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【ニュース】ベトナムへの越境EC等の小口輸入品についての免税範囲の見直し(財務省提案の段階)

はじめに

本日2025年2月18日より、100万VND以下の小口輸入品についての輸入税免税規定が廃止されています。

ベトナム決定01/2025/QĐ-TTg:小口輸入免税の廃止と新たな課税ルール

一方で、財務省は以下のとおり免税対象範囲の見直しと、それ以外の義務などを合わせて政令を提案中との報道がなされており、こちらが早急に検討されそうです。

一時混乱はありそうですが、新たな制度が始まる可能性が高いため越境EC業界含め要注目ですね。
下記が現在提案されている政令の要点です。

■免税対象範囲の再定義
  • 単品価格200万VND以下の商品にVAT免除
  • 同一購入者における年間累計96百万VNDの上限
  • 食品/化粧品等の消費財に限定(工業用部品は除外)
■検査免除の条件
  • 年4回まで検査免除可能
  • 危険物・文化財等は除外対象
  • 分割購入防止のためIPアドレス追跡システム導入

詳細は以下のとおりです。

財務省の新政令案:免税対象範囲の見直し

財務省は免税規定廃止後の新たなルールとして、越境ECを通じて輸入される小口商品の課税に関する政令案を準備中です​。この案では、小額輸入品に一定の範囲で再び免税枠を設ける一方、悪用防止のため厳格な条件を付与する内容となっています。

免税対象の範囲拡大と上限設定

政令案によれば、オンラインプラットフォーム(ECサイト)経由で購入された1件あたりの商品価値が200万ドン(約1万〜1万2千円)以下の輸入品については、輸入関税および輸入段階のVATを免除することが提案されています​。これは従来の100万ドンから閾値を引き上げるもので、小口輸入品に対する免税枠の拡大と言えます​。

ただし年間の累計購入金額が9600万ドン(約55〜60万円)を上限とし、それを超えると免税措置は適用されません​。。この年額上限は、一人の消費者または一企業が免税制度を利用できる総額に上限を設けることで、免税枠の乱用(大量の小口分割発注による免税適用の繰り返し)を防ぐ狙いがあります​。
なお、1件あたり200万ドンを超える注文や、年間上限を超過した場合には、その注文の商品全価値に対して通常の関税・VATが課される仕組みです​。部分的に超過分のみ課税するのではなく、閾値を超えた場合は全額に課税される点に注意が必要です​。

対象となる品目

この免税措置の対象は「オンライン商取引を通じて購入された商品」とされています​。すなわち、ShopeeやLazada、Alibaba系サイト、TikTok Shopなど越境ECプラットフォームを通じた個人輸入品が主な対象です。現時点で特定の商品カテゴリの除外は明記されていませんが、財務省案では2つの選択肢が示されています​。

一つは(A)関係当局が指定する特定品目以外は免税対象外(通常どおり許認可・検査が必要)とする案、もう一つは(B)上記の金額基準に合致するもののみ一律に免税対象とする案です​。後者の場合でも、たとえば禁制品や輸入に際し特別な許可が必要な医薬品・農薬等は従来通り規制対象となるとみられます(それらは別途の法律で輸入自体に許可が必要です)。
実際、ドラフトでは「輸入許可証や各種証明の取得・専門検査を免除する対象品目のリスト」を策定することも検討されており、このリストに載らない商品はたとえ少額でも通常の検査手続きを経る可能性があります​

。最終的な対象品目の詳細については、関係省庁間の協議で確定する見通しです。

検査免除の条件と不正対策

新政令案には、通関時の検査(専門検査や許認可手続)の免除条件についても明確な条件が盛り込まれています。具体的には、価額が200万ドン以下の越境EC輸入品であれば、年間最大4回までは輸入の際に各種の許可申請や品質検査等を免除する方針です​。ただし5回目以降の輸入や、上述の年間累計9600万ドンを超える場合には、たとえ1件ごとの金額が少額でも通常の検査手続が必要になります​。

この「年4回までの検査免除」という頻度制限は、同一人物が免税枠を悪用して大量の小口発送に分散することを防ぐ効果を狙ったものです​。財務省によれば、こうした回数制限と金額上限を組み合わせることで、利用者が政策の穴を突いて注文を細切れに分割する行為に歯止めをかける意図があります​。

