目次居住義務について他の拠点の代表と兼任に関して
ベトナムにおける外国法人の駐在員事務所、支店に関する商法の細則を規定する政令第07/2016/ND-CP号(以下「政令第07号」といいます。)とその他の関連する法律では、ベトナムでの駐在員事務所の事務所長が居住者でなければならないという義務を規定していません。
つまり、ベトナムでの駐在員事務所の事務所長が非居住者でも問題ありません。
駐在員事務所の事務所長がベトナムを不在にする場合、政令第07号第33条に従い、別の人に権利・義務を書面で委任しなければならないとされています。
なお、企業法において、法人の法定代表者最低一人はベトナム居住者である必要がありますが、駐在員事務所長はそのような義務がないため、弊所のクライアントでもベトナムに居住していない所長の方はいらっしゃいます。
政令第07号第33条6項によれば、外国法人の駐在員事務所の事務所長は以下の役職を兼務できないとされています。
a. 同じ外国法人の支店の代表
b. 他の外国法人の支店の代表
c. その外国法人の法的代表者又は、他の外国法人の法的代表者
d. ベトナム法律に従い設立する経済組織の法的代表者
そのため、他の法人や支店の代表と兼務することは認められていません。
この規定にはベトナム国内の拠点に限るという規定もないため、国外の支店や現地法人の代表との兼務もできないものと解釈可能です。
なお、ハノイ市の工商局に電話でヒアリングしたところ、担当者によれば、他国での支店・現地法人の代表を含み、兼任は不可であるという意見でした。
組織体制、契約管理
2022.09.19
組織一般
新企業法の政令における休眠期間と更新について(01/2021/ND-CP)
2014年の旧企業では、法政令78/2015/NĐ-CP号以下の、第57条第2項の規定により、休眠を1年した後でも更に更新でき、合計で2年間休眠できるという規定となっていました。
Điều 57. Tạm ngừng kinh doanh, tiếp tục kinh doanh trước thời hạn đã thông báo đối với doanh nghiệp, chi nhánh, văn phòng đại diện, địa điểm kinh doanh
…
2. Trường hợp doanh nghiệp, chi nhánh, văn phòng đại diện, địa điểm kinh doanh tạm ngừng kinh doanh hoặc tiếp tục kinh doanh trước thời hạn đã thông báo, doanh nghiệp gửi thông báo đến Phòng Đăng ký kinh doanh nơi doanh nghiệp, chi nhánh, văn phòng đại diện, địa điểm kinh doanh đã đăng ký chậm nhất 15 ngày trước khi tạm ngừng kinh doanh hoặc tiếp tục kinh doanh trước thời hạn đã thông báo. Thời hạn tạm ngừng kinh doanh không được quá một năm. Sau khi hết thời hạn đã thông báo, nếu doanh nghiệp, chi nhánh, văn phòng đại diện, địa điểm kinh doanh vẫn tiếp tục tạm ngừng kinh doanh thì phải thông báo tiếp cho Phòng Đăng ký kinh doanh. Tổng thời gian tạm ngừng kinh doanh liên tiếp không được quá hai năm.
しかし、新企業法の施行にともなう政令01/2021/NĐ-CP号の第66条第1項により、休眠は1年間との記載となっており、更新ができるのかどうか不明確な記載となっていました。
Điều 66. Đăng ký tạm ngừng kinh doanh, tiếp tục kinh doanh trước thời hạn đã thông báo đối với doanh nghiệp, chi nhánh, văn phòng đại diện, địa điểm kinh doanh
1. Trường hợp doanh nghiệp, chi nhánh, văn phòng đại diện, địa điểm kinh doanh tạm ngừng kinh doanh hoặc tiếp tục kinh doanh trước thời hạn đã thông báo, doanh nghiệp gửi thông báo đến Phòng Đăng ký kinh doanh nơi doanh nghiệp, chi nhánh, văn phòng đại diện, địa điểm kinh doanh đặt trụ sở chậm nhất 03 ngày làm việc trước ngày tạm ngừng kinh doanh hoặc tiếp tục kinh doanh trước thời hạn đã thông báo. Trường hợp doanh nghiệp, chi nhánh, văn phòng đại diện, địa điểm kinh doanh có nhu cầu tiếp tục tạm ngừng kinh doanh sau khi hết thời hạn đã thông báo thì phải thông báo cho Phòng Đăng ký kinh doanh chậm nhất 03 ngày làm việc trước ngày tiếp tục tạm ngừng kinh doanh. Thời hạn tạm ngừng kinh doanh của mỗi lần thông báo không được quá một năm.
