2026年施行へ|ベトナム製品・商品品質法 大改正を総解説―リスク区分とデジタルパスポート義務とは?
- 2025.06.20
- コラム
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2025年6月18日に国会で製品・商品品質法の改正案が可決されました。2026年1月1日施行予定です。下記に現状わかっている重要内容をまとめます。
目次
1.法令の現況
項目 | 内容 |
---|---|
法律名 | 「製品・商品品質法の一部を改正する法律」(正式名称:Luật sửa đổi, bổ sung một số điều của Luật Chất lượng sản phẩm, hàng hóa) |
可決日 | 2025年6月18日(第15期国会第9回会期) |
賛成率 | 出席420名中408名(賛成85.36%) |
施行日 | 2026年1月1日(一部規定は政令で段階的に発効予定) |
主管省庁 | 科学技術省(Bộ Khoa học và Công nghệ)が国家品質インフラ(NQI)整備の司令塔を担う |
関連政令・通達 | 施行細則となる政令・通達は2025年第4四半期までに公布予定と報道(ドラフト未公表・推測情報) |
2.改正の背景
- 現行法(2007年制定/2008年7月施行)は 17年ぶりの大改正。急拡大する電子商取引、国際統合、デジタル化に対応しきれず、規制の「アップデート」が不可欠と指摘されていた(vietnamnews.vn)。
- 「科学技術・イノベーションをテコに国際競争力を高める」という政府方針(第13次党大会決議など)を法制面で具現化。
3.主な改正ポイント(条文=事実/解釈・報道=括弧書
)
3-1 リスクベース管理への転換
製品を「低・中・高リスク」の3層に分類し、リスク度合いで管理手法を差別化することになっています。
従来の“一律事前審査”を見直し、事前コスト削減と事後監視強化を両立する狙いです。
リスク区分 | 定義(例示) | 主要管理措置 |
---|---|---|
低 | 人体・環境への影響が軽微、国際警告なし | 自己適合宣言・事後監視中心 |
中 | 一定の健康・環境影響あり | 第三者試験報告の提出、ランダム検査 |
高 | 健康・生命・環境に重大リスク、国際警告対象 | 強制適合証明+デジタル追跡義務 |
3-2 デジタル製品パスポート
- 「製品のデジタルパスポート」を法定概念化。バーコード等で原材料~流通の履歴を一元管理・閲覧可。
- 高リスク製品については義務化(施行政令で移行スケジュール設定)
3-3 電子商取引プラットフォームの品質責任
- EC運営者は品質・原産地・安全警告等のフル情報開示義務。
- 苦情処理システムを設置し、監督機関とデータ共有を行う必要
3-4 禁止行為の拡充
- 誤認広告・虚偽表示・リスク情報の隠蔽を追加で明示禁止。
- デジタル空間での不当競争行為(品質を偽装し競合を損なう行為)も新設
3-5 国家品質インフラ(NQI)の形成
- 標準化、計量、試験、認証、認定を**「インフラ」と定義**し、政府主導で整備。
- 関係省庁・税関・市場監視とのデータ連携を義務づけ、早期警戒システムを構築
3-6 検査権限と地方連携
- 各省庁検査機関に製造段階・輸出入段階の監視権限を再編。
- コミューンレベル(最末端行政)も市場流通品の品質監視に協力義務
3-7 消費者訴訟・賠償責任の明確化
- 消費者保護団体による集団訴訟提起権を明文化。
- 販売者・輸入者の損害賠償責任を明記し、民法の時効規定とリンク
4.実務への影響・注意点
製造業やECプラットフォーム、日系企業への影響として考えられるものは以下のとおりです。
影響主体 | 影響内容 | 推奨アクション |
---|---|---|
製造業者・輸入業者 | ①製品分類に応じた適合証明の再取得 ②デジタルパスポート用データ管理 |
製品設計段階でリスク評価フローを導入し、サプライヤーから原材料情報を電子的に収集 |
ECプラットフォーム運営者 | 品質情報開示・苦情対応システム義務化 | 利用規約・出店契約への品質保証条項追加、AIモデレーション導入検討 |
在越日系企業(販売・製造) | 日本本社仕様とのダブルトラック管理が必要(追跡可能性・表示言語) | 日越双方のラベリング基準を統合し、統一SKU管理 |
責任保険/PL保険 | 賠償責任拡大への備え | 限度額見直し、追加条項検討 |
留意点
- 施行細則が出揃うまで技術的要件(バーコード仕様等)は不透明。試行政令ドラフトが公開され次第、速やかなギャップ分析を推奨します。
- 高リスク製品のデジタル追跡義務は最長3年の経過措置が設けられる見込み(報道ベース)。ただし輸出用製品も対象外とはならない可能性。
- 同日施行予定の改正消費者保護法(2024)との重複規制に注意。
5.まとめ
- 本改正は「リスク管理+デジタル化+消費者保護強化」が三本柱。
- 日本企業にとっては、①製造段階からのデータ整備、②EC販売時の品質保証体制強化、③PL保険の見直しが急務です。
- 年内に公布される細則までは暫定運用を検討のうえ、細則が出たら対応できる仕組みを整えることが重要です。
弊所でも引き続き情報収集しアップデートしていきます。各関連規制の内容チェック、規程類の作成なども適宜ご相談ください。