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ベトナムのEPE(輸出加工企業)の国内販売を認める根拠について

コラム
2022.08.25
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ベトナムのEPE(輸出加工企業)の国内販売を認める根拠について

政令第35/2022/ND-CP号(以下、「政令35」という)の第2条第20項および第21項により、EPEは、輸出加工区、工業区または経済区において輸出加工活動を行う企業であるとされています。 そのため、本来は輸出を目的に加工することが前提とされています。 《政令35/2022/ND-CP号の第2条第21項》 Export processing enterprise means an enterprise which conducts export processing activities in export processing zones, industrial zones or economic zones. 《政令35/2022/ND-CP号の第2条第20項》 Export processing activity refers to a specialized act of manufacturing of exported commodities and provision of services for production of exported products and exportation. もっとも、法令上、EPEの国内への販売についても明記されています。 記載されている活動として、(i)生産し、国内市場に輸出・販売すること、(ii)輸入権、輸出権および販売権に基づき販売すること、および(iii)資産清算の国内販売があります。 ■生産した貨物を国内へ輸出・販売する権利 政令35の第26条第11項により、EPEは、国内市場へ貨物を販売できることになります。 《政令35/2022/ND-CP号の第26条第11項》 Export processing enterprises may sell goods into the domestic market. Goods imported from export processing enterprises or export processing zones into the domestic market shall be subject to taxes in accordance with law on customs duties. それに加え、政令第08/2015/ND-CP号により、EPEが国内企業へ商品を販売するためには、On-Spotの通関手続を通じて行います。 《政令08/2015/ND-CP号の第35条第1項第b号》 Article 35. Customs procedures that must be followed by on-the-spot exports and imports 1. On-the-spot exports and imports shall include: b) Those traded under the sale and purchase contract between domestic enterprises and exporting and processing enterprises or enterprises located in free trade zones; 上記のOn-Spotの通関手続は、改正された通達第38/2015/TT-BTC号(以下、「通達38」という)の第75条および第86条により、詳細的に案内されています。手続きの詳細的な規定なので、こちらで引用しません。 ■輸入権、輸出権および販売権に基づき販売する権利 政令35の第26条第6項により、明確ではないが、一般的にEPEは、販売が含まれる他の経営活動を行えることになります。 《政令35/2022/ND-CP号の第26条第6項》 6. Export processing enterprises may perform other business transactions under law on investment, law on businesses and relevant regulatory provisions, and ensure conformance to the following requirements: a) Areas intended for storage of goods needed for export processing activities must be separated from the others; b) Revenues and expenses related to export processing and other business activities must be recorded separately; c) Using property, equipment and machinery obtaining tax incentives applied to export processing enterprises for other production and business activities must be prohibited. In case of using property, equipment and machinery obtaining tax incentives applied to export processing enterprises for other production and business activities, tax incentives granted in the form of tax reduction or exemption according to law on taxes must be reimbursed. また、通達38の第77条により、EPEは、条件を満たせば、販売とその関連活動を行えると規定しています。 《通達第38/2015/TT-BTC号の第77条第1項》「EPEs that are permitted to engage in goods trading and activities directly related to goods trading in Vietnam as prescribed in the Government’s Decree No. 23/2007/ND-CP dated February 12, 2007 must record them separately from manufacturing; a separate area must be provided for storing exports or imports by the right to import, right to export, and right to distribute.」 ■ 資産清算における国内販売権利 政令35の第26条第4項第c号および通達38の第79条第1項により、資産清算の場合、EPEは国内市場に中古の資産(輸入した機器、車両、原材料など)を販売できます。 《政令35/2022/ND-CP号の第26条第4項第c号》 Export processing enterprises may sell or liquidate used property and goods into the domestic market under the provisions of law on investment and other regulations of relevant legislation. At the time of selling or liquidating them into the domestic market, if export or import management policies do not apply, except to the extent that they are put under the control under regulatory requirements or standards, and the specialized inspection that have not yet been carried out upon arrival; the goods are subject to the permit-based management requirements, import thereof must depend on the written consent from the licensing agency. 《通達第38/2015/TT-BTC号の第79条第1項》 An EPE may liquidate the following imports: machines and equipment, vehicles, raw materials, supplies and other imports under its ownership by means of export, sale, donation or destruction in Vietnam.

