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技術移転契約をベトナムと締結する場合、登録が必要と聞きました。どのような契約が必要なのでしょうか。

  • 2021.08.19
  • 知的財産
  • 特許権等

1. 国家機関への技術開示 技術移転法第07/2017/QH14号により、技術移転の登録手続きにおいて、技術の詳細的な内容を開示することは求められません。 ただし、契約書と技術移転登録申請書において、国家機関は移転技術を制限移転技術または禁止移転技術に分類されるか、確認できるように、移転される対象である技術を概要的に記載する必要があります。 技術移転法の第36.1条により、契約書が移転される対象または技術移転内容がない場合には、国家機関が申請書を拒否する可能性があります。 申請書のフォームには、技術の名称および移転対象(概要的にノウハウ、技術計画または過程、データ等)を記載することになります。 一般に、この手続きは、主に契約を登録する手続きので、ベトナムの国家機...

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  • 知的財産
  • 2024.03.13
  • 特許権等
ベトナムにおける技術移転について教えて下さい(技術移転契約の登録義務等)。
ベトナム法上、特定の技術の移転については禁止、制限されているものがあります。また、一部の移転契約については、管轄省庁への登録が必要とされています。以下、ベトナム法上の技術移転における規制の概要を記載します。   1)技術移転の内容 2017年7月19日付技術移転法07/2017QH14(以下「技術移転法」といいます)の第4条1項の内容は必ずしも明確ではありませんが、同項によれば以下の技術又はその技術が搭載された機械等は同法の適用対象とされます。 技術的又は科学技術的ノウハウ 科学技術的計画やその過程の内容、工学的解決策、媒介変数、図面、図表、公式、ソフトウェア、データベース 生産合理化及び技術革新のための解決策 なお、科学技術省の案内(オフィシャルレター)によると、技術移転法上、適用される技術とは、製品の生産に直接に参加するテクノロジーといいます。 企業管理、データ管理、注文、計理、人事などのソフトウェアは、技術とみなされず、登録手続きを行うことを必要としないとされています。 2)技術移転の形式 技術移転の形式は、技術移転法第6条に定めがあります。 当該技術を記載した書面の移転 当事者が合意した一定の期間内に譲受人に教育を通じて当該技術を理解、取得させること 専門家を派遣して、譲受人が当事者の合意した品質基準又は生産工程を達成できる技術援助を行うこと 当該技術が搭載された機械等の譲渡 当事者が合意したその他の移転方法 3)技術移転の区分 技術移転法上、技術移転は「推奨技術移転」、「制限記述移転」、「禁止技術移転」の三つに区分されます。 ■推奨技術移転 推奨技術移転とは、技術移転法の第9条に規定されているベトナムに恩恵をもたらす技術等の移転をいいます。 例として以下のようなものの移転が挙げられます。 ハイテク技術が搭載された機械等 既存の技術で生産されたものよりも高品質の製品を生産する技術 既存の同種技術を用いる場合よりも資源、燃料、電力等を節約することができる技術 ベトナム国民の健康に資する医療機器、医薬品等 国防、治安維持、民間利用に併用可能なものを生産する技術 ■制限技術移転 ベトナムに利益をもたらすかもしれないが、危険な側面もある技術等については技術移転法10条により、制限技術移転とされ、ベトナム国外からベトナムへの移転が制限されています。 その技術等の例として以下のようなものがあります。 先進諸国においてもはや用いられなくなった技術(その技術が搭載された機械等) 国家技術基準・規格の規定の範囲内である有害化学物質を使用している又は有害廃棄物を発生させる技術 遺伝子組み換え製品に関する技術 国家技術基準・規格の範囲内の放射性物質を使用している又はそれを生み出す技術 その他、ベトナムの主要輸出製品と競合する製品の製造や、伝統的なノウハウに関わる技術等については、ベトナム国外への輸出が制限される場合があります。 ■禁止移転技術 ベトナムに不利益をもたらす以下の技術等は、技術移転法11条により、海外からベトナム及びベトナム国内間での移転が禁止されます。 以下がその例です。 労働安全、労働衛生、人の健康、天然資源、環境、生態系の多様性に関する法令に抵触する技術 国防、安全保障、社会秩序に悪影響を与えるような技術 発展途上諸国で、もはや一般的に用いられなくなっておりかつベトナムの国家技術基準・規格に適合しなくなった技術 環境に関する国家技術基準・規格に適合しない有害物質を使用、又は有害廃棄物を発生させる技術 国家技術基準・規格に適合しない放射性物質を使用し、又はそれを生み出す技術 その他、機密技術として指定されている技術は、個別の法令に別段の定めがない限り、ベトナム国外への移転が禁止されています。   1)技術移転契約の締結・履行 技術移転契約は原則として書面で締結しなければならず、各当事者は全ページに署名と割印(法律上は当事者が印鑑を有する場合にはと規定されていますが、必要と考えた方が良いでしょう)をしなければなりません(技術移転法22条1項)。 契約に使用する言語は当事者が合意した言語と法令上なっていますが(同条2項)、下記の第4項、同5項に記載されている登録や許可が必要な契約については当局からベトナム語版の作成を求められる可能性もあります。 2)技術移転契約の内容 技術移転契約の内容について、技術移転法23条は以下のように定めています。下記の内容を記載しなかった場合について、同法上に記載がないためその有効性がどうなるかは法律上不明ですが、無効と判断される可能性もあるので、以下は必要的な記載と考えて該当するものは全て記載すべきでしょう。 移転される技術の名前 当該技術で製造される製品、品質基準 所有権、及び利用権 移転の方法 各当事者の権利義務 価格及び支払い方法 技術移転契約の発行日・有効期間 契約において使用される定義や用語がある場合には、その定義や用語 移転の計画若しくはスケジュール、移転場所 移転における保証内容 契約違反に対する罰則 損害賠償責任 紛争解決機関 3)技術移転契約の効力 原則として、その他の契約と同様、当事者の合意によって契約の有効期間が決まります。 しかし、制限技術移転に該当する技術等の移転は、技術移転契約の発行日が契約の効力発生日となります。   1)登録 外国からベトナム、ベトナムから外国への技術移転契約については、技術移転許可を取得した制限技術の移転(この場合は下記第5項「制限技術移転の許可」をご参照下さい)を除いて、科学技術省または科学技術局に登録する必要があります(技術移転法31条、2018年5月15日付政令76/2018/ND-CP号(以下「政令76号」といいます)第6条)。 2)手続 契約の締結日から90日以内に管轄当局に対して、登録の申請書類を提出しなければなりません(技術移転契約31条3項)。申請の内容に問題がなければ、5営業日以内に登録証明書が発行されます。 3)罰則 技術移転契約の登録を怠った場合6,000万~8,000万VNDの範囲で罰金が課される可能性があります(技術移転の違反等に対する行政罰について定めた政令51/2019/ND-CP号(以下「政令51号」といいます)25条1項・3条3項)。   1)移転許可の取得 制限技術移転の対象技術(具体的な対象については、政令76号別紙Ⅱに記載されているので、そちらを確認する必要があります)を移転する個人または法人は、科学技術省から、技術移転の許可を取得しなければなりません。 2)手続き a. 技術移転の承認 技術移転契約を締結する前に、科学技術省へ移転の承認を申請します。申請の内容について問題がなければ、30日以内に科学技術省から承認がなされます。 b. 技術移転の許可 移転契約を締結した後、60日以内に、科学技術省に対して技術移転の許可を申請しなければなりません。申請の内容に問題がなければ15営業日以内に、科学技術省から許可証が発行されます。 3)罰則 技術移転契約の許可を取らずに、制限技術の移転を実施した場合6,000万~8,000万VNDの範囲で罰金が課される可能性があります(政令51号26条1項・3条3項)。
