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- 2025.06.18
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ベトナム広告法改正|インフルエンサー義務化とオンライン広告ラベル等(2026年1月1日施行)
2025 年 6 月 16 日、国会本会議で「広告法の一部条項を改正・補充する法律」(全3条、23条改正・1条削除)が可決されました。2012年広告法を改正するもので、広告商品伝達者(Người chuyển tải sản phẩm quảng cáo)≒インフルエンサー・KOL/KOCの定義を新設して義務を設定したほか、オンライン広告のラベル義務やプラットフォームの24時間以内の削除義務などが規定され、広告関連者にとって大きい影響がありそうです。施行日は 2026 年 1 月 1 日です。 まだ可決されたばかりであり、かつ、草案が直前で変わったこともあり、最終確定内容によって若干変動がある可能性もありますが、最終決議の第4次草案が可決されたもののようですので、以下にまとめます。 改正点(確定) 概 要 広告商品伝達者の定義新設 “Người chuyển tải sản phẩm quảng cáo(広告商品伝達者)”=SNS投稿・ライブ配信で商品を紹介する者、またはロゴ入り衣装等で広告効果を生む者を法主体化。 有名人・影響力保持者の追加義務 商品を紹介する前に以下が必要。 ①広告主の信頼性確認 ②資料チェック ③未使用または未理解商品の推薦禁止。※実際に使用しなければならない、という草案時点の義務は若干柔軟に変更 ステルスマーケティング禁止 広告の表示義務、一般コンテンツとの区別義務により、“Quảng cáo trá hình”(隠れ広告/ステマ)は認められない。 オンライン広告ラベル義務 SNS・Web広告は「#QuảngCáo/#Ad」等で広告表示を明示。バナーは「閉じる」「報告」UI必須。 違法広告の24h削除 プラットフォーム・当事者は当局要請後24時間以内に広告をブロックまたは削除。 広告契約の義務化 広告取引は、広告の対象となる組織、個人、製品、商品、サービスの広告条件などを含む契約締結が必須となります。 越境広告の法的根拠 「Hoạt động cung cấp dịch vụ quảng cáo xuyên biên giới(越境広告サービス活動)」を定義し、海外SNS・広告主にも法適用。 行政・刑事二重の罰則 行政過料(額は政令改定で上限引上げ予定)+刑事訴追(詐欺広告で懲役1‑5年・罰金最大5億VND)+違反利益没収を明記。 活字媒体の広告枠緩和 新聞広告 25 → 30 %、雑誌 30 → 40 %。テレビは有料 5 %維持。 施行日 新広告法は 2026‑01‑01 発効。 草案時点の記事は以下: ベトナム広告法改正案:SNS広告・インフルエンサー規制の要点
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- 2025.06.17
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ベトナム企業法2025年改正|公務員出資禁止・BO開示など主要7ポイント(2025年7月1日施行)
本日(2025年6月17日)、第15期国会第9会期において「企業法(2020年法)の一部を改正する法律」が可決されました。改正法は (i) 公務員・公立職員による企業関与の禁止拡大、(ii) 経営者責任と資本の実在性確保、(iii) 受益所有者(Beneficial Owner)の情報開示、(iv) 株式出資価値算定ルールの明確化―という国際基準への適合とガバナンス強化を柱としており、2025年7月1日に施行されます。 2020年企業法と、今回の主要な改正点の相違は以下のとおりです。 № 改正テーマ 2020年企業法(現行) 2025年改正法 実務上の影響 1 公務員・公立職員の資本参加等 出資は可、設立・経営は禁止 設立・出資・経営すべて禁止(科学技術・DX等の特例除く) 国・省庁系人材とのJVや株主構成の見直しが必須 2 法定代理人(Legal Representative)の責任 民事責任の明示規定なし 企業に損害を与えた場合の個人責任を明文化 駐在員社長等にD&O保険加入を検討 3 資本金・登録情報の虚偽届出 行政処分中心で曖昧 虚偽・過少資本・資産過大評価に刑事・行政罰を強化 M&A・DDで資本の実在性確認が不可欠 4 受益所有者(BO)情報 規定なし BO概念を導入し情報収集・保存・提供義務を課す グループ構造図の整備、AML対応コスト増 5 株式出資価値算定 直前終値等 過去30日平均+当事者合意+鑑定機関の3方法を規定 株式対価投資の価格交渉が柔軟化 6 優先株買戻しに伴う資本減少 明確規定なし 優先株・一部他の取得株式でも資本減少を容認 Exit/資本再構成の選択肢拡大 7 監督方式 事前審査中心 事後検査へシフト、社内機関の権限拡大 設立・変更手続きの迅速化、内部統制強化が前提 ■改正内容 国家・地方の公務員および公立病院・大学等の職員は、例外を除き企業の設立・出資・経営に関与できません(改正後17条2項b、3項b)。 ■影響 日本企業が国立大学・公的研究機関と共同で事業会社を設立する場合、該当研究者が取締役や株主となるスキームは原則不可。技術移転やR&D投資では 科学技術・イノベーション特例 を適用できるかを事前確認要。 既存JVでは対象者持分の整理・譲渡が必要になる可能性。 ■改正内容 法定代理人が善管注意義務違反により会社に損害を与えた場合、会社・株主に対し個人負担で賠償責任を負うことを明示。 ■影響 日系親会社から派遣される駐在員社長はリスクが高まる。 役員賠償責任(D&O)保険 や業務執行権限と監督機能の分離を含むガバナンス体制の再点検が推奨。 ■改正内容 偽装登録、資本未払い、過大評価等を列挙し行政罰・刑事罰を強化。 ■影響 資本実在性 が対越M&A・合弁の重要DD項目へ。 キャッシュコントリビューションの実行管理、財務監査証跡の整備が必須。 ■改正内容 FATF基準に沿いBOを定義し、企業に対しBO情報の収集・保管・提出を義務化。既存企業は次回登記変更時に届け出。 ■影響 多階層SPCで投資するPEファンドや日本本社は、最終実質支配者(>25%等)を提示する必要。 グループ再編や優先株発行時にBOが変動する場合、変更届出を失念しない管理体制が求められる。 ■改正内容 時価算定を「30日平均価格」「当事者合意」「鑑定機関評価」の3択とし、直前終値主義を改めた。 ■影響 シェアスワップ案件で価格調整条項を組みやすくなる一方、30日平均が市場変動を反映しにくい可能性。契約上の評価方法合意を明確化すべき。 ■改正内容 優先株(redeemable preference shares)等の買戻しに伴うチャーターキャピタル減少を認可し、資本構成の柔軟性を付与。 ■影響 ベトナム子会社の段階的Exit や配当性資金還流がしやすくなる。 ただし減資手続きに伴う債権者保護手続を確認。 ■改正内容 設立・変更時の事前審査を簡素化し、違反時に事後的に厳罰を科す仕組みに転換。 ■影響 手続スピードは向上するが、内部統制とコンプライアンス体制 が重要に。 分野 影響の深度 日系・外資系企業の推奨アクション JV・M&A 高 (1) ベトナム側株主に公務員・公立職員が含まれないか調査 (2) 登録資本の払込証憑と資産評価書の再確認 コーポレートガバナンス 高 (1) 法定代理人の責任範囲の見える化 (2) D&O保険・議事録管理・委任権限規程の整備 コンプライアンス/AML 中 (1) グループのBO情報を統一フォーマットで管理 (2) 社内ガイドライン改訂とITシステム連携 資本政策・ファイナンス 中 (1) 優先株発行・買戻しスキームを活用した資本リサイクリング (2) 株式対価投資で評価メソッドと価格調整メカニズムを契約明記 改正法は「透明性・実在性・責任」をキーワードに、ガバナンスと投資環境を国際基準へ近づけるものです。 日系企業にとっては コンプライアンス負担増 と 制度的安心感 が表裏一体となる改正であり、先回りの体制整備が競争優位 を生む可能性があります。7月1日の施行前に、上記チェックリストに沿ったギャップ分析と社内規程の確認を進めることを推奨します。実務上の動向は随時確認が必要です。 ※本稿は2025年6月17日時点で公表された法令・報道を基に概要を整理したものです。個別案件への適用にあたっては、正式な公布文および省令・通達の動向を確認のうえ、専門家にご相談ください。
