ベトナム・ホーチミン市における不動産登記問題の現状と対策

ホーチミン市では、不動産登記(通称「Sổ hồng」/レッドブックLURC)が長年の課題となっており、特に商業住宅プロジェクトにおける未登記物件が市場全体に影響を及ぼしています。外国人所有物件だけでなく、ベトナム人所有物件についてもLURCが発行されていない物件が多くあり、課題となっています。
以下に、最新の状況、政府の取り組み、課題、そして今後の展望を整理します。

1.現状:未登記物件問題の深刻さ

未登記物件の規模
  • 2023年末時点: 約81,000戸の未登記物件が存在。
  • 2024年3月時点: 政府の取り組みにより59,000戸まで減少。
未登記の主な原因

1.  開発業者の遅延:

  • 登記に必要な書類提出の遅れ。
  • 財務義務(税金や関連費用)の未履行。

2. 新しい不動産形態に関する法的課題:

  • オフィステル(オフィス兼居住空間)やショップハウスに関する未整備の法制度。

3. プロジェクトの法的・財務的問題:

  • 銀行担保に設定されたままの物件。
  • 建築規制違反の発覚。

4. 調査・監査による進行停止:

  • プロジェクトが不正疑惑やその他の監査対象となる場合。

2.政府の取り組み:2024年末までの3段階計画

ホーチミン市人民委員会(UBND)は、未登記物件問題の解消に向けて以下の3段階計画を実施しています。

第1段階(2024年10月まで)
  • 専門チームの設立: 未登記プロジェクトを調査するタスクフォースを編成。
  • データの収集と分類: プロジェクトを以下のカテゴリに分類:
    1.登記完了済み物件
    2.建設中で未登記の物件
    3.使用中だが未登記の物件
第2段階(2024年11月まで)
  • 課題の分析と解決策の立案: 各プロジェクトの問題点を特定し、法的・行政的な解決策を提示。
第3段階(2024年12月まで)
  • 実行と進捗管理: 解決策を具体化し、未登記問題を解消するための進捗を管理。

3.成果と今後の展望

2024年6月時点の成果

22,147戸が新たに登記完了。しかし、未解決の物件が依然として多数残っています

新しい法制度への対応

2024年に施行される新土地法(Luật Đất đai)に基づき、以下が期待されます:

  • 政策のさらなる調整
  • 新形態の不動産に対応した法制度の整備
透明性向上の試み

市政府は、不動産プロジェクト情報を電子プラットフォームで公開し、市場の透明性向上を図る計画です。

4.まとめ

ホーチミン市では、不動産登記問題の解消に向けた具体的な取り組みが進行中であり、2025 年までに、天然資源環境省の機能と課題に基づく 6 つの問題グループに基づいて、81,085 戸の住宅の問題の除去が完了する予定としています。しかし、法制度の改善や開発業者の協力など、多くの課題が依然として残されています。登記状態により、購入者は物件の所有権を正式に証明できず、長期的な未登記問題が、不動産市場全体の停滞を招いているともいえます。今後、政府や関連機関の連携がさらに重要となり、透明性の高い市場運営が鍵となるでしょう。

CastGlobal

【執筆者】CastGlobal

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