不正対策としては、購入者や送付先の識別情報を一元管理・追跡する仕組みづくりが欠かせません。
具体的には、個人識別番号(納税者IDや身分証情報)に基づいて年間免税枠の利用状況を管理することが想定されます。さらに、同一人物が複数のアカウントや住所を使って回数制限を逃れようとするケースへの対策として、ECプラットフォーム側でのデータ連携や、場合によってはIPアドレスなど技術的手段での検知も議論されています。
財務省はまた、免税対象となる商品をまとめ買い(「gom hang」)して国内で転売するような行為を禁止する規定も提案しており​、越境ECの個人輸入制度を悪用した業者的行為には厳しい姿勢を示しています。

施行時期と政府・関係機関の見解

上述の免税廃止措置(100万ドン以下の免税枠撤廃)は2025年2月18日付で既に発効しています​。一方、新たな政令案については現在パブリックコメントや関係省庁との協議を経ている段階で、正式な施行時期は未定です。
財務省は2023年からこの問題に取り組み、2023年6月には一度政府に対し同趣旨の政令案を提出していました​。その後、越境EC取引のさらなる拡大を受けて内容を追加修正(年4回の制限規定などを盛り込み)し​、2024年末〜2025年初頭に改めて策定した草案を発表しています​。関係者によれば、司法省の審査を経て最終案が首相に提出・承認され次第、2025年中にも新ルールが施行される見通しです。

政府および関係機関も、この政策変更について明確な見解を示しています。国会では「小口だからといって免税するのは不公正であり、越境ECを利用した事実上の脱税を許すべきではない」との声が上がっていました​。
実際、国内販売される商品には一律10%のVATが課税されますが、これまで海外ECからの直送品だけが免税されていたため、国内業者にとって競争上のハンデとなっていた面があります。財務省も「小口輸入品の免税は国内製造業や通常の輸入品との競争条件を歪め、不公平を生んでいる」と指摘し、現行制度をこのまま放置すれば「輸入EC商品への逆保護(逆差別)」につながりかねないとの懸念を表明しました​。また、免税によって品質検査が省かれることで、低品質・模造品が無検査で大量流入するリスクも問題視されています​。こうした理由から、政府としては免税措置の見直しは避けられないとの判断に至ったわけです。

国際的に見ても、越境ECに係る課税の強化は一つの流れです。例えばタイでは2024年5月1日から、輸入額にかかわらず全ての輸入商品にVATを課す制度を導入しました​。。欧州連合(EU)も既に2021年に22ユーロ以下のVAT免税枠を撤廃し、少額でも確実にVATを徴収する仕組みに移行しています(関税については150ユーロ以下無税の枠が残っています)。

ベトナム財務省は、こうした近隣諸国や世界の動向も踏まえつつ、自国の電子商取引市場に適した制度設計を進めていると述べています​。

日系企業への影響とまとめ

日本の越境EC事業者および日系企業にとっても、ベトナム市場戦略の見直しが必要になるでしょう。ベトナムの消費者向けに少額の商品を直送販売している場合、今後は顧客が税負担を負うことになるため、価格設定やマーケティングに配慮が求められます。
例えば「送料無料・消費税込み」のような形で、税負担込みの総額表示や事前徴収を行うなど、購入者に分かりやすい対応が重要です。

また、年間4回までの免税枠という制限から、リピーター顧客が頻繁に小口購入する業態では、まとめ買い割引や現地在庫の活用といった配送回数を減らす工夫も検討すべきでしょう。逆に高額商品の場合はもともと課税対象であったため、大きな影響はありませんが、通関手続きが厳格化されることで配送リードタイムが伸びる可能性には注意が必要です。

総じて、ベトナム政府の今回の措置は、越境EC市場の健全化と税収確保、国内産業保護を目的としたバランス策と言えます​。免税の恩恵が縮小することで一時的な取引減少も予想されますが、長期的には透明で公正な競争環境の整備に寄与するでしょう​。ベトナムの越境EC市場は東南アジアでトップクラスの成長率(年15〜20%)を示しており、市場規模は2024年時点で250億ドルを超えるとされています​。
日本企業にとっても依然として魅力的な市場であることに変わりはなく、今回の制度変更を正しく理解し適応することが、今後のビジネスチャンスを活かす鍵となるでしょう。

CastGlobal

【執筆者】CastGlobal

ベトナムの法律事務所

ベトナムで主に日系企業を支援する弁護士事務所です。日本人弁護士・ベトナム人弁護士が現地に常駐し、最新の現地情報に基づいて法務面からベトナムビジネスのサポートをしています。

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