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- 2022.12.25
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【ベトナム】2023年のテト休暇のスケジュールについて
ベトナムでは太陰暦に基づき、年末年始の休暇であるテト休暇(Tết Âm lịch)の日付が決められ、労働法上5日間の祝日と規定されています。西暦での日付は毎年変わりますが、2023年は、太陽暦の1月21日が大晦日、1月22日が元旦となります。
運用として、公的機関等の休暇と民間企業の休暇とは異なるため、以下2023年について説明します。
首相府から労働局への2022年12月1日付け文書8056/VPCP-KGVX号により、ベトナムのĐam首相は、労働傷病兵社会省の休暇案に同意し、公的なテト休暇期間は2023年1月20日(金曜日)から1月26日(木曜日)までの7日間となりました。
これにより、土曜日と日曜日が週休となっている公的機関等は上記の日程が休暇日となります。
民間企業についての通知5034/TB-LDTBXHによれば、民間企業は、テト休暇日数について以下の3つのオプションの一つを選択することが可能となります。
週休日がテト休暇日と重なる場合には、労働者は次の営業日に週休の振替休日を付与されます。
①年末1日と年始4日間(1月21日から25日, 週休の振替休日を含まない)
②年末2日間と年始3日間(1月20日から24日, 週休の振替休日を含まない)
③年末3日間と年始2日間(1月19日から23日, 週休の振替休日を含まない)
■ケースA
例えば、とある会社が上記①のオプションを選択した場合、かつ、週休日が日曜日の1日だとします。
この場合、その会社のテト休暇期間は、1月21日から26日(1月21日から25日までが祝日、26日が週休の代休)となります。
もし1月21日から25日までに従業員を勤務させる場合、労働法(法律45/2019/QH14号)第98条第1項c号に基づき、300%に相当する賃金を追加で支払う必要があります。26日(週休の振替休日)に従業員を勤務させる場合、200%に相当する賃金を追加で支払う必要があります(政令145/2020/ND-CP号第55条第3項参照)。
このケースでは、1月20日についてはテト休暇期間にあたりません(オプション②、③を選択した企業は異なりますのでご注意ください)。そのため、この日に従業員を勤務させても、通常の給与を支払えば足ります。
■ケースB
他方で、週休日が土曜日及び日曜日の2日間ある場合、代休として2日間与える必要があります。この場合、②のオプションを選ぶと、1月20日から24日までが祝日、25日と26日が週休日の代休ということになります。
1月20日
1月21日
1月22日
1月23日
1月24日
1月25日
1月26日
ケースA
(働く場合の給与)
平日
(100%)
祝日1日目
(300%)
祝日2日目
(300%)
祝日3日目
(300%)
祝日4日目
(300%)
祝日5日目
(300%)
週休日の代休
(200%)
ケースB
(働く場合の給与)
祝日1日目
(300%)
祝日2日目
(300%)
祝日3日目
(300%)
祝日4日目
(300%)
祝日5日目
(300%)
週休日の代休
(200%)
週休日の代休
(200%)
実際の休暇については会社ごとに決めることになり、実務上は公務員の休暇に合わせる企業も多いです。上記を参考にご検討ください。
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- 2022.11.08
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【ベトナム】政令第71号/2022/ND-CPに規定されるテレビ・ラジオ放送サービス海外事業者に対する影響...
2022年10月1日に、テレビ・ラジオ放送サービスの運営・提供・使用を規定する政令第6号/2016/ND-CP(以下「政令第6号」といいます。)の一部を改正・補足する政令第71号/2022/ND-CP(以下「本政令」といいます。)が公布されました。
本政令は2023年1月1日から施行されます。
本政令の海外事業者に対する影響について、本政令は、海外事業者がベトナム国内で提供するサービスを含むテレビ・ラジオ放送サービスの管理範囲を明記化しています。
具体的には、以下のとおりです。
政令第6号は、ベトナム政府がテレビ・ラジオ放送サービスを管理することを規定していますが、海外事業者がベトナム国内で提供するサービスを含むかどうかを明記していませんでした。
一方、本政令第1条3項b号によれば、ベトナム政府がベトナム国内でのテレビ・ラジオ放送サービスをベトナムの法律に基づいて管理します。管理されるサービスには、海外事業者からベトナム国内でのユーザーに提供するインターネット上のテレビ・ラジオ放送サービス(以下「OTT TV」といいます。)も含まれます。
つまり、本政令では、ベトナム国内でのユーザーにOTT TVを提供する海外事業者がベトナム企業と同様に、ベトナム法令を厳守し、サービスを提供するための法定の登録手続等を行うことが必要とされています。
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- 2022.11.07
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【ベトナム】海外からの借入れ及び返済に対する外貨管理に関する2022年9月30日付中央銀行通達第12/2022/TT-NHNN号について...
