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電子労働契約プラットフォーム本格運用へ ― 2026年5月15日公布の通達の要点と実務対応

1. 通達08/2026/TT-BNV公布の趣旨

2025年12月24日、ベトナム政府は電子労働契約に関する初の包括的な政令である政令第337/2025/NĐ-CP号(以下「政令337」)を公布しました。政令337は、電子労働契約の締結・履行(第II章)に加え、内務省が構築・運営する「電子労働契約プラットフォーム」(第3条第2項)の構築・管理・利活用(第III章)について定めています。施行日は2026年1月1日ですが、プラットフォーム自体は遅くとも2026年7月1日までに本格稼働させることとされ、同日以降に締結される電子労働契約は政令337に従って取り扱われます(同第28条第1項)。
もっとも、政令337はID付与の手順、アカウント運用、eContract事業者の接続手続、データ保存といった技術的・運用的詳細までは規定していません。そこで内務大臣は、2026年5月15日、政令337を詳細化・施行指針化する通達第08/2026/TT-BNV号(以下「通達08」)を公布しました。施行日はプラットフォーム本格稼働に合わせた2026年7月1日です(同第23条第1項)。

2. 通達08の規定内容の概要

(1) 電子労働契約識別コード(ID)の付与(同第4~6条)

電子労働契約がプラットフォームに送信されると、唯一無二のIDが付与されます(同第4条第1項)。このIDは契約の改訂・補足・一時停止・終了があっても変わらず、付録や各種通知も同じIDに紐付けられます(同第4条第2項)。ID構造は「英字1文字+数字12桁」(同第5条)で、英字部分は契約の種類を識別します(A=2026年7月1日以降に政令337第6条準拠のeContractで締結された契約、B=紙契約を電子化したもの、C=2026年7月1日前に締結された電子労働契約)。
ID付与の流れは、eContractサービス提供者(以下「eContract事業者」)が政令337第14条第1項所定のデータとともに契約をプラットフォームに送信し、プラットフォームが受信から24時間以内にIDを自動付与してeContract事業者に返送するというものです(同第6条第2項)。不備があるとIDは付与されず、その旨が通知されます(同第6条第5項)。

(2) プラットフォーム・アクセスアカウント(同第7~8条)

労働者・使用者は、原則として国家電子認証システム(VNeID)が発行する電子認証アカウントでログインします(同第7条第1項a号)。法人が法人電子認証アカウントを取得できない場合に限り、内務省が直接アカウントを発行します。アカウントは、①本人申請の場合、②VNeIDアカウント自体のロックの場合、③緊急の情報セキュリティ事象が起こった場合、④管轄機関の決定による場合、⑤その他法令上の事由でロックされ(同第8条第1項)、これらの事由が消滅した場合または管轄機関の決定により解除されます(同第8条第2項)。

(3) eContractとプラットフォームの接続(同第9~12条)

eContract事業者は、政令337第6条第3項の条件を満たしたうえで、内務省に接続申請書類を提出し(第9条第1項)、内務省は受理から20営業日以内に書類審査・技術テストを行い、合格した事業者に接続アカウントを発行します(同第9条第2項)。
接続の一時停止事由(同第10条第1項)は、事業者からの申請の場合、登録した技術方案の不遵守の場合、報告義務の不履行の場合、政令337第6条第3項の条件喪失の場合に加え、「直近1か月で累計5%以上の電子労働契約がID付与を拒否された場合」(同項đ号)が定められています。接続終了事由(同第10条第3項)としては、廃業の場合、接続アカウント発行後1年以内に未稼働の場合、書類偽造の場合、電子取引法2023年第6条所定の禁止行為を行った場合、一時停止期間内の不備未是正の場合等があります。原則として3営業日前に内務省からの事前通知がありますが、緊急時は即時停止+24時間以内の事後通知が認められ(通達08第11条第1項)、事業者には弁明・異議申立権が保障されています(同第11条第3項)。なお、すでに適法に締結された電子労働契約の効力には影響しません(同第10条第5項)。

(4) データの保存(同第18条)

電子労働契約・付録等の保存期間は、労働契約の終了日から10年間とされ、同一の労使間で複数契約が連続する場合は最終契約の終了日が起算点となります(同第18条第3項)。

(5)労働使用状況報告のオンライン化(同第19条)

使用者の労働使用状況報告(政令145/2020/NĐ-CP第4条第2項)はプラットフォーム経由となるため(通達08第19条第2項)、社内業務フローの見直しが必要です。

(6) 経過措置(同第24条)

2026年7月1日以降に締結する電子労働契約は、プラットフォームに送信してIDを取得することが義務付けられます(同第24条第1項)。ただし、政令337第6条第3項の条件を満たしているeContract事業者で同日までに接続未完了の場合でも、同日以降のサービス提供は継続でき、2026年7月20日までに接続を完了すれば足ります。接続前に締結された契約も法的効力を有し、接続完了後に速やかにID付与の対象となります(同第24条第2項)。

3. 実務上のポイント

これらの政令・通達は、電子労働契約の締結を強制しているわけではございません(政令337第4条第3項)。ただ、「紙の書面による労働契約に代えて電子労働契約を使用することを奨励する」と記載があり、今後は電子労働契約への切り替えを政府が推奨する方向性には間違いありません。少なくとも労働使用状況報告はプラットフォーム経由で行う必要があるため、対応が必要となります。

 

CastGlobal

【執筆者】CastGlobal

ベトナムの法律事務所

ベトナムで主に日系企業を支援する弁護士事務所です。日本人弁護士・ベトナム人弁護士が現地に常駐し、最新の現地情報に基づいて法務面からベトナムビジネスのサポートをしています。

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