ベトナムの労働法やその関連法令において、女性労働者、未成年労働者、高齢労働者については一部特別な規定が置かれています。以下では、それぞれの概要を整理していますのでご確認ください。
2021年施行の2019年労働法での変更点はオレンジで表示しています。
1.女性労働者
以下のとおり、女性の労働者に対しては、一部特別の規定が置かれています。
項目 |
内容 |
妊婦・養育時の保護 |
- 以下の場合、女性労働者に深夜労働、時間外労働、遠隔出張を命じてはならない。
- 妊娠7ヶ月目以降の妊婦。高地、遠隔地、国境、島嶼に勤務する場合は、妊娠6ヶ月目以降の妊婦
- 本人の同意を得る場合を除き、12ヶ月未満の子供を育児中の者
※12ヶ月未満の子供を育児中の者の同意を得る場合、使用者は、その者に深夜労働、時間外労働、遠隔出張を命じて問題ない旨明記された。
- 重労働に就く女性労働者が妊娠7ヶ月となった際には、賃金は減額されることなく、軽微な労働に異動し、または1日あたりの勤務時間を1時間短縮される
- 2019年労働法第137条2項によれば、重労働に就く女性労働者が妊娠7ヶ月となった場合だけではなく、妊娠中の女性労働者が重労働、有害、危険な職業、特別に重労働、有害、危険な職業、又は出産の能力及び子供の養育に悪影響を与える職業・業務を行い、使用者に通知した場合も、12ヶ月未満の子供の育児期間が満了するまで、賃金が減額されることなく、軽微、安全な労働に異動され、または1日あたりの勤務時間を1時間短縮される。
- 女性労働者は、労働契約書の賃金が減額されることなく、生理期間中は1日に30分、12ヶ月未満の子供の育児期間中は1日に60分の休憩を取得することができる。
- 就業継続が胎児に悪影響を与えるとした内容の、認定医療機関による診断書を有する妊娠中の女性労働者は、労働契約の一方的解除または一時的停止が可能
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- 出産前後で6ヶ月の休暇
- 生まれた子供が双子以上だった場合には、1人につきさらに1ヶ月休暇延長
- 出産前の休暇期間は、2ヶ月を超えてはならない。
- 職場復帰について労働者の健康に問題がないとする内容の認定医療機関による診断書がある場合、使用者と合意したうえ、最短で4ヶ月の休暇後、女性労働者は職場へ復帰することができる
- 社会保険から6ヶ月分の出産手当
※なお、男性も原則5営業日(帝王切開の場合と妊娠32週未満の出産の場合7営業日)まで休暇をとり、その間社会保険から手当をもらえる
→会社はその期間の給与を支払う必要はない。(2016年1月1日の新社会保険法より) |
雇用保障 |
- 女性労働者は休暇前と同じ業務に就くことが保証される
- 以前の業務が無くなった場合、使用者は別の業務に就かせる必要があり、給与額は休暇前より引き下げてはならない
- 妊娠中・出産休暇中の女性労働者、12ヶ月齢未満の子供を養育中の労働者は解雇することができない。
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健康診断 |
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2.未成年労働者(18歳未満)
未成年労働者に対しては、以下のような規定が特に定められています。
項目 |
内容 |
労働時間 |
- 満15歳から18歳未満の未成年労働者の勤務時間は、1日8時間または週40時間を超えてはならない。
- 15歳未満の労働者の勤務時間は、1日4時間または週20時間を超えてはならない。15歳未満の労働者を、時間外労働または深夜労働に使用することを禁止する。
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業務内容 |
- 未成年者は、その体力、知力、人格の発展を保証するため、健康に適した業務のみに従事できる。
- 満13歳から15歳未満の年少者を労働傷病兵社会福祉省が規定したリストに記載される軽微な業務においてのみ使用することができる
- 満15歳から18歳未満の未成年労働者の使用の禁止業務、禁止場所が労働法147条に定められている。
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労働契約 |
- 満15歳から18歳未満までの労働者と労働契約を締結する場合、労働者の法定代理人の書面での同意が必要であると記載
- 満15歳未満の場合は、労働者と労働者の法定代理人の署名が必要。
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有給休暇 |
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健康診断 |
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3.高齢労働者(定年退職以降)
高齢労働者に対しては、以下のような規定が特に定められています。
項目 |
内容 |
労働時間 |
- 1日あたりの勤務時間の短縮または非常勤勤務制度の適用を受けることができる
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業務内容 |
- 安全な勤務条件が保証されている場合を除き、高齢労働者の健康に悪影響を与える重労働、危険または有害な業務、特別に重労働、危険または有害な業務に、高齢労働者を使用することを禁止する。
- 使用者は、職場における高齢労働者の健康に配慮する責任を負う。
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労働契約 |
- 使用者は、必要があれば、十分な健康状態の高齢労働者と相談した上、労働契約締結の手続をした上で契約の延長または新規労働契約の締結を行うことができる。
※2019年労働法第149条1項によれば、労働契約に関しては、高齢労働者と使用者は有期限労働契約を多数回締結する合意をすることができることとなった(通常は2回)。
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健康診断 |
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