【2026年度最新】ベトナム産休手続きガイド

ベトナムにおいて、女性社員から出産の報告を受けた際、会社担当者は産休取得に必要な書類の確認から社会保険機関への申請手続きまで、一連の流れを正確に把握しておく必要があります。本コラムでは、2025年7月施行の2024年社会保険法(41/2024/QH15)や、2026年7月改正予定の人口法の内容に基づき、産休取得の前提条件・期間・必要書類・手続きの流れ・支給額の目安を整理して解説します。

1.産休給付を受けるための前提条件

産休給付を受けるには、原則として出産前の12か月間に6か月以上の社会保険加入が必要です(社会保険法41/2024/QH15 第50条第2項)。
なお、以下の例外があります。

  • 12か月以上加入済みで、医師の指示により養胎のため休職した場合:直近12か月のうち3か月以上の加入で可(第50条第3項)
  • 不妊治療のために休職した場合:出産前24か月間に6か月以上の加入で可(第50条第5項)

まずは対象の社員様がこれらの条件を満たしているかをご確認ください。

2.産休期間

女性社員が出産する場合、産休期間は6か月間です(社会保険法第53条第1項、労働法第139条第1項)。このうち、出産前に最大2か月を前倒しで取得できます。双子以上の場合は、2人目から1人につき1か月が追加されます。
※2026年7月から、第2子を出産する場合、7か月間取得できる形で人口法改正により改正される予定です。
なお、女性労働者は、出産前に、最大10日(2日×5回)、出産前検診のための休暇(「検診休暇」といいます)を取ることができます(社会保険法第51条)。
また、①労働者と会社の合意、②医師からの診断書取得、を条件として、最短4か月で職場復帰することができます(労働法第157条第4項。以下、この職場復帰を「早期復帰」といいます)。

3.必要書類

(1)出産した女性社員の場合(社会保険法第61条第1項)

基本書類として、子の出生証明書の写しが必要です(実務上は公証コピー「Giấy Chứng Sinh」がもとめられることが多いです)。
加えて、以下に該当する場合は追加書類が必要です。

  • 養胎のため休職した場合:医療機関の休職指示書(第61条第1項d号)
  • 不妊治療を受けた場合:治療過程を証明する書類(第61条第1項a号)
  • 出産後に母親が死亡した場合:死亡証明書の写し(第61条第1項b号)
  • 出産後に母親が健康状態でない場合:医療機関の文書の写し(第61条第1項c号)
  • 出産後に胎児が死亡した場合:死亡証明書の写し等(第61条第2項)
(2)配偶者(男性社員)が妻の出産に伴い休暇を取得する場合(社会保険法第61条第5項)

休暇日数は原則5営業日になります。必要書類は以下のとおりです。

  • 子の出生証明書等の写し
  • 帝王切開または32週未満の出産の場合:その旨を記載した医療機関の確認書
(3)産後の回復休暇(以下「リハビリ休暇」といいます)を取得する場合

別途、会社と労働組合(ある場合)の決定に基づきます(社会保険法第60条第2項)。5~10日が上限です。

4.手続きの流れ

社会保険法2024 第62条に基づき、以下のとおりです。
産休中、会社は労働者に対して給与を支給する必要はありません(労働法第186条第2項)が、労働者が社会保険料の給付を受ける手続きについては、会社が労働者に代わってその申請手続きを行う必要があります。

① 社員 → 会社へ書類提出
産休期間終了後45日以内に、上記の書類を会社に提出します(第62条第1項)。
※実務上は、出産後に出生証明書等が取得でき次第、速やかに提出いただくのが望ましいです。

② 会社 → 社会保険機関へ提出
会社は、書類の受領から7営業日以内に、産休取得者のリストを作成し、書類とあわせて社会保険機関に提出します(第62条第1項)。
※通常、社会保険ソフトを通じて電子申請を行ったあと、文書での提出も求められます。

③ 社会保険機関による審査・支給
社会保険機関は、完全な書類受領から7営業日以内に審査・支給を行います(第62条第3項)。不支給の場合は、書面で理由が通知されます。
※修正依頼が数回入ることも多いため、実際には10営業日以上かかることがほとんどです。仮に会社が社会保険料の納付を怠たることにより労働者が社会保険給付を受けられなかった場合、会社は従業員に対して本来給付を受けることができたはずの金銭を給付する義務を負います。

5.支給額の目安

主な支給内容は以下のとおりです。

  • 産休手当(第59条第1項):直近6か月の社会保険料算定対象給与の平均 × 100%(※)× 6か月(双子以上でない場合)
  • 出産一時金(第58条第4項):参照額× 2/子
  • 検診休暇手当(第58条第2項):給付月額に相当する金額を24で割った金額
  • リハビリ休暇手当(第60条第3項):参照額の30% × 日数(最大5~10日)

産休期間中は社会保険の加入期間としてカウントされ、労働者・使用者ともに社会保険料の納付は不要です(第53条第8項)。

(※)なお、ここでいう「給与」は実際の給与額ではなく、社会保険料の算定基礎となる給与なので、上限があります。現行の上限は参照額(mức tham chiếu)の20倍です(2024年社会保険法第31条)。参照額は現時点では基礎給与が廃止されるまでは基礎給与と同義となっており、2024年7月1日以降の基礎給与は月額234万VNDなので、社会保険料の算定対象給与の上限は月額4,680万VND(約28万円)となります。
つまり、仮に社員の実際の給与が月額6,000万VNDであっても、産休手当の計算基礎は4,680万VNDが上限になります。実際の給与との差額分は社会保険からの補填対象にはなりません。

 

6.おわりに

産休制度は、会社の手続き不備によって労働者が本来受け取るべき給付を受けられなかった場合、会社が当該金銭の支払義務を負うリスクもあるため、書類の受領と社会保険機関への提出は期限管理を徹底する必要があります。また、2026年7月からの改正予定(第2子出産時の産休7か月化)にも留意が必要です。

CastGlobal

【執筆者】CastGlobal

ベトナムの法律事務所

ベトナムで主に日系企業を支援する弁護士事務所です。日本人弁護士・ベトナム人弁護士が現地に常駐し、最新の現地情報に基づいて法務面からベトナムビジネスのサポートをしています。

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