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2018年ベトナム知的財産法改正案の重要改正ポイントについて

  • 2019.07.10
  • 知的財産
  • 特許権等

第1 本改正の目的 今年の4月、知的財産法についての改正案が公開されました。今回の改正は、今年の1月に環太平洋連携協定(TPP11、CPTPP。以下、「CPTPP」といいます)が発行したことを受けて、現行の知的財産法とCPTPPの内容の整合性を高めることを目的としています。 まだ改正案の段階ですので、今後修正される可能性もあること、施行日はまだ未定であることについてご留意ください。   第2 変更がなされた主な分野 今回の改正案で大きな変更が加えられているのは下記の3つの分野です。 発明 商標 知的財産権の保護 以下、各分野ごと順番に説明します。 第3 変更分野についての各論   1 発明 現行...

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  • 知的財産
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  • 特許権等
ベトナムにおける技術移転について教えて下さい(技術移転契約の登録義務等)。
ベトナム法上、特定の技術の移転については禁止、制限されているものがあります。また、一部の移転契約については、管轄省庁への登録が必要とされています。以下、ベトナム法上の技術移転における規制の概要を記載します。   1)技術移転の内容 2017年7月19日付技術移転法07/2017QH14(以下「技術移転法」といいます)の第4条1項の内容は必ずしも明確ではありませんが、同項によれば以下の技術又はその技術が搭載された機械等は同法の適用対象とされます。 技術的又は科学技術的ノウハウ 科学技術的計画やその過程の内容、工学的解決策、媒介変数、図面、図表、公式、ソフトウェア、データベース 生産合理化及び技術革新のための解決策 なお、科学技術省の案内(オフィシャルレター)によると、技術移転法上、適用される技術とは、製品の生産に直接に参加するテクノロジーといいます。 企業管理、データ管理、注文、計理、人事などのソフトウェアは、技術とみなされず、登録手続きを行うことを必要としないとされています。 2)技術移転の形式 技術移転の形式は、技術移転法第6条に定めがあります。 当該技術を記載した書面の移転 当事者が合意した一定の期間内に譲受人に教育を通じて当該技術を理解、取得させること 専門家を派遣して、譲受人が当事者の合意した品質基準又は生産工程を達成できる技術援助を行うこと 当該技術が搭載された機械等の譲渡 当事者が合意したその他の移転方法 3)技術移転の区分 技術移転法上、技術移転は「推奨技術移転」、「制限記述移転」、「禁止技術移転」の三つに区分されます。 ■推奨技術移転 推奨技術移転とは、技術移転法の第9条に規定されているベトナムに恩恵をもたらす技術等の移転をいいます。 例として以下のようなものの移転が挙げられます。 ハイテク技術が搭載された機械等 既存の技術で生産されたものよりも高品質の製品を生産する技術 既存の同種技術を用いる場合よりも資源、燃料、電力等を節約することができる技術 ベトナム国民の健康に資する医療機器、医薬品等 国防、治安維持、民間利用に併用可能なものを生産する技術 ■制限技術移転 ベトナムに利益をもたらすかもしれないが、危険な側面もある技術等については技術移転法10条により、制限技術移転とされ、ベトナム国外からベトナムへの移転が制限されています。 その技術等の例として以下のようなものがあります。 先進諸国においてもはや用いられなくなった技術(その技術が搭載された機械等) 国家技術基準・規格の規定の範囲内である有害化学物質を使用している又は有害廃棄物を発生させる技術 遺伝子組み換え製品に関する技術 国家技術基準・規格の範囲内の放射性物質を使用している又はそれを生み出す技術 その他、ベトナムの主要輸出製品と競合する製品の製造や、伝統的なノウハウに関わる技術等については、ベトナム国外への輸出が制限される場合があります。 ■禁止移転技術 ベトナムに不利益をもたらす以下の技術等は、技術移転法11条により、海外からベトナム及びベトナム国内間での移転が禁止されます。 以下がその例です。 