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契約書には法的代表者の署名だけでなく、会社の印鑑も必要ですか?

  • 2016.04.25
  • 組織体制、契約管理
  • 契約一般

法律上、一般論として、法的代表者の署名及び会社の印鑑が必要という規定はありません。 しかし、法的代表者の署名がない場合には、「法的代表者による行為」であることがわからないため、法的代表者の署名は必要であると考えるべきです。 会社の印鑑は、一部の契約(建設に関する契約等)を除き必須ではないですがが、慣習上押印するのが常識です。 税務上もこの点の指摘を受ける可能性が高いです。   少なくとも実務上は、法的代表者の署名及び会社の印鑑の両方が必要となっています。 また、差替えを防ぐため、重要な契約については全ページに署名をすること、契約書の余計な余白を設けないことが望ましいといえます。 ...

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Ư
  • 組織体制、契約管理
  • 2022.06.21
  • 契約一般
ベトナムにおける企業の法定代表者の権限(日本・ベトナム比較)について教えてください。定款で制限することは可能ですか。
1)委員会設置会社でない株式会社の代表者 日本法上、法人の代表権は原則として取締役に帰属します(会社法第349条第1項本文他)が、代表取締役など株式会社を代表する者を定めた場合には、当該代表取締役などが会社を代表することになります(同項但書)。 2)代表権限の制限と外部的効果 代表取締役の権限につき、定款等により内部上の制限を加えることは可能ですが、これを善意の第三者に対抗することはできません(同条第5項)。 また、代表取締役以外の取締役に対して、社長等、一般的に会社を代表する権限があると認められる名称を付した場合(名称のみであり実際には契約締結権などがない)、当該取締役に権限がなかったことを知らない第三者に対して、会社は責任を負うことになります(会社法第354条)。 1)企業の代表者 ベトナム法上、企業法(法律第59/2020/QH14号。以下「企業法といいます」)第12条第1項により、法定代表者が企業を代表する旨規定されています。 有限責任会社においては、定款に異なる定めがない限り、社員総会議長または会社の会長が法定代表者となります(企業法第54条第3項・第79条第3項)。 株式会社においては、法定代表者が一人の場合、定款別段の規定がない場合、取締役会会長が法定代表者となります。二人以上の法定代表者がいる場合には、取締役会の会長および社長もしくは総社長は当然に会社の法定代表者になります(企業法第137条第2項)。 2)代表権の範囲 具体的な代表権の範囲に対する法律上の規定は民法(法律第91/2015/QH15号。以下「民法」といいます)を確認する必要があります。民法第137条第2項の規定により、法定代表者の権限は同法第140条・第141条に従うとの規定があります。そして、第141条第1項は代理の範囲は、定款等により決せられるとしています。 したがって、ベトナム法上においても、法定代表者である社長等の権限が定款等により内部的に制限されている場合があります。 3)代表権の範囲外の行為に対する第三者保護 定款等は会社の内部書面のため取引時点において当然に確認できる資料ではありません。定款等により代表者の権限に制限が加えられており、代表権限の範囲を逸脱する取引を行った相手方はどうなるのでしょうか。 この場合、民法第143条第1項により表見代理が成立することにより当該第三者が保護される可能性があります。表見代理は、会社に当該取引が行われたことにつき故意または過失が認められること、取引相手が契約者に代表権限がないこと(権限外のこと)を知らなかった場合(または知ることができなかった場合)等が成立の要件となっています。表見代理の成立が認められる場合、当該取引の効力は無効とならず会社に帰属することになります。 そのため法適用上の結論は日本におけるのと概ね同様になる可能性が高いです。 もっとも、ベトナムは裁判の公開が不十分な状況にあるため、実際に紛争になった場合、どういった評価根拠事実を基にして、相手方の帰責性が認められるかは判然としません。そのため、ベトナム企業と取引を行う際には、少なくとも国家企業登録ポータルサイト(URL:https://dangkykinhdoanh.gov.vn/vn/Pages/Trangchu.aspx)等を利用して契約締結者に代表権限があるか、同サイト上代表権限が確認できない場合には契約締結権限を裏付ける委任状の提出を求めるなどの対処が必要になると考えます。
