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【2026年9月28日施行】ベトナムVNeID改正|外国人の「在留カード要件」が撤廃されます

速報

2026年8月13日、ベトナム政府は電子的識別及び電子的認証に関する政府令を改正する政令(政令320/2026/NĐ-CP、2026年9月28日施行)を公布しました。外国人のVNeID(電子的識別アカウント)取得要件から在留カードの保有が外れ、レベル1・レベル2の区分も撤廃されます。あわせて、統合済み書類の再提出要求の禁止と、電子取引アカウントの連携義務化という、日系企業の実務に直結する改正が入りました。ベトナム現地の日系法律事務所の観点から、変更点と施行に向けた確認事項を整理します。

本稿のポイント

  • 外国人のアカウント取得要件から一時在留カード(TRC)・永住カード(PRC)の保有が外れ、レベル区分も撤廃(改正後 第7条第2項)
  • 国家識別アプリに統合済みの書類について、原本・写しの提出や提示を求めることが禁止(改正後 第4条第4項)
  • 銀行・電子商取引・運送・旅行・医薬品など11分野の電子取引アカウントは、電子的識別アカウントとの連携・認証が義務化(改正後 第40条第9項)
  • 既存アカウントの連携期限は2026年12月31日(銀行分野は2027年6月30日)

本記事は、2025年公開の「【ベトナム】外国人・外資系企業におけるVNeID登録の最新情報」のアップデート版です。以下では、改正法令を「政令320号」、改正対象法令である電子的識別及び電子的認証に関する政府令(政令69/2024/NĐ-CP、2024年6月25日公布)を「政令69号」と表記します。条番号は、特に断りのない限り改正後の政令69号のものです。

1. 改正の概要

政令320号は、政令69号の一部条項を改正・補充するもので、施行日は2026年9月28日です(政令320号第20条第3項)。日系企業の観点から重要なのは、次の3点です。

  • 外国人の取得要件の緩和(改正後 第7条)
  • 統合済み書類の再提出要求の禁止(改正後 第4条第4項)
  • 電子取引アカウントの連携義務化(改正後 第40条第9項・第10項)

2. 外国人の取得要件の緩和(改正後 第7条第2項)

新旧対照
項目 改正前(第7条第2項) 改正後(第7条第2項)
対象者 満6歳以上で、永住カード(PRC)又は一時在留カード(TRC)の交付を受けた外国人 ベトナムに合法的に入国した外国人、又はベトナムに合法的に在留する外国人
レベル区分 レベル1・レベル2の2区分(6歳未満はレベル1のみ) 区分なし
年齢要件 満6歳以上/6歳未満で区別あり 条文上、下限の定めなし

最大の変更点は、在留カードの保有が取得要件から外れたことです。従来は在留カードの取得を待たなければアカウントを作れませんでしたが、改正後は「合法的な入国」又は「合法的な在留」で足りることになります。

なお、レベル区分の廃止は外国人についてのものです。ベトナム国民については改正後 第7条第1項でレベル1・レベル2の区分が維持されています。機関・組織については、改正前後を通じてレベルの区別はありません(改正後 第7条第3項)。

外国人アカウントの機能面については、改正後 第9条第3項が「国家データベース・専門データベースから共有・統合・更新された情報と、システムの全機能・全ユーティリティ」にアクセスできると定めており、従来のレベル2に相当する扱いと読めます。

実務上の意義 ― TRC未取得の法定代表者問題

改正前は、外国人がレベル2アカウントを取得するには有効なTRC又はPRCが必要でした(改正前 第7条第2項)。他方、法人アカウントの取得には、法定代表者(又はその受任者)がレベル2アカウントを保有していることが前提とされています(政令69号第12条第1項。同条は今回改正されていません)。

そのため、設立直後でTRC未取得の日本人法定代表者は本人アカウントを取得できず、結果として法人アカウントも作成できないという問題が生じていました。改正後は在留カード要件が外れるため、この問題は条文上解消されます。

条文上は解消、ただし運用は要確認

第12条第1項は「自己のレベル2電子的識別アカウントを用いてログインし」という文言のままであり、外国人の「レベルなし」アカウントがこれに該当するかは条文上明示されていません。第9条第3項の趣旨からは該当すると解すべきですが、システム実装と窓口実務が追随するかは施行後の確認が必要です。

また、条文上は「合法的に入国した外国人」も対象となり得ますが、短期商用ビザでの入国者による申請が実際に受理されるかは、出入国管理当局の受付実務によります。

3. 取得手続と処理期間(改正後 第11条・第13条)

手続の流れ(改正後 第11条)
  1. 省級入国管理機関に出向き、旅券又は国際旅行に有効な書類を提示する(第1項)
  2. 様式TK01を提出する。携帯電話番号、メールアドレス(ある場合)、アプリケーションへの統合を希望する情報を記載する(第2項)
  3. 担当官が情報を入力し、顔写真・指紋を採取して出入国国家データベースと照合する。あわせて国家識別アプリのインストール・申告方法が案内される(第3項)
  4. 出入国管理機関がシステム管理運営機関に交付を要請する(第4項)
  5. 結果は国家識別アプリ、携帯番号又はメールで通知される(第5項)
  6. 14歳未満・被後見人・被代理人は代理人又は後見人と同伴で出頭する。申告には代理人・後見人本人名義の携帯番号を使用する(第6項)

改正前の第11条第1項にあった、アプリ上で完結する非対面ルート(レベル1)は条文上なくなりました。したがって、全ての外国人について窓口出頭と生体情報の採取が必要となります。委任状による代理申請を認める規定は、改正後も置かれていません。