2022年9月30日、海外からの借入れ及び返済に対する外貨管理に関する中央銀行通達第12/2022/TT-NHNN号(以下「本通達」といいます。)が公布されました。本通達は2022年11月15日から施行されます。
本通達は、海外からの借入れ及び返済に対する外貨管理に関する中央銀行通達第03/2016/TT-NHNN号(以下「通達第03号」といいます。)に代わって、通達第03号に規定されているのローン登録・ローン変更登録に関する手続をいくつか改正しています。
以下のとおり、本通達に規定されている重要な改正点を説明します。
旧通達第03号第9条3項によれば、期限に返済できなかった短期ローンについては、ローンの引出日からの満1年時点から10日以内に、借主がローンを返済すれば、ローン登録手続を行うことは不要とされていました。
本通達第11条3項は、30営業日に返済猶予期間を延長しました。
すなわち、ローンの引出日からの満1年時点から30営業日以内に、借主がローンを返済すれば、ローン登録手続を行うことは不要です。
旧通達第03号第15条2項、3項に規定されているローン変更登録不要の場合に加えて、本通達第17条2項は、以下の場合を追加しています。
a) 登録済スケジュールと比較して、利息・手数料の返済スケジュールを変更するが、ローン契約で規定された利息・手数料の確定方法を変更しない場合。
b) 引出金・ローン元本返済・利息返済・手数料返済の金額を、ローン通貨の100通貨単位の範囲内で、登録済金額と比較して変更(増減)する場合。
c) ローン引出・ローン元本の返済を複数回に分ける場合、一定の返済時の実際の引出金・ローン元本の返済の金額が、引出・返済スケジュールに規定される金額と比較して下回る場合。
旧通達第03号第13条3項によれば、ローン登録申請期限がi.ローン契約の締結日、ii. ローン延長合意の締結日、iii. 通達第03号第9条3項に規定される元本残高が存続する短期ローンに対し、ローンの最初の引出日後満1年の時点から30日以内とされていました。
しかし、本通達第15条2項は、通達第03号と比較してローン登録申請期限を延長しました。
すなわち、上記のi、iiの場合には、申請期限が30営業日となり、本通達第11条3項に規定される元本残高が存続する短期ローンの場合には、60営業日になります。
旧通達第03号第39条、第40条によれば、借主がオンファイン又は書面で四半期報告を提出する義務を負いますが、本通達第41条1項によれば、月次報告を提出しなければなりません。報告の提出はオンラインが優先となり、書面での報告の提出はウェブサイトのダウン等でオンラインでの提出できない場合のみとされています。
a. ベトナムドン建ての口座
旧通達第03号第29条によれば、貸主が借主に出資する外国投資家である場合に、貸主がベトナムにてベトナムドン建ての口座を通じて貸付を行うことが可能です。本件のローンの基礎となるは、貸主がベトナムで出資することから発生するベトナムドン建ての配当金です。
一方、本通達第30条1項、2項によれば、上記の場合に加えて、登録情報の不正または偽造によるローン登録確認書が失効となるローンの回収の場合等一定の場合に、貸主のベトナムドン建ての口座が使用されるということになりました。
b. 外貨建ての口座
本通達第30条3項によれば、貸主がローンを実施するために外貨建ての口座を使用する場合、ベトナムにて外国為替使用制限規定に従います。
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- 2022.11.04
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【ベトナム】女性労働者・未成年労働者・高齢労働者の特別規定について
ベトナムの労働法やその関連法令において、女性労働者、未成年労働者、高齢労働者については一部特別な規定が置かれています。以下では、それぞれの概要を整理していますのでご確認ください。
