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仲裁合意がある場合に訴訟をすることはできますか?

  • 2019.10.21
  • 紛争解決
  • 訴訟・仲裁

仲裁合意が契約上定められているとき、ベトナムで訴訟することはできるのでしょうか。 たとえば仲裁を決めていたが、訴訟のほうが時間的/コスト的に良いと考えるケースはあります。 ベトナムでは仲裁について、商事仲裁法(No. 54/2010/QH12、添付英語版)が規律しています。 同法の6条は、 Article 6. Courts' refusal to accept cases in which there is an arbitration agreement In case the disputing parties have reached an arbitration agreement but one party initiates a lawsuit at ...

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ベトナムにおける仲裁合意と訴訟について
契約書の中に「本契約に起因する、または本契約に関連する一切の紛争について、両当事者の協議により解決できない場合には、これらの紛争は、ベトナム国際仲裁センター(VLAC)にてその仲裁規則に従って解決されるものとする。」という条項(以下、このような条項に関する合意を「仲裁合意」といいます)を目にする機会も多いかと思います。 ではこのような合意がある場合に、仲裁ではなく裁判を行うことができるのでしょうか。一般的に、仲裁は裁判よりも高額になるため、仲裁合意をしてみたものの裁判で済ませたいと考える場合があるかもしれません (仲裁、裁判、それぞれのメリット・デメリットについては、こちらの記事をご参照下さい)。 また、仲裁をやってみたものの、仲裁判断に納得ができず訴訟を起こして裁判所で改め争いたいと考える場合があるかもしれません。このような場合はどうでしょうか。以下、それぞれ検討します。 1)ベトナムでは仲裁について、2010年6月17日付、商事仲裁法No. 54/2010/QH12号(以下「仲裁法」といいます)が規律を定めています。仲裁法の第6条によれば、仲裁合意が無効でない限り、裁判所は事件の受理を拒絶することができると定められています。 したがって、契約書に仲裁合意がある場合、その契約に関わる紛争解決は原則として仲裁によらなければならず、裁判所に訴訟を提起することができません。 2)では、仲裁合意の存在を無視して、訴訟を提起した場合はどうでしょうか。 日本の仲裁法14条は、「仲裁合意の対象となる民事上の紛争について訴えが提起されたときは、受訴裁判所は、被告の申立てにより、訴えを却下しなければならない。…」と定められているため、仲裁合意が存在したとしても、訴訟提起後に当事者のいずれかから、訴訟を行うことに異議が申し立てられない限り、当事者は訴訟を遂行することができます(このように、当事者の申立があることによって訴訟が却下される訴訟要件を講学上、消極的訴訟要件といいます)。 ※訴訟要件とは、裁判所が判決を行ううえで満たさなければならない前提条件のことをいいます。 一方、ベトナムの仲裁法は、仲裁合意について消極的訴訟要件と解することのできる条項が存在しないため、仲裁合意は裁判所が職権で探知しなければ訴訟要件と解すべきです。そのため、仮に仲裁合意の存在が確認されずに判決までなされてしまったとしても、訴訟要件を欠く判決として、当該判決は無効となります。 したがって、仲裁合意を無視して裁判所に訴訟を提起すべきではありません。 1)仲裁法の第69条1項によれば、当事者が調査委判断を受け取ってから30日以内に、同法第68条2項に該当するいずれかの事由があることについて確証がある場合には、当該事由を示す証拠とともに、仲裁判断の取消を求めることができるとされています。 2)そして、仲裁法の第68条2項は仲裁の取消事由として、 ・仲裁合意がない、又は仲裁合意が無効な場合 ・仲裁委員会の構成や、仲裁手続が当事者の合意や法令に違反する場合 ・紛争が仲裁の管轄を超える場合 ・仲裁判断が偽造の証拠に基づく場合 ・仲裁委員が賄賂を収受したことにより、仲裁判断の客観性や公平性に問題がある場合 ・仲裁判断がベトナム法の基本原則に反する場合 3)以上から明らかなように、単純に仲裁判断に不服があるに過ぎない場合は、裁判所に訴訟を提起することができません。仲裁結果の不服を裁判所に申し立てることができるのは、仲裁合意の前提や手続き的瑕疵、その他法令違反がある場合等に限られます。 紛争解決について仲裁を合意した場合、原則として裁判所による紛争解決は選択できないことになります。費用面を除けば、訴訟よりも仲裁の方が利点が多いと思いますが、上記の点を加味して、契約書中の紛争解決条項を設定する必要があります。
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裁判と仲裁はどのように選択すればよいですか。
  紛争解決は通常は仲裁か裁判のいずれかによることになります。 仲裁の場合、仲裁機関は複数ありますが、一般的にはVIAC(ベトナム国際仲裁センター)による仲裁が選ばれています。   外国企業が関係する場合、外国の仲裁機関(シンガポール等)を選択することもあります。 仲裁の場合、あらかじめ契約書において法定の事項(仲裁合意)を合意しておく必要あるため注意が必要です。 では、契約時、どのような観点で裁判と仲裁とを選べば良いのでしょう。   ベトナム現地法人同士(日系含む)の紛争の場合、ベトナム国外では紛争解決できないと考えられています。 したがって、原則としてはベトナム国内での裁判か仲裁となります。   1-1)裁判 裁判は原則として二審制です(日本は最高裁までの三審制)。 ベトナムでは裁判官の非中立性なども論じられるところなので、判決の公平性には疑問が持たれる場合も少なくないようです。   1-2)仲裁 仲裁の場合、当事者がひとりずつ仲裁委員を選び、その二人が委員長を選び、3名で仲裁されるのが通常です。 また、仲裁の場合、二審制ではなく1つの審級での解決となるため、結論までが早い場合が多いです。   2-1)裁判 この場合、第三国での裁判も選択可能ですが、日本とベトナムの場合、判決の相互執行条約を締結指定ないため注意が必要です。 すなわち、ベトナムの企業にベトナム国内で日本の判決の内容を強制執行しようとしても、その手段がないということです。 逆の場合(日本企業に日本国内でベトナムの判決を強制執行する場合)も同様です。 したがって、両者が強制執行可能にするためには、被告となる企業の所在地で裁判をする管轄合意をする必要があります。   2-2)仲裁 仲裁の場合、ベトナムと日本はいずれもニューヨーク条約に加盟しているため、いずれの国で仲裁したとしてもその結果を他方の国で強制執行することが可能です。 したがって、一般的には仲裁をすることを勧めています。 これは短期に比較的公平な解決をできる可能性があることも理由の一つです。 また、日本やベトナムではない第三国(シンガポール等)での仲裁も可能となります。 この場合、ニューヨーク条約加盟国内で仲裁すべきですので、この点はご留意ください (ベトナムの留保事項との関係ですが、上記点だけ覚えていれば問題ありません。)。