【アップデート】ベトナムの拡大生産者責任(EPR)制度について

ベトナムの拡大生産者責任(EPR)制度について、以前の記事の後に新政令(05/2025/ND-CP、以下「政令05号」という)が施行されたため、本稿では政令の改正点のうち重要部分のアップデート情報をお届けします。新政令は署名の日である2025年1月6日に即日施行されました。

 

リサイクル責任の遂行時期

改正前政令08/2022/NĐ-CP(以下「政令08号」という)の第77条第4項によれば、製造・輸入事業者は、以下に従って、自身で製造・輸入した製品・包装をリサイクルする責任を負うことになっていました。

  • 包装及びバッテリー・電池、潤滑油、チューブ・タイヤ等の製品:2024 年1 月 1 日から
  • 電気・電子製品:2025 年1 月 1 日から
  • 交通手段:2027年1 月 1 日から

新政令05号においては、スケジュール自体に変更はないものの、「潤滑油」については、「潤滑油・潤滑剤」に変更されました。また、交通手段に関する規定が2025年1月1日までに公布予定だったのが、2026年1月1日までに公布されることになりました。

 

リサイクル責任の対象となる包装・製品

政令08号の第77条第2項によれば、リサイクル責任の対象となる包装は、以下の製品・商品の商業包装(直接包装及び外装を含む)でした。

  • 食品の安全に関する法律に基づく食品
  • 化粧品の製造条件に関する法律に基づく化粧品
  • 医薬品に関する法律に基づく薬
  • 肥料、動物用飼料、動物用医薬品に関する法律に基づく肥料、動物用飼料、動物用医薬品
  • 家庭用・農業用・医療用の洗浄剤、製剤
  • セメント

新政令05号においては、食品からチューインガムが除かれたこと等以外は基本的に同様の枠組みが維持されております。

 

リサイクル責任の対象外

政令08号の第77条第3項によれば、以下の対象がリサイクルの責任を遂行しなくてよい対象でした。

  • a)環境保護法の第54条第1項に基づく製品・包装を、輸出若しくは一時輸入、再輸出のために製造・輸入するか、又は研究・学習・試験の目的で製造・輸入する事業者
  • b)前年度の販売及びサービスの提供による収益が300 億VND 未満の政令08の第77条第1項に規定される包装の製造事業者
  • c)前年度の輸入総額(税関価値による計算)が200 億VND 未満の政令08の第77条第1項に規定される包装の輸入事業者義務的なリサイクル率

新政令05号においては、これらの項目のうち、(b)(c)が以下のように置き換えられました。

  • b)第2項に掲げる製品の売上高が年間300億VND未満の製造者・輸入者。
  • c)当人が市場に出した包装を自ら回収し、再度包装して再販売する場合で、その回収・再包装率が、別表XXII欄4の義務的リサイクル率以上であるとき。

 

義務的なリサイクル率・規格

政令08号の第78条によれば、義務的なリサイクル率は 3 年ごとに上昇し、3年間の最終年の 9 月 30 日までに首相政府により調整され、発行されること、製造原料のための輸入スクラップのリサイクルは、製造・輸入事業者の義務的なリサイクル率に含まれないことが定められていました。また、製造・輸入事業者が義務的なリサイクル率を超えてリサイクルした場合、その比率について繰り越しできることとなっていました。

しかし、新政令05号においては、リサイクル率の調整は首相ではなく自然資源環境大臣がすることとなり、輸入スクラップだけでなく工業生産過程で生じる包装廃棄物、製造工程で排出された不良品もリサイクル率の対象外となりました。さらに、繰り越しについても超過「比率」ではなく超過「重量」が基準となりました。

 

リサイクル規格の詳細

政令08号の第78条第5項によれば、製品・包装の種類ごとの義務的な規格は、政令08号のAppendix XXII の第 5 欄に規定されていましたが、かかるAppendixの内容についても改定されました。

 

リサイクル責任の遂行形態

政令08号の第79条第2 項によれば、製造・輸入事業者が製品・包装のリサイクルの組織化という形式を選択した場合、製造・輸入事業者が次の方法でリサイクルを自分で決定することができていました。

  • リサイクルを自分自身で実施すること。
  • リサイクルを実施するためにリサイクルサービス事業者を雇うこと。(リサイクルサービス事業者のリストが天然資源環境省により公表される。)
  • リサイクルの実施を組織するために中間組織に委任すること。(中間組織のリストが天然資源環境省により公表される。)
  • 上記の方法を組み合わせること。

新政令05号においては、委任者の同意がある場合を除いて、再委任が禁止となることが明確化されました。また、委託を受けるリサイクル事業者は、当該製品・包装のリサイクル内容を含む環境許可を保有しなければならないことが明確化されました。

 

ベトナム環境保護基金への拠出

製造・輸入事業者は、ベトナム環境保護基金への財政的な寄付という形式を選択した場合、登録、リサイクル計画の実施及びリサイクル結果の報告を行う必要がなく、その場合には毎年3月31日までに申告し、4月20日までに納付する(2回分割も可能)こととなっていました。

しかし、新政令05号においては分割納付規定が削除されました。

ベトナムの拡大生産者責任(EPR)制度について(環境・リサイクル)

CastGlobal

【執筆者】CastGlobal

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