2021年施行の2019年労働法での変更点はオレンジで表示しています。
以下のとおり、女性の労働者に対しては、一部特別の規定が置かれています。
項目
内容
妊婦・養育時の保護
以下の場合、女性労働者に深夜労働、時間外労働、遠隔出張を命じてはならない。
妊娠7ヶ月目以降の妊婦。高地、遠隔地、国境、島嶼に勤務する場合は、妊娠6ヶ月目以降の妊婦
本人の同意を得る場合を除き、12ヶ月未満の子供を育児中の者
※12ヶ月未満の子供を育児中の者の同意を得る場合、使用者は、その者に深夜労働、時間外労働、遠隔出張を命じて問題ない旨明記された。
重労働に就く女性労働者が妊娠7ヶ月となった際には、賃金は減額されることなく、軽微な労働に異動し、または1日あたりの勤務時間を1時間短縮される
2019年労働法第137条2項によれば、重労働に就く女性労働者が妊娠7ヶ月となった場合だけではなく、妊娠中の女性労働者が重労働、有害、危険な職業、特別に重労働、有害、危険な職業、又は出産の能力及び子供の養育に悪影響を与える職業・業務を行い、使用者に通知した場合も、12ヶ月未満の子供の育児期間が満了するまで、賃金が減額されることなく、軽微、安全な労働に異動され、または1日あたりの勤務時間を1時間短縮される。
女性労働者は、労働契約書の賃金が減額されることなく、生理期間中は1日に30分、12ヶ月未満の子供の育児期間中は1日に60分の休憩を取得することができる。
就業継続が胎児に悪影響を与えるとした内容の、認定医療機関による診断書を有する妊娠中の女性労働者は、労働契約の一方的解除または一時的停止が可能
出産前後で6ヶ月の休暇
生まれた子供が双子以上だった場合には、1人につきさらに1ヶ月休暇延長
出産前の休暇期間は、2ヶ月を超えてはならない。
職場復帰について労働者の健康に問題がないとする内容の認定医療機関による診断書がある場合、使用者と合意したうえ、最短で4ヶ月の休暇後、女性労働者は職場へ復帰することができる
社会保険から6ヶ月分の出産手当
※なお、男性も原則5営業日(帝王切開の場合と妊娠32週未満の出産の場合7営業日)まで休暇をとり、その間社会保険から手当をもらえる
→会社はその期間の給与を支払う必要はない。(2016年1月1日の新社会保険法より)
雇用保障
女性労働者は休暇前と同じ業務に就くことが保証される
以前の業務が無くなった場合、使用者は別の業務に就かせる必要があり、給与額は休暇前より引き下げてはならない
妊娠中・出産休暇中の女性労働者、12ヶ月齢未満の子供を養育中の労働者は解雇することができない。
健康診断
健康診断の通常項目に加え、婦人科の項目を追加
未成年労働者に対しては、以下のような規定が特に定められています。
項目
内容
労働時間
満15歳から18歳未満の未成年労働者の勤務時間は、1日8時間または週40時間を超えてはならない。
15歳未満の労働者の勤務時間は、1日4時間または週20時間を超えてはならない。15歳未満の労働者を、時間外労働または深夜労働に使用することを禁止する。
業務内容
未成年者は、その体力、知力、人格の発展を保証するため、健康に適した業務のみに従事できる。
満13歳から15歳未満の年少者を労働傷病兵社会福祉省が規定したリストに記載される軽微な業務においてのみ使用することができる
満15歳から18歳未満の未成年労働者の使用の禁止業務、禁止場所が労働法147条に定められている。
労働契約
満15歳から18歳未満までの労働者と労働契約を締結する場合、労働者の法定代理人の書面での同意が必要であると記載
満15歳未満の場合は、労働者と労働者の法定代理人の署名が必要。
有給休暇
14日
健康診断
6ヶ月に1回
(通常は1年に1回)
高齢労働者に対しては、以下のような規定が特に定められています。
項目
内容
労働時間
1日あたりの勤務時間の短縮または非常勤勤務制度の適用を受けることができる
業務内容
