【ベトナム労務】労働契約の締結権限者について
- 2022.08.25
- コラム
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1. 使用者側における労働契約の締結権者
法律45/2019/QH14号(以下、「労働法」といいます)第18条第3項a号により、使用者側の労働契約の締結権者は、企業の法定代表者または法の定めるところにより委任を受けた者とされています。
したがって就業規則などで特別に労働契約の締結者について定めを設けていない場合(政令145/2020/ND-CP号第69条第2項e号参照)など、特別な内部規定等がない場合は、原則として社長等の法定代表者が労働契約の締結権限を有することになります。
2. 法定代表者との労働契約の締結
労働法第3条第5項によれば、労使関係は、賃金の支払いに関する社会的関係をいうとされていますので、会社と法定代表者の間においても給与の支給が発生する以上は、労働契約の締結が必要になってきます。
それでは、会社が法定代表者と労働契約を締結する場合、誰が会社を代表して労働契約に署名することになるのでしょうか。
なお、下記の2)以降については、定款に特別の定めがある場合は当該定款の規定に従うことなります。
したがって、当該事項につき定款に特別な定めがない会社を前提に記載しております。
1)自己契約の禁止
法律91/2015/QH13号(以下、「民法」といいます)第141条第3項によれば、法人を代表して自分との契約を行う自己契約は原則として禁止されています。したがって、法定代表者は自分の労働契約について会社を代表して締結することはできません。
2)有限責任会社
① 社員総会が設置されている会社
社員総会のある有限責任会社の場合、社員総会が法定代表者の選任権限をもちます(企業法第55条第2項đ号、第82条第1項)。したがって、社員総会の長である社員総会長が法定代表者との労働契約に署名することになります。
社員総会長が法定代表者となっている場合、社員総会によって任命されるその他の社員総会の構成員が、社員総会長との間の労働契約に署名することになります。
② 会社の会長を設置する一人有限責任会社
会社の会長を設置する一人有限責任会社の場合、会社の会長に法定代表者の選任権限があります(企業法第82条第1項)。したがって、会社の会長が法定代表者との労働契約に署名することになります。
3)株式会社
株式会社の場合、取締役が会社の法定代表者を選任する権限を有します(企業法第153条第2項i号)。したがって、取締役会の長である取締役会会長が法定代表者との労働契約に署名することになります。
取締役会長が法定代表者となっている場合、取締役会によって任命されるその他の取締役会の構成員が、取締役会会長との間の労働契約に署名することになります。