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裁判と仲裁はどのように選択すればよいですか。

  • 2016.04.25
  • 紛争解決
  • 訴訟・仲裁

  ■裁判と仲裁 紛争解決は通常は仲裁か裁判のいずれかによることになります。 仲裁の場合、仲裁機関は複数ありますが、一般的にはVIAC(ベトナム国際仲裁センター)による仲裁が選ばれています。   外国企業が関係する場合、外国の仲裁機関(シンガポール等)を選択することもあります。 仲裁の場合、あらかじめ契約書において法定の事項(仲裁合意)を合意しておく必要あるため注意が必要です。 ■裁判と仲裁の相違 では、契約時、どのような観点で裁判と仲裁とを選べば良いのでしょう。   1)ベトナム国内の紛争の場合 ベトナム現地法人同士(日系含む)の紛争の場合、ベトナム国外では紛争解決できないと考えられています...

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ベトナムでの紛争解決方法について教えてください。
一般的にみて、会社間で法的トラブルが起きた場合に備えて、紛争解決方法を契約書に定めることが多いです。では、日本とベトナムの会社間で契約を締結する場合に、紛争解決方法・紛争地をどのように定めるべきなのでしょうか。本稿では、日本とベトナム間の法的トラブルにおける紛争解決方法・紛争地を比較、解説します。   目次1.国際取引の紛争解決2.訴訟について比較(1)日本での訴訟(2)ベトナムでの訴訟3.仲裁について比較 (1)日本での仲裁(2)シンガポールでの仲裁(SIAC)(3)ベトナムでの仲裁(VIAC)4.結論 国際的な商取引に用いられる代表的な紛争解決手段は、訴訟、仲裁になります。訴訟は原告が訴えを提起することによって開始できるのに対して、仲裁は当事者が合意した場合にはじめて開始される点で異なります。 いずれの方法をとるにせよ、トラブルが発生した場合にどのような手段で紛争を解決するのかを当事者間であらかじめ契約に定めておくべきです。   前提として、ベトナム企業との間の訴訟であっても、国際裁判管轄が認められる場合や、当事者が合意している場合には、日本の裁判所に管轄が認められます。また、日本の裁判はベトナムでの裁判に比べて客観性・公正性が期待できます。しかし、仲裁の場合と異なり、訴訟についてはベトナムとの判決相互執行条約がないため、相手方が日本国内に資産を有するのでない限りは日本で裁判を行うべきではありません。 相手の資産がベトナム国内にある場合に直接執行が可能ですが、ベトナムでの訴訟は客観性・公正性などの観点から問題が多く、また、控訴もあるため一回での解決性には劣ることになります。証拠のベトナム語化が必須という点も難点になります。   訴訟の場合と異なり、仲裁は日本で行っても相互執行が可能ではあります(ニューヨーク条約)。また、言語を英語にしやすく外国人仲裁人の選任も容易です。しかし、証人旅費等や高めの仲裁人報酬がかかるためコストはベトナムより高くなりますし、ベトナムで執行するためにはベトナムの裁判所での承認手続きが必要です。また、ベトナムの裁判所で承認されない場合もあります。 世界的に高く評価されており、迅速かつ公正性が見込めます。ただ、日本における仲裁と同様にコストが高くなるうえ、ベトナムの裁判所で承認されないリスクがあります。 仲裁合意がなければ仲裁は行えませんが、裁判よりも迅速性・公正性が見込めます。証拠のベトナム語訳を求められるなど翻訳・公証コストがかかりますが、(要件を満たせば)仲裁人として日本人含む外国人も任命可能ですし、なによりベトナム国内での執行が実務上スムーズになります。また、前例は少ないですが日本での執行も可能です。   国際取引の解決手段としては、一般的に訴訟または仲裁が選ばれます。もっとも、ベトナムの訴訟については相互執行条約がなく、客観性・公正性も乏しいため、基本的には避けるべきです。 また、相手の資産が主に日本にある場合には、日本での裁判・仲裁が考えられますが、そのようなケースは多くはないでしょう。 そのため、多くの場合には、ベトナムでの仲裁が最も適しているといえそうです。ベトナムでの仲裁では仲裁人は日本人を含む外国人から選べますし、ベトナムでの裁判よりは客観性・公正性があるといわれています。また、コストも訴訟ほどかかりません。 紛争解決方法としてベトナムでの仲裁を選択する場合には、あらかじめ契約書に仲裁条項として盛り込んでおくべきです。仲裁を開始するためには双方の合意が必要だからです。なお、仲裁人に外国人を含めること、手続き言語を英語にすることなどを盛り込んでおくと手続きがより円滑になります。
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  • 2020.10.06
  • 訴訟・仲裁
ベトナムにおける仲裁合意と訴訟について
