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ベトナムにおける仲裁合意と訴訟について

  • 2020.10.06
  • 紛争解決
  • 訴訟・仲裁

1 仲裁合意 契約書の中に「本契約に起因する、または本契約に関連する一切の紛争について、両当事者の協議により解決できない場合には、これらの紛争は、ベトナム国際仲裁センター(VLAC)にてその仲裁規則に従って解決されるものとする。」という条項(以下、このような条項に関する合意を「仲裁合意」といいます)を目にする機会も多いかと思います。 ではこのような合意がある場合に、仲裁ではなく裁判を行うことができるのでしょうか。一般的に、仲裁は裁判よりも高額になるため、仲裁合意をしてみたものの裁判で済ませたいと考える場合があるかもしれません (仲裁、裁判、それぞれのメリット・デメリットについては、こちらの記事をご参照下さい)。 また、仲裁をやってみたものの、仲裁判断に納得ができず...

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仲裁合意がある場合に訴訟をすることはできますか?
仲裁合意が契約上定められているとき、ベトナムで訴訟することはできるのでしょうか。 たとえば仲裁を決めていたが、訴訟のほうが時間的/コスト的に良いと考えるケースはあります。 ベトナムでは仲裁について、商事仲裁法(No. 54/2010/QH12、添付英語版)が規律しています。 同法の6条は、 Article 6. Courts’ refusal to accept cases in which there is an arbitration agreement In case the disputing parties have reached an arbitration agreement but one party initiates a lawsuit at a court, the court shall refuse to accept the case, unless the arbitration agreement is invalid or unrealizable. と規定しており、裁判所は仲裁合意の存在を理由として、訴訟の受理を拒絶することができます。 そして、仲裁合意の不存在が訴訟要件であることは日本と同様ですが、これは、当事者の主張を必要とする抗弁事項ではありません。 ※参照 日本仲裁法14条 第十四条 仲裁合意の対象となる民事上の紛争について訴えが提起されたときは、受訴裁判所は、被告の申立てにより、訴えを却下しなければならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。 ベトナムでは、仲裁合意の存在は、裁判所が職権で探知しなければならない訴訟要件とされており、仲裁合意の存在を看過してなされた判決は原則無効とされます。 そのため、仲裁合意がある場合、ベトナムで訴訟することはできないということになります。
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裁判と仲裁はどのように選択すればよいですか。
  紛争解決は通常は仲裁か裁判のいずれかによることになります。 仲裁の場合、仲裁機関は複数ありますが、一般的にはVIAC(ベトナム国際仲裁センター)による仲裁が選ばれています。   外国企業が関係する場合、外国の仲裁機関(シンガポール等)を選択することもあります。 仲裁の場合、あらかじめ契約書において法定の事項(仲裁合意)を合意しておく必要あるため注意が必要です。 では、契約時、どのような観点で裁判と仲裁とを選べば良いのでしょう。   ベトナム現地法人同士(日系含む)の紛争の場合、ベトナム国外では紛争解決できないと考えられています。 したがって、原則としてはベトナム国内での裁判か仲裁となります。   1-1)裁判 裁判は原則として二審制です(日本は最高裁までの三審制)。 ベトナムでは裁判官の非中立性なども論じられるところなので、判決の公平性には疑問が持たれる場合も少なくないようです。   1-2)仲裁 仲裁の場合、当事者がひとりずつ仲裁委員を選び、その二人が委員長を選び、3名で仲裁されるのが通常です。 また、仲裁の場合、二審制ではなく1つの審級での解決となるため、結論までが早い場合が多いです。   2-1)裁判 この場合、第三国での裁判も選択可能ですが、日本とベトナムの場合、判決の相互執行条約を締結指定ないため注意が必要です。 すなわち、ベトナムの企業にベトナム国内で日本の判決の内容を強制執行しようとしても、その手段がないということです。 逆の場合(日本企業に日本国内でベトナムの判決を強制執行する場合)も同様です。 したがって、両者が強制執行可能にするためには、被告となる企業の所在地で裁判をする管轄合意をする必要があります。   2-2)仲裁 仲裁の場合、ベトナムと日本はいずれもニューヨーク条約に加盟しているため、いずれの国で仲裁したとしてもその結果を他方の国で強制執行することが可能です。 したがって、一般的には仲裁をすることを勧めています。 これは短期に比較的公平な解決をできる可能性があることも理由の一つです。 また、日本やベトナムではない第三国(シンガポール等)での仲裁も可能となります。 この場合、ニューヨーク条約加盟国内で仲裁すべきですので、この点はご留意ください (ベトナムの留保事項との関係ですが、上記点だけ覚えていれば問題ありません。)。