2026年1月2日は休み?―「公務員は4連休」、民間企業はどう設計するべきか
- 2025.12.29
- コラム
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2026年の元旦(テト・ズオンリック/Tết Dương lịch)をめぐり、「1月2日(金)も休みになるのか」というご質問が増えています。結論から言えば、公的部門(行政機関・公立の事業体等)は、1/1(木)〜1/4(日)の4連休となる一方、民間企業は1/2が自動的に法定休日になるわけではありません。
本記事では、(1)公的部門で何が決まったのか、(2)民間に法的な「強制」はあるのか、(3)企業が採るべき設計パターン、(4)人事・労務上の注意点を、根拠条文とあわせて整理します。
目次
1. 何が決まった?(公的部門:1/1〜1/4の4連休+1/10振替出勤)
政府方針に基づき、行政機関・公立の事業体等(公務員・公的部門労働者)については、2026年1月2日(金)を休日として取り扱い、代わりに2026年1月10日(土)を振替出勤日(hoán đổi ngày làm việc)とする運用が示されています。
- 休日:2026年1月1日(木)〜1月4日(日)
- 振替:2026年1月2日(金)の勤務日を、1月10日(土)へ振替
結果として、公的部門は4日連続の休暇になります。なお、実務上は「窓口・税関・公共サービスは完全停止できない」ため、各機関において当直・緊急対応の人員配置が求められています。
2. 民間企業はどうなる?―法定休日は「原則1/1の1日」、1/2は自動ではない
(1)法定休日(祝日)は原則「1/1の1日」
ベトナム労働法上、元旦(Gregorian/Calendar New Year)は、原則として「1日(1月1日)」が有給の法定休日です(労働法典2019年:Bộ luật Lao động 2019)。
(2)1/2(金)は法定休日ではない(=会社が休みにする場合は“会社設計”)
したがって、民間企業が1/2(金)を休みにするかどうかは、就業規則・社内カレンダー・労使合意等による設計の問題になります。
(3)ただし「公的部門と同様の休暇設定を推奨」という政府メッセージはある
政府側からは、企業に対して「公的部門と同様の休暇期間を適用することを推奨する」旨の発信がされていますが、これは一般に“推奨”(khuyến khích)であり、直ちに民間へ一律強制する性質のものではありません。企業としては、業種特性(工場稼働、物流、BPO、金融、医療、越境通関等)と人員計画を前提に、最適な設計を選択すべきです。
3. 企業の実務:代表的な3パターン(メリット/注意点)
代表的なパターンは以下のとおりです。
| パターン | 設計 | 向いている企業 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| A:1/2休み+1/10振替出勤 | 公的部門と同様に運用 | 土日休み(週休2日)が基本の企業、内勤中心 | 就業規則・社内カレンダーで根拠明確化。部署間の例外運用(シフト等)も整理 |
| B:1/2は通常営業+有給休暇の取得推奨 | 法定休日は1/1のみ。1/2は希望者が年休取得 | 日系企業で多い現実解(操業・対外対応を維持) | 取得推奨が「事実上の強制」にならない運用(公平性・業務配分) |
| C:稼働継続 | 工場・物流等は稼働、必要に応じて代休や手当で調整(法律上は通常稼働日のため、手当や代休の義務はなし) | 24/7運用、納期・生産優先の企業 |
補足として、週休が「日曜のみ」の会社では、仮に1/2を休みにしても、1/3(土)は通常勤務となりやすく、結果として「4連休」にならない場合があります。自社の週休日設計(週休1日/2日)を前提に、現実的な運用が必要です。
4. 実務の注意点(経営・人事・労務・コンプライアンス)
(1)早めの社内通知:取引先・税関・金融機関・税務締めに直結
年末年始は、税関・通関、銀行、外部ベンダー、顧客の稼働が読みにくく、また社内でも棚卸・決算・税務締め・輸出入のスケジュールが集中します。「いつ休むか」よりも、「いつ誰が対応するか」を明確にすることが事故防止に直結します。
- 対外窓口(日本本社、顧客、当局対応、通関等)の当番表
- 緊急連絡網(法務・人事・IT・設備保全)
- 締切(納品・支払・税務申告・輸出入)を先回りした調整
(2)1/1(祝日)出勤は「祝日労働」:割増賃金(最低300%)に注意
元旦(1/1)は法定休日です。したがって、当日に労働させる場合、労働法典上の祝日労働の割増賃金(少なくとも300%)等の論点が生じます(※日給制等の例外取り扱いもあるため、賃金体系に応じた精査が必要です)。
(3)1/10(土)を「通常勤務日」にするなら、根拠の明文化が重要
振替出勤を採る場合、就業規則(Nội quy lao động)、社内カレンダー、労働契約・団体協約(ある場合)との整合がポイントです。監査や労働紛争の局面では「口頭の運用」や「慣行」だけでは弱く、文書の整備がリスク低減になります。
(4)「有給休暇の推奨」は有効だが、運用の公平性がカギ
日系企業では、1/2を通常営業日としつつ「有給休暇の取得推奨」とするケースが実務上よく見られます。合理的な一方で、部署によって取得できる/できないが固定化すると不満や紛争の火種になり得ます。取得の優先順位、業務引継ぎ、最低稼働人数等を事前に設計しておくと安全です。
5. まとめ:結論と当職の推奨アプローチ
現状の推奨対応事項は以下のとおりです。
- 公的部門:1/1(木)〜1/4(日)の4連休+1/10(土)振替出勤という運用が示されています。
- 民間企業:元旦の法定休日は原則1/1の1日。1/2を休みにするかは企業の設計事項です。
- 実務対応:「A:1/2休み+1/10振替」「B:1/2通常+年休推奨」「C:稼働継続+代休」から、自社の週休日・操業・対外対応を踏まえ選択し、文書化と当番設計を行うのが安全です。
なお、周囲の日系企業の運用としては、体感的に「1/2は通常営業(+有給推奨)」が比較的多く、「公的部門同様の振替出勤まで採る」企業は相対的に少ない印象です。ただし、これは業界(製造/物流/サービス)や稼働モデルで大きく変わりますので、最終的には各社の事情に応じてご判断ください。
免責:本記事は一般的情報提供を目的とするもので、個別案件への法的助言ではありません。具体的な就業規則の改訂、割増賃金、シフト設計等は、貴社の雇用形態・賃金体系・運用実態を前提に個別検討が必要です。
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