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最低賃金の区分変更へ|128/2025/NĐ-CPの要点と実務影響(2025年7月1日〜)

2025 年 7 月 1 日発効の政令 128/2025/NĐ-CPにより、最低賃金の適用単位が県(郡)レベルから社会(コミューン)レベルへ細分化されます。
金額そのものは据え置きですが、“所在地の細かな境界”で賃金義務が変わるため、企業の人事・労務フローに見過ごせないインパクトがあります。以下要点をまとめます。

1. 地域別最低賃金テーブル(2024 年額を継続)

最低賃金の金額は変わらず、区分についてより細分化されることになりました。11,000もの地域に分かれるのでここで詳細は控えますが、下記原文等から会社における地域をご確認ください。

地域区分(Vùng) 月額最低賃金(VND) 時間額最低賃金(VND) 代表的エリアの例
I 4,960,000 23,800 ハノイ旧市街、HCMC 1区・Thu Duc市 ほか
II 4,410,000 22,100 ハイフォン・ダナン都市圏、ビンズオン省一部
III 3,860,000 19,300 ドンナイ省多数コミューン、ニャチャン市 など
IV 3,450,000 17,250 中部・北部山岳部、メコンデルタ農村部 等

附属書 I に約 11,000 の社会が具体的に列挙されています。
原文はこちらを参照ください。
LuatVietnamのインフォグラフィックス(表)にもまとまっています。

2. なぜ“社会(コミューン)レベル”での区分なのか

これまでの県レベルでの区分から、コミューンレベルでの区分に変更となりました。その理由は以下の点にあります。

  • 賃金格差の適正化
    同一県内でも産業団地と農村部では生活コストが大きく異なるため、コミューン単位で細分化。
  • 監督強化
    労働監査で“所在地 vs. 最低賃金”の照合を容易にし、違反摘発を迅速化。

3. 移行経過措置

  • 新区分で 旧額より低くなる場合は「引下げ禁止」。企業は従来額を維持し、次回改定を待つ。
  • 月途中入社・異動者の取り扱いは、異動日ベースで所在地社会を判定

4. 企業が取るべき 5 つのステップ

日系企業において対応が必要になりうる事項は以下のとおりです。区分は変わらない場合が多いと思いますが、最低賃金が上がる場合があるため確認が必要です。

優先度 アクション ポイント
★★★★★ 所在地マッピング 住所 → 社会コード → Vùng 区分を Excel で一覧化。
★★★★☆ 給与規程改訂 条引用を「政令128/2025」へ更新し、社会区分を反映。
★★★☆☆ 労働契約の見直し 新入社員は新区分で締結。既存社員の賃下げは不可。
★★☆☆☆ ペイロール設定 システムに社会コードを追加。引下げ禁止フラグを設定。
★☆☆☆☆ 監査対応ファイル整備 “社会区分確認シート+給与台帳”を監査時に提示できる形へ。

5. よくある質問(FAQ)

Q A
同じ工業団地内で工場と倉庫の住所が微妙に違う。賃金は統一可? 異なる「社会」に属する場合は 工場ごとに最低賃金を適用。統一する場合は高い方に合わせるのが安全。
派遣社員・請負労働者も新区分を適用? 派遣先事業所の所在地社会で判断。請負契約では最低賃金順守条項を再確認。
時給換算の従業員は? 時間額(上記表参照)を下回らないよう設定。夜間・残業は通常どおり加算。

6. まとめ

最低賃金の絶対額は変わらないものの、社会レベルへの細分化により「同県内でも賃金区分が異なる」事態が発生します。住所変更や新拠点開設時は、必ず 附属書 I の社会リストで区分( Vùng) を確認し、社内規程・システム・労働契約をアップデートしてください。

実務上は7月からの影響がわからない部分もありますので、関連のニュースにも要注目です。

CastGlobal

【執筆者】CastGlobal

ベトナムの法律事務所

ベトナムで主に日系企業を支援する弁護士事務所です。日本人弁護士・ベトナム人弁護士が現地に常駐し、最新の現地情報に基づいて法務面からベトナムビジネスのサポートをしています。

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