【ベトナム労務】労働契約の締結権限者について

コラム
2022.08.25
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【ベトナム労務】労働契約の締結権限者について

法律45/2019/QH14号(以下、「労働法」といいます)第18条第3項a号により、使用者側の労働契約の締結権者は、企業の法定代表者または法の定めるところにより委任を受けた者とされています。 したがって就業規則などで特別に労働契約の締結者について定めを設けていない場合(政令145/2020/ND-CP号第69条第2項e号参照)など、特別な内部規定等がない場合は、原則として社長等の法定代表者が労働契約の締結権限を有することになります。 労働法第3条第5項によれば、労使関係は、賃金の支払いに関する社会的関係をいうとされていますので、会社と法定代表者の間においても給与の支給が発生する以上は、労働契約の締結が必要になってきます。 それでは、会社が法定代表者と労働契約を締結する場合、誰が会社を代表して労働契約に署名することになるのでしょうか。 なお、下記の2)以降については、定款に特別の定めがある場合は当該定款の規定に従うことなります。 したがって、当該事項につき定款に特別な定めがない会社を前提に記載しております。 1)自己契約の禁止 法律91/2015/QH13号(以下、「民法」といいます)第141条第3項によれば、法人を代表して自分との契約を行う自己契約は原則として禁止されています。したがって、法定代表者は自分の労働契約について会社を代表して締結することはできません。 2)有限責任会社 ① 社員総会が設置されている会社 社員総会のある有限責任会社の場合、社員総会が法定代表者の選任権限をもちます(企業法第55条第2項đ号、第82条第1項)。したがって、社員総会の長である社員総会長が法定代表者との労働契約に署名することになります。 社員総会長が法定代表者となっている場合、社員総会によって任命されるその他の社員総会の構成員が、社員総会長との間の労働契約に署名することになります。 ② 会社の会長を設置する一人有限責任会社 会社の会長を設置する一人有限責任会社の場合、会社の会長に法定代表者の選任権限があります(企業法第82条第1項)。したがって、会社の会長が法定代表者との労働契約に署名することになります。 3)株式会社 株式会社の場合、取締役が会社の法定代表者を選任する権限を有します(企業法第153条第2項i号)。したがって、取締役会の長である取締役会会長が法定代表者との労働契約に署名することになります。 取締役会長が法定代表者となっている場合、取締役会によって任命されるその他の取締役会の構成員が、取締役会会長との間の労働契約に署名することになります。

【ベトナム】企業の法定代表者の権限

コラム
2022.08.18
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【ベトナム】企業の法定代表者の権限

