に計画容量を減らす方針です。その穴埋めとして、2030年までに石炭火力を当初計画の30.1GWから31GW以上に増強し、水力や太陽光・陸上風力など他の再生可能エネルギーで電力需要に対応します。
さらに2035年までに原子力発電を再導入し、2050年までに約5GWを目指す計画も盛り込まれました。
電力不足への危機感から安全保障を優先した形で、短期的には石炭など従来型電源への依存が高まります。一方で太陽光や陸上風力には拡大余地があり、洋上風力・LNG分野の投資には計画調整の影響が懸念されます。エネルギー需要が急伸する中、この方針転換はエネルギー関連の日系企業にとって戦略見直しが必要になる重要ニュースです。
関連ニュース:
Vietnam cuts gas, offshore wind targets in new power plan, draft document shows | Reuters
国家銀行(SBV=中央銀行)のダオ・ミン・トゥ副総裁は、インフレが抑制され好条件が整えば、2025年の銀行与信(クレジット)成長率が政府目標の16%を上回る可能性に言及しました 。SBVは2025年のGDP成長率目標8%に合わせ、信用成長目標を16%程度に設定しています。
この達成に向け、中央銀行は柔軟な金融政策を維持しつつ、物価安定と為替レートの安定を図る方針です。また市中銀行に対してはコスト削減やIT活用による金利引き下げ努力を求めています。必要に応じ為替市場への介入も辞さない姿勢で、通貨安定と流動性確保に努める方針です 。
投資家にとっては、緩和的で安定した金融環境が継続する見通しを意味し、資金調達面での追い風となります。ただし信用供給拡大はインフレ管理との両立が前提となるため、今後の物価動向にも注意が必要です。
関連ニュース:
Vietnam’s 2025 credit growth may exceed 16% target: central bank
以前から報道されてきたとおり、ベトナム政府は企業支援と景気下支えのため、2020年以降続けてきた一連の税・料金減免措置を2025年も延長・強化する方針です 。
具体的には、付加価値税(VAT)の税率2%引き下げ措置(標準税率10%を8%へ)を2025年1月1日から6月30日まで継続するなど、税金・手数料の減免・納税猶予策が講じられます)。2020~2024年に実施されたVAT2%減税は国内消費を刺激し、コロナ後の経済回復に寄与したと評価されています 。
他にもオンライン行政サービス利用促進のため手数料を一部5~50%減額する措置も継続されます。これら減税策は国家予算に負担となる一方で、企業の資金繰りを改善し消費を喚起する効果があります。日系企業にとっては当面の税コストが軽減される利点があり、市場の需要喚起策にもなるため、事業計画において好材料と言えます。
関連ニュース:
Tax relief programmes crucial to boost economic growth | Vietnam+ (VietnamPlus)
2025年1月1日から2025年6月30日までのVAT減税の継続について(10%→8%)
人材サービス大手TopCVの報告によれば、2025年のベトナム労働市場はIT・デジタルやグリーン分野を中心に大幅な人材需要増が見込まれています 。ソフトウェア開発者、データアナリスト、サイバーセキュリティ技術者などのIT人材や、製造業における自動化エンジニア、サプライチェーン管理者といった高度技能職の求人が増加すると予測されています。
また、再生可能エネルギーやグリーン経済分野でも環境エンジニアやクリーンエネルギー開発者などの需要拡大が期待されています。一方で、専門技能を持たない労働者はAIや自動化の進展により職を失うリスクも指摘されており、労働省当局者は労働者のスキル向上と職種転換支援の重要性を強調しています 。
外国企業にとって、ベトナムの若く豊富な労働力は引き続き魅力ですが、特にハイテク分野では人材獲得競争が激しくなる可能性があります。ITエンジニアマーケットは近時の世界情勢やAI普及により2極化しているともいえますが、高度人材の獲得競争は引き続き残りそうです。現地での研修制度導入や待遇改善など、人材確保策が投資成功のカギとなるでしょう。
関連ニュース:
Job market to surge in 2025, technology and sustainability leading the way