申請先についても変更があります。改正前 第11条第2項aは「公安省出入国管理局又は省級公安」を掲げていましたが、改正後 第11条第1項は「省級出入国管理機関」のみとなりました。ホーチミン市・ハノイ市の受付体制については、施行後に管轄機関へ確認することをお勧めします。

処理期間の新旧対照(改正後 第13条第3項・第4項b)
区分 改正前 改正後
外国人・顔写真及び指紋が出入国国家データベースにある場合 レベル1:1営業日/レベル2:3営業日 2営業日(第3項a)
外国人・当該情報がない場合 レベル2:7営業日 5営業日(第3項b)
組織・照合情報が国家データベース等にある場合 3営業日 3営業日(第4項a・改正なし)
組織・照合情報がない場合 15日(暦日) 10営業日(第4項b)

4. 統合済み書類の再提出要求の禁止(改正後 第4条第4項)

改正後 第4条第4項は、行政手続・公共サービス・民事取引その他の場面において、国家識別アプリに統合済みの情報・書類につき、原本又は写しの提出・提示を求めてはならないと定めました。あわせて、同アプリ経由のオンライン行政手続については手数料・料金の免除・軽減が規定されています(具体的な範囲は改正後 第36条第4項に基づき別途規定)。

統合の対象となる書類は、政令320号第20条第2項により付表としてリスト化されました。

  • リスト1(個人向け・66種類):一般旅券、査証、外国人の永住カード・一時在留カード、居住情報確認証明書、運転免許証 など
  • リスト2(機関・組織向け・140種類):企業登録証明書(ERC)、条件付事業許可証 など

駐在員の在留・行政手続と、法人側の許認可書類が、段階的に電子的識別アカウントへ集約されていく方向です。「紙の写し+公証」を前提とした社内フローや、契約書上の提出書類条項は中期的な見直しの対象となります。

ただし、統合はデータベース連携が完了した書類から順次進むため(改正後 第8条第1項・第2項)、施行日から一斉に全種類が使えるわけではありません。

5. 電子取引アカウントの連携義務化(改正後 第40条第9項・第10項)

事業への影響という点では、政令320号第19条により追加された第40条第9項・第10項が最も重要です。

第9項は、ベトナム国内の以下の分野に関するデジタルプラットフォーム上の電子取引アカウントについて、電子的識別アカウントとの連携及び認証を行わなければならないと定めています。

連携・認証が義務付けられる分野

教育・デジタルリテラシー/証券/通信/銀行/電子商取引(電子商取引法に定める販売者、ライブコマース実施者、アフィリエイトマーケター)/電子インボイス/運送事業/旅行事業/医薬品事業/診療・治療/ソーシャルネットワーク

第10項は、上記以外の分野について、各大臣・省庁級機関の長が、利用前に連携・認証が義務付けられるオンライン取引の具体的リストを公布すると定めています。今後、所管省庁ごとに対象範囲が拡張されていく可能性があります。

経過措置(政令320号第20条第3項)
対象 期限
国家デジタルプラットフォーム(認証・ログイン・取引実施への電子的識別アカウントの統合) 2026年12月31日
第40条第9項の電子取引アカウントのうち、施行日前に作成済みのもの(銀行分野を除く) 2026年12月31日
同上のうち銀行分野 2027年6月30日

6. その他の留意点

既に交付済みのレベル1・レベル2アカウントが施行後にどう扱われるか(自動的に区分が解消されるのか、経過措置が置かれるのか)は、公布された条文からは明らかではありません。政令320号第20条に関連する経過規定は置かれていないため、当局のガイダンスを確認する必要があります。

また、改正後 第7条第2項も「必要がある場合に」と定めており、条文上は一律の取得義務ではありません。もっとも、改正後 第40条第9項の連携義務や行政手続の電子化が進むほど、事実上の必要性は高まっていくと考えられます。

7. 実務上の推奨対応

駐在員・個人
  • ベトナムの携帯電話番号を保有しているか確認する(様式TK01で記載が必要)
  • TRC未取得の法定代表者について、施行後の申請可否を管轄公安に確認する
  • 窓口出頭と生体情報採取が必要となるため、出張・帰任スケジュールに余裕を持たせる
法人
  • 自社の事業が改正後 第40条第9項の列挙分野に該当するかを整理する
  • 該当する場合、2026年12月31日(銀行分野は2027年6月30日)までの連携計画を策定する
  • 「紙の写し+公証」を前提とする社内フロー、及び契約書上の提出書類条項を棚卸しする
  • 法人アカウント取得の前提となる法定代表者個人のアカウント保有状況を確認する

当事務所では、駐在員の在留手続及び現地法人の許認可管理の観点から、施行後の運用を注視してまいります。


参照法令: 電子的識別及び電子的認証に関する政府令を改正する政令(政令320/2026/NĐ-CP、2026年8月13日公布・2026年9月28日施行)/電子的識別及び電子的認証に関する政府令(政令69/2024/NĐ-CP、2024年6月25日公布)

免責事項: 本記事の内容は2026年8月21日時点で公布されている法令に基づく一般的な情報提供であり、個別の事案に対する法的助言ではありません。施行後の当局運用により取扱いが異なる可能性がありますので、実務対応の前に最新情報をご確認ください。

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CastGlobal Law Vietnam Co., Ltd.

ベトナム・ホーチミン市拠点の日系法律事務所。日系企業向けの企業法務、M&A、コンプライアンス、労務、知的財産を中心にリーガルサービスを提供。

CastGlobal

【執筆者】CastGlobal

ベトナムの法律事務所

ベトナムで主に日系企業を支援する弁護士事務所です。日本人弁護士・ベトナム人弁護士が現地に常駐し、最新の現地情報に基づいて法務面からベトナムビジネスのサポートをしています。

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