日本法上、法人の代表権は原則として取締役に帰属します(会社法第349条第1項本文他)が、代表取締役など株式会社を代表する者を定めた場合には、当該代表取締役などが会社を代表することになります(同項但書)。 代表取締役の権限につき、定款等により内部上の制限を加えることは可能ですが、これを善意の第三者に対抗することはできません(同条第5項)。 また、代表取締役以外の取締役に対して、社長等、一般的に会社を代表する権限があると認められる名称を付した場合(名称のみであり実際には契約締結権などがない)、当該取締役に権限がなかったことを知らない第三者に対して、会社は責任を負うことになります(会社法第354条)。 ベトナム法上、企業法(法律第59/2020/QH14号。以下「企業法といいます」)第12条第1項により、法定代表者が企業を代表する旨規定されています。 有限責任会社においては、社員総会の会長、社長又は総社長の職名を持つ法定代表者を最低一人決めますが、定款に異なる定めがない限り、社員総会議長または会社の会長が法定代表者となります(企業法第54条第3項・第79条第3項)。 株式会社においては、法定代表者が一人の場合、定款別段の規定がない場合、取締役会会長が法定代表者となります。二人以上の法定代表者がいる場合には、取締役会の会長および社長もしくは総社長は当然に会社の法定代表者になります(企業法第137条第2項)。 具体的な代表権の範囲に対する法律上の規定は民法(法律第91/2015/QH15号。以下「民法」といいます)を確認する必要があります。民法第137条第2項の規定により、法定代表者の権限は同法第140条・第141条に従うとの規定があります。そして、第141条第1項は代理の範囲は、定款等により決せられるとしています。 したがって、ベトナム法上においても、法定代表者である社長等の権限が定款等により内部的に制限されている場合があります。 定款等は会社の内部書面のため取引時点において当然に確認できる資料ではありません。定款等により代表者の権限に制限が加えられており、代表権限の範囲を逸脱する取引を行った相手方はどうなるのでしょうか。 この場合、民法第143条第1項により表見代理が成立することにより当該第三者が保護される可能性があります。表見代理は、会社に当該取引が行われたことにつき故意または過失が認められること、取引相手が契約者に代表権限がないこと(権限外のこと)を知らなかった場合(または知ることができなかった場合)等が成立の要件となっています。表見代理の成立が認められる場合、当該取引の効力は無効とならず会社に帰属することになります。 そのため法適用上の結論は日本におけるのと概ね同様になる可能性が高いです。 もっとも、ベトナムは裁判の公開が不十分な状況にあるため、実際に紛争になった場合、どういった評価根拠事実を基にして、相手方の帰責性が認められるかは判然としません。そのため、ベトナム企業と取引を行う際には、少なくとも国家企業登録ポータルサイト(URL:https://dangkykinhdoanh.gov.vn/vn/Pages/Trangchu.aspx)等を利用して契約締結者に代表権限があるか、同サイト上代表権限が確認できない場合には契約締結権限を裏付ける委任状の提出を求めるなどの対処が必要になると考えます。

【ベトナム労務】労働変更状況の報告に関わる規定の補充(政令35/2022/NĐ-CP号)について

コラム
2022.06.30
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【ベトナム労務】労働変更状況の報告に関わる規定の補充(政令35/2022/NĐ-CP号)について

政令145/2020/NĐ-CP号第4条2項によれば、会社が労働変更状況の報告書を本社・支店・駐在員事務所を置く省レベルの労働局、区レベルの社会保険機関に提出する必要があります。 さらに、新しい政令35/2022/NĐ-CP号第73条1項によれば、工業団地、経済区において勤務する労働者がいる場合、会社が上記の局・機関に加え、工業団地管理委員会、経済区管理委員会にその報告書を提出することが必要になりました。 上記の規定は、2022年7月15日より有効となります。

【ベトナム】自然災害基金の概要(企業負担・従業員負担)について

コラム
2022.06.21
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【ベトナム】自然災害基金の概要(企業負担・従業員負担)について