2024年11月27日、第15期国会は2024年法第57号(57/2024/QH15)を可決し、計画法・投資法・PPP法(官民連携投資法)・入札法の改正を行いました 。この改正法は2025年1月15日に発効(一部条項は同年7月1日発効)し、投資手続きや事業分野の規制緩和を図る内容となっています。
主な変更点として、投資法における事業分野の規制リストが見直され、「無人航空機ビジネス」「データ仲介サービス」等が新たに条件付許可業種に追加される一方、「電気コンサルタント」「防火防災サービス」は許可業種から除外されました。
また港湾・桟橋や歴史遺産保護地区での投資案件、工業団地・輸出加工区の開発案件に関する事業認可権限が分権化され、これまで中央政府承認が必要だった案件の一部を各省・市の人民委員会が承認できるようになります。
さらに、高度技術産業の誘致を促すため「特定投資手続」が新設され、工業団地・ハイテクパーク等における半導体や先端技術の研究開発拠点など一定のプロジェクトについては、投資政策決定や技術評価、建設・環境・防火許可など複数の承認手続きを省略し、申請後15日以内に投資登録証明書(IRC)が発給される迅速なワンストップ手続きが導入されます。
PPP法の改正では、従来禁止されていた建設移管(BT)方式の契約が再度可能となり、PPP事業に対する政府資金拠出上限も総事業費の50%から最大70%に引き上げられました 。
これらの法改正により投資手続の簡素化・迅速化とハイテク・インフラ分野への投資促進が図られており、日系企業にとってもプロジェクト実現までの時間短縮や新たな事業機会拡大につながると期待されます。
2024年1月18日にベトナム国会で可決された新「土地法」(2024年土地法)および前年11月に可決された新「住宅法」(2023年住宅法)・新「不動産事業法」(2023年不動産業法)が、施行されています。こちらはもともと2025年1月1日施行予定でしたが、それぞれ一部規定を除き2024年8月から施行されています。
これら不動産関連法の刷新により、外国資本のプロジェクトに関わる土地利用ルールが大きく変わっています。
まず新土地法では「外国投資経済組織(FIE)」の定義が見直され、外資が一定比率未満の企業(=投資法上の外資手続きを要しない企業)は純粋な国内企業とみなされ、土地利用権においても内資企業と同等の扱いを受けられるようになりました。
また、外国資本企業(FIE)が工業団地・経済特区・ハイテク区内の土地利用権を譲渡により取得することや、国家から土地割当を受けた内資デベロッパーの不動産プロジェクトをM&Aで引き継ぐことが明確に認められています。これにより、従来グレーだった土地付き案件の外資による買収が容易になり、工業用地取得や不動産開発における参入ハードルが下がる見通しです。
さらに、国による画一的な「公定地価枠(ランドプライスバンド)」制度が廃止され、市場実勢に即した価格評価を行うために各省が設定する「地価テーブル」の仕組みへと移行します 。これにより用地取得コストの透明性向上や適正化が期待されます。一方で、国有地の賃貸料の一括前払いに関する規定も見直され、従来は事業者が選択できた一括払い方式は限定的な場合を除き認められなくなりました(年払いの場合でも新たに「契約上の賃借権」を認めるなど、年払い企業の権利強化策も導入)。
この変更は、一括払いによる長期土地使用権を担保に資金調達を図るスキームに影響を与える可能性があります。
総じて、新土地法と関連法の施行は土地取引の透明性・効率性を高め、外国企業によるプロジェクト取得を円滑にすると期待されます。一方で賃貸料制度の変更など資金計画面での調整も必要となるため、日系企業は新ルールを踏まえた戦略策定が求められます。
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【ベトナム】2024年土地法の重要な改正点(2024年8月1日施行)
【ベトナム】新住宅法及び新不動産事業法の重要な改正点(2024年8月1日施行)
ベトナム政府は先端産業への大型投資を呼び込むため、2024年12月31日付で政令第182号/2024/NĐ-CP「投資支援基金の設立・管理・運用に関する政令」を発出しました。これにより国家予算を原資とする「投資支援基金」が創設され、ハイテク産業分野のプロジェクトを対象に大規模な資金支援を行う枠組みが整いました。
