【ベトナム】現金決済上限「2,000万VND → 500万VND」への引下げ(2025年7月1日施行)
- 2025.07.02
- コラム
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ベトナムでは、2025年7月1日〜、現金決済の上限を2000万VND→500万VNDに引き下げる政令(118/2025/ND-CP)が決定されました。
これが施行される場合、500万VNDを超える現金支払が認められなくなり、現金取引や接待交際費の立替も難しくなる見込みですので、重要な影響がありそうです。
(2025年6月13日に政令案について作成した記事を、7月1日の公布を受けてアップデートしました。)
正式な政令においても、500万VND以上の非現金決済を認めないこととなりましたので、下記事項についてご注意ください。施行はVAT新法と同様に、2025年7月1日開始です。
目次
1.法令上の根拠
根拠 | ポイント | 発効日 |
---|---|---|
VAT法2024(法48/2024/QH15)第14条2項b号 | 入力VATを控除する条件として「非現金決済証憑の保有」を義務化。金額上限を明記せず、政令で詳細を定めると規定 | 2025/7/1 |
VAT法政令118号(本政令) | 従来20 百万→5 百万VND以上(VAT込み) の請求書は非現金決済が必須。小額(< 5 百万)取引は例外 | 2025/7/1(予定) |
旧ルール(VAT法2008改正・Circular 219/2013) | “< 20 百万VND/回” までは現金払いでも入力VAT控除・CIT損金算入可 | 現行(~2025/6/30) |
接点と注意点
企業所得税(CIT)の損金要件 は、これまでもVATルールに連動(Circular 78/2014等)。正式なCIT改正通達は未公布ですが、同じ5 百万基準に統一される可能性が高いとみられます。
2.具体的な変更内容
- 非現金決済が必須となる金額
- 商品・サービス購入額 税込5 百万VND以上/回(複数回の同日購入合算含む)
- 包括される費用:会議費、接待交際費、旅費、設備仕入れ等あらゆる経費
- 認められる非現金手段
- 銀行振込(インターネット・モバイルバンキング含む)
- 会社クレジット/デビットカード決済
- 小切手、委任(lệnh chi)
- 正規電子マネー・eウォレット
- 例外(政令26条2項)
- a) 仕入れと売上の相殺払いの場合は、契約で相殺方法が明記され、双方が相殺内容を確認した対照表(または三者合意書)が必要。
- b) 金銭の借入・貸借による相殺の場合は、事前に作成された貸借契約書と貸付側口座から借入側口座への振込証憑が必要。売買代金と貸付金の相殺、販売者からの支援金との相殺も同様。
- c) 第三者への委任払いの場合は、委任契約が文書で締結され、第三者が合法的な個人または法人であること。
- d) 株式や社債で支払う場合は、事前に作成された書面の売買契約が必要。
- đ) 上記a~dによる支払後に残額が500万ドン以上となる場合、その残額については非現金決済証憑がなければ控除不可。
- e) 強制執行により国庫口座へ振込む場合は、その振込額に対応する仕入れVATを控除できる。
- g) 500万ドン以上の割賦・分割払い購入では、契約書・インボイス・非現金決済証憑を基に控除できる。支払期日前で証憑が未取得でも一時控除は可能。期日到来時に証憑がなければ当該分を減算修正する。
- h) 1回の輸入または購入が税込500万ドン未満、または海外からの無償サンプル・贈与品の場合は非現金決済証憑を要しない。
- i) 従業員が社内規程に基づいて非現金で立替払いし、会社が非現金で精算する場合は控除可。
3.企業への影響と実務上の留意点
項目 | 現状(~2025/6) | 2025/7以降のリスク |
---|---|---|
入力VAT控除 | 20 百万超のみ非現金必須 | 5 百万超は非現金必須。現金払いは控除不可 |
CIT損金算入 | 20 百万超は非現金必須 | 改正通達で5 百万超へ連動する見込み |
接待交際費 | 例:8 百万VNDの会食→現金可 | 同額はカード/振込必須。現金精算は税務否認リスク |
社内精算フロー | 現金払いが主流 | 申請額5 百万超=カード決済を新ルールに |
4.会社カード導入のすすめ
5.今後のアクションチェックリスト