ベトナムにおいては、法律第33/2013/QH13号(法律第60/2020/QH14号により一部修正)により、ベトナムに所在する企業および18歳以上のベトナム国民は、自然災害に関わる基金(ベトナム語:Quỹ phòng, chống thiên tai。以下「自然災害基金」といいます)へ拠出する義務が課せられています(同法第10条第2項a号)。当該基金は、自然災害が発生した場合の被災者への援助等に活用されると規定されています(同法第10条第3項)。 ベトナム国内に所在するローカル企業と外資企業は年間財務報告書記載の資産価格の0.02%に相当する金銭(但し、最低でも50万VND、最高でも1億VNDの範囲となります)を拠出する義務を負います(政令78/2021/ND-CP号。以下「政令78号」といいます。第12条第1項)。 ベトナムで一般的な企業のもとで勤務する18歳以上のベトナム人労働者は、勤務する地域の最低賃金の半額を契約書上の労働日数で割った金額を拠出する義務を負います(政令78号第12条第3項b号)。 なお、上記の負担については経済的状況により義務が免除される場合があります(政令78号第13条参照)。 自然災害基金の拠出については、企業と労働者個人でそれぞれに拠出義務を負いますが、個人の拠出分も含めて、企業が個人より徴収して管轄の人民委員会に納付する義務を負います(政令78号第15条第1項)。 また、企業は、毎年5月15日までに納付の計画について提出する義務を負います。 そして個人の負担分については毎年7月末までに、企業負担分については、最低でも半分を毎年7月末、残りは11月末までに納付をする義務を負います(政令78号第15条第3項)。 自然災害基金の納付計画が未提出の場合、500万VND~1000万VNDの範囲で罰金を課される場合があります(政令03/2022/ND-CP号第17条第2項)。 また、自然災害基金の納付を行わなかった場合、未納付額に応じて、60万VND~2000万VNDの範囲で罰金が科される可能性があります(同条第1項参照、第6条第3項)。 自然災害基金については地方により運用がまちまちのこともあり、地域によっては当該基金の納付が全く行なわれていない場合もあります。しかし、法律上は上記のように納付は義務となっています。そのため各自治体から負担を求める書面を受け取った場合、納付する必要があります。

【ベトナム労務】2022年の最低賃金の変更についての政令(2022年7月1日施行)の概要

コラム
2022.06.14
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【ベトナム労務】2022年の最低賃金の変更についての政令(2022年7月1日施行)の概要

6月12日、地域別最低賃金に関わる政令38/2022/ND-CP号が公布されました。金額は、賃金評議会が合意していた時点の金額から変更はありません。 施行時期については反対意見なども出ていましたが、当初の予定どおり7月1日より施行されることとなりましたのでご注意ください。 2022年7月1日からの地域別最低賃金: 第1地域 468万VND 5.88%(上昇率) 第2地域 416万VND 6.12% 第3地域 363万VND 5.83% 第4地域 325万VND 5.86% 政令の日本語仮訳について、Q&Aデータベースの会員の方は以下からご確認可能です。 *労働契約に基づいて働く労働者に対する最低賃金に関する政令38/2022/NĐ-CP(2022年7月1日施行) これまでの政令90/2019/NĐ-CPによれば、職業訓練を受けたことが必要である仕事をする労働者に対して、職業訓練後に地域別最低賃金よりも少なくとも7%以上高く支払われることとされていました(第5条1項b号)。 しかし、2022年7月1日から有効となる政令38/2022/NĐ-CPでは、当該規定がなくなりました。 政令38/2022/NĐ-CPの第4条第1項によれば、月額最低賃金は、月給制の労働者に対して賃金額の合意及び支払いを行うための基礎となる最低賃金額であり、1か月当たり十分な通常労働時間で働いていて、合意された仕事量、業務を完成した労働労働者の業務又は職名に従った賃金額が月額最低賃金を下回らないことを保証するように規定されています。 そのため、7月1日以降、使用者が職業訓練を受けた労働者に対して地域別最低賃金よりも少なくとも7%以上高く支払う必要はなくなり、上記のとおり政令38号に基づく月額最低賃金以上の賃金額を支払えばよいということになります。 上記のとおり、政令では7%の職業訓練後のアップは削除されていますが、同政令第5条3項と公文書2086/BLĐTBXH-TLĐLĐVN号第1条1.1項b号により、労働契約、労働協約又は、その他の合法的合意で誓約・合意した事項については、政令よりも労働者に有利なものである場合、当事者間に別段の合意がない限り、引き続き行われます。 現状、会社の規定や合意で7%の支給に触れている場合には、それを削除するためには会社の規定や合意の修正が必要となることには注意が必要です。労働者にとって不利な修正になりますので、労働組合との合意や各労働者との合意が必要になります。 同様の規定があるかどうかご確認のうえ、削除するために法令上の手続を踏むようにしてください。 また、7%アップを削除することで給与総額が現時点よりも減給になることも労働者との合意がない限りは認められませんので、ご注意ください。  

