【ベトナム企業法】有限責任会社と株式会社の違い

ベトナムで現地法人を設立するにあたり、設立する法人の形態として、有限責任会社か、又は株式会社を検討するのが一般的です。
以下では、有限責任会社と株式会社の主な違いについて説明します。

1 出資者数

有限責任会社は、1名の個人又は組織が出資者となる1名有限責任会社と、2名以上50名以下の個人又は組織が出資者となる2名以上有限責任会社に区別されます(企業法46条1項)。
株式会社は、3人以上の個人又は組織が出資者となる組織形態であり、出資者数に上限はありません(企業法111条1項b)。

2 機関構成

1)1名有限責任会社

(ア)出資者が法人の場合
会社所有者が法人の場合、委任代表者を1人以上選任しなければなりません。
3名以上の委任代表者を選任した場合、会社は、社員総会を設置しなければならず、会長は、委任代表者の中から選任されることになります。
委任代表者が1人の場合の機関構成は、会長、社長又は副社長であり、3人以上の場合の機関構成は、社員総会、社長又は副社長となっていますが、監査役の選任は必須ではありません(企業法79条1項)。

(イ)出資者が個人の場合
会社所有者が個人の場合、機関は会長と社長によって構成されますが、こちらも監査役の選任は不要です。

2)2名以上有限責任会社

2名以上有限責任会社の場合、社員総会,社員総会の会長,社長又は総社長を置かなければならず、うち一人は法定代表者と兼任する必要があります(企業法54条3項)。他方で、国営企業やその子会社でない限り、監査役会の設置は不要です(企業法54条2項)。

3)株式会社

株式会社の機関構成は、以下の2種類が規定されています(企業法137条1項)。

a) 株主総会,取締役会,監査役会及び社長又は総社長。株式会社の株主が 11 人未満であり,各株主が会社の株式総数の 50 パーセント未満を保有する組織である場合,監査役会の設置は強制ではない。
b) 株主総会,取締役会及び社長又は総社長。この場合,取締役の少なくと も 20 パーセントが独立取締役でなければならず,また,取締役会に直属する会計監査委員会がなくてはならない。

3 持分の譲渡

1)有限責任会社

有限責任会社の社員が自己の持分を売却する場合、以下の手順を踏まなければなりません(先買権。企業法52条1項)。

a) 他の各社員に対し,持分に応じた割合で,同一の売却条件により持分の売却を申し出る。
b) 売却を申し出た日から 30 日以内に,他の社員が購入しない場合,社員でない者に対し,上記a)の売却の申出と同一の条件で譲渡する。

2)株式会社

株式会社の場合、株主は原則として自由に自己の株式を売却することができます(企業法127条1項)。
ただし、①企業登記証明書の発給を受けた日から 3 年以内の間,②発起株主でない者に株式譲渡する場合には、株主総会の承認を得る必要があります(企業法120条3項)。
また、定款により譲渡制限を課すことは可能です。

4 種類株式

1)有限責任会社

有限責任会社の場合、利益の分配や議決権の行使は、出資持分の割合によって決定されます。

2)株式会社

株式会会社は、普通株式のほか、以下のような優先株式を発行することが可能です(企業法114条2項)。
a) 配当優先株式。
b) 償還優先株式。
c) 議決権優先株式。
d) 会社の定款及び証券に関する法定の規定に従ったその他の優先株式

5 まとめ

以上の4点の相違点をまとめると、以下のようになります。
なお、株式会社のみが社債が発行でき、また証券市場に上場できるなど、上記の主な相違点以外のその他の相違点もありますので検討の際にはご留意ください。

組織形態  出資者の数  持分譲渡 種類株式 機関構成
1名有限責任責任会社  1名 先買権あり なし 本文記載のとおり
2名以上有限責任会社  2名~50名 先買権あり なし 本文記載のとおり
株式会社 3名以上 原則自由(譲渡制限の設定可能) 発行可能 本文記載のとおり

 

CastGlobal

【執筆者】CastGlobal

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