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コラム

ベトナムの駐在員事務所について

1. 駐在員事務所の設立要件

日本で正式に設立され、登録(記)されている会社で、1年以上営業活動を継続している会社は、ベトナムに駐在員事務所を設立することが可能です(政令07/2016/ND-CP号(以下「政令07号」といいます)第7条第1項・第2項)。

2. 駐在員事務所の法的地位

駐在員事務所は、外国企業がベトナムに進出するに当たっては最も簡便な形態の一つですが、以下に記載するように法的地位にいくつかの制限があります。

1)法人格がないこと

駐在事務所にはベトナムの法律上法人格が認められていません。そのことから、その他の会社形態とは異なり無限責任(責任の範囲が出資額に限定されない)を負うとされています。また、法人税の納付義務も発生しません。

2)活動制限

上記のとおり駐在員事務所には法人格がなく、法律に規定された範囲でのみ活動が認められます。以下、駐在員事務所ができること・できないことについてその主要な内容を記載します。

できること できないこと
外国本社との連絡業務、市場調査、外国投資家の投資・経営の機会の促進(政令07号第30条) 営利目的の活動(商法第18条第1項)
事務所や必要な施設および設備の賃借(商法第17条第2項) 外国本社の代理人として契約を締結し、また既に締結された契約の修正等を実施すること(商法第18条第3項)
支出専用の銀行口座の開設(商法第17条第4項参照) 顧客から入金を受けること
就業するベトナム人および外国人の雇用(商法第17条第3項)

※表中に引用されている商法とは、法律36/2005/QH11号を指します。

3)存続期間

駐在員事務所の存続期間は法律上5年とされています。もっとも、更新することにより5年を超えて事務所を存続させることが可能です(政令07号第9条)。

3. 駐在員事務所長

駐在員事務所長について以下のような法律の規定が存在します。

1)居住義務

その他会社の法定代表者には、少なくとも一人がベトナムに居住しなければならないという居住義務が法律上規定されています(法律59/2020/QH14号(企業法)第12条第3項)。一方、駐在員事務所長については居住義務について明示した規定が存在しません。

2)国内不在時の権限の委任

もっとも、居住義務はないものの、駐在員事務所長はベトナムに不在する場合、その権限を誰かに委任しなければならないとされています(政令07号第33条第3項)。受任者については法令の規定上、特に限定がなされていませんが、法令の趣旨から考えて受任者はベトナム居住者でなければならないと考えます。

3)兼任禁止

以下の役職(職責)に就くことが法律上禁止されています(政令07号第33条第6項)
a. 同じ外国法人の支店の代表
b. 他の外国法人の支店の代表
c. その外国法人の法的代表者又は、他の外国法人の法的代表者
d. ベトナム法律に従い設立する経済組織の法的代表者`

CastGlobal

【執筆者】CastGlobal

ベトナムの法律事務所

ベトナムで主に日系企業を支援する弁護士事務所です。日本人弁護士・ベトナム人弁護士が現地に常駐し、最新の現地情報に基づいて法務面からベトナムビジネスのサポートをしています。

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