【2025年11月3日提出】電子商取引法案の概要と実務対応

2025年11月3日、電子商取引法の草案が国会に提出されました。本稿では、草案の内容と実務対応について分かりやすく解説します。

1. 電子商取引法案制定の経緯

  • 2025年11月3日、第15期国会第10会期の本会議で、政府(産業貿易省)が電子商取引法案の提出理由と骨子を説明しました。産業貿易省のポータルによれば、同法案は「消費者を保護し、デジタル経済の発展を促進し、公平で透明な場を創出する」ことを狙いとしています。
  • グエン・ホン・ジエン産業貿易大臣は、現行の枠組み(政令52号および政令85号)が、ライブコマース等のビジネスモデルや消費者保護、個人データ保護などの新課題に対応しきれていないと指摘し、法制化の緊急性を強調しました。
  • このような流れで、2025年10月30日付の提出書第1007号として、電子商取引法の最新の草案が提出されました。

2. 提出草案の概要

  • 草案は7章48条で構成されており、新たに規定された内容は以下の表のとおりになっています。なお、電子商取引ウェブサイト・アプリの通知・登録や電子契約認証サービスに関する規定も刷新されています(経過規定あり)。
  • なお、2026年7月1日施行予定であり、それまでに内容が変更となる可能性がございます。
項目
内容
該当条文
1
大型デジタルプラットフォームは、電子商取引活動管理プラットフォームを通じて削除結果をリアルタイムでオンライン報告しなければならない
第13条3項(リアルタイム報告)/*大型該当性の参照条:第15条7項・第16条2項
2
電子商取引プラットフォームは、違法情報を発見または通報を受領した場合は精査・削除しなければならない。特に仲介型のプラットフォーム(*)の場合は表示前に情報を自動審査しなければならない。
(共通の点検・削除)第13条4項/(自動審査(表示前フィルタ))第15条4項
3
プラットフォームに掲載された商品・サービス情報を、掲載時点から少なくとも1年間保存しなければならない
直接型プラットフォーム(*):第14条4項/仲介型プラットフォーム:第15条5項
4
契約の基本内容に関連する情報を、契約締結時から最低3年間保存しなければならない
直接型:第14条5項(a)(*設立5根にないの小規模企業等は1年の特例あり:同(b))/仲介型(:第15条6項(i)
5
ライブ配信販売に関する、プラットフォーム主宰者の責任を明確化(ライブ画像音声データの1年保存等)
第20条
6
プラットフォームの運営者はライブ配信者の身元を認証し、配信内容の規程を公開し、違法ライブ等のリアルタイム配信遮断措置を実施しなければならない
身元認証:第20条1項/規程の公開:第20条2項/リアルタイム停止・削除等:第20条3項
7
販売者は、ライブ配信者に対し、条件充足を証明する法的文書を提供しなければならない
第21条1項(a)(b)(条件業種・品質関係書類)
8
ライブ配信者は、効用・原産地・品質・価格・プロモーション・保証等について虚偽・誤認の情報を提供してはならない
第22条3項
9
広告内容の事前確認が必要な品目は、確認済み広告内容を正しく実施しなければならない
販売者側の前提:第21条2項/配信者の順守義務:第22条4項
10
アフィリエイトマーケティングサービス提供組織は、アフィリエイターを識別し、活動の追跡・監視メカニズムを有し、違法な商品・サービスへのリンクを遮断・削除しなければならない
識別:第23条1項/追跡・監視:第23条2項/リンク不生成・遮断・削除:第23条3~4項
11
アフィリエイターは、効用・原産地・品質・価格・プロモーション・保証等について虚偽・誤認情報を提供してはならない
第24条2項
*直接型プラットフォーム:「組織・個人が設け、商品売買またはサービス提供の活動を直接行う電子商取引プラットフォーム」
*仲介型プラットフォーム:「多数の当事者が当該プラットフォーム上でアカウント登録を行い、当該プラットフォーム上で商品売買またはサービス提供の紹介・販売を行うことを可能にする電子商取引プラットフォームであって、店舗開設、オンライン注文、ライブ配信による販売、アフィリエイト・マーケティングの提供のいずれかの機能を有するもの」をいいます。

3. 広告法改正 75/2025/QH15 との関係

  • 広告法と電子商取引法
    広告法改正(75/2025/QH15)は、オンラインを含む広告全般の内容規律・表示義務・広告伝達者の責務等を横断的に定め、2026年1月1日施行です。
    電子商取引法案は、ECプラットフォーム/販売者/配信者/アフィリエイター等の運用ガバナンスを定める場(プラットフォーム)側の規律が中心です、2026年7月1日施行予定です。

  • 重なり領域
    ライブ配信で広告規制が及ぶ品目は、事前確認済み広告内容どおりの配信が義務(法案第21条2項・第22条4項)となっています。これは広告法側の要件をライブ配信の運用に貫徹させる設計です。
    また、プラットフォームには違法広告の迅速撤去の責務が課されており、こちらは広告法改正案と重なっています。
  • 両者の関係
    両者の内容は重複する部分もありますが、基本的な構造としては内容規律(何を言えるか)=広告法、運用規律(どう運営するか)=EC法案となっています。両法の二層適用を前提に社内基準を再設計すべきです。

4. 実務対応チェックリスト

ECプラットフォーム運営者
  • プラットフォーム類型の確定(直接型/仲介型)
  • データ保存体制を整えます。
  • 違法内容の自動審査・削除を実装します。
  • 苦情処理体制を整備します。
ライブコマース運営(プラットフォーム・出店者・配信者)
  • プラットフォーム:配信者の身元確認をし、ライブ配信規程を公表・運用します(プラットフォーム)。リアルタイム停止/削除の運用訓練や、危険商材の警告表示も必要です。
  • 販売者:配信者への適法性資料提供を徹底します。
  • 配信者:身元確認資料を提出し、虚偽・誤認表示の禁止等の広告規制に従います。
アフィリエイト
  • アフィリエイトマーケティングサービス提供組織はアフィリエイターの身元確認、活動監視の体制を整えます。アフィリエイター側は身元情報を帝京し、広告規制を遵守します。

CastGlobal

【執筆者】CastGlobal

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