労働安全、労働衛生、人の健康、天然資源、環境、生態系の多様性に関する法令に抵触する技術 国防、安全保障、社会秩序に悪影響を与えるような技術 発展途上諸国で、もはや一般的に用いられなくなっておりかつベトナムの国家技術基準・規格に適合しなくなった技術 環境に関する国家技術基準・規格に適合しない有害物質を使用、又は有害廃棄物を発生させる技術 国家技術基準・規格に適合しない放射性物質を使用し、又はそれを生み出す技術 その他、機密技術として指定されている技術は、個別の法令に別段の定めがない限り、ベトナム国外への移転が禁止されています。   1)技術移転契約の締結・履行 技術移転契約は原則として書面で締結しなければならず、各当事者は全ページに署名と割印(法律上は当事者が印鑑を有する場合にはと規定されていますが、必要と考えた方が良いでしょう)をしなければなりません(技術移転法22条1項)。 契約に使用する言語は当事者が合意した言語と法令上なっていますが(同条2項)、下記の第4項、同5項に記載されている登録や許可が必要な契約については当局からベトナム語版の作成を求められる可能性もあります。 2)技術移転契約の内容 技術移転契約の内容について、技術移転法23条は以下のように定めています。下記の内容を記載しなかった場合について、同法上に記載がないためその有効性がどうなるかは法律上不明ですが、無効と判断される可能性もあるので、以下は必要的な記載と考えて該当するものは全て記載すべきでしょう。 移転される技術の名前 当該技術で製造される製品、品質基準 所有権、及び利用権 移転の方法 各当事者の権利義務 価格及び支払い方法 技術移転契約の発行日・有効期間 契約において使用される定義や用語がある場合には、その定義や用語 移転の計画若しくはスケジュール、移転場所 移転における保証内容 契約違反に対する罰則 損害賠償責任 紛争解決機関 3)技術移転契約の効力 原則として、その他の契約と同様、当事者の合意によって契約の有効期間が決まります。 しかし、制限技術移転に該当する技術等の移転は、技術移転契約の発行日が契約の効力発生日となります。   1)登録 外国からベトナム、ベトナムから外国への技術移転契約については、技術移転許可を取得した制限技術の移転(この場合は下記第5項「制限技術移転の許可」をご参照下さい)を除いて、科学技術省または科学技術局に登録する必要があります(技術移転法31条、2018年5月15日付政令76/2018/ND-CP号(以下「政令76号」といいます)第6条)。 2)手続 契約の締結日から90日以内に管轄当局に対して、登録の申請書類を提出しなければなりません(技術移転契約31条3項)。申請の内容に問題がなければ、5営業日以内に登録証明書が発行されます。 3)罰則 技術移転契約の登録を怠った場合6,000万~8,000万VNDの範囲で罰金が課される可能性があります(技術移転の違反等に対する行政罰について定めた政令51/2019/ND-CP号(以下「政令51号」といいます)25条1項・3条3項)。   1)移転許可の取得 制限技術移転の対象技術(具体的な対象については、政令76号別紙Ⅱに記載されているので、そちらを確認する必要があります)を移転する個人または法人は、科学技術省から、技術移転の許可を取得しなければなりません。 2)手続き a. 技術移転の承認 技術移転契約を締結する前に、科学技術省へ移転の承認を申請します。申請の内容について問題がなければ、30日以内に科学技術省から承認がなされます。 b. 技術移転の許可 移転契約を締結した後、60日以内に、科学技術省に対して技術移転の許可を申請しなければなりません。申請の内容に問題がなければ15営業日以内に、科学技術省から許可証が発行されます。 3)罰則 技術移転契約の許可を取らずに、制限技術の移転を実施した場合6,000万~8,000万VNDの範囲で罰金が課される可能性があります(政令51号26条1項・3条3項)。
  • 知的財産
  • 2021.08.19
  • 特許権等
技術移転契約をベトナムと締結する場合、登録が必要と聞きました。どのような契約が必要なのでしょうか。
