ホーチミン市カンゾーで始動、ビングループの巨大リゾート都市計画
- 2025.04.20
- コラム
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ホーチミン市唯一の沿岸部であるカンゾー区に、埋め立てによる大規模複合都市「VinhomesGreenParadise」の開発が本格始動。計画地は約2,870ヘクタールにも及び、住宅・商業エリアやリゾート施設が一体となった“海上都市”が誕生する予定です。ビングループ(Vingroup)はこのプロジェクトを、環境・社会・ガバナンス(ESG)重視の次世代都市モデルとして位置付けており、観光と不動産開発の両面でベトナム初の試みとなる壮大な計画。以下、計画のポイントを記載します。
① 目的・背景
2025年4月19日、南部解放50周年(ベトナム統一50年)を記念する時期に合わせて、ビングループはカンゾー地区の沿岸埋め立て都市プロジェクトの起工式を開催しました。この「カンゾー埋め立て都市・観光エリア」計画(プロジェクト名:Vinhomes Green Paradise)は、ホーチミン市当局が長年温めてきたカンゾー開発ビジョンを具体化するものです。ホーチミン市のマスタープラン(2021~2030年、2050年展望)でも、カンゾー区は生態系保全に配慮したエコ都市・観光拠点として位置付けられています。
こうした政府方針の下、ビングループは民間主導の巨大プロジェクトに挑み、カンゾーを「ベトナムに今まで存在しなかった都市の奇跡(kỳ quan đô thị chưa từng có)を創造する」場にしたいと意気込みを示しています
【ポイント】
・総投資額約217兆VND(約84億USD)、2025年4月19日に起工式を挙行し、ホーチミン統一50周年記念事業の目玉と位置付け。
・面積2,870 ha/定住人口23万人/年間観光客800–900万人を想定した「世界トップ級ESGメガシティ」構想。
・「ホーチミン第2のCBDを海上につくる」—金融・MICE・高級観光を一体化し、都市ブランドを一段引き上げる狙い。
② 予定されるインフラ・設備(ハイライトだけ抜粋)
・108階ランドマークタワー:湾岸部を一望する超高層シンボル。
・7 ha「Blue Wave Theater」(5,000席+屋外5万人広場)—東南アジア最大級の劇場型MICE施設。
・Paradise Lagoon(人工ラグーン443 ha)+Landmark Harbour(国際クルーズ港)で“水都”を演出。
・Tiger Woods/RTJ II設計の18H×2ゴルフコース、30,000 m²「Winter Wonderland」スノーパークなど“365日エンタメ”。
・Vinmec–Cleveland Clinic国際病院やVinschool招致で高付加価値ライフスタイルを供給。
・洋上風力(沖合10 km)&EV交通網で都市エネルギーを100%再エネ賄い、スマートシティ技術を全面実装。
③ 開発状況(2025年4月21日時点)
・埋め立てフェーズ開始:1,357 haを先行造成、906 haを標高2.9 mで整地中。
・2025–30年段階開業→50年運営許可の工程で、まず基盤整備+一部商業施設を2027年前後に先行オープン予定。
・市政府が橋・高速メトロなど周辺インフラを優先整備し、行政手続きも“特別窓口”で加速。
④ブンタウとの差別化と補完関係
・距離は海上15 km・フェリー30 分だが、陸路は120 km/3 時間—“アクセス格差”を10 km越え海上大橋で解消予定。
・カンゾー=「ハイエンド×ESGスマートシティ」:人工白砂ビーチ・金融センター・MICE・クルーズ港で国際富裕層&長期滞在を狙う。
・ブンタウ=「老舗ビーチタウン」:自然白砂42 km・週末・国内観光が中心。
・競合より“ハブ&スポーク”モデル—ブンタウが大衆ビーチと港湾・石油産業を担い、カンゾーが高付加価値観光・金融を担当する棲み分けを市・省が推進。
報道によれば長年「ホーチミン市の盲腸」とも揶揄されてきたカンゾー区ということですが、最大不動産会社のビングループによる今後の大規模開発に注目ですね。ホーチミン市に組み入れられる予定のブンタウとの棲み分けもどうなっていくか、楽しみです。