【ベトナム】ベトナム刑法改正2025:死刑8罪廃止と罰金上限増加へ|

2025年6月25日、国会第15期第9回会議は2015年刑法を抜本改訂する「刑法改正法」(法番号 86/2025/QH15)を可決しました。同法は2025年7月1日に施行されます。。改正の核心は、①国際人権基準への整合を図る死刑適用範囲の大幅縮減、②汚職・環境・医薬品犯罪などに対する資産没収・高額罰金・長期自由刑の強化を両立させ、「生命刑削減と経済的制裁の強化」を同時に実現する点にあります。概要は以下のとおりです。

1. 死刑の縮減

  • 死刑はさらに 8 罪で廃止(国家転覆・スパイ・戦争犯罪・汚職2罪・麻薬輸送・偽薬製造販売ほか)
  • 既に確定していた同罪の死刑判決は、自動で無期懲役へ減軽(2025 年7 月1 日以降)。

2. 死刑執行の免除要件拡大

  • 妊婦・36 か月未満の子を養育中の女性・75 歳以上に加え、末期がん患者も執行免除対象に追加。

3. 代替刑の枠組み

  • 死刑が廃止された罪の基本刑は
    • 無期懲役
    • または 有期懲役20〜30年+罰金(※上限額は下記④参照)
  • 汚職・贈収賄は 違法所得の全額没収と公職終身禁止を必須化

 

4. 罰金―“上限引上げ”は決定、具体額は未確定

改正法は、環境・食品・医薬、汚職など一部重大犯罪の罰金上限を「現行の2倍」に引き上げると規定しましたが、条文には金額が書かれていません。数値テーブルは政府または最高人民法院が発する 施行政令・ガイドラインで後日確定 する仕組みです。

 

5. 新設・修正された主要条文

分野 決定事項 実務インパクト
麻薬 「不法薬物使用罪」(新設・2〜5年の自由刑)を追加。更に、麻薬輸送の死刑廃止(≥5 kgヘロイン等は無期懲役)。 依存症者の再犯リスク管理を企業の EAP などにも波及。
贈収賄 死刑廃止+無期懲役/20〜30年懲役。減刑には “没収資産の ¾ 以上返還” が前提 内部通報制度・資産フリーズの実効性が必須に。
環境・食品・薬事 罰金「上限2倍」、営業停止期間 10 年まで拡大。 ISO14001/HACCP などエビデンス管理強化が急務。

CastGlobal

【執筆者】CastGlobal

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