【2026年2月施行】ベトナム新規制4政令を実務目線で整理:金・外為罰則/著作権/税務申告/オンライン広告
- 2026.02.22
- コラム
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2026年2月、ベトナムで日系企業の実務に直結する4つの政令が相次いで施行されました。内容は「新しい禁止を増やす」というより、違反時の罰則・当局対応・手続運用を具体化して執行しやすくする方向です。これらの政令の概要をまとめます。

対象政令(施行日) ・政令340/2025/NĐ-CP(2026年2月9日) ・政令373/2025/NĐ-CP(2026年2月14日) ・政令341/2025/NĐ-CP(2026年2月15日) ・政令342/2025/NĐ-CP(2026年2月15日)
目次
1. 政令340/2025/NĐ-CP(2026/2/9施行):通貨・銀行(外為/金取引)分野の行政罰則を全面改訂
政令340/2025は、通貨・銀行分野の行政罰則を全面改訂する政令です。旧・政令88/2019(および改正政令143/2021)を置き換え、2026年2月9日から適用されます。
1-1. 外為(両替・外貨決済):「無許可」と「外貨建て表示」が最大の地雷
実務で最も多いのは、①無許可両替(許可のない両替店・金店等)での外貨売買、②ベトナム国内取引での外貨(USD/JPY等)建て表示・契約、③外貨による支払です。政令340は、これらを金額レンジに応じて段階的に罰則化しています。
| 典型類型 | 取引金額(USD相当) | 罰則(個人の目安) | 補足 |
|---|---|---|---|
| 無許可両替/個人間売買/外貨での支払(違法) | 1,000未満 | 警告(原則) | 再犯・反復で罰金へ |
| 同上 | 1,000〜10,000未満 | 1,000万〜2,000万VND | 出張者の“ちょい両替”がここに入り得ます |
| 同上 | 10,000〜100,000未満 | 2,000万〜3,000万VND | まとまった送金・決済で問題化しやすい帯 |
| 同上 | 100,000以上 | 8,000万〜1億VND | 高額取引は執行対象になりやすい |
| 外貨建て表示(契約・広告・値札等) | 金額に関係なく成立 | 3,000万〜5,000万VND | 「USD建て+VND支払」でも表現次第でリスク |
実務コメント(重要) 外為違反は「会社が指示していない従業員の行為」でも、経費精算・取引書類・社内チャット等の痕跡から、会社側の管理不備として発展するケースがあります。少なくとも、(i) 出張・駐在者向けの外為ルール、(ii) 契約テンプレ(通貨条項・表示条項)、(iii) 例外があり得る取引(特区・専門法の例外等)の整理、は優先度が高いです。
1-2. 金地金(vàng miếng):無許可業者との取引は「警告→反復で罰金」+一定額以上は口座決済が基本
金地金(いわゆる“金塊・ゴールドバー”)については、無許可での製造・売買等は3億〜4億VND(=300〜400 million VND)という大きなレンジの罰則が想定されています。一方、個人が陥りやすいのは「無許可業者との売買」「金を決済手段にする」などの行為で、まずは警告、再犯・反復で1,000万〜2,000万VNDに上がり得ます。
- 無許可業者(許可のない銀行・企業等)との金地金売買、金を支払手段として使う:まず警告→反復で罰金の可能性
- 同一顧客が1日あたり2,000万VND以上の金売買は、顧客口座と金業者口座での口座決済が原則(現金運用はリスク)
- 実務上、金店・小規模店舗が混在するため、「相手が許可業者か」の確認が重要
1-3. 日系企業のToDo(外為・金):最低限ここまで
- 出張者・駐在員向け:両替は「銀行・正規両替所のみ」、領収書要件、違反時の社内対応(経費精算不可/報告義務)を明文化
- 契約書・見積書・請求書:ベトナム国内取引の通貨表示(USD/JPY)が残っていないか棚卸し(賃料・サービス料・ロイヤルティで頻出)
- 経理・財務:海外送金・外貨取引のエビデンス(契約・請求書・支払指図)を整備し、銀行からの照会に耐える形へ
2. 政令341/2025/NĐ-CP(2026/2/15施行):著作権・関連権の行政罰則を強化(35類型を明確化)
政令341/2025は、著作権・関連権の侵害について35の侵害行為類型を明確にし、罰則を整理・強化しました。罰金上限は個人2億5,000万VND、法人5億VNDで、同一行為について法人は個人の2倍という整理です。