安全な勤務条件が保証されている場合を除き、高齢労働者の健康に悪影響を与える重労働、危険または有害な業務、特別に重労働、危険または有害な業務に、高齢労働者を使用することを禁止する。
使用者は、職場における高齢労働者の健康に配慮する責任を負う。
労働契約
使用者は、必要があれば、十分な健康状態の高齢労働者と相談した上、労働契約締結の手続をした上で契約の延長または新規労働契約の締結を行うことができる。
※2019年労働法第149条1項によれば、労働契約に関しては、高齢労働者と使用者は有期限労働契約を多数回締結する合意をすることができることとなった(通常は2回)。
健康診断
6ヶ月に1回
(通常は1年に1回)
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- 2022.09.20
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【ベトナム】 電子識別及び電子認証を規定する政令No 59/2022/ND-CPについて
2022年9月5日、電子識別(e-Identification)及び電子認証(e-Authentication)を規定する政令No 59/2022/NĐ-CP(以下、「本政令」といいます。)が公布されました。
本政令は2022年10月20日から施行されます。以下、本政令に規定されている特に注意すべき点について説明します。
電子識別アカウントを発行する対象は以下のとおりです。
満14歳以上のベトナム国民
ベトナムに入国する満14歳以上の外国人
ベトナムで活動するために設立または登録された組織(日系企業を含む)
ベトナム国民の場合:
個人識別番号、氏名、生年月日、性別、顔写真、指紋
外国人の場合:
外国人の識別番号、氏名、生年月日、性別、国籍、パスポートの番号・記号・日付・発行機関、顔写真、指紋
組織の場合:
組織の電子識別番号、組織名、設立年月日、本社住所、法定代表者又は組織の長の識別番号・氏名
対象及び電子識別アカウントのレベルによって、登録手順が異なります。
ベトナム国民の場合:
VNelD アプリケーションを介して登録します又は、村レベルの公安、またはID カード申請機関において登録(本政令第 14 条)
外国人の場合:
VNelD アプリケーションを介して登録します又は、出入国管理局又は、省レベルの公安において登録(本政令第 15条)
組織の場合:
VNelD アプリケーションを介して登録(本政令第16条)
具体的な手順については、本政令に規定される上記の条項をご参照ください。
なお、本政令には、電子識別アカウントを登録することを義務とするという明確な規定はありません。 つまり、電子識別アカウントを登録するかしないかは、個人や組織の決定により行われることになります。
電子識別アカウントは、本政令第 13 条に定める目的に使用されます。
以下のとおり、代表的な目的をいくつか説明します。
VNelD アプリケーションの機能とユーティリティを使用するため
電子環境での行政手続を実施するため
個人情報の提供を必要とする活動や取引において、アカウントにセットをされた個人情報を証明するため
IDカード又はパスポートの提供が必要な取引において、IDカード、パスポートを代わるため
組織に関する情報の証明を必要とする取引において、組織の情報を証明するため
本政令によれば、上記の規定が2022年10月20日から施行されますが、実際の登録手続や、取引等に電子識別アカウントを通じて行う際の手続・取引等については、運用がどのようになるかを注視していく必要があります。
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- 2022.09.12
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【ベトナム】サイバーセキュリティ法の一部条項の詳細を規定する政令(No.53/2022/ND-CP号)について...