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- 2025.06.17
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【ベトナム】2025年7月〜2026年末までのVAT2%減税(10%→8 %)延長
ベトナム国会において、2025年6月17日にVAT(付加価値税)の税率を10%→8%にする措置を延期する決議が可決されました。景気刺激策として、コロナ禍より継続的に採用されている減税ですが、2026年までの1年半もの延長がきまりました。概要は以下のとおりです。 2025年6月17日午前、第15期国会第9回会議で 452/453 議員(94.6%)が賛成し、VAT減税に関する国会決議を可決 適用期間は 2025-07-01 から 2026-12-31 までの18 か月 現行10 %課税の大半の財・サービスを 8 % とし、COVID-19後の景気刺激措置(2022年導入)を再延長 10%の対象と、対象外の項目は以下のとおりです。 対象 VAT法48/2024/QH15 第9条3項に掲げる10 %対象群(製造業、運輸、物流、ITサービスなどほとんどの小売・サービス)。 除外 通信(通信料・データ通信) 金融・銀行・証券・保険 不動産取引・リース 金属および鉱石(石炭除く) 特別消費税(SCT)対象品(ガソリン等を除く一部) 今回の決議では対象範囲を従来より若干拡大する調整が盛り込まれたと政府が説明しています。 項目 影響・必要対応 請求書・e-インボイス 2025-07-01以降発行分を8 %に自動置換。税コード “GTGT08” 継続使用。 ERP/POS設定 税率テーブル更新と期日トリガーを必ずテスト。 契約書・見積 単価“VAT別”表記の契約は請負代金が実質2 %減、VAT込みは単価修正が必要。 キャッシュフロー 仕入VAT控除‐納付VAT差額が縮小 → 短期的に納税額減少。 経営指標 売上総利益率(VAT込み換算)が微増。上期・下期比較に留意。 関連: 2025年1月1日から2025年6月30日までのVAT減税の継続について(10%→8%)
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- 2025.06.17
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最低賃金の区分変更へ|128/2025/NĐ-CPの要点と実務影響(2025年7月1日〜)
2025 年 7 月 1 日発効の政令 128/2025/NĐ-CPにより、最低賃金の適用単位が県(郡)レベルから社会(コミューン)レベルへ細分化されます。 金額そのものは据え置きですが、“所在地の細かな境界”で賃金義務が変わるため、企業の人事・労務フローに見過ごせないインパクトがあります。以下要点をまとめます。 最低賃金の金額は変わらず、区分についてより細分化されることになりました。11,000もの地域に分かれるのでここで詳細は控えますが、下記原文等から会社における地域をご確認ください。 地域区分(Vùng) 月額最低賃金(VND) 時間額最低賃金(VND) 代表的エリアの例 I 4,960,000 23,800 ハノイ旧市街、HCMC 1区・Thu Duc市 ほか II 4,410,000 22,100 ハイフォン・ダナン都市圏、ビンズオン省一部 III 3,860,000 19,300 ドンナイ省多数コミューン、ニャチャン市 など IV 3,450,000 17,250 中部・北部山岳部、メコンデルタ農村部 等 附属書 I に約 11,000 の社会が具体的に列挙されています。 原文はこちらを参照ください。 LuatVietnamのインフォグラフィックス(表)にもまとまっています。 これまでの県レベルでの区分から、コミューンレベルでの区分に変更となりました。その理由は以下の点にあります。 賃金格差の適正化 同一県内でも産業団地と農村部では生活コストが大きく異なるため、コミューン単位で細分化。 監督強化 労働監査で“所在地 vs. 最低賃金”の照合を容易にし、違反摘発を迅速化。 新区分で 旧額より低くなる場合は「引下げ禁止」。企業は従来額を維持し、次回改定を待つ。 月途中入社・異動者の取り扱いは、異動日ベースで所在地社会を判定。 