日本人医師がベトナムで診療を行うための条件

日本人医師がベトナムで診療を行うためには様々なハードルがあります。本稿では日本人医師がベトナムで診療行為を行うための条件について全体像を概説します。

 

1.ベトナムで診療業務を行うための一般条件

①ベトナム管轄機関から発行された有効な診療許可証を有すること

日本の医師免許の承認手続き(診療法第29条)を行ったあと、ベトナムでの診療許可証の新規申請手続き(診療法の第30条)の順番に行います。

診療許可証は全国で有効で、5年更新制(診療法27条1項、2項)です。再訪する場合に再度の取得は不要ですが、勤務地が変わる場合には所在地保健局への通知が必要です。

②診療を登録したこと

診療法の第36条、第37条に定められた登録が必要です。

③診療法の第21条における診療用の言語条件を満たしていること。

④医療省の省長が定めた規定に従って、診療実行に健康状態を十分に有していること。

⑤診療法の第20条における診療実行の禁止に該当しないこと。

 

2.免除事由

診療法の第19条3項により、外国人が以下の事由に該当する場合、上述の条件の①および②が免除されます。

a. 一時的な入国で人道的診療を実行するとき

b. 診療実習を含む医療教育協力を実施するとき

c. 専門的な診療技術を移転するとき

免除事由は以上のように、極めて例外的な場合に限られます。免除事由に該当しない場合、ベトナムで診療を実行するため、外国人は①~⑤の全ての条件を満たさないといけません。

 

3.言語条件(③)について

(1)新法においては、原則として、診療の際に、流暢なベトナム語能力について試験を受け、合格承認を得る必要があります。

ただし、2031 年までは経過期間が設けられていて、その間は登録済みの医療通訳者を伴えば診療可とされています。

また、②の段階で日本語での診療を登録している場合であって、日本語を用いて日本語を使用できる患者にのみ診療を実施する場合には、医療通訳者も不要になります(外国語試験も不要)。

(2)②の段階で、英語での診療を含めて、登録している場合には、教育機関による流暢な英語能力の試験および合格承認が原則として必要になります。

 

4.①の承認手続きの提出書類と処理期間について

(1) 提出書類:必要書類は、政令の37条、14条に規定があります。また、申請書や経歴書の様式は同政令の付録に記載があります。

(2) 提出先:勤務地を管轄する省保健局(Sở Y tế)又は保健省(MOH)の窓口へ提出することになります。

(3)処理期間:法律上は日本の免許承認とベトナムの免許申請の手続きはそれぞれ30日以内とされていますが、実際にはより長期間かかるとされています。

 

5.免許取得した場合での可能な施術範囲

可能な手術は病院のライセンスの範囲内のみとなっており、特定技術リストに属する技術の移転の場合は病院が個別審査に通らないと施術できないことなどのハードルがあります。

 

6.まとめ

以上のように、日本人医師がベトナムで手術等の医療行為を行うためには様々なハードルが存在します。手続きが複雑なため、実際に手続きを行う際は専門家に相談することが推奨されます。

 

CastGlobal

【執筆者】CastGlobal

ベトナムの法律事務所

ベトナムで主に日系企業を支援する弁護士事務所です。日本人弁護士・ベトナム人弁護士が現地に常駐し、最新の現地情報に基づいて法務面からベトナムビジネスのサポートをしています。

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