2022年8月15日、サイバーセキュリティ法(法律No. 24/2018/QH14号)の一部の条項を詳細に規定する政令No.53/2022/ND-CP号(以下、「本政令」といいます。)が公布されました。本政令は2022年10月1日から施行されます。
以下、本政令に規定されている特に注意すべき点について説明します。
サイバーセキュリティに関わる法律に違反し、国家の安全保障を侵害し、社会の秩序や安全に重大な損害を与える行為がある場合、または、情報システム管理者の要請がある場合、サイバーセキュリティ保護専門部隊は、サイバーセキュリティに関わる検査について以下の措置を実施することができます。
サイバーセキュリティの保護、サイバースペースにおける国家機密の保護に関わる法律の規定の遵守を検査すること
サイバーセキュリティの保護対策、サイバーセキュリティに関わる事故の対応、その修復に関する計画の有効性を検討、評価すること
セキュリティの弱点等を検出・評価すること
なお、サイバーセキュリティを守る専門部隊とは、本政令第2条9項によれば、以下の機関を含むとされています。
公安省のサイバーセキュリティ・ハイテク犯罪防止局
国防省の軍事安全保護局
公安省のサイバーセキュリティ・ハイテク犯罪防止局の局長と、情報通信省の管轄機関の長は、以下の内容を有する情報の削除を請求することができます。またテレコムネットワーク、インターネットにおけるサービスの提供企業、サイバースペースにおける付加価値サービスの提供企業、情報システムの管理者に対しては、情報削除請求書を送付することができます。
国家安全保障を侵害したり、ベトナム社会主義共和国に反対を宣伝したり、暴動を扇動したり、治安を乱したり、公の秩序を乱したりする情報と法令により判断される場合
侮辱又は中傷したり、経済管理の秩序に違反したり、捏造したり、情報を削除しなければならないほどに社会経済活動に深刻な損害を与える情報
歴史を歪曲したり、革命の成果を否定したり、国民全体の団結を弱体化させたり、宗教を侮辱したり、ジェンダーもしくは人種を差別する情報
売春、社会悪弊、人身売買、犯罪に関わる情報
国の慣習と伝統、社会的道徳、公衆衛生を損なう情報
他人に犯罪を行わせるように扇動・教唆する内容
サイバースペースにおける国家安全保障、社会の秩序と安全、機関、組織、個人の適法な権利と利益を侵害する行為を調査し処分するために電子データを収集する必要がある場合、公安省のサイバーセキュリティ・ハイテク犯罪防止局の局長は、電子データを収集する措置を講じる権利を有します。 なお、電子データの収集に従事する者は、専任の幹部である必要があります。
情報システムの活動が国家安全保障、サイバーセキュリティに関わる法律に違反していることを証明するに足る根拠がある場合、または国家安全保障、社会の秩序と安全を侵害する目的で情報システムが使用されている場合、公安大臣は、当該情報システムを一時もしくは恒久的に停止し、当該ドメインを没収する権利を有します。
機関、組織、個人は、自己の責任と権限の範囲内で、上記のサイバーセキュリティ保護措置が実施されるために、管轄機関と協力し、その活動を支援するものとされています。
ベトナム国内企業(※)(本政令第2条第11項の国内企業の定義により、日系子会社を含めた外資系企業のベトナム現地法人も含まれます)は、以下の情報についてベトナム国内に保存されなければならないと規定されています(以下、下記の情報を総称して「保存すべき情報」という場合があります)。
ベトナムにおけるサービス利用者の個人情報
ベトナムのサービス利用者が作成するデータで、サービスアカウント名・サービス利用時間・クレジットカード情報・電子メールアドレス・最終ログイン・ログアウトのネットワークアドレス(IP)・アカウントまたはデータに関連付けられた登録済み電話番号を含む情報
ベトナムにおけるサービスユーザーの関係に関わるデータであり、ユーザーの接続または交流する友人、グループを含む情報
(※)本政令には、ベトナム国内企業としか規定されていませんが、サイバーセキュリティ法の第26条第3項により、上記の国内企業とは、すべての国内企業ではなく、以下の二つの要件を満たす企業に限定されると考えられます。
通信ネットワークにおけるサービス、インターネットにおけるサービス、サイバースペースにおける付加価値サービスのいずれかを提供すること
サービス利用者の個人情報に関するデータ、ベトナムのサービス利用者が作成したデータ、またはサービス利用者の関係性に関するデータを収集、利用、分析、処理を行っていること
外国企業(日本に所在する日本企業を含む)は以下全てに該当する場合、保存すべき情報をベトナムにおいて保存しなければなりません。
通信サービス、サイバースペースにおけるデータの保存と共有、ベトナムにおけるサービスユーザーに国内または国際ドメイン名の提供、eコマース、オンライン支払い、支払い仲介、ソーシャルネットワークとソーシャルメディア、オンラインゲーム、及びメッセージ・音声通話・ビデオ通話・電子メール・オンラインチャットの形式でサイバースペースにおけるその他の情報を提供、管理、運用するサービスを提供していること
