ベトナム、「一時在留許可カード購入制度」検討とビザ制度見直しの詳細
- 2025.03.20
- コラム
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ベトナム政府は、外国人の長期滞在を促進するためにビザ制度全般の見直しを行い、その一環として「一時在留許可カード(暫定的な居住証)を購入できる制度」の導入を検討しています。2025年3月15日、ファム・ミン・チン首相は関連省庁に対し、この新制度の具体的なメカニズム構築に向けた調査・研究を指示しました。以下では、現時点で公表されている内容と、ビザ緩和・在留制度改革の動きについて整理します。
目次
1. 背景と政府の方針
ベトナム政府は、コロナ後の国際観光・投資回復基調を捉えながら、2025年以降の経済成長目標を維持すべく、外国人の入国・滞在をより円滑にする政策を進めています。従来から掲げる方針は「社会経済の発展に寄与する外国人の積極的な受け入れ」です。今回の取り組みも、この方針の延長線上に位置づけられます。
- ファム・ミン・チン首相が「一時在留許可カード購入制度」の研究指示
- 対象分野:観光客、専門家、富裕層、科学者、芸術家、トップアスリートなど特定グループ別にビザ・在留要件を総点検
ベトナムでは既に投資額に応じて最長10年の在留許可が得られる投資ビザ制度がありますが、今回の「購入制度」はそれを補完・拡張する選択肢となり得ます。政府は、特に富裕層や高度人材を呼び込む「ゴールデンビザ」的な施策にも触れており、さらなる開放策に意欲を示しています。
2. 具体的なビザ制度見直しの概要
2.1 ビザ免除(ビザなし渡航)枠の延長
2025年3月、滞在可能期間が15日から45日に延長されているビザ免除措置について、日本を含む12か国を対象に3年間の延長を行いました。期間は2025年3月15日から2028年3月14日までの3年間有効です。
過去の政府決議(2022年・2023年)で設定された免除要件は2025年3月15日をもって失効しましたが、これまでと同様の内容を延長するものとなっています。
2.2 電子ビザ(eビザ)の拡充
eビザの申請から発給までのオンラインプロセスが見直され、処理速度・UIが向上する見込みです。観光客やビジネス渡航者が自国から簡便にビザを取得できるよう、政府がシステムのアップグレードを進めています。
2.3 就労許可証(ワークパーミット)の要件緩和の検討
ITやハイテク産業などの優先分野に従事する外国人を対象に、就労許可証の発給要件緩和や一部免除が提案されています。
3. 「一時在留許可カード購入制度」のポイント
本制度については首相の研究指示が出たばかりで、具体的な仕組みは今後検討される段階です。法改正や新政令の制定が必要と見込まれており、制度設計には時間を要する可能性があります。
想定される内容としては、資金拠出(投資)によって長期滞在資格を得る、いわゆる「ゴールデンビザ」型の制度になる可能性が高いとされています。既存の投資ビザ制度と併せて、より柔軟に在留権を取得できる選択肢が追加される見込みです。
犯罪歴のチェック、資金の出所確認などの規定は厳格化されると考えられます。安全保障や公共秩序に関わるリスクを回避するため、政府は要件や審査プロセスを慎重に定める見通しです。
4. 予測される主な影響
今回の制度見直しは、コロナ後の経済回復を後押しし、観光業界や外国投資誘致に一定のプラス効果をもたらすと予測されます。一方で、外国人流入増加に伴う治安・インフラへの負荷、住宅価格上昇などの懸念にも対応が必要です。ここでは、制度が確定していない状況でもあるため、主なポイントのみ記載します。
4.1 外国人観光客・投資家の増加
- ビザ免除枠の拡大により、短期渡航が増加する可能性。
- 「在留許可カード購入制度」によって富裕層や高度人材が長期滞在しやすくなる余地。
4.2 日系企業などのビジネス活動の容易化
- 日本人のビザなし滞在期間が45日へ延長されていることにより、短期出張の手続きが簡素化。
- 新たな在留資格取得ルートの整備により、駐在員の派遣や専門家の招聘が柔軟化する可能性。
4.3 リスク管理と法令遵守
- 在留資格を「購入」できる制度には、不正利用や治安面の懸念が付きまとうため、厳格な審査が想定される。
- 観光ビザや免除措置の拡大に伴い、目的外活動(不法就労など)の取り締まりも強化される公算。
- 企業・個人ともに、引き続き就労許可や在留資格の範囲内で活動することが求められる。
5. 今後の展望と留意事項
2025年3月中にも関係省庁が検討結果をまとめるとされており、その後、法改正や政省令の整備が進む見通しです。
観光・サービス業界はビザ緩和策を歓迎する一方、治安・インフラ面の懸念から制度導入にはバランスある運用が求められます。タイ・インドネシアなど周辺国でも同様の長期滞在ビザ(デジタルノマドビザ等)が活発に導入されており、ベトナムも競争力強化の一環として制度設計を加速させる可能性があります。
上記はまだ検討中のものが多く、実際どの程度の制度になるかは不明ですが、日本からの投資家にも影響が大きくなる可能性は高く、今後の動きを注視したいと思います。