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2025年以降のベトナム電子たばこ規制の最新動向 ―使用者への罰金とたばこ法改正案(2026年2月時点)

本コラムは、2024年12月3日付「2025年からのベトナム電子たばこ規制の概要」の続編として、2026年2月時点での最新状況をアップデートするものです。

2024年11月の国会決議第173/2024/QH15号により、ベトナムでは2025年から電子たばこ(ベイプを含む)および加熱式たばこについて、製造・販売・輸入・保管・輸送・使用を全面的に禁止する方針が示されました。その後、投資法、行政罰政令、そして「たばこ被害防止法」(以下「たばこ法」)の改正案が相次いで公表され、規制は「グレーゾーン」から「全面禁止・厳格取締り」へと明確にシフトしています。

以下では、前回コラムからの主なアップデートとして、

  • ① 電子たばこ使用者そのものを直接処罰する政令第371/2025/ND-CP号の内容
  • ② 電子たばこ・加熱式たばこ等を法律レベルで組み込むたばこ法改正案の骨子

を中心に整理します。

1. 現行枠組みのおさらい:2025年からの全面禁止

まず、ベトナムにおける電子たばこ規制の「土台」となる枠組みを簡単におさらいします。

(1)国会決議第173/2024/QH15号:全面禁止の政治判断
  • 2024年11月30日に採択された国会決議第173/2024/QH15号において、
    「電子たばこ・加熱式たばこ・その他健康に有害なガス・成分」について、
    2025年から製造・取引(販売)・輸入・保管・輸送・使用を全面禁止する方針が明記されました。
  • これにより、電子たばこ等はベトナム法上、いわゆる「禁止商品(hàng cấm)」として位置付けられています。
(2)投資法改正:電子たばこ関連ビジネスは「禁止事業」へ
  • 投資法の改正により、電子たばこ・加熱式たばこに関する投資・事業活動は、投資禁止分野として明示されました。
  • これにより、電子たばこ関連ビジネスは、ライセンス実務上も「そもそも登録・許可できない分野」という扱いになります。
(3)禁止商品としての取扱い:政令第98/2020/ND-CP号+刑法
  • 電子たばこ等は、政令第98/2020/ND-CP号の規定する「国家が生産・経営・使用を禁止する商品」に該当すると解されており、
  • その製造・販売・輸入・輸送・保管については、
  • 行政罰:高額の罰金、商品・違法利得の没収など(政令第98/2020/ND-CP号)
  • 刑事罰:一定額以上の取引・組織的違反等の場合、刑法第190条「禁止商品の製造・取引罪」により懲役刑・多額の罰金

といった二重の法的リスクが存在します。

この段階で、メーカー・輸入業者・卸売・小売・物流などの事業者側が電子たばこを扱うことは、既に行政・刑事両面で極めてハイリスクな行為になっている点が重要です。

 

2. 新ポイント①:政令第371/2025/ND-CP号による「使用者」への罰金

前回コラムでは、電子たばこの「使用」については、保健省が政令第117/2020/ND-CP号(医療分野の行政違反処理)改正案の中で、使用者に対する罰金(案)を検討している段階であるとご紹介しました。

その後、政府は2025年12月31日付で政令第371/2025/ND-CP号を公布し、同日から施行しました。本政令は、電子たばこ・加熱式たばこに関する行政罰規定を本格的に導入するものであり、特に「使用者本人」を直接処罰する点が従前と大きく異なります。

(1)電子たばこ・加熱式たばこの「使用」に対する罰則
  • 電子たばこ・加熱式たばこを使用した個人は、
    3,000,000〜5,000,000VND(約114〜190米ドル)の罰金の対象となります。
  • 併せて、使用に供した電子たばこ機器・カートリッジ等は没収・破棄されます。
(2)使用を「容認」した施設管理者への罰則
  • 自己の管理する場所(飲食店、ホテル、カラオケ、オフィス、商業施設等)で、電子たばこ・加熱式たばこの使用を許容・黙認した場合
  • 個人管理者:5,000,000〜10,000,000VNDの罰金
  • 組織(法人等):上記の2倍の罰金