上記のサービスがサイバーセキュリティに関わる法律に違反する行為を実施するために利用されていること
公安省のサイバーセキュリティ・ハイテク犯罪防止局から通知され、協力・防止・調査等を書面による請求されたが、管轄機関より行うサイバーセキュリティ保護措置を履行しない、履行が不十分である、当該措置を妨害する、または無効化をさせること
上記の要件を満たす外国企業は、公安大臣よりベトナムにおけるデータ保存請求決定書が発行された場合、当該決定書の発行日からの12か月以内に、ベトナムにおいてデータ保存を実施しなければなりません。
オンラインサービスを提供する外国企業にどの程度適用されるかについて、サイバーセキュリティ法上は不明確でしたが、本政令において一定の要件を満たす場合にのみ適用されることが明確化されました。
定型のものがなく各企業の決定に従って行うとされています。
データ保存請求を受け取った企業は、請求時点から、 最低でも 24 か月は当該データについて保存しなければなりません。
上記の適用対象となった外国企業は、公安大臣よりベトナムにおける支店又は駐在員事務所の設置請求決定書が発行される場合、決定書の発行日から12か月以内に、ベトナムにおいて支店または駐在員事務所を設置しなければなりません。
サイバーセキュリティ法については、ベトナムサーバーへのデータ保存について定めた規定があり(同法第26条第3項)、文言上は適用範囲が広範になる可能性があり、この点が懸念されていました。本政令上には、ベトナムの国内企業についてこれを特に限定する旨の規定がなく、インターネットを活用したベトナム国内企業については、それが例え外資系企業であっても、広くベトナムサーバーへのデータ保存義務が適用されることになります。この点で、日系企業含め注意が必要です。
また、外国企業であっても一定の要件を満たす場合には、上記のデータの保存義務や、支店等の拠点の設置義務が課されることが明示されました。これまでサイバーセキュリティ法では明確にされていなかった適用要件が規定され限定的な適用になったものの、当局の判断によって外国企業でも適用されることになります。
上記がその文言のとおり適用されるとかなり広範囲の企業に適用されるおそれがあり、今後のベトナム政府の運用については注視していく必要があります。
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- 2022.08.25
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ベトナムのEPE(輸出加工企業)の国内販売を認める根拠について
政令第35/2022/ND-CP号(以下、「政令35」という)の第2条第20項および第21項により、EPEは、輸出加工区、工業区または経済区において輸出加工活動を行う企業であるとされています。
そのため、本来は輸出を目的に加工することが前提とされています。
《政令35/2022/ND-CP号の第2条第21項》
Export processing enterprise means an enterprise which conducts export processing activities in export processing zones, industrial zones or economic zones.
《政令35/2022/ND-CP号の第2条第20項》
Export processing activity refers to a specialized act of manufacturing of exported commodities and provision of services for production of exported products and exportation.
もっとも、法令上、EPEの国内への販売についても明記されています。
記載されている活動として、(i)生産し、国内市場に輸出・販売すること、(ii)輸入権、輸出権および販売権に基づき販売すること、および(iii)資産清算の国内販売があります。
■生産した貨物を国内へ輸出・販売する権利
政令35の第26条第11項により、EPEは、国内市場へ貨物を販売できることになります。
《政令35/2022/ND-CP号の第26条第11項》
Export processing enterprises may sell goods into the domestic market. Goods imported from export processing enterprises or export processing zones into the domestic market shall be subject to taxes in accordance with law on customs duties.