  • 組織体制、契約管理
  • 2020.11.18
  • 契約一般
ベトナムにおける担保制度の概要について教えてください。
以前、債権管理に関する記事にも書きましたが(「日本企業のベトナム企業に対する債権管理の注意点・問題点」)、ベトナムでどのように債権を保全するかは、いつも悩ましい問題です。 前記の記事にも記載していますが、ベトナムで契約の相手方の信用状態が悪化したり、関係がこじれた場合には、債権を回収するのは容易なことではありません。 そういった場合に備えて担保を取っておくことができれば債権回収の確率を高めることができるかもしれません。そこで、今回はベトナムの担保制度について説明します。 ベトナム民法上、以下の9種類が担保権として規定されています。 ❶Cầm cố tài sản(財産の質)、❷Thế chấp tài sản(財産の抵当)、❸Đặt cọc(手付け)、❹Ký cược(預託)、❺Ký quỹ(供託)、❻Bảo lưu quyền sở hữu(所有権留保)、❼Bảo lãnh(保証)、❽Tín chấp(信用)、❾Cầm giữ tài sản(財産の留置) ※上記の訳はあくまで便宜上のものであり、必ずしも日本法上または日本語の用法と合致しないものもありますので、ご注意ください。 このうち本項では、実務上利用されることが多い、日本法上の質権にあたる❶、抵当権にあたる❷です。以下では、日本とは少し異なる制度の抵当権を中心に記載し、質権と日系企業においても利用の可能性が高いと思われる❻の所有権留保についても簡単にふれていきます(以下、それぞれの権利を「質権」、「抵当権」、「所有権留保」と記載します)。 ベトナムにおける質権は、質権者が、自己の債権を担保するために、質権設定者の財産について引渡しを受け自己の手元(支配下)において弁済を促すものとされており(民法309条)、日本法上における質権と大きな違いがありません。 ※質権者=債権者、質権設定者=債務者となります。 日本の民法においては「抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。」(同法369条1項)と規定されており、また、抵当権は地上権と永小作権にも設定可能ですが、基本的には不動産を対象とした担保権です。 一方、ベトナム法上においては、特に不動産に限らず成立することが前提とされています。日本法上の譲渡担保と抵当権を合わせたような概念がベトナム法上の抵当権となります。抵当権者は、抵当権設定者の財産に対して自己の債権を担保するために、抵当権設定者に当該財産を利用させたまま抵当権を設定することができます(民法317条)。 ※抵当権設定者=債務者、抵当権者=債権者です。 ① 不動産 ㋐ 土地使用権 ベトナムでは土地は国家に帰属するものであり、個人の土地の所有権というのを認めていません。日本でいう土地の所有権にあたる(類似する)のが土地の使用権となります。したがって、土地に関する担保権の対象はその使用権になります。 法人が有する土地の使用権については金融機関のみが抵当権を設定できます(土地法(45/2013/QH)174条2項d号)。一方、個人が有する土地の使用権に対しては、金融機関の他、その他の法人も抵当権を設定することができます(土地法179条2項g号)。しかし、当該その他の法人には外資企業は含まれていないため(土地法3条27号)、日系の企業を含む外資法人は原則として土地の使用権を抵当にとることはできません。 ㋑ 住宅 住宅の所有者が組織の場合、金融機関のみ抵当権を設定できます(住宅法144条1項)。 住宅の所有者が個人の場合、金融機関の他その他の法人も抵当権を設定することができます。そして法令上、前記その他の法人から外資企業も排除されていません(住宅法144条2項・3条14項参照)。したがって、相手方との間で担保権の設定に関わる契約が成立すれば、日系企業を含む外資企業であっても個人の所有する住宅を抵当に取ることが可能です。 但し、現状においては、住宅の所有権の証明書が発行されていないので(制度としては発行されることになっていますが、実際に発行されていません)、担保権を公証する手段がありません。そのため、理論的には住宅に抵当権を設定することができますが、実務上住宅に対する担保権はそれほど広く用いられていません。 ② 動産(機械類や製品など) 個別の機械類や製品について抵当権を設定することが可能です。