【ベトナム労務】残業時間の引き上げについて
- 2022.05.24
- コラム
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1. 2022年3月23日、ベトナムの国会常務委員会は、1年および1月あたりの残業時間(時間外労働)に関する議決
17/2022/UBTVQH15号(以下、「議決15号」という場合があります)を採択しました。当該議決により、法律45/2019/QH14号(以下、「労働法」といいます)第107条の残業時間についての規定が一部修正されます。
2.議決15号による変更点は以下のとおりです。
1)1年当たりの残業時間の上限
㋐ 上限の増加
労働法は1年あたりの残業時間について、特定の業種等のみ300時間以内の範囲で認められる(労働法第107条第3項)と規定しており、当該特定の業種等に該当しない場合は、その上限を200時間としていました。議決15号第1条第1項本文により、労働法第107条第3項に該当しない場合についても、残業時間の上限を300時間とできることとなりました。
ただし、上記の規定は、満19歳未満の労働者、妊娠して7か月以降もしくは生後12か月未満の子供を養育する女性労働者などには適用されません(議決15号第1条第1項但書。適用除外の詳細については同但書を確認してください)。
㋑ 残業実施の要件
ただし、同議決によっても労働法の原則に従い、労働者に残業させるには労働者の同意があることが前提となります(議決15号第1条第1項本文・労働法第107条第2項a号)。
また、200時間を超える残業を実施する会社は、労働法第107条第4項に従って、当該残業を労働者に実施させることについて省級人民委員会に属する労働専門機関に書面で通知を行わなければなりません(議決15号第3条第2項)。
2)1月当たりの残業時間の上限
労働法は1月あたりの残業時間が40時間を超えてはならないと規定していたところ(労働法第107条第2項b号)、議決15号は1月当たり60時間までの残業を認めています(議決15号第2条)。
この場合については、労働専門機関に対する通知は必要ありませんが、残業を実施させることの前提として労働者の同意が必要なことは同様です(議決15号第1条第2項・労働法第107条第2項a号)。
3. 効力
議決15号第1条(1年当たりの残業時間に関わる規定)は2022年1月1日から遡って効力が発生します(議決15号第4条第1項)。そのため、年あたりの残業時間を計算する際には、本年の1月から3月までの残業時間も含めて計算する必要があります。議決15号第2条(1月当たりの残業時間に関わる規定)は2022年4月1日から効力が発生します。