- 2025/Q2:社内支払規程改定案を法務・経理でレビュー
- 銀行/カード発行:利用枠・担当者を確定し発行申込
- 会計システム:現金/非現金フラグを5 百万基準に自動判定
- 従業員研修:新ルールとカード精算手順を周知
- 正式政令公布後:最終条文を反映し、CIT通達動向をモニタリング
2025年7月から非現金決済要件が20 百万→5 百万VNDに大幅強化されました。接待交際費をはじめ、5 百万VND超の支払いは会社カードや振込へ切り替えない限り、入力VAT控除・損金算入が認められなくなる可能性があります。早期の内部規程整備とキャッシュレス決済インフラの導入で、税務・監査リスクを回避しましょう。
6.【補足】個人カード立替(出張旅費等)の取扱い
個人での立替がカードや送金であれば問題ないのでしょうか?その場合、会社と個人の間の精算も送金対応であれば、現金決済を挟んでいないため問題ないようにみえます。しかし、この点CITの損金算入に関するCircular 96/2015/TT-BTCの規定が問題になります。
500 万 VND超でも「出張経費」に限り、個人カード→会社銀行精算を “非現金決済” とみなして控除・損金に出来る余地が残ります。
ただし接待・会食など日常交際費については例外扱いされておらず、原則使えません。
したがって、これに代わる新たな規定が出ない限り、個人カード立替等での決済もCITの損金不算入になる可能性は大きく、推奨はできません。上記の会社カードでの精算や会社からの送金対応をできるだけ行うべきと考えています。
区分 | 要件/根拠 | 実務ポイント |
---|---|---|
CIT側(現行) | Circular 96/2015/TT-BTC Art.4出張旅費・航空券等を個人カードで決済しても、①正規インボイス②出張命令書③社内規程で個人カード使用を許可――の3条件を満たせば「非現金決済」として損金算入可 | ・対象は出張関連費用に限定。交際費は射程外 |
VAT側(新法) | 本政令26条2項iにおいて「従業員が社内規程に基づいて非現金で立替払いし、会社が非現金で精算する場合は控除可。」控除可と明記 | ・委任状+二重振込明細+会社名義eインボイスの4点証憑が必須 |
非適用領域 | 接待交際費・備品購入等、業務上不可避の出張に当たらない支出 | ・税務当局は「委任払い=出張など限られたケース」を想定しており、交際費で使うとVAT控除もCIT損金も否認リスク高 |
参考:118/2025/ND-CPの日本語参考訳
第26条 非現金決済の証憑
事業者は、税込額が500万ドン以上の財貨・サービス(輸入品を含む)を購入する場合、非現金決済を証明する書類を備えなければならない。1.非現金決済証憑とは、政府政令52/2024/NĐ-CP(2024年5月15日公布)に定める決済方法を証明する書類であり、購入者が現金を売り手口座へ直接入金した証憑は含まれない。
2.付加価値税法第14条第2項b号に定める特例は以下のとおり。
a) 仕入れと売上の相殺払いの場合は、契約で相殺方法が明記され、双方が相殺内容を確認した対照表(または三者合意書)が必要。
b) 金銭の借入・貸借による相殺の場合は、事前に作成された貸借契約書と貸付側口座から借入側口座への振込証憑が必要。売買代金と貸付金の相殺、販売者からの支援金との相殺も同様。
c) 第三者への委任払いの場合は、委任契約が文書で締結され、第三者が合法的な個人または法人であること。
d) 株式や社債で支払う場合は、事前に作成された書面の売買契約が必要。
đ) 上記a~dによる支払後に残額が500万ドン以上となる場合、その残額については非現金決済証憑がなければ控除不可。
e) 強制執行により国庫口座へ振込む場合は、その振込額に対応する仕入れVATを控除できる。
g) 500万ドン以上の割賦・分割払い購入では、契約書・インボイス・非現金決済証憑を基に控除できる。支払期日前で証憑が未取得でも一時控除は可能。期日到来時に証憑がなければ当該分を減算修正する。
h) 1回の輸入または購入が税込500万ドン未満、または海外からの無償サンプル・贈与品の場合は非現金決済証憑を要しない。
i) 従業員が社内規程に基づいて非現金で立替払いし、会社が非現金で精算する場合は控除可。3.同一日に同一納税者から500万ドン未満の取引を複数回行い、合計が500万ドン以上になる場合は、非現金決済証憑がなければ控除できない。