また、我々が調べた範囲では、在庫製品及び材料の全体を担保に供している例を確認しています。 ③ 債権 ベトナム法上、債権抵当についても認められています。抵当権の設定に当たっては第三債務者の承諾なしに、債権者と債務者の契約によって債権抵当を設定できます。もっとも、実務的には第三債務者が債務者に対して抵当権の存在を知らずに弁済してしまうことを防ぐため、第三債務者、債務者、債権者の三者で抵当権の設定に関わる契約を締結するのが一般的です。 ベトナム法上の所有権留保とは、弁済義務が完全に履行されるまで、売主が所有権を留保することによって弁済を促す担保権であり(ベトナム民法331条)、日本法上の概念と同様のものです。 法令上、土地の使用権や、建物、船舶、航空機、森林の使用権(政令163/2006/ND-CP号第12条1項)等は登記が義務付けられていますが、その他の財産については、登記は任意となります。 もっとも、上記の三つの担保権(質権・抵当権・所有権留保)についてはいずれも登記(登録)が対抗要件となっているので、優先権を保持するために登記は行っておくべきです。 不動産(土地使用権・建物)に関する登記は、登記事務所(ベトナム語:Văn phòng đăng ký đất đai)に、その他の財産に関する財産については、原則として国家担保取引登録機関(ベトナム語:CỤC ĐĂNG KÝ QUỐC GIA GIAO DỊCH BẢO ĐẢM)がそれぞれ登記の取扱機関となります。 上記のように、ベトナムにおいては、製品や、原材料、債権等の財産に対して担保権を設定することができ、またこれらの権利について登記を行うことができます。 しかし、権利の登記ができても実際には、債務者の杜撰な財産管理により、担保価値がきちんと保全されていない場合や、債権抵当において第三債務者が勝手に弁済をしてしまった場合等には、裁判所への訴え提起が必要となります。この点については十分に留意して制度の利用を検討する必要があります。
  • 組織体制、契約管理
  • 2020.02.20
  • 契約一般
ベトナム法における不可抗力事由と新型コロナウィルス(肺炎)についての考察
中国では、死者数が1300人を上回る(2020年2月13日現在)等、以前として新型コロナウィルスが猛威を振るっております。 ベトナムでも、ホーチミン市教育訓練局が市内教育施設の休校措置を2月16日まで延長することを決定したり、中国を始めとする新型コロナウィルスの発症地域への渡航歴のある外国人労働者に対して一部の自治体が労働許可証の発行を行わない措置をとったり等、社会的にも経済的にもその影響は無視できないものがあります。 今後の感染状況によっては、中国からの原材料の調達ができずに約束の納期までに製品が納品できない、政府の勧告でイベントが開催できなくなった等が増加してくると予測されます。 そこで、今回は新型コロナウィルスを理由として契約上の義務が履行できない場合に、ベトナムにおける不可抗力事由に該当するかについて検討していきたいと思います。   ベトナムでは、民法156条1項中に、「不可抗力の事象とは、予見することができず、必要で能力が許す限りの措置をすべて適用したとしても克服することができない、客観的に生じる事象である。」とその定義が記されています。 また、同法352条2項には「義務者が不可抗力の事象により義務を正しく履行しない場合、民事責任を負わない。ただし、異なる合意がある又は法令に異なる規定が有る場合を除く。」と規定しています。 その他商法上にも、294条1項b号に、不可抗力事由が発生した場合には免責事由となる旨の記載があります。しかし、民法352条2項但書に相当する規定は存在しません。 民法と商法は一般的には、一般法と特別法の関係にあり、どちらも適用される場面では、商法の規定が適用されるのが原則です。商事行為において民法352条2項但書の適用が排除されるようにも思えますが、現行の商法が2001年施行なのに対して民法は2015年施行であること、契約の一般原則は両者で自由に締結内容を決めることができる(契約自由の原則)であることからすると、商事行為においても、民法352条2項但書の規定が適用されるものとして契約書等を作成すべきでしょう。 日本法では民法419条3項によって、金銭債務については不可抗力事由があっても責任を免れないとなっています。日本であれば、不可抗力事由が発生した場合※に、契約書上に“不可抗力事由の発生は代金の支払いを免れない”といった規定を設けていなくても、前記419条3項の規定を根拠に代金の支払い請求ができます。しかし、ベトナム法令上には同様の規定がありません。