ベトナムで労働者が退職する際に会社が回収すべき書類
- 2025.06.12
- コラム
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ベトナムにおいて労働者が退職する際に労働者から回収すべき書類についてまとめてみました。労働者の退職時の手続きについては過去記事をご参照ください。
1.労働者からの回収が必要な書類
(1)法令上回収が義務付けられている書類
健康保険証、就労許可証(外国人の場合)、ビザ・レジデンスカード(外国人の場合)になります。以下、一つずつ詳しく見ていきます。外国人労働者については、労働許可証やビザ・レジデンスカードの返却手続に時間を要することが予想されるため、早めに準備することが求められます。
- 健康保険証
社会保険停止手続きのために回収が必要となります。労働者が被用者保険の被保険者でなくなる時点で会社が回収し、社会保険機関へ返納する義務があります。退職日当日にカードを受領して当局に減員申請し、その後カード原本を返送するのが一般的です(ベトナム健康保険法25/2008/QH12 第20条1項b、その他当局ガイドライン) - 就労許可証(日本人含む外国人の場合)
会社が労働者から就労許可証を回収し、退職から15日以内に発給元(労働・傷病兵・社会省/DoLISA)へ返納する義務(政令152/2020/ND-CP 21条)があります。その際には、返却理由を明記した文書も添付する必要があります(実務慣行上の記載内容は、企業情報、外国人労働者情報、就労許可証の情報、返却の理由、退職日になります)。回収できなかった場合にも、回収できなかった理由を記載する必要があります。特に最近は就労許可証の返却について厳格に管理されるようになってきていますが、発行官庁が返却の確認書を発行しないことがあるため、返却の際には2通の返却文書を用意し、1通に発行官庁の押印・確認をもらうことが推奨されます。 - ビザ、レジデンスカード(日本人含む外国人の場合)
外国人が退職する場合、労働許可証に加えて、ビザ、レジデンスカードを回収し、入国管理局に返却する必要があります(ベトナムにおける外国人の入国・出国・乗継・居住に関する法律第45条2項e)。返却方法については、企業が労働者から回収したあと発行官庁への返却通知書を準備し、出国準備のために一時滞在の延長(約15日間)を申請するという順番で行うことが通常です。
(2)回収しておくことが望ましい書類
- 終了合意書
終了合意書の詳細についてはベトナム法で規定されていませんが、以下の内容を明記すべきです。
・契約当事者の基本情報
・契約開始日・終了予定日
・解約理由・責任の所在
・清算項目(報酬・退職金・休暇清算等)
- 会社資産
ノートPC、携帯電話、USB、社章・社員証など。 - 秘密保持誓約の再確認書
NDAや労働契約で定めがある場合に、あらためて確認しておくと紛争予防に役立ちます。 - 業務引継書
必須ではありませんが、後日の業務が円滑になります。
2.会社側から従業員への返還が必要な書類
- 社会保険手帳原本
本人へ返却しなければなりません(労働法45/2019/QH14 48条3項a) - 従業員の業務プロセスに関連する文書のコピー(従業員から要請あった場合のみ)
労働法45/2019/QH14 48条3項bに定めがあります。