もっとも、同政令第66条第1項により、休眠通知毎回の休眠期間は 1 年を超えない、とされていることから、休眠回数が限定されていないことになっていると解釈できます。計画投資局へのヒアリングでも、毎回の休眠の期間が1年というだけで、終了する際に回数の制限なく何度でも休眠の申請が可能ということが確認できました。
組織体制、契約管理
2021.10.18
組織一般
ベトナムにおける弁済の充当のルールについて
今回は、弁済の充当のルールについて解説します。弁済の充当とは、債務者が同一の債権者に対して、同種の内容の数個の債務を負担している場合(例えば、数口の借金債務)や、1個の債務の弁済として数個の給付をしなければならない場合(例えば、数か月分の賃料、数回分の月賦金)に債務者が弁済として提供した給付が、全部の債務を消滅するに足りないときに、どの債務の弁済に充てるかを定めることをいいます。
本稿では、まずベトナムにおけるルールについて説明し、その後日本法が適用される場合にどういった帰結になるかについても言及します。
抽象的な議論のみではイメージがしづらいと思いますので、具体的な事例をベースにして解説を行います。
事例:
1)AはBとの間で売買契約を締結し、以下の三つの商品を購入することにしました。それぞれの商品の価格や支払い期限、保証は以下のようになっています。
① 商品㋐ 価格:1000万VND 支払期限:2021/9/20 保証:なし
② 商品㋑ 価格:800万VND 支払期限:2021/9/30 保証:なし
③ 商品㋒ 価格:500万VND 支払期限:2021/10/10 保証:c銀行の保証
2)AB間の売買契約については、弁済の充当について何ら規定していません。
3)本日(2021年10月15日)までAからの支払いがなかったところ、Aは500万VNDの支払いを行うとの連絡をBに行いました。しかし、Aは当該500万VNDの弁済について③に充当するように要求してきました。Aとしては、③の支払いから先にされると銀行保証がついている債権から消滅してしまうので、①の弁済に充当したいと考えています。
上記の状況においてAとBどちらの主張が認められるでしょうか。
金銭債務の履行についてはベトナム民法(法律91/2015/QH13号)第280条には、期限、地点および支払方式について合意に従って履行されなければならないこと、別段の合意がある場合を除き債務には元本に対する利息の全額が含まれることが規定されているのみで、法律上弁済の充当について明確なルールが規定されていません。
以下に記す日本法を適用した場合の帰結、民法が契約者間の公平を図ることを一つの目的としており、歴史的に債務者が債権者よりも格段に弱い立場に置かれていたことを加味すると、債務者を保護するため、Bの主張が認められ、商品㋒に関わる債権の消滅が認められる可能性があります。
したがって、債権者側として、保証や担保の条件に違いのある複数の債権が発生する契約を締結する場合には、契約で弁済の充当についてきちんと合意しておく必要があります。本件の事例であれば、支払いが遅れた場合には商品㋒の弁済の充当が先に行われないようにする規定を設けておく必要があります。
日本法上は、民法(明治二十九年法律第八十九号)において弁済の充当についてより明確なルールが定められています。
1)まず当時者間に合意がある場合は、その合意に従うことになります(第490条)。
2)当時者間に合意がない場合、債務者が充当について指定できることになります(第488条第1項)。したがって、上記の事例ではBの主張が認められ、商品㋒に関わる債務から消滅することになります。これを防ぐためには、ベトナム法が適用される場合と同様に契約において規定を設けておく必要があります。
3)以下は、上記の事例とは関係ありませんが、日本民法上のルールについてもう少し説明するために、仮に債務者が充当を指定しない場合についても説明します。
債務者が指定しない場合、債権者が弁済の受領時に指定を行うことができます(第488条第2項本文)。しかし、債務者は当該充当に対して異議を述べることができ、その場合債権者の指定は無効となり(第488条第2項但書)、下記の法定充当のルールに従うことになります。
4)両当事者が充当について指定しない場合、および債権者の充当指定に異議があった場合以下のとおり法定充当がなされることになります。
① 弁済期が到来したものから充当されます(第488条第4項第1号)
② 全ての債務について弁済期が到来している場合、債務者にとって利益の多いものから充当されます(第488条第4項第2号)※