支援は主に2種類あり、①年間経費補助(年次補助)と②初期投資補助に大別されます。年間補助はハイテク産業や研究開発(R&D)プロジェクトを対象に研修・人材育成費、研究開発費、新規設備投資、ハイテク製品の製造費、社会インフラ整備費など幅広い費用を毎年補助するものです。初期投資補助は特に半導体や人工知能(AI)のR&Dセンターを設立する企業に向けたもので、該当プロジェクトには初期投資額の最大50%相当が一括補助されます 。
この基金は2024会計年度から運用開始され、補助申請は毎年度終了後翌年7月10日までに行うスケジュールが示されています。グローバル最低法人税(GloBEルール)が2024年から導入され各国の税優遇競争が制約される中、ベトナム政府は税制以外の直接支援策で競争力を確保する戦略といえます 。
実際、同政令による画期的な補助スキームは「ベトナムをアジアのAI研究開発ハブにする」(チー・ズン計画投資相)との国家ビジョンを支えるものです。日系企業にとっても、半導体・AI等の先端分野でベトナム進出・拡張を検討する際に、この新設基金による大規模インセンティブが追い風となり得ます。補助金活用に際しては要件の精査や現地当局との調整が必要ですが、今後数年間の投資戦略に影響を与える重要な法制度アップデートと言えるでしょう。
その他、近時下記のような最新法務関連のアップデートもしていますので、ご興味があればご覧ください。
ベトナム決定01/2025/QĐ-TTg:小口輸入免税の廃止と新たな課税ルール
ベトナム国内における旅客運輸(タクシーなど)についての最新Decree158号について(2025年1月1日施行)
ベトナムにおけるeコマースとデジタルプラットフォームの税務改革
SNSの利用等に関する新しい政令147/2024/NĐ-CPについて(2024年12月25日施行)
ベトナムにおける銀行での顔認証・生体認証について(2025年1月1日発効)
- コラム
- 2025.02.04
- CastGlobal
ベトナム社会保険の年金制度:外国人労働者の受給条件と一時給付金
ベトナムで強制加入の社会保険に加入している外国人労働者は、外国人であっても退職時に、年金を受給することが可能です。
年金の受給条件は簡潔にいうと、少なくとも20年間社会保険料を支払い、規定の年齢(定年)に達していることが必要です。現行の法律で定められている具体的な受給条件は以下の第1項にまとめてあるとおりです。
また社会保険を納付している場合、年金は受給できなくても、一時金を受給することができる場合もあります。そちらについては第2項に簡単にまとめます。
年金を受給するためには、退職時点において以下の条件を充たしていることが必要になります(政令143/2018/NĐ-CP第9条1項参照)。
ベトナム当局により発給される労働許可証もしくは実務証明書、実務公認書を有していること。
ベトナム法人との間で、無期限労働契約または12ヶ月以上有期限労働契約に基づいて雇用されていたこと。
労働法上の定年に達していること。
定年については、職種により異なりますが、ほとんどすべての日本人は通常の労働条件下のもと、定年が決定されるので、本稿ではその場合のみ記載します(労働法第169条2項、政令135/2020/NĐ-CP第7条1項、政令143/2018/NĐ-CP第9条1項)
男性
女性
退職年
退職年齢
退職年
退職年齢
2024
61歳
2024
56歳4か月
2025
61歳3か月
2025
56歳8か月
2026
61歳6か月
2026
57歳
2027
61歳9か月
2027
57歳4か月
2028から
62歳
2028
57歳8か月
2029
58歳
2030
58歳 4 か月
2031
58歳 8 か月
2032
59歳
2033
59歳 4 か月
2034
59歳 8 か月
2035年から
60 歳
20年以上社会保険料を支払っていること(政令143/2018/NĐ-CP第9条1項。※注 2019年労働法改正によって改正された後のもの)。
年金の受給条件を満たさない場合でも、ベトナムで社会保険に加入している外国人労働者は、以下のいずれかのケースに該当する場合、社会保険一時金を受給することができます(政令143/2018/NĐ-CP第9条6項)。
①定年には達しているが、年金を受給するための社会保険料納付期間に満たない。