【ベトナム外貨管理】ベトナム国内における外貨使用の規制について

コラム
2022.06.03
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【ベトナム外貨管理】ベトナム国内における外貨使用の規制について

ベトナム領域内におけるすべての取引、支払、価格表示、広告、値札、契約書における金額の表示は、一部の例外を除いて外貨をもって行うことができないとされています(外貨との併記を含む。法令第06/2013/PL-UBTVQH13号第22条(法令第28/2005/PL-UBTVQH11号により修正))※。 なお上記の例外については、通達32/2013/TT-NHNN号第4条(通達16/2015/TT-NHNN号により修正および追加)に定められています。 こちらについては例外が相当数ありますので、気になる方は個別に確認して頂きたいですが、日系企業にも関わりがあるようなものですと、例えば外国人労働者の給与については外貨での支給が認められています(通達32/2013/TT-NHNN号第4条第14項)。 ※こちらについては、根拠として政令70/2014/ND-CP号や通達32/2013/TT-NHNN号を記載しているものもありますが、本稿では上位規範である法令(PHÁP LỆNH)を根拠として記載しております。 ベトナム国内において、上記の例外に当てはまらないにも関わらず外貨を用いた取引を行った場合、当該契約は法律91/2015/QH13号(民法)第123条により無効になると解されます。 また、上記に加えて、例えば会社組織がベトナム国内の契約等において外貨を表示した場合には、6000万VND~1億VNDの範囲で罰金が科される可能性があります(政令88/2019/ND-CP号第23条第4項N号。違反行為によって具体的な罰金やその他の行政罰が異なりますので、罰則の詳細を確認したい方は当該第23条全体をご確認下さい)。 慣行としていまだに契約書等に外貨が記載されている例を見かけることも多いですが、上記のように法令上規制されているため、自社のベトナム国内の契約書や値段表記等についてはしっかりご確認ください。

【ベトナム労務】残業時間の引き上げについて

コラム
2022.05.24
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【ベトナム労務】残業時間の引き上げについて

17/2022/UBTVQH15号(以下、「議決15号」という場合があります)を採択しました。当該議決により、法律45/2019/QH14号(以下、「労働法」といいます)第107条の残業時間についての規定が一部修正されます。 1)1年当たりの残業時間の上限 ㋐ 上限の増加 労働法は1年あたりの残業時間について、特定の業種等のみ300時間以内の範囲で認められる(労働法第107条第3項)と規定しており、当該特定の業種等に該当しない場合は、その上限を200時間としていました。議決15号第1条第1項本文により、労働法第107条第3項に該当しない場合についても、残業時間の上限を300時間とできることとなりました。 ただし、上記の規定は、満19歳未満の労働者、妊娠して7か月以降もしくは生後12か月未満の子供を養育する女性労働者などには適用されません(議決15号第1条第1項但書。適用除外の詳細については同但書を確認してください)。 ㋑ 残業実施の要件 ただし、同議決によっても労働法の原則に従い、労働者に残業させるには労働者の同意があることが前提となります(議決15号第1条第1項本文・労働法第107条第2項a号)。 また、200時間を超える残業を実施する会社は、労働法第107条第4項に従って、当該残業を労働者に実施させることについて省級人民委員会に属する労働専門機関に書面で通知を行わなければなりません(議決15号第3条第2項)。 2)1月当たりの残業時間の上限 労働法は1月あたりの残業時間が40時間を超えてはならないと規定していたところ(労働法第107条第2項b号)、議決15号は1月当たり60時間までの残業を認めています(議決15号第2条)。 この場合については、労働専門機関に対する通知は必要ありませんが、残業を実施させることの前提として労働者の同意が必要なことは同様です(議決15号第1条第2項・労働法第107条第2項a号)。 議決15号第1条(1年当たりの残業時間に関わる規定)は2022年1月1日から遡って効力が発生します(議決15号第4条第1項)。そのため、年あたりの残業時間を計算する際には、本年の1月から3月までの残業時間も含めて計算する必要があります。議決15号第2条(1月当たりの残業時間に関わる規定)は2022年4月1日から効力が発生します。