③ 債務者に対する利益が等しい場合、弁済期が先に到来したものから充当されます(第488条第4項第3号)
④ 弁済期も同じ場合、各債務額の比率に従って割合により充当されます(第488条第4項第4号)
※ 判例(大判大7・3・4民録24輯326頁)によれば、保証人の有無では債務者の利益にとって違いが生じないとされています。
以上から、ベトナムであろうが日本であろうが、複数の債権がある場合に、保証や担保の有無について各債権に違いがある場合、契約で弁済の充当について明確に規定しておかないと、債権者側は不利益を被る可能性があります。
ベトナム民法にも所有権留保については明確されており、具体的には331条から334条まで定められます。
そして、所有権留保は登記の時点から、第三者への対抗力を生じさせると規定されています。
この点、実務上登記をできるかどうかは、実例が少ないこともあり明確ではありませんでした。
その後、Decree第102/2017/ND-CP号(担保登記について規定するDecree)において、所有権留保の登記制度の詳細が定められています。
実務上、以下のようにオンライン担保設定登記システム(Online Registration System)上に登録されている所有権留保も確認できており、実際に手続もできているようです。
登記の確認等も下記のサイトから登録することで可能となっています。
https://dktructuyen.moj.gov.vn/
Article 331 Reserve of ownership
1. Pursuant to a purchase and sale contract, the ownership right to a property may be reserved by the seller until the time when the obligation to make payment is fully discharged.
2. The reserve of the ownership right must be made in writing in a separate document or be stated in the purchase and sale contract.
3. The reserve of the ownership right shall be enforceable against third persons as from the time of registration.
Article 332 Right to reclaim property
Where a purchaser fails to discharge the obligation to make payment to a seller as agreed, then the seller shall have the right to reclaim the property. The seller shall return the amount of money paid by the purchaser after deduction of the value of wear and tear of the property resulting from its use. Where the purchaser causes loss of or damage to the property, then the seller shall have the right to demand compensation for loss and damage.
Article 333 Rights and obligations of property purchasers
1. To use the property and to enjoy the benefits and income derived from the property within the period in which the reserve of the ownership right takes effect.
2. To bear risks with respect to the property during the duration of reserve of the ownership right, unless otherwise agreed.