②年金を受給するための社会保険料納付期間に満たないが、がん、小児麻痺、AIDSなどの生命に関わる重大な疾病にかかっている。
③年金を受給するためすべての要件を満たしているが、ベトナムに引き続き居住しないため、一時給付金受給を希望する。
④年金を受給するための社会保険料納付期間に満たないが、労働契約・労働許可証・実務証明書・実務公認書が満了しており、一時給付金の受給を希望する。
- コラム
- 2025.01.21
- CastGlobal
ベトナムにおけるアルコール卸売・小売についての規制概要
本コラムでは、アルコール販売に関する政令105/2017/ND-CPとそえを修正する17/2020/ND-CPで規定された遵守事項を中心に、ベトナムにおけるアルコールの卸売業・小売業に求められる一般的な規制について解説します。
ベトナムでは外資による流通ビジネス(卸売・小売)は、法律上は可能とされています。ただし、「条件付きビジネス(conditional business)」として扱われるため、追加の許認可取得や規制遵守が必要です。アルコールはその中でもとくに管理が厳しい商材に該当します。
アルコールの卸売業者および小売業者は、以下の条件を満たさなければなりません。
卸売業者および小売業者は、それぞれの事業活動に応じたビジネスライセンスを取得する必要があります。
卸売業者は「アルコール卸売ライセンス」を取得。
小売業者は「アルコール小売ライセンス」を取得。
ライセンスは地方の商工局(Sở Công Thương)または規模に応じて中央省庁によって発行されます。
アルコール度数により販売規制が異なります。
アルコール度数5.5%以上は、特に厳格な規制対象。
アルコール度数5.5%未満も条件付きで規制。
アルコールの広告は禁止または制限されている場合が多く、特に未成年者を対象とする広告は禁止。
プロモーション活動(イベントや割引)においては、特定の許可が必要。
卸売業者は、以下の条件を満たす必要があります。
卸売業者は、販売地域をカバーする適切な流通ネットワークを構築する必要があります。
流通網は少なくとも2つ以上の省・都市をカバーし、各エリアに少なくとも1つの販売拠点を持つ必要があります。
卸売業者は、製造業者または他の卸売業者と有効な供給契約を締結する必要があります。
輸入アルコールを取り扱う場合、輸入許可と製造元の輸出許可が必要です。
保管施設および輸送手段は、アルコールの品質を維持するための基準(温度管理、衛生条件など)を満たす必要があります。
卸売業者は、小売業者または最終消費者に販売する際、適切な記録を保持し、規制対象外の販売が行われないよう管理します。
小売業者は以下の要件を満たす必要があります。
小売業者のライセンスは特定の地域に限定され、他地域での販売には新たなライセンス取得が必要です。
未成年者(18歳未満)への販売は禁止。
販売時間および販売場所の規制がある場合は、それに従う必要があります。
アルコールを販売する店舗は、適切な衛生基準を満たし、必要な保管設備(冷蔵庫など)を備えている必要があります。
売上記録および仕入れ記録を適切に管理し、必要に応じて監査に対応できる体制を整備する必要があります。
卸売業者および小売業者共通で以下の項目を遵守する必要があります。
取得したライセンスを店舗や事務所に掲示すること。
アルコール販売に関する税務申告および納税を正確に行う必要があります。
輸入アルコールは、ベトナムの基準に適合し、適切な検査を受けている必要があります。
すべての販売取引に関して、出所や販売先を特定できる記録を保持すること。
105/2017/ND-CPおよび17/2020/ND-CPでは、以下のような違反時の罰則が定められています。
ライセンスなしでの販売: 高額な罰金および営業停止。
未成年者への販売: 営業停止や追加の罰金。
広告規制の違反: 宣伝活動の差し止めおよび罰金。
アルコールの卸売・小売事業を運営する際は、これらの規制を厳格に遵守する必要があります。ライセンス取得および維持の要件を正確に理解し、適切な流通管理を行うことで、法令違反のリスクを最小限に抑えることが可能です。
実務上は外資系がアルコール販売系のライセンスを取得する場合、難易度が高いといわれ、多くの時間がかかるケースも見られます。ある程度時間の余裕をみたうえで、取得を試みることを推奨します。