金銭債務の履行において不可抗力といえる事象が発生する場面は想定し難いようにも思えますが(どんな手段を尽くしてもお金が払えないという状況は、そもそもその社会自体が正常に機能していない可能性があります。)、もし不可抗力事由による金銭債務の免責を認めたくないと考える場合には、前記の民法352条2項但書にしたがって、この旨契約書上に明記したほうが良いでしょう。 ※日本の法令上には、不可抗力を定義する規定は存在しません。一般的に学説上「不可抗力」とは、「外部からくる事実であって、取引上要求できる注意や予防方法を講じても阻止できないもの」等と説明されます(我妻栄=有泉亨=清水誠=田山輝明『我妻・泉コンメンタール民法―総則・物権・債権〔第3版〕(日本評論社、2013年)』769頁参照)。   ベトナムにおける不可抗効力事由の定義は前記の通りですので、法律要件を整理すると、①客観的で予見不能な事象であること、②できる限り手を尽くしても、その事象から発生する不利益を排除できないこと、となります。 新型コロナウィルスのような伝染病の流行については、客観的で、かつ契約締結時点で予見が不可能な事象に該当するものといえます。一方、できる限り手を尽くしても、新型コロナウィルスの流行による不利益を排除できるかについては法律要件を充足するか明らかではありません。 例えば、従業員が大量に休んで業務の通常運転が困難であるが、高額の手当を支払えば代替人員が確保できる場合などは、不可抗力事由といえるか微妙な状況ですし、そもそも感染予防に対する義務を事前に尽くしていたかという点も論点になり得るでしょう。 ベトナムの最高裁判所が運営するウェブサイト(http://congbobanan.toaan.gov.vn/)では、伝染病を原因とする不可抗力事由に関する判例はありませんでした。 事例の性質は異なりますが、債務不履行の免責事由のひとつである客観的事由について判断した判例25/2018/AL号は参考になりそうな事例の一つです。なお、この客観的事由とは、同判例は民法の規定に言及していないため、法令上の概念とは同一といえませんが、概念としては不可抗力事由における「客観的な事象」に類似するものとして参考になります。当該事案は、不動産の売買において、所有権証明書の変更が遅滞していたものです(正確には預かり金の返還請求訴訟で事案の概要等も公表されていますが、本稿と関係ない部分は省略して記載します)。被告は、所有権証明書の変更が遅滞した理由は、国家機関が変更の手続きを遅滞したためで、自らに帰責性はないと主張しました。最高裁は、この被告の主張を認めて被告に帰責性はないと判断しました。 公表されている範囲では、被告がどの程度国家機関との折衝を行っていたか明らかではありませんが、国家機関の行為を理由として債務の履行ができない場合には、不可抗力事由に該当すると判断される可能性が相当程度あるといえます。   中国においては例えば上海市で2月9日まで業務を再開しないようにと通知がでていますが、ベトナムにおいては今のところ同様の通知はなされていません。2020年2月13日時点で保健省が公表したところによると、ベトナム国内の感染者数は16人となっています。また、今のところ中国からの原材料輸入に関して大きな混乱が生じているとの話も耳にしません。これらの事実からすると、現在のところ新型コロナウィルスを原因とする納期遅れを不可抗力事由として主張するのは難しそうです。最も、感染者が判明した工場などにおいて国家機関から一時的な操業停止を求められた場合には不可抗力事由を検討する余地があることになります。 また、イベントについては首相、文化スポーツ観光省や労働傷病兵社会省等から、会合やシンポジウムなど、多くの人が集まるイベントの開催は控えるよう指示がありましたが、全てのイベントを禁止するものではありません。したがって、現状で当該指示に基づいてイベントを中止した場合にこれが不可抗力事由といえるかは微妙な状況にあります。イベントの開催等に当たっては以下の点に注意すべきです。 ベトナムにおいてはイベントの開催につき、法令上国家機関の許可を求めなければならないものも多いです。 イベントの開催が出来なかった場合に不可抗力事由を主張することの前提として、まずはこの許可申請をきちんと履行していたことは重要になると思われます。イベント実施に向けて全ての義務をきちんと履行していることが不可抗力事由を主張することの前提となりますし、また国家機関から不許可の判断を得た場合にはそのこと自体が不可効力事由であることの有力な間接証拠となり得るからです。 以上記載してきたとおり不可抗力事由といえるかは複雑で微妙な判断が求められます。 したがって、事後的に不可抗力事由を主張することを前提として意思決定をするのは得策ではありません。新型コロナウィルスによる債務不履行の危険が予想できる場合には、その時点で対策を行っていくことが肝要になります。 納期に間に合わなさそうな場合には予め納期の延長を行う等、当該時点で契約当事者双方の認識をすり合わせて事後の対応についての合意を形成しておくことが最も賢明な対応だといえます。