組織体制、契約管理
2019.05.06
組織一般
社内消防団の設置義務、人数および社内消防団の団員への手当などについて教えてください。
消防法第27/2001/QH10号第20条第1項d)により、社内消防団の設置が義務付けられる場合があります。
・第20条 施設の火災予防
1 既定の範囲内に設置され、自立した消防対策案が必要な、管理者のいる施設の活動については、下記の基本的な条件を整えて実施しなければならない。
…
d)消防に関する条件を満たす人力、手段およびその他の条件の整備。
…
社内消防団は10人から25人までで編成され、チームリーダーと、2ないし3名のサブリーダーを置く必要があります(政令第79/2014/NÐ-CP号第32条4項b))。
・第32条 人民防衛部隊および施設/専門の消防部隊の組織編成とその管理
…
4 人民防衛隊、施設/専門分野の消防隊の組織編成と定員数
…
b)施設の消防隊は10人から25人までで編成され、チームリーダーと2、3名のサブリーダーを置く。
…
また、具体的に社内消防団として最低限確保しておかなければならない人数は、通達第66/2014/TT-BCA号の第15条に定められています。従業員の数によって、必要な消防団員数は異なり、必要な人数は下記の表の通りです。
従業員の人数
消防団員の人数
指揮者
常時10人未満
従業員の全員(10人未満)
施設のトップ(最高責任者)
常時10人~50人
10人以上
チームリーダー1名
常時50人~100人
15人以上
チームリーダー1名、サブリーダー1名
常時100人以上
25人以上
チームリーダー1名、サブリーダー2名
なお、複数の製造ラインがあったり、部署が別々に稼働する、またはシフト制を取っている企業は、製造ライン別、部署別、シフト別の消防組を組織する必要があります。
その場合、消防組の人数は5人~9人までとし、チームリーダーあるいはサブリーダーが組長を兼務します。
・第15条 人民防衛部隊、施設/専門分野の消防部隊の活動の組織編成
…
2 施設の非専任の消防隊の組織編成および定員数
a) 常時 10 人未満の者が従事する(または稼働する)施設や自動車両の場合、これらのすべての従事者は、 当該施設の消防隊のメンバーとする。この場合、その施設のトップ(最高責任者)または自動車両の指 揮者が指導、指揮する。
b) 常時 10 人から 50 人が従事する(または稼働する)施設や自動車両の場合、その施設の消防隊の人数 は 10 人以上とし、うちチームリーダー1 名が置かれる。
c) 常時 50 人から 100 人が従事する(または稼働する)施設や自動車両の場合、その施設の消防隊の人数 は 15 人以上とし、うちチームリーダー1 名とサブリーダー1 名が置かれる。
d) 常時 100 人以上が従事する(または稼働する)施設や自動車両の場合、その施設の消防隊の人数は 25 人以上とし、うちチームリーダー1 名とサブリーダー2 名が置かれる。
đ) 複数の製造ライン、部署が別々に稼動する、あるいはシフト制で稼動する施設や自動車両の場合、部 署別、製造ライン別、シフト別の消防組を組織し、これらの消防組の人数を 5 人から 9 人までとし、チ ームリーダーあるいはサブリーダーが組長を兼務する。 施設や自動車両を直接管理する機関、組織のトップ(最高責任者)は、当該施設の消防隊のリーダー、 サブリーダーの任命決定を下す。
消防訓練に参加した人に対しては、その訓練日の給料に加えて、一日当たり日給の0.5倍の手当金を払う必要があります(通達52条/2015/TTLT-BLDTBXH-BCA-BTC号第8条)。
・Article 8 Wages or bonuses paid during the duration of participation in fire drills or fire training courses
Officers or members of intramural and sectoral firefighting teams shall be paid wages or bonuses by their host entities during the duration of their participation in fire drills or fire training courses, subject to the following provisions:
1 Wages (including wage amounts, allowances and other supplementary amounts, if any) paid during the duration of participation in fire drills or fire training courses. Wages used as the basis for calculation of amounts of payments for their time spent on participating in fire drills or fire training courses shall be subject to legislative regulations on wage or salary and statutes of salary or wage payment of host entities.
2 The amount of bonus payment paid during the duration of participation in fire drills or fire training courses shall be 0.5 times as much as the amount of wage payment.
…
隊長、副隊長に対しては、上記⒈の手当に加えて、1か月の固定給にの30パーセント以上の手当を支給する必要があります(政令第79/2014/NÐ-CP号第35条3項)。
・第35条 消火に参加する者、人民防衛隊、施設/専門分野の消防隊のメンバーおよび職員に対する制度、政策
…
3 施設の消防隊の非専任のリーダー、サブリーダーは、給料及び手当(あれば)のほか、所属機関、組織より特別手当が支給される。機関、組織のトップは、実情に基づき、役職別の手当の金額を決定する。なお、この手当は基本給の30パーセント以上とされる。