技術移転法第07/2017/QH14号により、技術移転の登録手続きにおいて、技術の詳細的な内容を開示することは求められません。 ただし、契約書と技術移転登録申請書において、国家機関は移転技術を制限移転技術または禁止移転技術に分類されるか、確認できるように、移転される対象である技術を概要的に記載する必要があります。 技術移転法の第36.1条により、契約書が移転される対象または技術移転内容がない場合には、国家機関が申請書を拒否する可能性があります。 申請書のフォームには、技術の名称および移転対象(概要的にノウハウ、技術計画または過程、データ等)を記載することになります。 一般に、この手続きは、主に契約を登録する手続きので、ベトナムの国家機関は、どの技術かを確定できるのであれば、その技術の詳細を開示することは求めません。 一般に、技術移転法の第23条により、技術移転契約書は、以下の内容を含まなければならないとされています。 (i)                  移転される技術の名称 (ii)                移転される対象である技術、移転技術により製造される製品、品質技術 (iii)               技術の所有権および/または使用権の移転 (iv)               技術移転の方法 (v)                当事者らの権利および義務 (vi)               対価および支払方法 (vii)             契約の発効期間、有効期間 (viii)           技術移転契約において使用される定義および用語(もしあれば) (ix)               技術移転の計画、スケジュールおよび場所 (x)                 移転技術に関する保証 (xi)               契約違反に対する罰則 (xii)             契約違反に対する責任 (xiii)            紛争解決機関 (xiv)            当事者らによって合意されたその他の事項 技術移転法の第31条により、当局が十分な書類を受領してから、5営業日以内に、登録しまたは拒絶することとされています。 実務上は、当局によって十分とする内容などが変わり、これ以上に時間がかかるケースがあります。 契約書の条件について、重要点は以下です。 ① 禁止される移転技術または制限される移転技術 対象技術が禁止されまたは制限される技術かどうかについて、リストを確認し確認する必要があります。 ②   対価 一般的に、技術移転の対価が技術移転法の第27条により、当事者の協議で決定することになります。 支払方法は、技術移転法により、以下の方法が定められています。 (i)                  現金または物品での一括支払いまたは分割払い (ii)                出資としての移転 (iii)               純販売価格または純収入または税引前利益(PBT)等の割合 (iv)               当事者で合理的に決定するその他の条件 一般に、ミニマム・ペイメントまたはイニシャル・ペイメントか、ランプサム支払いか、 半年・四半期(3ヶ月)ごとのペイメントか、またはその他の組み合わせが認められています。 以下の点は、事前にご検討いただきたい点です。 (a)                対価の支払い方法、および対価のベースとなる金額(総販売額か税引前利益等か) (b)                技術移転対価の決算の検査方法、半年等ごとの検査に関する費用負担(ある場合)等、および検査のための帳簿と記録の保存義務等 また、法令上、親会社との技術移転対価について税務局の請求により検査される可能性があります。 移転価格(Transfer Pricing)に関する規制にも従わなければならないので、適切な対価およびその適切性を証明するための書類準備を、会計事務所に確認することを推奨いたします。 ③ 技術移転の方法 各技術を、それぞれどのように移転するのかについて記載が必要になります。 また、親会社が技術者の派遣やトレーニング等を行うことになるので、それぞれの対象技術について、どのようにトレーニングするのかをご確認ください。 その技術指導に関する費用負担・期間等があれば明記する必要もあります。 ④ 契約期間 技術移転法の第24条により、当事者の協議で決定することが可能です。   技術移転契約書に関して、登録しない場合には、以下のリスクがあります。 政令第51/2019/ND-CP号により、6,000万ドンから8,000万ドンまでの罰金が科され、関連書類などが没収されうること 技術移転契約が無効とみなされること 特に明確な法令の規定はないものの、銀行の実務上の対応により、技術移転対価が海外へ送金できない場合がありうること ベトナム側の企業において、技術移転契約についての対価が企業所得税(CIT)の税務上の損金として認められない可能性があること