  • 組織体制、契約管理
  • 2019.12.16
  • 契約一般
署名風のスタンプがあり、署名はない契約書の有効性について
<Question> 売買契約書上に、あるお客様が署名スタンプ印(サインと同様のスタンプを作成、押印すると署名のような見た目になるもの)会社印を押印して郵送してきました。ベトナムにおいてこのような署名スタンプの押印は本物の署名と同等の法的拘束力があるものなのでしょうか? <Answer> 1 契約書の成立要件 実際、署名の手間削減のために、このような署名風スタンプを使っている会社はたまに見かけます。 まず、一般的な契約書(売買契約書や業務委託契約書など)についてですが、法律上署名押印が文書の成立要件とはなっていません。 したがって、権限者(署名スタンプの名義人)が自己の意思の意思に基づいて、 署名スタンプを使用している限り、理論的には本物の署名と同等の効力があることになります。 ただし、権限者(署名スタンプの名義人)が自己の意思の意思に基づいて署名スタンプを使用しているかどうかは第三者(その会社の外部者)の目からは明らかではないので、その他の自筆署名との比較対照ができない署名スタンプが用いられている場合には注意が必要になります。 すなわち、通常署名スタンプと社印の押印があれば権限者の意思に基づいて契約が締結されている場合が多いですが、権限のないスタッフが勝手に署名スタンプを用いて文書の作成を行うこともできるので、文書が偽造される可能性は自筆署名と比べて高くなります。 ベトナム民法でも無権限者によりなされた契約は原則無効となりますので、この点注意が必要です。 実際に署名スタンプを用いている会社も相当程度あるようなので、例えば ①重要性が極めて高い、又は相手方の信用度が高くないもの →自筆署名を求める。 ②契約の重要性が相当程度あり、かつ相手方の信用度も高いもの →署名スタンプの名義人から(署名スタンプが押印されている書面が添付された)メールを送ってもらう ③契約の重要性が高くなく、かつ相手方の信用度も高いもの →相手方に特段の処置をもとめない など、状況に応じて相手方に適切な処置を求めることが肝要と考えます。 法令上、定款、訴状等は署名押印が要件とされているものがあり、これらの書面については署名押印がなければ無効となります。 その他の法令上署名押印が要求されていない書面については、たとえ政府に提出する書面であっても自筆署名がないからといって理論上は無効になりません。 しかし、政府や銀行等が書面の提出先の場合には、これらの機関は自筆署名がないものを受け入れないのが通常です(おそらく無効の場合のリスクを負担したくないため。)から事実上、自筆の署名が必要になります。 <Answer> 1 契約書の成立要件 実際、署名の手間削減のために、このような署名風スタンプを使っている会社はたまに見かけます。 まず、一般的な契約書(売買契約書や業務委託契約書など)についてですが、法律上署名押印が文書の成立要件とはなっていません。 したがって、権限者(署名スタンプの名義人)が自己の意思の意思に基づいて、 署名スタンプを使用している限り、理論的には本物の署名と同等の効力があることになります。 ただし、権限者(署名スタンプの名義人)が自己の意思の意思に基づいて署名スタンプを使用しているかどうかは第三者(その会社の外部者)の目からは明らかではないので、その他の自筆署名との比較対照ができない署名スタンプが用いられている場合には注意が必要になります。 すなわち、通常署名スタンプと社印の押印があれば権限者の意思に基づいて契約が締結されている場合が多いですが、権限のないスタッフが勝手に署名スタンプを用いて文書の作成を行うこともできるので、文書が偽造される可能性は自筆署名と比べて高くなります。 ベトナム民法でも無権限者によりなされた契約は原則無効となりますので、この点注意が必要です。 実際に署名スタンプを用いている会社も相当程度あるようなので、例えば ①重要性が極めて高い、又は相手方の信用度が高くないもの →自筆署名を求める。 ②契約の重要性が相当程度あり、かつ相手方の信用度も高いもの →署名スタンプの名義人から(署名スタンプが押印されている書面が添付された)メールを送ってもらう ③契約の重要性が高くなく、かつ相手方の信用度も高いもの →相手方に特段の処置をもとめない など、状況に応じて相手方に適切な処置を求めることが肝要と考えます。 法令上、定款、訴状等は署名押印が要件とされているものがあり、これらの書面については署名押印がなければ無効となります。 その他の法令上署名押印が要求されていない書面については、たとえ政府に提出する書面であっても自筆署名がないからといって理論上は無効になりません。 しかし、政府や銀行等が書面の提出先の場合には、これらの機関は自筆署名がないものを受け入れないのが通常です(おそらく無効の場合のリスクを負担したくないため。)から事実上、自筆の署名が必要になります。
  • 組織体制、契約管理
  • 2017.08.21
  • 契約一般
販売促進活動(割引・景品当選キャンペーン)に関する規制はありますか。
ベトナムでも日本同様色々な販売促進活動が取られています。 日本とは異なり、それに特化した法律はありませんが、商法及びその下位法令において販売促進活動についての登録等の規定がありますので解説します。 例えば、一定個数の商品を購入したらプレゼントが当たるキャンペーンや、10個購入したら10%引きのようなキャンペーンは、2005年の商法の第4章(第88条以下参照)に規定される「販売促進活動」であると考えられます。 第88条  販売促進 1. 「販売促進(promotion)」とは、商人が顧客へ特定の便益を与えることにより物品の売買又はサービスの提供の促進を目的とする商業促進活動の一つである商業活動をいう。 2. 商人は、以下の何れかの形態で販売促進を行う。 (a) 自らの事業における物品又はサービスについて販売促進を行う。 (b) 販売促進サービスを業とし、他の商人との合意に従い当該商人の物品又はサービスの販売促進を行う。 したがって、商法の実施をガイドする政令37/2006/ND-CP(以下「政令37」といいます。)の第15条に基づき、販売促進活動を実施する前に、7営業日以内に、企業は販売促進活動を行う場所における商工局に当該販売促進活動に関する書面による通知を送らなければならないものとされます。   -10個購入すれば抽選で車が当たるなどのキャンペーンは、政令37/2006/ND-CPの第12条に基づいて、運による販促プログラムの参加付き商品販売又はサービス提供という販売促進の形態であり、企業は商工局(1つの中央直轄市・省において販促を実施する場合)または商工省(2つ以上の中央直轄市・省において販促を実施する場合)への登録を実施しなければならないとされます(政令37の第16第1項)。 -販促プログラムの登録を承認する機関は商工省である場合、販売促進活動を実施する前に、7営業日以内に、企業は販売促進活動を行う場所における商工局に書面による通知に商工省の承認書を添えて送らなければなりません(政令37の第16条の第5項)。 -懸賞品の価値が100,000,000 VND以上場合、企業は商工局又は商工省に通知しなければならず、また、受賞者なしの懸賞品に対して、懸賞品を受ける期間の満了する日から30日以内に、公表された懸賞品の価値の50%を国家金庫に納金しなければならないとされます。(政令37の第12条の第1、5項) -販促プログラムの懸賞品を受ける期間の満了する日から45日以内に、企業は商工省又は商工局に販促プログラムの結果及び受賞者なしの懸賞品の価値の50%を処理することに関する報告書を送らなければなりません。(政令37第16条第6項) -1つの製品やサービスに対して販促を実施する総期間は1年につき180日を超えてはならず、1つの販売促進プログラムは90日を超えてはなりません。(政令37の第12の第4項) -登録手続きについては、政令37の第16条の第2項をご参照ください。   -販売促進活動を実施する前に、7営業日以内に、商人は販売促進活動を行う場所における商工局に当該販売促進活動に関する書面により通知しなければならないものとされます(政令37/2006/ND-CPの第15条の第1項)。 -1つの製品やサービスに対して割引の形で実施される販売促進プログラムの総期間は1年につき90日を超えてはならず、1つの販売促進プログラムは45日を超えてはなりません(政令37の第9条の第4項)。 -販売促進活動に利用される製品やサービスの最大割引率は、販促期間前の当該製品やサービスの価格の50%を超えてはならないとされています(政令37の第6条)。 -通知手続きについては、政令37の第15の第2項をご参照ください。 -製品販売価格やサービス提供価格は国家により具体的に規定された場合、当該製品販売価格やサービス提供価格を値引きしてはならず(政令37/2006/ND-CPの第9条第2項)、製品販売価額やサービス提供価格の最低価格は国家により規定された場合、当該最低価格より低い製品販売価額やサービス提供価格を値引きしてはならないです(政令37/2006/ND-CPの第9条第3項)。   販売促進活動を実施する前に権限を有する国家管理機関に通知・登録しない行為、又は法律の規定に従って登録・通知しない行為、又は事実と異なる通知・報告をする行為等対しては、政令185/2013/ND-CP号の第48条により、最大50,000,000 VNDの罰金となっています。 但し、政令185に規定された罰金は個人の違反行為に適用されるため、組織の違反行為に対しては、個人の罰金の2倍に当たる罰金が課されるとされます(つまり最大100,000,000VND)。   実務上は書面の通知をしている小売業などは多くはないと思いますが、法令上は上記のとおりとなっています。 また、罰金や罰則を受けた報道を確認しましたが、多くの企業が罰則を受けたというニュースはありませんでした。 主に携帯電話等の無線通信サービスを提供する企業がこのような罰則を受けた例があります(例えば:Mobiphone, Viettel, Vinaphone…)。  
  • 組織体制、契約管理
  • 2016.07.11
  • 契約一般
ソフトウェアの保証責任(瑕疵担保責任)について教えてください。
  ベトナムでは「請負」契約は民法上の契約形態として定められて おらず、ソフトウェアの納品は売買又は委任契約のいずれか となります。 基本的に、貴社はソフトウェアをデータで納品されている と思いますので、物品売買を前提とするベトナム法では 売買には明確に該当しません。   売買については、以下のとおりの保証規定があります。   ①民事法2005年、第445条~448条:http://www.moj.go.jp/content/000111329.pdf ※物品売買について保証合意がある場合、保証期間中、物品の保証義務あり。   ②商法、第49条: 「第49条 (物品に対する保証義務) 1. 売買された物品に保証が付される場合、売主は[当該保証 において]合意した内容及び期間に従い当該物品に対して責任を負う。 2. 売主は可能な限り最短期間内に保証義務を遂行しなければならない。 3. 当事者間で別段の合意のない限り、売主は保証に関する全ての経費を負担しなければならない。」   ③消費者権利保護法、第21条~24条: ※相手が消費者の場合   いずれも保証合意及び保証期間については当事者の合意次第となります。 ソフトウェアは物品とはいえないものの、こちらが適用される 可能性もあるため、注意が必要です。   単なる委任と判断される場合は、契約内容次第となります。 上記のとおり、法自体が、保証を任意規定として定めていますので (消費者との売買取引を除く)、 基本的には個別契約で規定すれば、そのとおりの保証規定 ということになります。   ご質問に対する回答を完結に記載すると、以下のとおりです。 ①ソフトウェアを開発し納品した場合、瑕疵担保責任は発生するか →物品売買と判断されれば、保証責任あり。もっとも、 消費者取引以外は、任意規定。   ②発生する場合法律上どのくらいの瑕疵担保期間か →当事者の合意で決定     ③個別契約で定めた場合は個別契約が有効か (例えば瑕疵担保期間を短くする) →有効
  • 組織体制、契約管理
  • 2016.06.02
  • 契約一般
ベトナムはウィーン売買条約(CISG)に加盟していますか。加盟の影響ありますか。
ウィーン売買条約(CISG:United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods)について、ベトナムはこれまで署名しておりませんでした。 しかし、加盟国一覧を確認すると、ベトナムは昨年署名したようで2017年1月1日から施行開始となっています。 日本・中国間や日本・アメリカ間等の契約では常に意識している条約ですが、今後は日本・ベトナム間等の契約でもより確認する必要が出てくることになります。 加盟国一覧は以下より。 http://www.uncitral.org/uncitral/en/uncitral_texts/sale_goods/1980CISG_status.html なお、世界貿易の3分の2以上は加盟国間で行われています。 