• HOME
  • ニュース
  • コラム
  • 【ベトナム・労働許可】就労する外国人労働者の条件等について一部を変更した政令第70/2023/NĐ-CP号について

column

コラム

【ベトナム・労働許可】就労する外国人労働者の条件等について一部を変更した政令第70/2023/NĐ-CP号について

政府は、2023年9月18日、ベトナムで就労する外国人労働者に関する政令第152/2020/NĐ-CP 号(以下、「政令第152号」といいます。)の条項の一部を改正する政令第70/2023/NĐ-CP号(以下、「政令第70号」といいます。)を公布し、同政令は即日発効となっています。

政令第70号は外国人の労働許可書(ワークパーミット/Work Permit。以下「WP」といいます。)に関する変更点などについて規定しており、日系企業にも重要な影響を及ぼすので、以下に主な変更点を記載します。

1. 専門家・技術的な労働者として労働許可書を取得するための条件の変更

a. 専門家の場合

以前の規定では、外国人労働者が専門家とみなされるために、以下の条件を満たすことが必要とされていました。

  • 大学レベル以上の卒業証明書または同等の資格証明書類を持つこと
  • ベトナムで就労する予定の職能に適合する分野を専攻し、その専攻分野で3年以上の実務経験を有すること

しかし、政令第70号により、高等教育における専攻との一致要件は削除されています。

そのため、外国人労働者は、

  • 大学レベル以上の学校を卒業したことまたは同等の資格を有すること、
  • ベトナムで就労予定の職能に適した3年以上の実務経験を有すること

の二点を満たせば、専門家とみなされます(政令第70号第1条第1項(a))。

 

b. 技術的な労働者の場合

政令第70号第1条1項(c)によれば、

  • ベトナムで就労する予定の職能に適した1年以上の研修を受け、
  • その職能について3年以上の実務経験を有する

外国人労働者は、技術的な労働者とみなされます。

旧規定と比較すると、やはり教育との関連性が要求されなくなっています

 

2. 執行役員社長とみなされる対象の明記化

執行役員社長について政令第70号第1条1項(b)は、具体的にどのような者が当たるかを明記しています。

同項により、執行役員社長は以下のいずれかに該当する者とされています。

  • 企業の支社・駐在事務所あるいは営業所の長
  • 組織・機関・企業の一つ以上の事業を直接に運営し、それらの事業の長として務め、組織・機関・企業の最高責任者の指導・指示を直接に受ける者

 

3. 外国人労働者の使用ニーズを報告する手続に関する改正

原則として、会社は外国人労働者を雇入れる前に、ベトナム人労働者が対応できず外国人労働者の使用を必要とする各ポジションに対するニーズを確定し、当局へ報告・説明しなければなりません(以下、「外国人労働者の使用ニーズを報告する手続」といいます。)。

政令第152号によれば、この手続きは外国人労働者の使用予定日の少なくとも 30 日前までとされていました。しかし、政令第70号によりこの手続きは、外国人労働者の使用予定日(雇用開始日)の少なくとも 15 日前までに、労働・傷病兵・社会省または外国人労働者が就労する予定地の労働・傷病兵・社会局で行わなければならないと変更されています(政令第70号第1条2項)。

 

4. 外国人労働者を募集する予定のポジションにベトナム人労働者を募集する通知に関する規定の補充

政令第70号第1条2項により、会社は、外国人労働者の使用ニーズを報告する手続を行う前に、外国人労働者を募集する予定のポジションにベトナム人労働者を募集する通知を以下のとおり実施しなければなりません。この通知は、2024年1月1日より実施しなければならないとされています。

  • 募集通知の内容:ポジション、職務、ジョブディスクリプション、人数、資格・実務経験に関する条件、給与、勤務時間・所在地を含む必要がある。
  • 募集通知の方法:労働・傷病兵・社会省の電子情報ポータル(雇用局)または、省レベルの人民委員会の委員長が設立した採用サービスセンターの電子情報ポータルにて掲載する。
  • 募集通知の期限:当局へ報告・説明する予定日の少なくとも 15日前。

外国人労働者を募集する予定のポジションにベトナム人労働者を募集することができなかった後、会社は、外国人労働者の使用ニーズを報告する手続を行います。

 

5. 一社で勤務しているが、複数の勤務所在地にて就労する外国人労働者に関する規定の補充

a. WPの申請手続について

従来は、外国人労働者の勤務所在地の1か所(普通はベトナム本社の住所)がWPに記入されていました。しかし、政令第70号第1条5項(a)によれば、外国人労働者が、複数の勤務所在地にて就労する場合、WP発給申請書にその外国人労働者の全ての勤務所在地を記入しなければならないと変更されています。

複数の勤務所在地が複数の省・中央直轄市にある場合には、WPの発給を担当する機関が、労働・傷病兵・社会省となります(政令第70号第1条11項(a))。

複数の勤務所在地が同じ省・中央直轄市にある場合、WPの発給を担当する機関は、外国人労働者が就労する地方の労働・傷病兵・社会局となります(政令第70号第1条11項(dd))。

b. 報告義務について

政令第70号第1条3項によれば、外国人労働者が、複数の省・中央直轄市にて就労する場合、会社は以下に従って報告をしなければなりません。

  • 報告の方法:労働・傷病兵・社会省及び外国人労働者が就労する所在地の労働・傷病兵・社会局へオンラインで報告する
  • 報告の雛形:政令第70号の付録Ⅰ、17/PLIの書式を用いる
  • 報告の期限:外国人労働者の就労開始日から3営業日以内

 

6. WPの再発給となる場合の補充

WPの再発給となる場合として、政令第70号第1条7項は、労働許可書の有効期限内にWPに記載した企業名(企業コード変更なし)が変更される場合を追加しています。

 

7. 工業団地・経済地区の委員会の権限の一部の削除

政令第70号第2条により、工業団地・経済地区の委員会は、以下の権限を喪失することになります。

  • 工業団地・経済地区で就労する外国人労働者に対するWPの発給・再発給・更新・取消、および当該外国人労働者がWPの発給対象外であることの確認
  • 外国人労働者の使用状況に関する報告書の受理
  • ベトナム人労働者が対応できない各ポジションに対する外国人労働者の使用ニーズに関する工業団地・経済地区の会社の報告説明書の受理

工業団地・経済地区の会社は、状況に応じて、WP申請などの上記の手続を労働・傷病兵・社会省または外国人労働者が就労する所在地の労働・傷病兵・社会局で実施する必要があります。

最後に、政令第70号はWP申請書類などを規定しています。これらの書類については、政令第70号の原文をご確認ください。

 

CastGlobal

【執筆者】CastGlobal

ベトナムの法律事務所

ベトナムで主に日系企業を支援する弁護士事務所です。日本人弁護士・ベトナム人弁護士が現地に常駐し、最新の現地情報に基づいて法務面からベトナムビジネスのサポートをしています。

  • Facebook
  • Website