  • 知的財産
  • 2019.07.10
  • 特許権等
2018年ベトナム知的財産法改正案の重要改正ポイントについて
今年の4月、知的財産法についての改正案が公開されました。今回の改正は、今年の1月に環太平洋連携協定(TPP11、CPTPP。以下、「CPTPP」といいます)が発行したことを受けて、現行の知的財産法とCPTPPの内容の整合性を高めることを目的としています。 まだ改正案の段階ですので、今後修正される可能性もあること、施行日はまだ未定であることについてご留意ください。   今回の改正案で大きな変更が加えられているのは下記の3つの分野です。 発明 商標 知的財産権の保護 以下、各分野ごと順番に説明します。 現行の知的財産法に比べて、発明の新規性の喪失に関する例外事由(以下、「例外事由」という場合があります)が拡充されています。 現行法の60条3項が修正され、4項が新たに追加されています。変更されている内容は以下の通りです。  1)現行法では、発明の新規性に関する例外事由は、 ①86条に規定する登録を受ける権利を有する者(以下、「登録権利者」といいます)の許可なしに他人に公開された場合 ②登録権利者により科学的提示の形態で公開された場合 ③登録権利者によりベトナム国内博覧会又は公式若しくは公認の国際博覧会において提示された場合 となっていましたが、改正案では、登録権利者、又は登録権利者から直接的若しくは間接的に発明等に関する情報を入手した者により公開された場合、も新規性を欠くとはみなされないとしています。 すなわち、登録権利者、又は登録権利者から情報を得たものによる発明の公開については全て新規性を欠くとはみなさないとすることによって、新規性の喪失に関する例外事由を拡充しています。また、現行法では、前記例外事由①~③に該当する場合には、6か月以内に発明出願登録を行わなければなりませんでしたが、改正案では、12か月の間発明出願登録を行うことができます。 2)また、改正案では同条に4項が追加され、公的機関が一般公開した登録申請若しくは保護証において公表された発明には適用されないとしています(後述のように同項には但書があります)。 1)電子出願に関する規定の追加 商標登録の電子出願に関する規定が追加されました(89条3項)。もっとも、現行法下においても前記電子出願に関する規定こそないものの、既にオンライン電子出願システムが存在し、同システムは2017年から運用が開始されています。 2)商標使用権 ①商標権使用の継続 136条2項が修正され、商標権者から商標使用権の移転を受けた者による商標の使用も商標権者の商標使用行為である、とみなされることになりました。この規定により、商標権者が5年間商標権を使用しなかったとしても、契約により商標権を使用する者があれば、商標権の消滅を免れることができます。 ②第三者対抗要件 現行法においては、商標使用権移転契約を第三者に対抗する為には登録が必要されていましたが(現行法148条2項)、改正案では登録は不要とされました(改正案148条3項但書)。 1)濫用的訴権の行使に対する制裁 改正案では、198条に新たに4項と5項が追加されています。 ①改正案4項 改正案の4項では、知的財産権に関する訴訟において、裁判所が被告による権利侵害がないと認めた場合、原告は被告に対して当該訴訟に要した弁護士費用の支払いを裁判所に求めることができるとされています。 ②改正案5項 改正案の5項では、他人の知的財産に関する保護手続きの濫用的権利行使によって損害を被った組織・個人は、手続を濫用した者に対して、損害賠償請求を求めることができるとされています。 2)損害賠償請求額の算定方法 205条1項に新たな号が加えられ、損害賠償請求の算定方法として、法律の規定に基づくその他の計算方法を用いることができると明示されました。 前記の現行法と改正案の相違点について簡単な一覧表を作成しましたので、ご参照ください。なお、改正案89条3項(電子出願に関する規定)は、同項の定めが実務的に既に運用されているので、記載を省略しています。