日系企業において対応が必要になりうる事項は以下のとおりです。区分は変わらない場合が多いと思いますが、最低賃金が上がる場合があるため確認が必要です。 優先度 アクション ポイント ★★★★★ 所在地マッピング 住所 → 社会コード → Vùng 区分を Excel で一覧化。 ★★★★☆ 給与規程改訂 条引用を「政令128/2025」へ更新し、社会区分を反映。 ★★★☆☆ 労働契約の見直し 新入社員は新区分で締結。既存社員の賃下げは不可。 ★★☆☆☆ ペイロール設定 システムに社会コードを追加。引下げ禁止フラグを設定。 ★☆☆☆☆ 監査対応ファイル整備 “社会区分確認シート+給与台帳”を監査時に提示できる形へ。 Q A 同じ工業団地内で工場と倉庫の住所が微妙に違う。賃金は統一可? 異なる「社会」に属する場合は 工場ごとに最低賃金を適用。統一する場合は高い方に合わせるのが安全。 派遣社員・請負労働者も新区分を適用? 派遣先事業所の所在地社会で判断。請負契約では最低賃金順守条項を再確認。 時給換算の従業員は? 時間額(上記表参照)を下回らないよう設定。夜間・残業は通常どおり加算。 最低賃金の絶対額は変わらないものの、社会レベルへの細分化により「同県内でも賃金区分が異なる」事態が発生します。住所変更や新拠点開設時は、必ず 附属書 I の社会リストで区分( Vùng) を確認し、社内規程・システム・労働契約をアップデートしてください。 実務上は7月からの影響がわからない部分もありますので、関連のニュースにも要注目です。
弊所弁護士のTamが、下記の二つの記事にコメントいたしました。 一つ目の記事は、2025年7月1日から施行されるVAT法の新規定(2000万ベトナムドン以下の取引が現金で行われた場合に税控除の対象にならないという内容)に関するものであり、Tam弁護士は本改正に対して企業がとるべき対策についてコメントしています。→詳しくはこちらをご覧ください。 二つ目の記事は、写真編集アプリで取得を許可した生体認証データの悪用の可能性について示唆するものであり、Tam弁護士は個人データにまつわる最新の個人データ保護政令の内容と個人のデータへの向き合い方についてコメントしています。→詳しくはこちらをご覧ください。
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- 2025.06.13
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歴史的な「34省体制」に向けた国会決議202/2025/QH15──企業・投資家が押さえるべき実務ポイント
2025年6月12日、第15期国会第9会期において「地方自治体再編に関する国会決議(202/2025/QH15)」が賛成 461/485票(出席465名中99.1%、総議員比96.44%)で可決され、即日施行されました。これによりベトナムの省・直轄市は現行63から34(28 省+6 直轄市)へ再構成され、各新自治体は2025年7月1日に公式稼働します。 項目 内容 決議番号/名称 202/2025/QH15 ― 省級行政単位の再編に関する決議 採決日 2025年6月12日 採決結果 461/465 賛成(99.1 %)、全議員比96.44 % 施行日 同日(公布即日効力) 新体制 34 省級自治体=28 省+6 直轄市 新設数 23(19 省+4 市) 再編対象外 11 自治体(下表参照) 行政稼働開始 2025年7月1日(省・市)/2025年8月15日までに庁組織完了 既存公文書 失効日まで有効。希望者は手数料無料で再発行可。 省・市 備考 Cao Bằng/Điện Biên/Hà Tĩnh/Lai Châu/Lạng Sơn/Nghệ An/Quảng Ninh/Thanh Hóa/Sơn La 山岳・国境地域など特殊事情を考慮し当面据置 Hà Nội(首都)/Huế(Thừa Thiên Huế市) 中央直轄特殊都市の性格を維持 新自治体 旧構成 区分 面積㎞² 人口(人) Tuyên Quang Hà Giang+Tuyên Quang 省 13 795.5 1 865 270 Lào Cai Lào Cai+Yên Bái 省 13 256.9 1 778 785 Thái Nguyên Bắc Kạn+Thái