ベトナム社会保険の年金制度:外国人労働者の受給条件と一時給付金

ベトナムで強制加入の社会保険に加入している外国人労働者は、外国人であっても退職時に、年金を受給することが可能です。

年金の受給条件は簡潔にいうと、少なくとも20年間社会保険料を支払い、規定の年齢(定年)に達していることが必要です。現行の法律で定められている具体的な受給条件は以下の第1項にまとめてあるとおりです。
また社会保険を納付している場合、年金は受給できなくても、一時金を受給することができる場合もあります。そちらについては第2項に簡単にまとめます。

1. 年金

年金を受給するためには、退職時点において以下の条件を充たしていることが必要になります(政令143/2018/NĐ-CP第9条1項参照)。

①労働許可証

ベトナム当局により発給される労働許可証もしくは実務証明書、実務公認書を有していること。

②労働契約書

ベトナム法人との間で、無期限労働契約または12ヶ月以上有期限労働契約に基づいて雇用されていたこと。

③年齢

労働法上の定年に達していること。
定年については、職種により異なりますが、ほとんどすべての日本人は通常の労働条件下のもと、定年が決定されるので、本稿ではその場合のみ記載します(労働法第169条2項、政令135/2020/NĐ-CP第7条1項、政令143/2018/NĐ-CP第9条1項)

男性 女性
退職年 退職年齢 退職年 退職年齢
2024 61歳 2024 56歳4か月
2025 61歳3か月 2025 56歳8か月
2026 61歳6か月 2026 57歳
2027 61歳9か月 2027 57歳4か月
2028から 62歳 2028 57歳8か月
2029 58歳
2030 58歳 4 か月
2031 58歳 8 か月
2032 59歳
2033 59歳 4 か月
2034 59歳 8 か月
2035年から 60 歳

 

④社会保険料納付期間

20年以上社会保険料を支払っていること(政令143/2018/NĐ-CP第9条1項。※注 2019年労働法改正によって改正された後のもの)。

2. 社会保険一時給付金を受給する条件

年金の受給条件を満たさない場合でも、ベトナムで社会保険に加入している外国人労働者は、以下のいずれかのケースに該当する場合、社会保険一時金を受給することができます(政令143/2018/NĐ-CP第9条6項)。

  • ①定年には達しているが、年金を受給するための社会保険料納付期間に満たない。
  • ②年金を受給するための社会保険料納付期間に満たないが、がん、小児麻痺、AIDSなどの生命に関わる重大な疾病にかかっている。
  • ③年金を受給するためすべての要件を満たしているが、ベトナムに引き続き居住しないため、一時給付金受給を希望する。
  • ④年金を受給するための社会保険料納付期間に満たないが、労働契約・労働許可証・実務証明書・実務公認書が満了しており、一時給付金の受給を希望する。

CastGlobal

【執筆者】CastGlobal

ベトナムの法律事務所

ベトナムで主に日系企業を支援する弁護士事務所です。日本人弁護士・ベトナム人弁護士が現地に常駐し、最新の現地情報に基づいて法務面からベトナムビジネスのサポートをしています。

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