ベトナムの半導体産業:政策、進展、および最新の議論についての整理
- 2024.12.18
- コラム
- CastGlobal
ベトナムは、世界の技術および半導体供給チェーンにおける主要プレイヤーとしての地位を確立するため、半導体産業の発展に積極的に取り組んでいます。NVIDIAが投資の決定を発表したほか、2030年・2050年までのロードマップを発表し、高付加価値の半導体産業に集中的に取り組むことを明示しており、今後の動きに注目です。
目次
1. 国家政策と戦略目標
国家半導体戦略
ベトナム政府は、2050年までに自立した半導体エコシステムを構築するための野心的なロードマップを発表しました。主な目標は以下です。
2030年まで
- 少なくとも1つの半導体製造工場(ファブ)の設立
- 20のパッケージング・テスト施設の運営
- 300の集積回路(IC)設計会社の育成
- 半導体分野に特化した技術者50,000人の養成
2050年まで
- ファブを3カ所に拡大
- 20のバックエンド施設の整備
- 高度な半導体製造および設計を支える強固な研究開発(R&D)エコシステムの構築
政策インセンティブ
国内成長の促進と外国投資の誘致を目指し、以下のようなインセンティブが導入されています:
- 研究開発(R&D)費用の150%までの税控除
- 簡略化された投資手続きおよび最大10年間の無償土地リース
- 「国家半導体開発指導委員会」の設立による業界成長の監督と調整
人材開発への注力
ベトナム政府は、半導体分野における熟練労働力の重要性を認識しており、大学や国際企業と連携して以下の取り組みを行っています。
- STEM(科学、技術、工学、数学)教育プログラムの拡充
- NVIDIAやQualcommといったグローバル技術リーダーとの協力による、2030年までの半導体技術者50,000人の養成
2. 産業の進展と投資
外国直接投資(FDI)
戦略的な地理的位置、競争力のある労働コスト、政府の支援により、ベトナムは世界の半導体企業にとって魅力的な投資先となっています。主な進展は以下の通りです。
- NVIDIA
米国拠点の半導体・AIの大手企業であるNVIDIAは、AIと半導体技術を中心としたR&Dセンターをベトナムに設立する計画を発表しました。このセンターは、地元のスタートアップや大学、企業を支援し、AIアプリケーションや半導体ソリューションを開発します。 - Amkor Technology
バクニン省に2023年に16億ドル規模の半導体パッケージング・テスト施設を設立し、ベトナムの半導体産業における最大級の投資案件となりました。 - Intel
ホーチミン市で運営している世界最大級の組立・テスト施設をさらに拡大しています。
その他、サムスン、ハナマイクロン、オランダのBE Semiconductor Industriesなどの大手企業が投資を進めています。
国内企業の貢献
- FPT Corporation
ベトナム最大のITサービス企業で、半導体設計やAIアプリケーションに投資しており、国内設計のチップの商業化を目指しています。 - Viettel
国営通信企業で、国家の安全保障と技術的独立性を支援するため、半導体製造およびR&Dプロジェクトを模索しています。
3. NVIDIAの戦略的役割
NVIDIAは、ベトナムの半導体およびAIの発展における重要なパートナーとなっています。同社の主な取り組みは以下の通りです。
- R&Dセンター
ベトナムに設立予定のR&Dセンターは、AIと半導体技術に焦点を当て、ベトナムのSTEM人材の成長を活用します。この施設は、地元のスタートアップや研究者に技術訓練と支援を提供します。 - AIエコシステムの開発
NVIDIAはベトナムの大学やスタートアップと連携し、医療、教育、金融といった業界でAIアプリケーションの革新を促進しています。既に100以上のAIスタートアップと65の大学と提携しています。 - 半導体製造
NVIDIAのベトナムでの主な焦点はR&DとAIですが、チップ製造の可能性にも関心を示しており、ベトナムを半導体製造の地域ハブにすることを検討しています。
4. 課題と機会
課題
- 熟練労働力の不足
現在の労働力は、先進的な半導体設計および製造に十分な専門知識を欠いています。2030年までに50,000人の技術者を育成することは大きな課題です。 - インフラの不備
半導体産業には、信頼性の高い電力供給、高度な物流、高度な施設が必要ですが、これらの分野でベトナムにはまだ改善の余地があります。 - 技術的依存
チップ設計や製造のような高付加価値分野では、外国の技術と専門知識に大きく依存しています。
機会
- 地政学的変化
米中貿易摩擦により、世界の企業がサプライチェーンを多様化しており、ベトナムは半導体投資の魅力的な代替地となっています。 - 地域的リーダーシップ
ベトナムの積極的な政策とグローバル技術リーダーとのパートナーシップにより、東南アジアの半導体産業におけるリーダーになる可能性があります。
5. 将来展望
ベトナムの半導体産業は、政府の強力な支援、増加する外国投資、NVIDIAのようなグローバルリーダーとの戦略的パートナーシップにより、著しい成長が期待されています。ベトナムが中所得国の罠を脱するのに非常に重要な政策の一つとなるでしょう。
ベトナムは2050年までに世界の半導体供給チェーンの主要プレイヤーとなることを目指しており、特にAIとR&DにおけるNVIDIAや多くの外資企業の関与も、ベトナムのハイテク未来を形作る上で重要な役割を果たしていくことになりそうです。