【ベトナム労務】外国人労働者の強制社会保険料の引き上げについて

1. はじめに

ベトナムで就労する外国人労働者に対する強制社会保険に関する政令143/2018/ND-CP号(2018年12月1日施行。以下、「政令143号」といいます)に基づき、2022年1月から外国人労働者に対する強制社会保険料(ベトナム語:bảo hiểm xã hội bắt buộc)が引き上げられています。そこで今回は、外国人労働者の強制社会保険料について整理したいと思います。
なお、以下法令の日本語での記載は、分かりやすさの観点から一部意訳または要約して記載しているものもありますので、ご了承ください。

2. 強制社会保険の加入対象となる外国人

1)法令上、強制社会保険の対象となる外国人労働者は以下のように定められています。

「ベトナムの管轄機関によって発給される労働許可証、実務証明書または実務公認書を持ち、ベトナムにおける使用者と無期限労働契約、満1年以上の有期限労働契約を締結する、ベトナムで就労する外国人労働者が強制社会保険の加入対象となる」(政令143号第2条第1項)。

2)ただし、同条の第2項は例外として、「本条1項で定める労働者で以下に該当する場合、本政令で定める強制社会保険の加入対象外となる」とされています。
つまり、以下のa.またはb.に該当する外国人労働者は、強制社会保険に加入しなくてもよいということになります。

a. 労働法のベトナムで就労する外国人労働者関連条項の施行細則を定めた2016年2月3日付政令11/2016/ND-CP号(以下、「政令11号」といいます)第3条第1項で定める企業内人事異動者
※1 ただし、執筆時点で政令11号は効力を失っており、企業内人事異動者は下記のとおり、2020年12月30日付政令152/2020/ND-CP号(以下、「政令152号」といいます)第3条第1項に定義が定められています。

b. 労働法第187条1項で定める定年に達した労働者
※2 執筆時点で男性は60歳6か月、女性は55歳8か月が定年となっています。今後毎年男性は3か月、女性は4か月ずつ定年が引き上げられていく予定です。

3)定年に達しているかどうかはすぐに分かりますが、『企業内人事異動の外国人労働者』とは何でしょうか。
政令152号第3条第1項によれば、

1. 企業内人事異動の外国人労働者とは、ベトナム現地拠点を設立した外国企業の管理者、代表取締役社長、専門家、技術的な労働者として当該企業に12ヶ月以上前に採用され、
2. ベトナム現地商業拠点に一時的に異動する者をいう

とされています。

現状、上記の定義に該当するかどうかについて、特定の書類を所持したり、手続きを完了していること等を求める法令上の明文規定はありません。
しかし、実務上、企業内異動かどうかについて社会保険局は判断せず、労働機関の判断に委ねている場合が多いです。そのため、労働許可証に企業内異動であることを示す記載があれば一つの目安になると考えられます(実務上、労働許可証の申請手続きにおいて、企業側が「企業内異動」として申請するケースが多いと考えられます)。なお、近年の労働許可証の申請フォームが更新される前に取得された労働許可証については、労働許可証自体ではなく、労働許可証の申請書を確認する必要があります。

3. 外国人の強制社会保険料の引き上げ

1)2022年1月1日以降、外国人労働者は退職・遺族年金への加入が義務付けられることになり、会社負担が14%、外国人労働者負担が8%となります。変更前後の保険料の変更は以下のとおりです。

使用者負担 労働者負担  計
社会保険 失業
保険
(※4)
医療
保険
社会保険 失業
保険
医療
保険
退職・
遺族年金
育休・傷病 労災・職業病(※3) 退職・
遺族年金
育休・傷病 労災・職業病
~2021年
12月31日
 ー 3% 0.5% 3% 1.5% 8%
2022年
1月1日~
14% 3% 0.5% 3% 8% 1.5% 30%

2)社会保険料の算出に用いられる給与は、ベトナム公務員の最低賃金の20倍が上限の金額です。本稿執筆時点の公務員の最低賃金は149万VND(1月あたり)です(2019年5月9日付け政令38/2019/NĐ-CP号第3条第2項)。そのため、現状においてはその20倍である2980万VNDを上限として社会保険料が計算されることになります。

※3 コロナの影響により労災・職業病についての使用者負担分が2021年7月から2022年6月まで免除されています(決定68/NQ-CP号)。
※4 外国人には失業保険は適用されません。なお、ベトナム人の失業保険については、会社負担の失業保険料について、給与の1%が2022年9月末まで免除されています(決定116/NQ-CP号)。

4. 退職後の社会保険料の一部返金

1)政令143号第9条第6項đ号により、労働契約が終了または労働許可証(若しくは代替する特別な業種(例:弁護士)の許可証)が失効したにもかかわらず、それが延長されない場合、納付した社会保険料が返金されると規定されています。
2)返金の額については、社会保険法第60条第2項に従うと規定されています(政令143号第9条第7項)。

社会保険法第60条第2項によれば、返還金は社会保険の納付期間及び社会保険料算出基礎となる月給の平均に基づいて計算されます。計算方法については、同条項をご確認ください。
もっとも、外国人の強制社会保険の加入が義務付けられたのが、2018年12月からであり、当該事例の絶対的母数が少ないことから、未だ外国人で実際に社会保険料の返金を受けた例は確認できていません。

CastGlobal

【執筆者】CastGlobal

ベトナムの法律事務所

ベトナムで主に日系企業を支援する弁護士事務所です。日本人弁護士・ベトナム人弁護士が現地に常駐し、最新の現地情報に基づいて法務面からベトナムビジネスのサポートをしています。

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