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verigoods.vn開始|製品・商品品質法改正(2026/1/1)とトレーサビリティ実務

2026年1月1日施行の「製品・商品品質法(改正)」に関連して、商工省(Bộ Công Thương)が2025年12月23日より公式サイトverigoods.vnでトレーサビリティ管理システムの運用を開始しました。結論から言うと、verigoods.vnは、改正法が導入した“高リスク品のトレーサビリティ義務(ロードマップ導入)”を現場で回すための制度インフラと位置づけられます(少なくとも商工省所管領域では)。

※改正法の全体像は、先に公開した以下の記事で解説しています(本稿はその続編です)。
▶ 2026年施行へ|ベトナム製品・商品品質法 大改正を総解説(リスク区分・デジタルパスポート等)

2026年施行へ|ベトナム製品・商品品質法 大改正を総解説―リスク区分とデジタルパスポート義務とは?

1. verigoods.vnとは(商工省の公式トレーサビリティ基盤)

商工省(国内市場管理・開発局)は、2025年12月23日からverigoods.vnでトレーサビリティ管理システムを運用開始したと公表しました。企業は、原材料の由来、製造・流通・販売の情報を統一データ標準に沿って登録・更新し、電子認証コード/電子認証ラベル(QR等)を製品に付して消費者・当局が確認できる仕組みです。

  • 開始日:2025年12月23日(運用開始)
  • 重要:2026年1月1日から「一部の高リスク品目」に必須化(商工省通達の発効に連動)
  • 制度目的:消費者保護、情報透明化、模倣品・偽造品対策、事後監視(hậu kiểm)強化

出典(ベトナム語)
・商工省(国内市場管理・開発局)公式発表(2025/12/22付)
Bộ Công Thương chính thức triển khai Hệ thống truy xuất nguồn gốc từ 23/12/2025
・政府電子新聞(Chinhphu.vn)報道(2025/12/22付)
Chính thức triển khai Hệ thống truy xuất nguồn gốc từ 23/12

 

2. 「製品・商品品質法(改正)」との関係

2-1 改正法が新設した「トレーサビリティ義務(高リスク品)」

改正法(法律番号:78/2025/QH15)は、Điều 6d(トレーサビリティとサプライチェーン透明化)を新設し、高リスク製品・商品についてトレーサビリティを「義務」としました。さらに、どの品目が高リスクに該当するかは各省庁がリスク評価に基づいて指定し、ロードマップにより段階導入する建付けです。

  • 高リスク品はトレーサビリティが必須
  • 対象品目は「省庁が指定」(一律ではない)
  • 導入は「ロードマップ」で段階的(企業能力・業界特性に配慮)
2-2 「デジタル製品パスポート(hộ chiếu số)」概念との接続

同改正法は、hộ chiếu số của sản phẩm(製品のデジタル・パスポート)を定義し、バーコード等やデータベースリンクを通じて、製品情報とサプライチェーン情報を読み取り可能としています。トレーサビリティ義務(Điều 6d)と、デジタル技術活用(Điều 6đ)がセットで制度設計されています。

出典(ベトナム語・法令原文)
・改正法(78/2025/QH15)全文(Thư Viện Pháp Luật)
Luật Chất lượng sản phẩm, hàng hóa sửa đổi 2025

ポイント整理
verigoods.vnは、商工省所管の市場流通領域において、改正法が求める「高リスク品のトレーサビリティ義務」を“実務で実装するための共通基盤”として設計されている、という理解が合理的です(公式発表でも、改正法の施行(2026/1/1)への対応として位置づけられています)。

 

3. 2026/1/1から“必須化”され得る領域(現時点での公表範囲)

商工省(国内市場管理・開発局)は、商工省通達が2026年1月1日に発効すると、高リスクの特定グループに対して必須化すると述べています。公表記事で例示されているのは、概ね次の領域です(※通達番号や最終的な対象品目リストは、当該発表記事だけでは確定できません)。

  • 化学品および化学品を含む製品
  • 工業用前駆物質(tiền chất công nghiệp)
  • 爆薬前駆物質(tiền chất thuốc nổ)
  • 産業用爆発物(vật liệu nổ công nghiệp)
  • たばこ原料・たばこ製品