また、下記表内の訳文はあくまで参考訳ですので、正確な内容を把握したい場合は現行法・改正案ともに原文をご確認下さい。   現行知的財産法 改正案 1. 60条3項の修正。同条4項の追加。 60条3項 発明は,それが次の状況において公表されたときは、新規性を欠くとはみなさない。ただし,発明登録出願が公表の日から6月以内に行われることを条件とする。 a) それが第86条に規定する登録を受ける権利を有する者の許可なしに他人により公表された。 b) それが第86条に規定する登録を受ける権利を有する者により科学的提示の形態で公表された。 c) それが第86条に規定する登録を受ける権利を有する者によりベトナム国内博覧会又は公式若しくは公認の国際博覧会において展示された。 修正60条3項 発明は、第 86 条に規定する登録を受ける権利を有する者、又はその者から直接的若しくは間接的に発明等に関する情報を入手する者により公表されたときは、新規性を欠くとはみなさない。但し、発明登録出願が公表の日から12月以内に行われることを条件とする。 追加60条4項 本条の第3項は、知的財産機関が一般公開した知的財産権登録申請若しくは知的財産権保護証において公表された発明に適用されない。但し、知的財産機関が誤って一般公開を行った場合、又は登録申請書が本法の第 86 条に規定する登録を受ける権利を有する者から直接的若しくは間接的に発明等に関する情報を入手する第三者により提出されたが、その登録を受ける権利を有する者の同意を得られなかった場合はこの限りでない。 2. 136条2項の修正 136条2項 商標権者は、それを継続的に使用する義務を負うものとする。商標権の効力は、それが第95条に従い継続して5年を超える期間使用されなかったときは終了する。 修正136条2項 商標権者は、それを継続的に使用する義務を負うものとする。商標使用権移転契約に基づき商標使用権の移転を受ける者による商標使用も商標権者の商標使用行為であるとみなされる。商標権の効力は、それが第95条に従い継続して5年を超える期間使用されなかったときは終了する。 3. 148条2項の修正。同条3項の追加 148条2項 第6条3項a)号にいう登録に基づいて確定された工業所有権について、工業所有権の対象の使用権移転契約は当事者間の合意により効力を有するが、第三者に対しては国家工業所有権庁に登録されたときのみ第三者に対して効力を有する。 修正148条2項 第6条第3項a)号にいう登録に基づいて確定された工業所有権について、工業所有権の対象の使用権移転契約は当事者間の合意により効力を有する。 追加148条3項 本条第2項の工業所有権の対象の使用権移転契約は国家工業所有権庁に登録されたときのみ第三者に対して効力を有する。但し、商標使用権移転契約についてはこの限りではない 4. 198条4項・5項の追加   追加198条4項 裁判所が、知的財産権の紛争において被告である組織・個人が侵害行為を行っていないという結論を出した場合、その組織・個人は、原告に弁護士費用を支払わせることを裁判所に求めることができる。 追加198条5項 他人の知的財産権の保護手続の濫用により損害を被った組織・個人は、手続を濫用した者に対して、その濫用行為により生じた損害(弁護士費用等を含む)を賠償させることを裁判所に求めることができる。 5, 205条1項c)号の追加 ※改正案によると、現行のc)号は、d)号へと変更されることになる。 追加205条1項c)号 法律の規定に基づき、権利者の有する権利の価値を計算するその他の方法 現在ベトナムにおける知的財産権の保護は、中国等の国と比べてもかなり遅れた状況にあります。本件改正案は、CPTPPとの整合性を高めることを目的とするものですので、仮に改正案が施行されたとしても、ベトナムにおいてどの程度知的財産権の保護が促進されるかは不透明といわざるを得ません。もっとも、今後ベトナムが発展を続けるためには、知的財産権保護は避けて通れない課題です。本件改正案の発表を機に、知的財産権の保護に関する議論が進めば日系企業にとってはプラスになりますので、議論が深化していくことを期待します。 以上