以下簡単に概要について触れます。   日本語訳も出ていますし、日本では色々な書籍も出ていますので詳しくは記載しませんが、ウィーン売買条約は以下の場合に適用されます。 *外務省の日本語訳:http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/treaty169_5.html 【適用される国】  ・締約国間では国際私法による準拠法指定を介さずに適用 ・締約国間でなくとも国際私法の準則によって締約法が指定される場合にも適用 【適用される取引】  当事者の営業所が異なる国に所在して(国籍は関係なし)、物品を売買する場合(一部適用除外あり。第2条、第3条参照) 【適用される内容】  広く売買に関して定めています。 ・売買契約の成立について ・買主、売主の義務について ・危険の移転について ・解除、損害賠償、利息等について ウィーン売買条約は任意規定ですが、適用される取引の契約でこれを排除していない場合やウィーン売買条約に反する内容を定めていない場合には、ウィーン売買条約が適用され、当事者の契約を補足するということになります。 日本法やベトナム法等とは異なる考え方の内容も多いので注意を要します。 【ベトナムの留保事項】  上記加盟国リストを見る限り、ベトナムは第96条の留保宣言をしています。 これは契約について方式の自由を定めた第11条の適用を排除して書面主義を取るものですので注意が必要となります。 効果については第12条に記載されています。 第12条 売買契約、合意によるその変更若しくは終了又は申込み、承諾その他の意思表示を書面による方法以外の 方法で行うことを認める前条、第二十九条又は第二部のいかなる規定も、当事者のいずれかが第九十六条の 規定に基づく宣言を行った締約国に営業所を有する場合には、適用しない。当事者は、この条の規定の適用 を制限し、又はその効力を変更することができない。
  • 組織体制、契約管理
  • 2016.04.25
  • 契約一般
契約の準拠法について決まりはありますか?
契約の準拠法は、外国的要素を持つ契約である場合には外国法を準拠法とすることができ、一方、外国的要素を持たない契約である場合には外国法を準拠法とすることはできないと考えられています。 「外国投資企業」と「外国企業」(外国にある企業)との契約は外国的要素があるが、「外国投資企業」同士の契約はそれだけでは外国的要素はないと考えられます。   簡単にいいますと、ベトナム法人同士(日系企業の現地法人含む)であればベトナム法を準拠法とし、それ以外の場合にはベトナム法・外国法のいずれかを準拠法にすればよいということです。 もっとも、日本企業からするとベトナムの法律はそれほど違和感もなく、特に変わった規定が大量にあるわけでもないため、一般的には、無理に外国法にする必要はないと考えられます。
  • 組織体制、契約管理
  • 2016.04.25
  • 契約一般
契約の言語について決まりはありますか?
契約の言語は、法令上、原則として決まりはないため、英語でも日本語でも問題ありません。 また、英語(日本語)とベトナム語を作成して、英語(日本語)の効力を優先することも問題ありません。 ※ベトナム内資企業との合弁契約、消費者権益保護法が適用される場合等においては原則としてベトナム語で作成する必要があります。   ただし、税務局対応のため、実務上はベトナム語の翻訳は必要です。 また、紛争になってベトナムの裁判所で解決する場合には、事実上はベトナム語版が正とされる可能性が高いため、結局紛争時に公証した正式な翻訳を用意する必要が出てくる可能性もあります。 したがって、重要な契約については英語(日本語)に厳格に一致するベトナム語を作成することが望ましいでしょう。
  • 組織体制、契約管理
  • 2016.04.25
  • 契約一般
法的代表者の権限を他の者に委任することは可能ですか。
企業法において、ベトナムに居住する法的代表者がベトナムから離れる場合には、法定代表者の権限の行使及び義務の履行を他人に対して書面により委任しなければならないとされています。 また、民法においても、法的代表者が委任代理人を立てることは認められています。 もっとも、2015年のDecreeにおいて労働契約締結・懲戒手続には一定の制約が課せられており、労働契約締結に関しては、法的代表者が締結するのを原則としつつ、労働省により発行されるフォームに基づいて他の者に労働契約締結の権限を委託することができるとしています。 また、権限を委託された者は、他の者に再委託することは認められません。