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ベトナム投資に関連する最新ニュース・法務アップデート(2025年2月7日)

今後、日系企業にも関わる可能性の高いベトナムの経済ニュースや法務アップデートをメーリングリスト・コラムで行っていきたいと思います。有料会員(顧問企業)向けの内容とを分けていく可能性もありますが、内容が固まっていくまでは全体を公開していきたいと思います。

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注目すべき直近3日間の主な経済ニュース

・経済指標の改善と外国直接投資(FDI)の急増(2025年1月)

2025年1月のベトナム経済は回復基調を示しました。
消費者物価指数(CPI)は前年同月比+3.63%とインフレは管理された水準にあり、国家財政も安定しています。輸出入は月間630億ドル超に達し、約30億ドルの貿易黒字を記録しました。

特に外国直接投資(FDI)の動向が顕著で、新規認可額は約43億ドルと前年同期比+48.6%の大幅増となり、実行額も15億ドル超(+2%)に達しています 。工業生産指数や小売売上高も前年を上回り、国内需要の持ち直しが見られます。
インフレ抑制下でマクロ経済の安定が維持され、FDI流入が力強く増加していることは、ベトナムの投資環境が改善傾向にあることを示しており、日系企業にとっても追い風となるでしょう。

関連ニュース:
Positive economic indicators recorded in early 2025: Gov’t spokesperson|VNS

・エネルギー計画の見直し:ガス・洋上風力目標引き下げと石炭・原子力へのシフト

ベトナム政府は2030年までの電力計画を見直す草案を発表し、ガス火力と洋上風力発電の導入目標を大幅に引き下げました 。
新たな草案によれば、当初2030年までに6GW設置予定だった洋上風力は今後10年間ゼロに先送りされ、液化天然ガス(LNG)火力も国内ガス供給不足などを理由に計画容量を減らす方針です。その穴埋めとして、2030年までに石炭火力を当初計画の30.1GWから31GW以上に増強し、水力や太陽光・陸上風力など他の再生可能エネルギーで電力需要に対応します。

さらに2035年までに原子力発電を再導入し、2050年までに約5GWを目指す計画も盛り込まれました。
電力不足への危機感から安全保障を優先した形で、短期的には石炭など従来型電源への依存が高まります。一方で太陽光や陸上風力には拡大余地があり、洋上風力・LNG分野の投資には計画調整の影響が懸念されます。エネルギー需要が急伸する中、この方針転換はエネルギー関連の日系企業にとって戦略見直しが必要になる重要ニュースです。

関連ニュース:
Vietnam cuts gas, offshore wind targets in new power plan, draft document shows | Reuters

・信用供給の拡大見通しと金融政策動向(中央銀行)

国家銀行(SBV=中央銀行)のダオ・ミン・トゥ副総裁は、インフレが抑制され好条件が整えば、2025年の銀行与信(クレジット)成長率が政府目標の16%を上回る可能性に言及しました 。SBVは2025年のGDP成長率目標8%に合わせ、信用成長目標を16%程度に設定しています。

この達成に向け、中央銀行は柔軟な金融政策を維持しつつ、物価安定と為替レートの安定を図る方針です。また市中銀行に対してはコスト削減やIT活用による金利引き下げ努力を求めています。必要に応じ為替市場への介入も辞さない姿勢で、通貨安定と流動性確保に努める方針です 。

投資家にとっては、緩和的で安定した金融環境が継続する見通しを意味し、資金調達面での追い風となります。ただし信用供給拡大はインフレ管理との両立が前提となるため、今後の物価動向にも注意が必要です。

関連ニュース:
Vietnam’s 2025 credit growth may exceed 16% target: central bank

・景気刺激のための税制支援策延長(VAT減税など)

以前から報道されてきたとおり、ベトナム政府は企業支援と景気下支えのため、2020年以降続けてきた一連の税・料金減免措置を2025年も延長・強化する方針です 。
具体的には、付加価値税(VAT)の税率2%引き下げ措置(標準税率10%を8%へ)を2025年1月1日から6月30日まで継続するなど、税金・手数料の減免・納税猶予策が講じられます)。2020~2024年に実施されたVAT2%減税は国内消費を刺激し、コロナ後の経済回復に寄与したと評価されています 。