契約書の中に「本契約に起因する、または本契約に関連する一切の紛争について、両当事者の協議により解決できない場合には、これらの紛争は、ベトナム国際仲裁センター(VLAC)にてその仲裁規則に従って解決されるものとする。」という条項(以下、このような条項に関する合意を「仲裁合意」といいます)を目にする機会も多いかと思います。 ではこのような合意がある場合に、仲裁ではなく裁判を行うことができるのでしょうか。一般的に、仲裁は裁判よりも高額になるため、仲裁合意をしてみたものの裁判で済ませたいと考える場合があるかもしれません (仲裁、裁判、それぞれのメリット・デメリットについては、こちらの記事をご参照下さい)。 また、仲裁をやってみたものの、仲裁判断に納得ができず訴訟を起こして裁判所で改め争いたいと考える場合があるかもしれません。このような場合はどうでしょうか。以下、それぞれ検討します。 1)ベトナムでは仲裁について、2010年6月17日付、商事仲裁法No. 54/2010/QH12号(以下「仲裁法」といいます)が規律を定めています。仲裁法の第6条によれば、仲裁合意が無効でない限り、裁判所は事件の受理を拒絶することができると定められています。 したがって、契約書に仲裁合意がある場合、その契約に関わる紛争解決は原則として仲裁によらなければならず、裁判所に訴訟を提起することができません。 2)では、仲裁合意の存在を無視して、訴訟を提起した場合はどうでしょうか。 日本の仲裁法14条は、「仲裁合意の対象となる民事上の紛争について訴えが提起されたときは、受訴裁判所は、被告の申立てにより、訴えを却下しなければならない。…」と定められているため、仲裁合意が存在したとしても、訴訟提起後に当事者のいずれかから、訴訟を行うことに異議が申し立てられない限り、当事者は訴訟を遂行することができます(このように、当事者の申立があることによって訴訟が却下される訴訟要件を講学上、消極的訴訟要件といいます)。 ※訴訟要件とは、裁判所が判決を行ううえで満たさなければならない前提条件のことをいいます。 一方、ベトナムの仲裁法は、仲裁合意について消極的訴訟要件と解することのできる条項が存在しないため、仲裁合意は裁判所が職権で探知しなければ訴訟要件と解すべきです。そのため、仮に仲裁合意の存在が確認されずに判決までなされてしまったとしても、訴訟要件を欠く判決として、当該判決は無効となります。 したがって、仲裁合意を無視して裁判所に訴訟を提起すべきではありません。 1)仲裁法の第69条1項によれば、当事者が調査委判断を受け取ってから30日以内に、同法第68条2項に該当するいずれかの事由があることについて確証がある場合には、当該事由を示す証拠とともに、仲裁判断の取消を求めることができるとされています。 2)そして、仲裁法の第68条2項は仲裁の取消事由として、 ・仲裁合意がない、又は仲裁合意が無効な場合 ・仲裁委員会の構成や、仲裁手続が当事者の合意や法令に違反する場合 ・紛争が仲裁の管轄を超える場合 ・仲裁判断が偽造の証拠に基づく場合 ・仲裁委員が賄賂を収受したことにより、仲裁判断の客観性や公平性に問題がある場合 ・仲裁判断がベトナム法の基本原則に反する場合 3)以上から明らかなように、単純に仲裁判断に不服があるに過ぎない場合は、裁判所に訴訟を提起することができません。仲裁結果の不服を裁判所に申し立てることができるのは、仲裁合意の前提や手続き的瑕疵、その他法令違反がある場合等に限られます。 紛争解決について仲裁を合意した場合、原則として裁判所による紛争解決は選択できないことになります。費用面を除けば、訴訟よりも仲裁の方が利点が多いと思いますが、上記の点を加味して、契約書中の紛争解決条項を設定する必要があります。
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  • 2019.10.21
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仲裁合意がある場合に訴訟をすることはできますか?
仲裁合意が契約上定められているとき、ベトナムで訴訟することはできるのでしょうか。 たとえば仲裁を決めていたが、訴訟のほうが時間的/コスト的に良いと考えるケースはあります。 ベトナムでは仲裁について、商事仲裁法(No. 54/2010/QH12、添付英語版)が規律しています。 同法の6条は、 Article 6. Courts’ refusal to accept cases in which there is an arbitration agreement In case the disputing parties have reached an arbitration agreement but one party initiates a lawsuit at a court, the court shall refuse to accept the case, unless the arbitration agreement is invalid or unrealizable. と規定しており、裁判所は仲裁合意の存在を理由として、訴訟の受理を拒絶することができます。 そして、仲裁合意の不存在が訴訟要件であることは日本と同様ですが、これは、当事者の主張を必要とする抗弁事項ではありません。 ※参照 日本仲裁法14条 第十四条 仲裁合意の対象となる民事上の紛争について訴えが提起されたときは、受訴裁判所は、被告の申立てにより、訴えを却下しなければならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。 ベトナムでは、仲裁合意の存在は、裁判所が職権で探知しなければならない訴訟要件とされており、仲裁合意の存在を看過してなされた判決は原則無効とされます。 そのため、仲裁合意がある場合、ベトナムで訴訟することはできないということになります。