という制裁が規定されています。

これにより、従来のように「禁止商品をビジネスとして扱うとアウト」という事業者側中心の枠組みに加えて、「ベトナム国内で電子たばこを吸った人」も行政罰の対象になることが明確化されました。在留邦人や出張者・旅行者についても、「日本から少量を持ち込んで自分だけで吸うなら問題ない」という感覚は、現行制度の下では明確にリスクが高いと言わざるを得ません。

 

3. 新ポイント②:たばこ被害防止法の改正案(ドラフト)の骨子

2026年1月、保健省は「たばこ被害防止法」(2012年法)改正案について、関係省庁・専門家からの意見聴取(パブリック・コンサルテーション)を開始しました。報道ベースで判明している主なポイントは以下のとおりです。

(1)電子たばこ・加熱式たばこ等の定義を法文に明記
  • 電子たばこ
  • 加熱式たばこ
  • 電子機器(電子たばこ・加熱式たばこ用デバイス)
  • 加熱式たばこ用の特別加工たばこ
  • その他の新型たばこ製品

などの概念を、たばこ法の定義条文に新たに追加する方向です。従来のたばこ法は紙巻きたばこ中心の設計であり、電子たばこ・加熱式たばこに関する定義や禁止行為が明確ではありませんでしたが、これを実態に合わせてアップデートする狙いがあります。

(2)禁止行為の拡充:所持・輸送・使用・部品等の製造・売買も対象

改正案は、既に国会決議第173/2024/QH15号および投資法、政令第371/2025/ND-CP号等で示された方針を踏まえ、以下の行為を法律レベルの禁止行為として明記する方向です。

  • 電子たばこ・加熱式たばこおよびその他新型たばこ製品の所持(保管)・輸送・使用の禁止
  • これら製品の製造用部品・機器の製造・売買の禁止

これにより、「完成品」だけでなく、組み立て用デバイスやリキッド、部品等も含めて規制対象であることが、法律上明確化される見込みです。

(3)たばこ製品の広告・販売促進・店頭展示の全面禁止

改正案では、紙巻きたばこを含む全てのたばこ製品について、

  • 広告・スポンサー・販売促進・マーケティング活動の全面禁止
  • 小売店・コンビニ・スーパー等でのたばこ製品・パッケージ・ブランドの店頭での陳列禁止(顧客から見えない形での保管)

などの措置が盛り込まれています。特にコンビニや免税店等にとっては、レジ周りやショーケースの見せ方を根本的に見直す必要が出る可能性があります。

(4)全面禁煙区域の大幅拡大
  • 医療機関・教育機関・子ども向け施設・高火災リスク区域に加え、
  • 法律で特別に認められる一部のケースを除き、全ての屋内施設・公共交通機関を全面禁煙とする方向が示されています。

併せて、施設管理者・組織の責任者に対し、禁煙ルールの掲示・周知・違反者への指導等を行う法的責任をより明確に課す方向性も示されています。

(5)パッケージ警告表示の拡大(85%)と税制との連携
  • たばこパッケージの主要面に占める健康警告表示の面積を、現行の50%から前面・背面それぞれ85%以上に拡大する案が提示されています。
  • 加えて、2027年1月1日からは特別消費税法の改正により、たばこに対する絶対額課税(1箱あたりの固定額)+従価税のミックス課税が導入される予定であり、価格面からも喫煙抑制を図る方向です。
(6)政策決定過程の独立性と禁煙支援の拡充
  • 世界保健機関(WHO)の勧告に沿い、「たばこ対策政策を商業的利益から保護する」趣旨の規定を法文に盛り込む案が検討されています。
  • 禁煙外来や相談窓口などの禁煙支援サービスの対象に、電子たばこ・加熱式たばこ使用者も明示的に含めることが提案されています。