他にもオンライン行政サービス利用促進のため手数料を一部5~50%減額する措置も継続されます。これら減税策は国家予算に負担となる一方で、企業の資金繰りを改善し消費を喚起する効果があります。日系企業にとっては当面の税コストが軽減される利点があり、市場の需要喚起策にもなるため、事業計画において好材料と言えます。

関連ニュース:
Tax relief programmes crucial to boost economic growth | Vietnam+ (VietnamPlus)

2025年1月1日から2025年6月30日までのVAT減税の継続について(10%→8%)

・2025年の労働市場動向:IT・ハイテク人材需要の拡大

人材サービス大手TopCVの報告によれば、2025年のベトナム労働市場はIT・デジタルやグリーン分野を中心に大幅な人材需要増が見込まれています 。ソフトウェア開発者、データアナリスト、サイバーセキュリティ技術者などのIT人材や、製造業における自動化エンジニア、サプライチェーン管理者といった高度技能職の求人が増加すると予測されています。

また、再生可能エネルギーやグリーン経済分野でも環境エンジニアやクリーンエネルギー開発者などの需要拡大が期待されています。一方で、専門技能を持たない労働者はAIや自動化の進展により職を失うリスクも指摘されており、労働省当局者は労働者のスキル向上と職種転換支援の重要性を強調しています 。

外国企業にとって、ベトナムの若く豊富な労働力は引き続き魅力ですが、特にハイテク分野では人材獲得競争が激しくなる可能性があります。ITエンジニアマーケットは近時の世界情勢やAI普及により2極化しているともいえますが、高度人材の獲得競争は引き続き残りそうです。現地での研修制度導入や待遇改善など、人材確保策が投資成功のカギとなるでしょう。

関連ニュース:
Job market to surge in 2025, technology and sustainability leading the way

直近1ヶ月の主な法務アップデート

・投資・入札関連法の改正(2024年法第57号)

2024年11月27日、第15期国会は2024年法第57号(57/2024/QH15)を可決し、計画法・投資法・PPP法(官民連携投資法)・入札法の改正を行いました 。この改正法は2025年1月15日に発効(一部条項は同年7月1日発効)し、投資手続きや事業分野の規制緩和を図る内容となっています。

主な変更点として、投資法における事業分野の規制リストが見直され、「無人航空機ビジネス」「データ仲介サービス」等が新たに条件付許可業種に追加される一方、「電気コンサルタント」「防火防災サービス」は許可業種から除外されました。
また港湾・桟橋や歴史遺産保護地区での投資案件、工業団地・輸出加工区の開発案件に関する事業認可権限が分権化され、これまで中央政府承認が必要だった案件の一部を各省・市の人民委員会が承認できるようになります。

さらに、高度技術産業の誘致を促すため「特定投資手続」が新設され、工業団地・ハイテクパーク等における半導体や先端技術の研究開発拠点など一定のプロジェクトについては、投資政策決定や技術評価、建設・環境・防火許可など複数の承認手続きを省略し、申請後15日以内に投資登録証明書(IRC)が発給される迅速なワンストップ手続きが導入されます。

PPP法の改正では、従来禁止されていた建設移管(BT)方式の契約が再度可能となり、PPP事業に対する政府資金拠出上限も総事業費の50%から最大70%に引き上げられました 。
これらの法改正により投資手続の簡素化・迅速化とハイテク・インフラ分野への投資促進が図られており、日系企業にとってもプロジェクト実現までの時間短縮や新たな事業機会拡大につながると期待されます。

・新土地法・住宅法・不動産業法の施行(外資の土地利用に関する改革)

2024年1月18日にベトナム国会で可決された新「土地法」(2024年土地法)および前年11月に可決された新「住宅法」(2023年住宅法)・新「不動産事業法」(2023年不動産業法)が、施行されています。こちらはもともと2025年1月1日施行予定でしたが、それぞれ一部規定を除き2024年8月から施行されています。

これら不動産関連法の刷新により、外国資本のプロジェクトに関わる土地利用ルールが大きく変わっています。
まず新土地法では「外国投資経済組織(FIE)」の定義が見直され、外資が一定比率未満の企業(=投資法上の外資手続きを要しない企業)は純粋な国内企業とみなされ、土地利用権においても内資企業と同等の扱いを受けられるようになりました。

