【2026年4月施行】知的財産法大改正まとめ~AI利用、IP資産化、オンライン執行強化~
- 2026.01.13
- コラム
- CastGlobal
目次
1.はじめに
2026年4月1日に、知的財産法の改正法(131/2025/QH15)が施行されます。
今回の改正は、立法趣旨として大きく ①IPの資産化、②手続の簡素化、③権利保護・執行の実効性向上、④AIやデジタル化など新領域へのアップデートを全面に押し出しています。
2026年3月施行のAI法の施行細則と併せて、今後AIに関する具体的規制が制定されていくことが想定されますが、詳細については今後の政令等に委ねられている部分が多いです。
本稿では、重要な改正点を分かりやすく解説します。
2.重要な改正点まとめ
AI生成物
第6条5項(新設)で、AI等を用いて生成されたIP対象の「権利発生・確立」について、政府が詳細を定める枠組みを明記しました。
AI学習
第7条5項(新設)で、適法に公表され公衆がアクセスを許された文書・データを、研究・試験・AI訓練に使用できるとしつつ、権利者の正当な権利利益に不合理に影響しないことを条件にしました。
IPの資産化
第8a条(新設)で、IPを資産として扱う方向性を明文化しました。詳細は今後の法令に委ねられますが、民事・商取引・投資等でIPを利用できること、国として出資(現物出資)や融資担保(質入れ等)への利用を奨励 することが規定されました。
「同一対象×複数IP権」の衝突ルールを明文化
第7条4項(新設)で、同一対象に複数のIP権が成立する場合、後発の権利行使が先発権利の通常利用と矛盾するなら、後発権利の行使終了を裁判所が決定し得る枠組みを規定されました。
意匠
意匠(工業意匠)の定義で、製品の外形が「物理または非物理」の形態を含む旨を明記しています。
手続迅速化
第119条2項の審査期間が短縮され、発明は原則18→12か月、商標・意匠・GIは9→5か月と変更されました。また、第119条2a(新設)で、一定の場合の迅速審査(3か月)を制度化(対象は発明・商標)されました。
オンライン侵害への執行強化
以下のように、執行が強化されました。
・裁判所が削除・非表示・アクセス無効化等を命じ得る類型を追加。
・立証困難時の裁量賠償の上限を5億→10億VNDに。精神損害は基礎賃金×10〜100倍方式へ。
・仮処分としてもアクセスの一時無効化を追加。
プラットフォーム責任
第198b条でプラットフォーム管理者の保護義務を明文化されました。また、第198b条の見出し自体を改め、仲介サービス企業+プラットフォーム管理者の責任として整理されました。
付録:改正前後条文比較
総則・定義・国家政策(AI/デジタル化を含む)
| 項目 | 条文(旧) | 条文(新) | 改正の要点 |
| 意匠(工業意匠) | 第4条13項:形状・線・色彩等の外観 | 第4条13項:物理/非物理の外形を含む | 非物理的意匠を明確に包含。 |
| AI生成物の扱い | 第6条:権利発生根拠(一般規定) | 第6条5項新設:AI等が生成した成果については政府が規定する | AI生成物の帰属・保護の射程を今後詳細に規定する旨を明確化。 |
| IPの衝突 | 規定なし | 第7条4項新設:一つの対象に対し複数の知的財産権が発生し又は確立される場合、後に発生した又は後に確立された知的財産権の行使の終了が強制される | 同一対象に複数のIP権が絡む場合の衝突処理の考え方を整備 |
| AI学習 | 規定なし | 第7条5項新設:適法に公表され、かつ公衆がアクセスを許される知的財産権の対象に関する文書及びデータを、AIの訓練に使用できる(著作者、知的財産権者の正当な権利及び利益に不合理な影響を与えないことが条件)。 | AI学習の条件を規定 |
| IPの資産利用 | 規定なし | 第8a条新設:知的財産権を用いて、民事取引、商取引、投資その他の活動を行うことができること、国家は知的財産権を出資に用い、または融資のための担保(抵当)として用いることを奨励することを規定。 | IPの資産化を示唆 |
著作権・著作隣接権
| 項目 | 条文(旧) | 条文(新) | 改正の要点 |
| 保護対象外 | 第15条:保護対象外列挙 | 第15条4項追加:「アイデア/スローガン/単独の作品名」 | スローガンや単独の作品名は原則保護外であることを明確化。 |
| コンピュータプログラムの保護 | 第22条1項で規定 | 第22条1項改正:オンラインプラットフォーム上の利用形態等を明確化 | ローカル複製だけでなく、オンライン環境での利用を意識した整備。 |
手続(審査期間)
| 項目 | 条文(旧) | 条文(新) | 改正の要点 |
| 審査 | 第119条2項:審査期間
a)発明について:実体審査請求が出願公表日前に提出された場合は公表日から18か月以内、又は請求が公表後に提出された場合は請求受理日から18か月以内; |
第119条2項改正:審査期間
a)発明について:実体審査請求が出願公表日前に提出された場合は公表日から12か月以内、又は請求が公表後に提出された場合は請求受理日から12か月以内; 第119条2a新設:3か月以内の迅速審査の制度化 |
審査の迅速化 |
権利行使・救済(オンライン侵害・損害賠償・仮処分)
| 項目 | 条文(旧) | 条文(新) | 改正の要点 |
| 仲介サービス企業の責任(対象拡張) | 第198b条:仲介サービス提供企業と規定 | 第198b条:プラットフォーム管理者に権利保護義務を追加 | いわゆるプラットフォーム側の権利保護義務を明文化。 |
| 民事救済 | 第202条:民事救済は1~5類型 | 第202条に6・7項追加:偽造品や海賊版等の廃棄命令、アクセスの遮断 | 裁判所がオンライン侵害のアクセス無効化等を命じ得る形へ拡張。 |
| 法定損害賠償(上限引上げ) | 第205条1項d:上限5億VND | 第205条1項d:上限10億VND | 立証困難時の裁量賠償の上限が倍増。 |
| 精神損害(算定方式変更) | 第205条2項:500万~5000万VND | 第205条2項:基礎賃金の10~100倍 | 金額固定から指数化へ(将来の賃金制度変更にも対応)。 |
| 仮処分 | 第207条:仮処分は差押等中心 | 第207条1項に「アクセス遮断」追加 | 訴訟前後の暫定措置として、オンライン侵害に即応可能。 |