報道によれば、この改正たばこ法は、2026年の国会で審議され、2027年1月1日施行を念頭に置いた長期的な枠組みと位置付けられています。

4. これまでとの違いと今後の見通し

電子たばこ規制の流れを簡潔にまとめると、以下のようになります。

  • 〜2024年:たばこ法は紙巻きたばこ中心で、電子たばこは定義や禁止行為が不明確。
    → 他の法令(禁止商品規制等)を通じて部分的に対応。
  • 2024年11月:国会決議第173/2024/QH15号により、2025年からの製造・販売・輸入・保管・輸送・使用の全面禁止を政治的に宣言。
  • 2024〜2025年:投資法改正により電子たばこ関連事業を投資禁止分野に分類。行政罰政令の改正作業が進行。
  • 2025年12月31日:政令第371/2025/ND-CP号が公布・施行され、
    電子たばこ・加熱式たばこの使用者に対する3,000,000〜5,000,000VNDの罰金+機器没収
    使用を容認した施設管理者への5,000,000〜10,000,000VND(組織は2倍)の罰金が明文化。
  • 2026年1月以降:たばこ法改正案により、電子たばこ等の定義、所持・輸送・使用の禁止、広告・展示禁止、禁煙区域拡大、パッケージ警告85%等を法律本文に取り込むプロセスが進行中。

これらを総合すると、ベトナムは電子たばこ・加熱式たばこについて、

  • 国会決議(基本方針)
  • 投資法(投資禁止分野)
  • 行政罰政令(政令第98号・第371号等)
  • たばこ法本体(改正案)

という四層構造で、「全面禁止・ゼロトレランス」のスタンスを固めつつあると評価できます。

5. 日本企業・在越邦人の実務対応ポイント

(1)電子たばこ関連ビジネスへの関与は原則として避けるべき
  • 電子たばこ本体、リキッド、加熱式たばこ用デバイスや部品等を扱う事業は、投資法上禁止事業であり、
  • 同時に「禁止商品」の製造・販売・輸入・保管・輸送として、行政罰および刑事罰の対象となり得ます。
  • 今後、たばこ法改正により部品・設備の製造・売買も法律レベルで禁止行為として位置付けられる見込みであり、「デバイスだけ」「リキッドだけ」といったモデルも含め、実務上は撤退・中止が前提と考えるべきです。
(2)店舗・オフィス等での「使用容認」にも注意
  • 飲食店、ホテル、カラオケ、コワーキングスペース、オフィス等の管理者が電子たばこ使用を黙認した場合、政令第371/2025/ND-CP号に基づき罰金の対象となります。
  • 就業規則、ハウスルール、利用規約、館内掲示等の中で、紙巻きたばこだけでなく電子たばこ・加熱式たばこも含めて全面禁煙とする旨を明記し、従業員・利用者に周知することが重要です。
  • たばこ法改正により、店頭でのたばこ製品の陳列禁止が導入されると、小売店舗のレイアウトにも影響が出る可能性があります。
(3)在越邦人・出張者・旅行者への周知
  • 2025年12月31日以降、ベトナム国内で電子たばこ・加熱式たばこを使用した場合、個人として3,000,000〜5,000,000VNDの罰金+機器没収のリスクがあります。
  • また、税関実務上も電子たばこは輸入禁止品として扱われており、入国時に発見された場合には没収等のリスクがあります。
  • 実務的には、「ベトナムには電子たばこを持ち込まない・吸わない」ことを前提としたコンプライアンスが、安全なラインと考えられます。

6. まとめ

ベトナムにおける電子たばこ・加熱式たばこ規制は、

  • 国会決議による全面禁止方針の明確化
  • 投資法上の禁止事業化
  • 政令第371/2025/ND-CP号による使用者・施設管理者への罰金の導入
  • たばこ法改正案による定義・禁止行為・広告規制・禁煙区域・警告表示等の恒久ルール化

という形で、段階的に強化されてきました。今後、国会審議の中で細部の文言が修正される可能性はあるものの、全体としては「規制が緩む」よりも「さらに厳格になる」方向性が高いと考えられます。

日本企業としては、電子たばこ関連ビジネスへの関与を避けるとともに、自社オフィス・店舗における禁煙ルールの整備・運用、在越日本人社員や出張者・旅行者への周知を早めに徹底することが重要です。

本コラムは2026年2月時点の情報に基づいており、今後新たな法令・政令が公布された場合には、随時アップデートしていく予定です。

 

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CastGlobal

【執筆者】CastGlobal

ベトナムの法律事務所

ベトナムで主に日系企業を支援する弁護士事務所です。日本人弁護士・ベトナム人弁護士が現地に常駐し、最新の現地情報に基づいて法務面からベトナムビジネスのサポートをしています。

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