実務上の示唆
「自社が当面対象外」でも、①将来的な対象拡大、②取引先(サプライヤー/卸/小売)からのデータ要求、③EC・流通での“証跡要求”が先行する可能性があります。輸出入やOEMが絡む日系企業は、“対象化された瞬間に登録できる状態”を先に作るのが安全です。

 

4. 日系企業のための実務チェックリスト(最小コストで先回り)

4-1 まず社内で決めるべきポイント
社内で決めること よくある落とし穴
①対象判定 自社製品/輸入品/OEM品を棚卸しし、高リスク該当可能性を一次判定 「最終製品のみ」見て、原材料・中間材の規制リスクを見落とす
②データ項目 原材料、ロット、製造工程、検査、物流、販売のどこまでを記録するか 必要情報が部門に散在し、登録時に集まらない
③ID設計 SKU/ロット/シリアルの体系、QR・電子ラベル運用ルール 途中でID体系が変わり、過去データが接続不能になる
④ガバナンス 誰が登録・更新し、監査要求や当局照会にどう答えるか(責任者・手順) “登録はしたが更新されない”状態になり、逆にリスクになる
4-2 契約(サプライチェーン)で手当てすべき条項例

契約上は以下を盛り込むことも検討すべきでしょう。

  • 情報提供義務:原材料・製造・検査・原産地等の情報を、期限付きで提供する義務
  • 真正性保証:提供情報の正確性、虚偽の場合の是正・補償
  • 監査協力:行政・第三者監査への協力、証憑(COA、試験報告、輸入書類等)の保存
  • 再ラベリング/回収対応:不適合時の表示是正、回収・出荷停止の手順と費用負担

※改正法は、デジタル空間(EC)での品質・原産地等に関する虚偽情報や不明確な出所の流通に対する禁止規定を強化しています。トレーサビリティ対応は、単なるIT対応ではなく、表示・広告・販売プロセスのコンプライアンスと一体で設計する必要があります。

 

5. よくあるQ&A

Q1. verigoods.vnへの登録は「全企業・全商品」に必須ですか?

A. 現時点の公表情報では、2026/1/1から必須化されるのは「一部の高リスク品目」で、その他は推奨(khuyến khích)という整理です。ただし、改正法上は高リスク品のトレーサビリティは義務であり、対象品目は省庁が指定し得ます。対象の広がりは今後の通達・運用で決まります。

Q2. 対象外でも、何かやるべきですか?

A. はい。最小限でも「製品棚卸し」「データ項目の所在整理」「契約の情報提供条項」の3点は先に着手すべきです。対象化された瞬間に“登録できない”ことがリスクになり得ます。

 

6. 今後の注目点(アップデート待ち)

実際の対象や運用は今後の法令、運用を待つ必要があります。

  • 商工省通達:対象品目の確定、登録手順、データ項目、移行措置(※番号・最終文言は今後の公表で確定)
  • 実装の相互接続:他省庁の指定品目が増えた場合、複数システム/複数フォーマットへの対応が必要になる可能性
  • コスト負担の帰属:登録・ラベル・データ整備費用をサプライチェーンでどう分担するか(契約設計)

 

7. まとめ:verigoods.vnは“法改正の先行実装”

商工省のverigoods.vn運用開始は、2026年1月1日施行の製品・商品品質法改正(リスクベース管理、トレーサビリティ義務、デジタル技術活用)と整合し、制度を実務に落とすための共通基盤として機能する可能性が高いといえます。日系企業としては、対象企業であるか否かにかかわらず、(1)製品棚卸し→(2)データ整備→(3)契約手当てを先行させることが、最小コストでリスクを減らすことにつながると考えられます。

弊所では、対象品目の該当性判断、サプライチェーン契約(情報提供・保証・監査協力条項)整備、社内運用フロー策定まで、実務に即して支援していきます。個別の業種・商流を踏まえた対応方針が必要な場合は、お気軽にご相談ください。

CastGlobal

【執筆者】CastGlobal

ベトナムの法律事務所

ベトナムで主に日系企業を支援する弁護士事務所です。日本人弁護士・ベトナム人弁護士が現地に常駐し、最新の現地情報に基づいて法務面からベトナムビジネスのサポートをしています。

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