それに加え、政令第08/2015/ND-CP号により、EPEが国内企業へ商品を販売するためには、On-Spotの通関手続を通じて行います。
《政令08/2015/ND-CP号の第35条第1項第b号》
Article 35. Customs procedures that must be followed by on-the-spot exports and imports
1. On-the-spot exports and imports shall include:
b) Those traded under the sale and purchase contract between domestic enterprises and exporting and processing enterprises or enterprises located in free trade zones;
上記のOn-Spotの通関手続は、改正された通達第38/2015/TT-BTC号(以下、「通達38」という)の第75条および第86条により、詳細的に案内されています。手続きの詳細的な規定なので、こちらで引用しません。
■輸入権、輸出権および販売権に基づき販売する権利
政令35の第26条第6項により、明確ではないが、一般的にEPEは、販売が含まれる他の経営活動を行えることになります。
《政令35/2022/ND-CP号の第26条第6項》
6. Export processing enterprises may perform other business transactions under law on investment, law on businesses and relevant regulatory provisions, and ensure conformance to the following requirements:
a) Areas intended for storage of goods needed for export processing activities must be separated from the others;
b) Revenues and expenses related to export processing and other business activities must be recorded separately;
c) Using property, equipment and machinery obtaining tax incentives applied to export processing enterprises for other production and business activities must be prohibited. In case of using property, equipment and machinery obtaining tax incentives applied to export processing enterprises for other production and business activities, tax incentives granted in the form of tax reduction or exemption according to law on taxes must be reimbursed.
また、通達38の第77条により、EPEは、条件を満たせば、販売とその関連活動を行えると規定しています。
《通達第38/2015/TT-BTC号の第77条第1項》「EPEs that are permitted to engage in goods trading and activities directly related to goods trading in Vietnam as prescribed in the Government’s Decree No. 23/2007/ND-CP dated February 12, 2007 must record them separately from manufacturing; a separate area must be provided for storing exports or imports by the right to import, right to export, and right to distribute.」
■ 資産清算における国内販売権利
政令35の第26条第4項第c号および通達38の第79条第1項により、資産清算の場合、EPEは国内市場に中古の資産(輸入した機器、車両、原材料など)を販売できます。
《政令35/2022/ND-CP号の第26条第4項第c号》
Export processing enterprises may sell or liquidate used property and goods into the domestic market under the provisions of law on investment and other regulations of relevant legislation. At the time of selling or liquidating them into the domestic market, if export or import management policies do not apply, except to the extent that they are put under the control under regulatory requirements or standards, and the specialized inspection that have not yet been carried out upon arrival; the goods are subject to the permit-based management requirements, import thereof must depend on the written consent from the licensing agency.
《通達第38/2015/TT-BTC号の第79条第1項》
An EPE may liquidate the following imports: machines and equipment, vehicles, raw materials, supplies and other imports under its ownership by means of export, sale, donation or destruction in Vietnam.