【ベトナム労務】2022年の最低賃金の変更についての議論状況

コラム
2022.04.20
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【ベトナム労務】2022年の最低賃金の変更についての議論状況

  今月12日、ベトナム政府の諮問機関、国家賃金評議会は、最低賃金を今年の7月からおよそ6%引き上げることに合意しました。正式な決定は、政令の発布を待つ必要がありますが、当該合意のとおり、最低賃金の引き上げが実施されれば1年半ぶりの最低賃金の改訂となります。 国家賃金評議会が合意した地域別最低賃金: 第1地域 468万VND 5.88%(上昇率) 第2地域 416万VND 6.12% 第3地域 363万VND 5.83% 第4地域 325万VND 5.86% ※政令90/2019/ND-CP号の付録によれば、ホーチミン市、ハノイ市、ハイフォン省、ビンズオン省やバリアブンタウ省などの日系企業が多く所在する地域は第1地域に含まれています。また、ダナン市やバクニン省等が第2地域に分類されます。最新の地域分けについては新しく発布される政令を確認する必要があるのでご注意ください。 最低賃金については労働法(法律:45/2019/QH14)に以下の規定が存在します。 第91 条 最低賃金額 1 最低賃金額とは、経済・社会の発展状況に応じた、労働者とその家族の最低限度の生活水準を保障するために、通常の労働条件の下で最も単純な業務を行う労働者に対し支給される、最も低い賃金額である。 2 最低賃金額は地域ごとに定められ、時給・月給で決定される。 3 最低賃金額は、労働者及びその家族の最低限度の生活水準、最低賃金額と市場の賃金額との相関、消費者物価指数、経済成長の速度、労働需給関係、雇用及び失業、労働能率、企業の支払能力に基づき調整される。 4 政府は、本条の詳細を定め、国家賃金評議会の勧告に基づき最低賃金額を決定し、公表する 上記の規定に従い、最低賃金は物価水準等に応じて第1から第4の地域ごとに規定されます。最低賃金の決定過程については、草案が国家賃金評議会により審議され、了承を得た草案が首相府に提出されます。そして首相の最終判断を経た後、政令の形式で発布されます。 労働法によれば、賃金とは以下のように定義されています。 第90 条 賃金 1. 賃金とは、業務を実施するために、合意に基づき、使用者が労働者に対して払う金員であり、業務又は職位に応じた賃金額、手当その他の補助からなる 法文の原文も確認すると賃金とは、基本給(mức lương)、手当(phụ cấp lương)、その他の支給金(các khoản bổ sung khác)の三つにより構成されていると理解できます。 政令90/2019/ND-CP号の規定をみると、最低賃金では、mức lươngという用語を使用しているので、手当金を除いた基本給が最低賃金として予定されていると理解できます。そのため、手当金等を除いた基本給が最低賃金額を下回ってはいけないことになりますので、この点注意が必要です。 国家賃金評議会からは2022年7月1日からの変更ということで提案されていますが、報道によえれば多数の労働者を擁する8つの協会は、最低賃金の引き上げ時期を「2022年7月1日」から「2023年1月1日」に延期するよう要請する内容の要望書を政府に提出しています。 今後、政令としてどのように正式に発表されるかどうか注目となります。 *最低賃金引き上げ、8協会が23年からに延期要請(Vietjo)

【ベトナム】ベトナムの弁護士資格について教えて下さい。

コラム
2022.04.05
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【ベトナム】ベトナムの弁護士資格について教えて下さい。

