【ベトナム労務】有期限労働契約の期間満了での終了について

ベトナムにおける有期限労働者(固定期限労働契約者)は、特定の期間を定めて雇用される労働者を指します。有期限労働契約(定期限契約)は、通常36ヶ月未満の期間で締結され、その期間が満了すると契約は終了します。以下に、有期限労働者に関する主なポイントを説明します。

1. 契約の基本的な特徴

有期限労働契約は、企業と労働者が特定の期間(36ヶ月未満)を定めて締結する契約です。この契約は、通常1回の更新が可能で、更新後の契約が満了した場合、原則として無期限労働契約に移行します(ベトナム労働法第20条) 。

第20条 有期労働契約とは、両当事者が契約の期間又は効力が終了する時期を、契約の効力発生 の時点から36 か月を超えない期間で確定した契約をいう。

2. 契約満了時の通知

契約期間が終了する場合、契約終了について新しい契約が締結されない場合、労働者は契約満了とともに退職します。

労働法第34条第1項に従う雇用契約満期の理由を明記した雇用契約解除通知書を送付する必要があります(労働法第45条第1項)。

労働契約の一方的解約とは異なり、事前通知期間などは決まっていません。しかし、労働者の予見可能性を高め、不要なトラブルを避けるため、できる限り一定期間の事前通知を行うことを推奨しています。

第34 条 労働契約が終了する場合
1 第177 条第4 項に定める場合を除き、労働契約の期間が満了した場合。

第45 条 労働契約の終了の通知
1 第34 条第4 項、第5 項、第6 項、第7 項及び第8 項に定める場合を除き、使用者は、労働者に対し、この法典の定めるところによる労働契約の終了に際し、労働契約の終了について書面により通知しなければならない。

 

3. 支払うべき費用

契約が終了する際、企業は労働者に対して退職手当や未払いの給与、未使用の年次休暇の補償を支払う義務があります。これらの費用は、労働者の勤務期間に応じて計算されます 

労働法第46条の退職手当について、当該勤務期間の全ては労働者のために失業保険を加入していれば、退職手当金額の支払いが不要となりますが、試用期間(60日など)や産休期間(6ヶ月)に労働者に失業保険を加入しない場合が多いです。
試用期間(60日)に失業保険を加入していない場合には、この試用期間に対し退職手当金額(1か月分給与の1/4)を労働者に支払わなければならないためご注意ください。

 

4. 契約更新と労働者の権利

契約が更新される場合、企業は新しい契約内容を労働者に提示し、労働条件の変更やその他の重要事項について説明する必要があります。更新後の契約も引き続き有期限であれば、再度の更新が必要になる場合があります。

なお、有期労働契約の期間が終了しているにもかかわらず、そのまま労働を継続している場合、無期雇用がスタートしているという解釈となる場合があるため、期間満了前の対応が必要です。

労働法20条第2項
 本条第1 項第b 号に定める労働契約の期間が満了した場合であって、労働者が引き続き労働に従事するときは、次のとおりとする。

a) 両当事者は、労働契約の期間が満了した日から30 日以内に、新たな労働契約を締結しなければならない。新たな労働契約が締結されるまでの間、両当事者の権利、義務及び利益は、締結済みの労働契約に従って履行される。
b) 両当事者が、労働契約の期間が満了した日から30 日を経過しても新たな労働契約を締結しない場合、本条第1 項第b 号の定めるところにより締結済みの労働契約は、無期労働契約となる
c) 両当事者が新たに締結しようとする労働契約が有期労働契約である場合、一回に限り締結することができる。(以下省略)

CastGlobal

【執筆者】CastGlobal

ベトナムの法律事務所

ベトナムで主に日系企業を支援する弁護士事務所です。日本人弁護士・ベトナム人弁護士が現地に常駐し、最新の現地情報に基づいて法務面からベトナムビジネスのサポートをしています。

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