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【ベトナム】現地法人の設立のステップについて教えてください(企業法・投資法)

ベトナムでの会社設立について

日本企業その他の外資企業がベトナムで現地法人を設立する場合、どのようなステップを踏む必要があるでしょうか。
大きな流れがわかりづらいという声も多いため、本コラムでは概要を説明したいと思います。

ベトナムでの設立形態は、主として株式会社・有限責任会社ですが、今回は出資者が一人(一社)の一人有限責任会社を想定しています。その他の形態でも設立手順はほぼ一緒となりますので、参考になるかと思います。

なお、以下は本コラム作成時点の内容であり、法令や実務の変更によって内容が変わることがあるという点はご留意ください。

参考:

【ベトナム企業法】有限責任会社と株式会社の違い

法律上、外国企業がベトナムにおいて現地法人を設立するためには、①投資登録証明書(以下に「IRC」といいます。)企業登録証明書(以下に「ERC」といいます。)の2つの手続が必要となります。
また、それに加えて銀行口座開設等の実務上の手続も必要になりますので、関連する手続についても概要を説明します。

1.  経営する事業の決定

ベトナムでの経営事業に関しては、最低限以下の条件を満たさなければなりません。

  1. 2020年の投資法第6条での禁止な投資・経営分野と、政令第31/2021/ND-CP第I付録A項目に規定されている外国投資家が市場参入できない分野リストに属しないこと
    =禁止分野ではないこと
  2. 政令第31/2021/ND-CP第I付録B項目に規定されている外国投資家に対する条件付き市場参入分野リストに属する場合には、その分野に対する市場参入の条件を満たすこと
    =条件付き分野の場合には条件を満たすこと

政令第31/2021/ND-CP第I付録のリンクは、以下のJETROのリンクから確認できます。
https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/country/vn/invest_02/pdfs/vn7A030_seigenbunya_gyosyu.pdf

一定分野に対する市場参入の条件は、現地法人における外国投資家の定款資本保有割合、投資形式、投資活動範囲などを含め、WTO・CPTPPへのコミットメントなどの国際条約・規約やベトナム国内の各分野に関する法令に規定されています(2020年投資法第9条3項参照)。

2. オフィス賃貸借に関するMOU又は正式な契約書の締結

IRCとERCを申請するため、現地法人の本社住所を決定し、オフィス賃貸借に関するMOU又は正式な契約書を事前に締結することが必要です。

【実務上の注意点】
現地法人の本社住所を置く場所は、オフィス利用の目的が認められている場所でなければならないためご注意ください。(たとえば、通常の住宅等ですと登録できないため、契約前に事前にご確認ください。)

また、工業団地以外で行われる製造業に対して、ホーチミン市のDPI(計画投資局)は、現地法人の生産に最新テクノロジーを使用し、環境を汚染しないこと等を証明できない限り、製造業を承認していないとしています。この証明自体が実務上難しく、承認の可能性は高くないため、スムーズな設立のためには工業団地内での設立を推奨します。

3. 投資登録証明書(IRC)の申請手続(政令第31/2021/ND-CP第36条)

投資登録証明書(IRC)の申請に関する概要は以下のとおりです。

  • 申請先:省レベルの計画投資局の対外経済課
  • 申請形式:オンライトで投資プロジェクトの情報を提出した後、申請先での書面の提出
  • 書類処理期間:適法な書類をすべて受領した日から15日以内
    ※実務上はより遅れる場合があります。
  • 必要書類:以下の書類は基本的な書類です。当局は、検討中に、追加書類の提出を請求する可能性がありますので、ご注意ください。
  • 投資プロジェクト実施の申請書(通達第03/2021/TT-BKHĐTのForm A.I.1)
  • 投資プロジェクトの提案書(通達第03/2021/TT-BKHĐTのForm A.I.4)
  • 投資家の財務能力説明書
  • 書類提出者への委任状
  • 投資家の履歴事項全部証明書 (*)
  • 投資家の代表取締役のパスポートの写真のあるページ(*)
  • 投資家の直近2年間の財務報告書又は銀行口座の残高証明書 (*)
    ※財務報告書と残高証明書の両方があれば、一緒に提出したほうが確実です。
  • オフィス賃貸借に関するMOU又は正式な契約書の公証コピー
    ※当局は賃貸している場所について疑義がある場合に、賃貸している場所が会社住所として使用を許可されることを証明する追加書類の提供を要求することがあります。この場合には、投資家が貸主に対して証明書類の準備を依頼します。
  • 結果:IRCの取得