時々、ベトナムの弁護士資格を保有しているのかと尋ねられることがあります。日本人弁護士は、通常ベトナムの弁護士資格を取ることはできません。日本の弁護士資格をベトナムの司法省に登録して外国人弁護士として活動しています。 また、ベトナムではどういった過程を経て弁護士になるのかと聞かれることも良くあります。この点について皆さん意外と関心があるようなので、今回はベトナムの弁護士資格(なり方)について書きたいと思います。 ベトナムで弁護士になることができるのはベトナム国籍の保持者に限られます。 また、法学士(法学部等を卒業している人)でなければなりません。そのため会計等その他の学位を有する人が、弁護士になりたいと思う場合には改めて学位を取り直す必要があります。 この点、日本国籍・法学士、双方の資格が不要な日本とは異なります。もっとも、日本で育った外国籍の方以外で日本の弁護士資格を取られている方は非常に稀です。外国人にとって日本語の読み書きのハードルが高いこと等が原因かもしれません。 まず、法学士を有する候補者は、弁護士業務研修施設において、12ヶ月間の弁護士業務の研修を受けなければなりません。 弁護士業務研修施設はベトナム国内でハノイに本部施設があり、ホーチミンに支部が存在します。施設としてはこの二つになりますが、ハノイ及びホーチミンの各施設は、他の各省でもクラスを開催しています。 弁護士業務の研修というと日本の司法修習のようなものを想像するかもしれませんが、従来は座学中心の学校で授業を受けるような形式のものでした。 しかし、現行の決定第873/QD-HVTP号により、単位取得のスキームが変更され、必修の39単位中、4単位は法律事務所等で実習を行うことになりました(期間は概ね2か月程度)。 この実習終了後、報告書を作成し、報告書の内容と面談により実習結果が評価されることになりました。 当該研修については、平日毎日受講するコースと週末に集中的に受講する2種類のコースがあり、12ヶ月間の間、祝日を除いて基本的に休みがありません。 多くのベトナム人は仕事をしながら当該研修に参加するのでこれを修了するのはなかなか大変で、途中で通えなくなって挫折したり、12ヶ月間の期間を延長して当該研修を修了する人も少なくないようです。 研修の最後に試験を受けて合格すると研修の修了証明書が付与されるというのが従来の方式でしたが、前記の単位取得のスキーム変更により、最後の試験はなくなりました。今では、必修の39単位を取ったら当該研修が修了し、修了証明書が付与されることとなっています(ホーチミン市では2020年から運用)。 弁護士業務の研修を修了した者は、弁護士事務所での12ヶ月間の弁護士実務研修に進みます。弁護士事務所は我々のような外資組織でも良いのですが、研修の責任者となる指導弁護士はベトナムの資格者(つまり、ベトナム人弁護士)でなければなりません。 指導弁護士となる者の条件は、3年以上の実務経験があることと弁護士会の懲戒の対象となっていないことです。 実務研修を受ける者は、修習先の弁護士事務所の本店所在地の弁護士会に、実務修習の登録をしなければなりません。 この登録の日から12ヶ月間が実務修習の期間となります。 当該期間中は指導弁護士の補助や、訴訟への同行ができ、日本の弁護士修習の内容と類似します。 もっとも、日本は法曹一元制度で、司法試験の合格者の中から、裁判官、検察官、弁護士の資格者を選定することになっていますから、弁護士の候補者は、弁護士の実務研修のみならず、裁判官・検察官の実務研修も受けます。この点は大きく異なっています(ベトナムで裁判官、検察官になるには異なる過程を経る必要があります)。 実務研修を修了した者は、実務修習結果の評価試験を受験します。試験は筆記と後述の試験です。 この試験に合格すると、弁護士免許の発行を申請できます。 弁護士免許の発行を受けても、まだ弁護士の業務を行うことはできません。 弁護士としての業務を行うためには弁護士会への入会が必要で、弁護士会への入会を経て、晴れて弁護士としての業務を行うことができます。 上記の評価試験の合格率については、年によっても異なるようなので一概にはいえませんが、基本的には50%を上回ります。 合格率だけみれば日本よりも資格取得が簡単といえますが(日本では2008年度開始の新司法試験以降、合格率は概ね20~30%の間で推移しています)、仕事をしながら研修所に通う等、資格の取得はけして簡単なものではないといえます。