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- 2022.08.25
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【ベトナム労務】労働契約の締結権限者について
法律45/2019/QH14号(以下、「労働法」といいます)第18条第3項a号により、使用者側の労働契約の締結権者は、企業の法定代表者または法の定めるところにより委任を受けた者とされています。
したがって就業規則などで特別に労働契約の締結者について定めを設けていない場合(政令145/2020/ND-CP号第69条第2項e号参照)など、特別な内部規定等がない場合は、原則として社長等の法定代表者が労働契約の締結権限を有することになります。
労働法第3条第5項によれば、労使関係は、賃金の支払いに関する社会的関係をいうとされていますので、会社と法定代表者の間においても給与の支給が発生する以上は、労働契約の締結が必要になってきます。
それでは、会社が法定代表者と労働契約を締結する場合、誰が会社を代表して労働契約に署名することになるのでしょうか。
なお、下記の2)以降については、定款に特別の定めがある場合は当該定款の規定に従うことなります。
したがって、当該事項につき定款に特別な定めがない会社を前提に記載しております。
1)自己契約の禁止
法律91/2015/QH13号(以下、「民法」といいます)第141条第3項によれば、法人を代表して自分との契約を行う自己契約は原則として禁止されています。したがって、法定代表者は自分の労働契約について会社を代表して締結することはできません。
2)有限責任会社
① 社員総会が設置されている会社
社員総会のある有限責任会社の場合、社員総会が法定代表者の選任権限をもちます(企業法第55条第2項đ号、第82条第1項)。したがって、社員総会の長である社員総会長が法定代表者との労働契約に署名することになります。
社員総会長が法定代表者となっている場合、社員総会によって任命されるその他の社員総会の構成員が、社員総会長との間の労働契約に署名することになります。
② 会社の会長を設置する一人有限責任会社
会社の会長を設置する一人有限責任会社の場合、会社の会長に法定代表者の選任権限があります(企業法第82条第1項)。したがって、会社の会長が法定代表者との労働契約に署名することになります。
3)株式会社
株式会社の場合、取締役が会社の法定代表者を選任する権限を有します(企業法第153条第2項i号)。したがって、取締役会の長である取締役会会長が法定代表者との労働契約に署名することになります。
取締役会長が法定代表者となっている場合、取締役会によって任命されるその他の取締役会の構成員が、取締役会会長との間の労働契約に署名することになります。
- コラム
- 2022.08.18
- CastGlobal
【ベトナム】企業の法定代表者の権限
日本法上、法人の代表権は原則として取締役に帰属します(会社法第349条第1項本文他)が、代表取締役など株式会社を代表する者を定めた場合には、当該代表取締役などが会社を代表することになります(同項但書)。
代表取締役の権限につき、定款等により内部上の制限を加えることは可能ですが、これを善意の第三者に対抗することはできません(同条第5項)。
また、代表取締役以外の取締役に対して、社長等、一般的に会社を代表する権限があると認められる名称を付した場合(名称のみであり実際には契約締結権などがない)、当該取締役に権限がなかったことを知らない第三者に対して、会社は責任を負うことになります(会社法第354条)。
ベトナム法上、企業法(法律第59/2020/QH14号。以下「企業法といいます」)第12条第1項により、法定代表者が企業を代表する旨規定されています。
有限責任会社においては、社員総会の会長、社長又は総社長の職名を持つ法定代表者を最低一人決めますが、定款に異なる定めがない限り、社員総会議長または会社の会長が法定代表者となります(企業法第54条第3項・第79条第3項)。
株式会社においては、法定代表者が一人の場合、定款別段の規定がない場合、取締役会会長が法定代表者となります。二人以上の法定代表者がいる場合には、取締役会の会長および社長もしくは総社長は当然に会社の法定代表者になります(企業法第137条第2項)。
具体的な代表権の範囲に対する法律上の規定は民法(法律第91/2015/QH15号。以下「民法」といいます)を確認する必要があります。民法第137条第2項の規定により、法定代表者の権限は同法第140条・第141条に従うとの規定があります。そして、第141条第1項は代理の範囲は、定款等により決せられるとしています。
したがって、ベトナム法上においても、法定代表者である社長等の権限が定款等により内部的に制限されている場合があります。
定款等は会社の内部書面のため取引時点において当然に確認できる資料ではありません。定款等により代表者の権限に制限が加えられており、代表権限の範囲を逸脱する取引を行った相手方はどうなるのでしょうか。
この場合、民法第143条第1項により表見代理が成立することにより当該第三者が保護される可能性があります。表見代理は、会社に当該取引が行われたことにつき故意または過失が認められること、取引相手が契約者に代表権限がないこと(権限外のこと)を知らなかった場合(または知ることができなかった場合)等が成立の要件となっています。表見代理の成立が認められる場合、当該取引の効力は無効とならず会社に帰属することになります。
そのため法適用上の結論は日本におけるのと概ね同様になる可能性が高いです。
もっとも、ベトナムは裁判の公開が不十分な状況にあるため、実際に紛争になった場合、どういった評価根拠事実を基にして、相手方の帰責性が認められるかは判然としません。そのため、ベトナム企業と取引を行う際には、少なくとも国家企業登録ポータルサイト(URL:https://dangkykinhdoanh.gov.vn/vn/Pages/Trangchu.aspx)等を利用して契約締結者に代表権限があるか、同サイト上代表権限が確認できない場合には契約締結権限を裏付ける委任状の提出を求めるなどの対処が必要になると考えます。
- コラム
- 2022.06.30
- CastGlobal
【ベトナム労務】労働変更状況の報告に関わる規定の補充(政令35/2022/NĐ-CP号)について
政令145/2020/NĐ-CP号第4条2項によれば、会社が労働変更状況の報告書を本社・支店・駐在員事務所を置く省レベルの労働局、区レベルの社会保険機関に提出する必要があります。
さらに、新しい政令35/2022/NĐ-CP号第73条1項によれば、工業団地、経済区において勤務する労働者がいる場合、会社が上記の局・機関に加え、工業団地管理委員会、経済区管理委員会にその報告書を提出することが必要になりました。
上記の規定は、2022年7月15日より有効となります。