また、外国資本企業(FIE)が工業団地・経済特区・ハイテク区内の土地利用権を譲渡により取得することや、国家から土地割当を受けた内資デベロッパーの不動産プロジェクトをM&Aで引き継ぐことが明確に認められています。これにより、従来グレーだった土地付き案件の外資による買収が容易になり、工業用地取得や不動産開発における参入ハードルが下がる見通しです。

さらに、国による画一的な「公定地価枠(ランドプライスバンド)」制度が廃止され、市場実勢に即した価格評価を行うために各省が設定する「地価テーブル」の仕組みへと移行します 。これにより用地取得コストの透明性向上や適正化が期待されます。一方で、国有地の賃貸料の一括前払いに関する規定も見直され、従来は事業者が選択できた一括払い方式は限定的な場合を除き認められなくなりました(年払いの場合でも新たに「契約上の賃借権」を認めるなど、年払い企業の権利強化策も導入)。
この変更は、一括払いによる長期土地使用権を担保に資金調達を図るスキームに影響を与える可能性があります。

総じて、新土地法と関連法の施行は土地取引の透明性・効率性を高め、外国企業によるプロジェクト取得を円滑にすると期待されます。一方で賃貸料制度の変更など資金計画面での調整も必要となるため、日系企業は新ルールを踏まえた戦略策定が求められます。

関連コラム:

【ベトナム】2024年土地法の重要な改正点(2024年8月1日施行)

【ベトナム】新住宅法及び新不動産事業法の重要な改正点(2024年8月1日施行)

・ハイテク企業向け「投資支援基金」の設立(政令182号)

ベトナム政府は先端産業への大型投資を呼び込むため、2024年12月31日付で政令第182号/2024/NĐ-CP「投資支援基金の設立・管理・運用に関する政令」を発出しました。これにより国家予算を原資とする「投資支援基金」が創設され、ハイテク産業分野のプロジェクトを対象に大規模な資金支援を行う枠組みが整いました。

支援は主に2種類あり、①年間経費補助(年次補助)と②初期投資補助に大別されます。年間補助はハイテク産業や研究開発(R&D)プロジェクトを対象に研修・人材育成費、研究開発費、新規設備投資、ハイテク製品の製造費、社会インフラ整備費など幅広い費用を毎年補助するものです。初期投資補助は特に半導体や人工知能(AI)のR&Dセンターを設立する企業に向けたもので、該当プロジェクトには初期投資額の最大50%相当が一括補助されます 。
この基金は2024会計年度から運用開始され、補助申請は毎年度終了後翌年7月10日までに行うスケジュールが示されています。グローバル最低法人税(GloBEルール)が2024年から導入され各国の税優遇競争が制約される中、ベトナム政府は税制以外の直接支援策で競争力を確保する戦略といえます 。

実際、同政令による画期的な補助スキームは「ベトナムをアジアのAI研究開発ハブにする」(チー・ズン計画投資相)との国家ビジョンを支えるものです。日系企業にとっても、半導体・AI等の先端分野でベトナム進出・拡張を検討する際に、この新設基金による大規模インセンティブが追い風となり得ます。補助金活用に際しては要件の精査や現地当局との調整が必要ですが、今後数年間の投資戦略に影響を与える重要な法制度アップデートと言えるでしょう。

・その他

その他、近時下記のような最新法務関連のアップデートもしていますので、ご興味があればご覧ください。

ベトナム決定01/2025/QĐ-TTg:小口輸入免税の廃止と新たな課税ルール

ベトナム国内における旅客運輸(タクシーなど)についての最新Decree158号について(2025年1月1日施行)

ベトナムにおけるeコマースとデジタルプラットフォームの税務改革

SNSの利用等に関する新しい政令147/2024/NĐ-CPについて(2024年12月25日施行)

ベトナムにおける銀行での顔認証・生体認証について(2025年1月1日発効)

CastGlobal

【執筆者】CastGlobal

ベトナムの法律事務所

ベトナムで主に日系企業を支援する弁護士事務所です。日本人弁護士・ベトナム人弁護士が現地に常駐し、最新の現地情報に基づいて法務面からベトナムビジネスのサポートをしています。

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