なお、2020年投資法第30条から第32条までの移住・再定住要請をする投資プロジェクトや環境に大きな影響を与える投資プロジェクト等に対しては、IRCを申請する前に、当局への投資方針承認の申請が必要です。
もっとも、通常の事業を行う一般的な現地法人の設立では、この申請を行うことは必要とされていません。

4. 企業登録証明書(ERC)の申請手続(政令第01/2021/ND-CP第24条)

企業登録証明書(IRC)の申請に関する概要は以下のとおりです。

  • 申請先:省レベルの計画投資局の経営登録課
  • 申請形式:オンライトでの提出
  • 書類処理期間:適法な書類をすべて受領した日からの3営業日以内
  • 必要書類:以下の書類は基本的な書類です。当局は、検討中にその他の書類の提出を請求する可能性がありますので、ご注意ください。
  • 一人有限責任会社登録の申請書(通達第01/2021/TT-BKHĐTのForm I-2)
    ※一人有限責任会社の場合
  • 所有者の委任代表者のリスト(通達第01/2021/TT-BKHĐTのForm I-10)
  • 現地法人の定款
  • 所有者の委任代表者の任命に関する所有者の決定書
  • 書類提出者への委任状
  • 所有者の履歴事項全部証明書 (*)
  • 現地法人の法定代表者のパスポートの写真があるページ(*)
  • 所有者の委任代表者のパスポートの写真があるページ(*)
  • IRCのコピー公証版
  • 結果:ERCと現地法人を管理する税務局に関する通知書の取得

【留意点】

(*)の書類はベトナムの管轄当局へ提出できるために、(i)日本での公証・領事認証と(ii)ベトナム語への翻訳、(ii)翻訳版の公証という手続を経なければなりません。
※日本で公証を行う際にベトナム語もセットで行う場合もありますが、翻訳・翻訳公証はベトナムでの正式な翻訳サービス会社に依頼し、ベトナム国内で行うことが通常です。

日本での領事認証の手続きについて、外国法人は日本での管轄当局とご確認して、当該手続きを実施していただけましたら、幸甚です。

また、パスポートの写真のあるページ については、本人がベトナムにいる場合(短期間の出張でも可能)、(i)から(iii)までのかわりに、ベトナムでの公証コピーを取得する簡易な手続をすることができます。

5. 現地法人側で行うその後のステップ

その他、一般的には以下のような手続も必要となります。

■社印の作成

ERC又はERCドラフトを受領した後、社印の作成サービスを提供する企業(社印作成の企業)に社印の作成を依頼します。

通常、ERC又はERCドラフトのコピー版と、現地法人の法定代表者からの委任状(社印作成企業への連絡を担当する者に対する委任状)を提出するのみとなります。

社印の作成期間は1日~2日程度です。

■直接投資資本口座(DICA)開設、経常口座開設

直接投資講座(DICA)の開設

DICAは、定款資本金・外国からのローンの受け取りや、配当の振り込みなどの通達第06/2019/TT-NHNNの第6条、7条に規定されている目的のみに使用されます。

ERCの発行日から90日間以内にDICAに定款資本金を振り込まなければならないため、DICAの開設は法人設立後できる限り早く行ったほうがよいです。

【注意点】

DICAの開設については、銀行によって投資金額等によって開設できる/できないの判断がなされることがあることや、必要資料が会社設立資料と重複しているものがあることなどもあります。そのため、会社設立と同時期に取引したい銀行に連絡し、口座開設の可否や必要資料について確認することが望ましいです。

■経常口座開設

売上の受け取りや賃金や経費の支払いなどの日常の取引のために、経常口座(普通口座)を開設する必要もあります。

DICAに振り込まれた定款資本金やローンは通常外貨ですので、この金額をベトナム国内で使用可能にするために、ベトナムドンに変えたうえでベトナムドンの経常口座に入金することとなります。なお、外国への送金・外国からの入金のために外貨の経常口座も開設可能です。

■オンラインでの投資報告用アカウント作成

投資に関する定期的な報告をオンラインで提出するために、現地法人がアカウントの作成手続きをDPIで行うことが必要です(2020年投資法第72条、政令第31/2021/NĐ-CP第102条、第104条参照)。現地法人は、現地法人の当該アカウントの担当者を指定し、この担当者の情報をこの登録書に記載しなければなりません。

基本的な手順は、現地法人がアカウント作成登録書(雛形があります)を作成し、DPIにこの登録書を提出するという方法です。実務上の手続は変わることもありますので、都度DPIにご確認ください。

CastGlobal

【執筆者】CastGlobal

ベトナムの法律事務所

ベトナムで主に日系企業を支援する弁護士事務所です。日本人弁護士・ベトナム人弁護士が現地に常駐し、最新の現地情報に基づいて法務面からベトナムビジネスのサポートをしています。

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