2-1. 日系企業で実際に多いリスク
- ソフトウェア:ライセンス数超過、無断インストール、在宅端末への転用
- マーケ素材:画像・動画・フォント・BGMの権利処理不足(制作会社任せで証憑がない)
- 社内利用:研修資料・翻訳物・SNS投稿での転載/二次利用
実務の勘所 「制作会社が作った=自社が自由に使える」ではありません。①権利帰属(著作権が誰に帰属するか)、②利用範囲(媒体・期間・地域・改変可否)、③再委託の有無を契約と証憑で残すことが、最もコスパの良いリスク低減策です。
3. 政令373/2025/NĐ-CP(2026/2/14施行):税務申告(政令126/2020)の運用を調整
政令373/2025は、税務管理法の施行細則である政令126/2020を改正し、申告・決算の運用を調整しました。日系企業の実務で影響が出やすいのは、四半期申告の要件不充足時の扱いと、複数給与(複数社)を得る個人のPIT確定申告の提出先です。
3-1. 四半期で申告していたが、要件を満たしていなかった場合の「切替・再提出」
- 納税者が自ら(または税務当局から指摘されて)要件不充足を認識した場合、次の四半期の初月から月次申告へ切替
- 過去の四半期分について、月次申告書を再提出し、延滞金(tiền chậm nộp)は計算
- ただし、切替に伴って再提出する月次申告書については「遅延提出の行政罰は課さない」という整理(手続リカバリーの明確化)
3-2. 複数の給与所得がある個人(居住者)のPIT確定申告:提出先の明確化
複数の支払者から給与所得がある場合、年間で最も大きい所得を支払った組織を管轄する税務当局に提出する整理です。提出先を誤った場合も、税務当局側で転送支援を行う旨が示されています。
3-3. 日系企業のToDo(税務)
- 経理・給与:自社が月次/四半期のどちらで申告しているか、要件を満たしているかの再点検
- 駐在員・兼業:複数社から所得が出るスキーム(兼職、役員報酬、プロジェクト手当等)がある場合、PIT確定申告の導線を整理¥
4. 政令342/2025/NĐ-CP(2026/2/15施行):オンライン広告規制を具体化
政令342/2025は、改正広告法の下で、オンライン広告を中心に運用要件を具体化しました。日系企業にとって重要なのは、(A)ユーザー保護UI要件、(B)違法広告の遮断・削除(24時間)、(C)事業者側の届出・保存・報告義務です。
4-1. 閉じられない広告はNG:1回操作でOFF、動画は最大5秒
- 広告を閉じるアイコン/機能は、1回の操作で広告が閉じられること
- 静止画広告:待機時間なし
- 動画・アニメ等:待機(スキップ不可)時間は最大5秒
4-2. 違法広告は原則24時間以内に遮断・削除(当局要請ベース)
広告主、広告サービス事業者、媒体(掲載者)等は、当局からの要請を受けた場合、原則24時間以内に違法広告の遮断・削除を実施(または協力)することが求められます。体制がないと、代理店任せの企業ほど対応が遅れがちです。
4-3. プラットフォーム/広告サービス提供者の「届出・保存・年次報告」
- 連絡先情報の事前通知:ベトナムで広告サービスを開始する前に、文化スポーツ観光省へ連絡先情報を通知(変更時は再通知)
- 記録の保存:広告活動に関する情報・契約・素材等を保存(保存期間:最終表示日から3年間)
- 年次報告:ベトナムでのオンライン広告サービス事業について、毎年11月25日までに年次報告(臨時報告もあり得ます)
4-4. 規制対象になりやすい11カテゴリ(特別な商品・サービス)
オンライン広告の実務では、次のような健康・環境に影響する11カテゴリが特に注意領域です(表示要件・専門法令・許認可とセットで点検が必要)。
- 化粧品/食品/乳幼児向け栄養製品(一定類型)
- 家庭・医療用の殺虫・消毒製品、化学物質
- 医療機器/医療サービス(診療等)/医薬品
- 農薬、動物用医薬品、飼料、水産養殖関連、種苗等
- 肥料/種子・苗
- アルコール飲料(ビール、度数15度未満の酒等を含む)
4-5. 日系企業のToDo(広告・マーケ)
- 代理店契約:違法広告の指摘が来た場合の「24時間対応の主体」「素材差し替え権限」「ログ・素材の保管責任」を明文化
- クリエイティブ設計:動画広告は5秒以内で主張が伝わる構造に(スキップ前提)
- エビデンス保管:健康・食品・化粧品等は、専門法令上の根拠(表示・許認可・届出)をセットで保管
より詳しい内容は以下をご確認ください。
【2026年2月15日施行】広告法・新政令(342/2025/NĐ-CP)の概要と実務対応~UX規制の導入と管理体制の変更点~