【2026年1月1日施行】VAT法改正の概要と企業への影響
- 2026.01.08
- コラム
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2025年12月11日、ベトナム国会(第15期第10会期)において「付加価値税法の一部改正法(法律番号149/2025/QH15)」が可決されました。この改正法は2026年1月1日施行と定められており、付加価値税(VAT)制度に関する重要な変更をもたらします。改正内容は農業分野を中心にVATの課税範囲や税率、還付要件等の見直しを含み、幅広い業種・企業に影響を与えるものです。以下では、本改正の背景と主な内容、実務上の影響について、法令や報道に基づき専門的に解説します。
1.法改正の背景
2024年11月に成立した新しい付加価値税法(48/2024/QH15)は、運用開始後に農業製品や飼料分野、税還付手続における問題点が各業界団体や企業から指摘されました。そして、制度上の障害を早急に解消する必要性から、本改正法は異例の速さで緊急立法されました。法案審議においては、短期間での法改正に慎重意見もありましたが、企業の要望を踏まえ早期に法律を改正することで障害除去を図る方針が採られました。
2.改正の主な内容
今回の付加価値税法改正法(2025年法149号)では、VAT制度の三つの主要分野について見直しが行われています。それぞれVAT還付要件の緩和、農業関連の非課税・税率調整、小規模事業者に対する課税売上高基準の引上げです。以下に主な改正ポイントを整理します。
- VAT還付条件の緩和
仕入税額の還付要件から「売り手による納税済みであること」という条件が撤廃されました。従来は購入者がVAT還付を受けるためには、取引の売り手が当該取引分のVATを申告・納税済みであることが条件とされており、売り手側の不正や未納によって買い手側の還付申請が滞るリスクがありました。改正法によりこの買い手側には責任外の条件が削除され、売り手と買い手の責任範囲を明確に分離する形となります。これにより税還付手続の迅速化と企業の資金繰り改善が期待されます。
- 未加工農産品の流通取引における非課税措置の復活
企業間で取引される未加工の農林水産品について、VATの課税・申告義務を免除する規定が復活しました。具体的には、生産農家や漁師等から直接仕入れた未加工(または通常の一次加工のみ)の農作物・水産物等を、企業・協同組合などが他の企業・協同組合へ販売する場合、出荷段階でのVATを申告・納税する必要がなくなるものです。この規定は2014年から施行されていた優遇措置の復活であり、2024年新法で一旦削除されていたものが今回の改正で元に戻りました。
- 小規模事業者に対する課税売上高基準の引上げ
VATの免税点となる年間売上高基準が大幅に引き上げられました。改正法では「年間売上高5億ドン以下の個人事業者・世帯業者の提供する財・サービスはVATの課税対象としない」と規定されています。従来、ベトナムのVAT制度における小規模事業者の課税最低売上高は年間2億ドンであり、今回引き上げが決定したものです。これにより零細な個人商店や家内業者など多数の事業者がVAT申告・納税義務から解放される見通しです。
上記を含む、改正ポイントのまとめは以下の通りです。
| 改正項目 | 改正前の規定(48/2024/QH15, それを改正する90/2025/QH15) | 改正後の規定(149/2025/QH15) |
| VAT還付要件 | 購入者がVAT還付を受けるには、売り手が当該取引のVATを申告・納税済みであることが必要(旧法第15条第9項(c)) | 売り手の納税状況にかかわらず購入者は還付申請可能。新法第1条第3項により左記条件(旧法第15条第9項(c))が削除 |
| 未加工農産品の企業間取引 | 生産者以外の事業者が販売する未加工農産品は課税対象(旧法第5条第1項) | 企業・協同組合間での未加工農産品販売はVATの申告・納税不要(非課税扱い)。仕入VATは引き続き控除可能(新法第1条第1項(a)にて旧法第5条第1項を修正) |
| 副産物・廃棄物の税率 | 旧法では規定が明確でなく、未加工(または一次加工のみ)の農林畜水産物が飼料・薬用原料として使われる場合の扱いと、廃品等を回収して再利用・再生して売る場合の税率に分けて記載されていた(旧法第9条第5項) | 各生産過程において回収される廃品、副産物、スクラップには、当該廃品、副産物、スクラップの品目の税率水準を適用する、と一本化(新法第1条第2項にて旧法第9条第5項を修正) |
| 小規模事業者の売上免税基準 | 年間2億VND以下は免税(旧法第5条第25項) | 年間5億ドン以下は免税に拡大(旧法第5条第25項が改正され、免税基準が引上げ) ※2026年より適用 |
| 定額課税方式 | 会計・請求書・証憑制度を十分に行わない世帯・個人が推計(定額)方式でVATを納める旨の規定(旧法第12条第3項) | 定額方式の削除(新法第1条第3項にて旧法第12条第3項を削除) |
3.施行時期と関連法規
本改正法は2026年1月1日から施行され、同日以降発生する取引に適用されます。施行日までに関連政省令・通達が公布される見通しですので、企業担当者は最新の省令・通達にも留意して実務対応する必要があります。また、税務当局の監督手法にも変更が加わる可能性があります。関連する法令動向も含め、包括的にフォローすることが望ましいでしょう。
4.まとめ
2025年付加価値税法改正(149/2025/QH15)は、VAT制度の重要な論点について迅速に対応した改正であり、企業にとって好影響をもたらす内容となっています。特に、VAT還付の円滑化や小規模事業者の事務負担緩和といった措置は、ポ有益な環境整備といえます。一方で、施行初期には具体的運用に関する疑問点も生じ得るため、政府から発出される細則やガイダンスを注視し、適切に社内ルールやシステムをアップデートすることが必要です。現地の専門家に相談しながら、確実なコンプライアンス体制を構築することが肝要です。