Nguyên 省 8 375.2 1 799 489 Phú Thọ Vĩnh Phúc+Hòa Bình+Phú Thọ 省 9 361.4 4 022 638 Bắc Ninh Bắc Giang+Bắc Ninh 省 4 718.6 3 619 433 Hưng Yên Thái Bình+Hưng Yên 省 2 514.8 3 567 943 Hải Phòng Hải Phòng+Hải Dương 直轄市 3 194.7 4 664 124 Ninh Bình Hà Nam+Nam Định+Ninh Bình 省 3 942.6 4 412 264 Quảng Trị Quảng Bình+Quảng Trị 省 12 700 1 870 845 Đà Nẵng Đà Nẵng+Quảng Nam 直轄市 11 859.6 3 065 628 Quảng Ngãi Kon Tum+Quảng Ngãi 省 14 832.6 2 161 755 Gia Lai Bình Định+Gia Lai 省 21 576.5 3 583 693 Khánh Hòa Ninh Thuận+Khánh Hòa 省 8 555.9 2 243 554 Lâm Đồng Đắk Nông+Bình Thuận+Lâm Đồng 省 24 233.1 3 872 999 Đắk Lắk Phú Yên+Đắk Lắk 省 18 096.4 3 346 853 TP Hồ Chí Minh HCMC+Bà Rịa‑Vũng Tàu+Bình Dương 直轄市 6 772.6 14 002 598 Đồng Nai Bình Phước+Đồng Nai 省 12 737.2 4 491 408 Tây Ninh Long An+Tây Ninh 省 8 536.4 3 254 170 Cần Thơ Cần Thơ+Sóc Trăng+Hậu Giang 直轄市 6 360.8 4 199 824 Vĩnh Long Bến Tre+Trà Vinh+Vĩnh Long 省 6 296.2 4 257 581 Đồng Tháp Tiền Giang+Đồng Tháp 省 5 938.6 4 370 046 Cà Mau Bạc Liêu+Cà Mau 省 7 942.4 2 606 672 An Giang Kiên Giang+An Giang 省 9 888.9 4 952 238 行政効率の向上 省庁・人民委員会の重複部門を削減し、年間約11兆VNDの運営コストを圧縮する試算が示されています。 広域経済圏の形成 旧来の県境を越えてインフラ・産業クラスターを再設計し、一層のFDI誘致・輸出拡大を図る狙いがあります。 地方財政の健全化と都市計画の一体化 財政基盤の弱い小規模省を統合し、投資配分を集中させるとともに環境・都市開発規制を一本化します。 領域 影響概要 推奨アクション 登記・ライセンス 本店所在地の「省名」が変更されても、既存のERC・IRC・ライセンスは有効期限まで効力維持。再発行は任意・無料。 ⑴ 定款・主要契約書に「旧名称(現◯◯省)」の付記条項を追加し、次回改訂時に正式更新⑵ 投資登録証(IRC)の住所欄更新は、資本・事業内容変更申請と同時に行うと手続きが一本化され効率的 税務・社会保険 省コードが変わるため、国税電子ポータル・社会保険システムのマスタが6月末までに書き換え予定 ⑴ 7月以降の税・保険申告でエラーが出た場合は「旧コード⇒新コード」変換リストを適用⑵ ERP・給与ソフトのロジックを事前アップデート 許認可・行政窓口 主管庁が変わる案件(例:旧Kon Tum投資案件→新Quảng Ngãi省管轄)では、2025年7月以降の届出先が変更 ⑴ 決議附帯の“暫定ワンストップ窓口”リストを確認し、申請書類の送付先を誤らない⑵ 環境・建設・消防など複数許認可を並行取得する案件は、担当部門と日程を再協議 土地使用権証書(LURC) 土地ロット番号は不変。省名欄のみ改訂対象 売買・担保設定時に「住所変更による追加覚書」を添付し、権利帰属の明確化を徹底 契約実務全般 国際契約・融資契約で“governing law=Socialist Republic of Vietnam”表記は不変。ただし所在地の省名変更は通知義務条項(Notice)に該当する可能性 ⑴ 重大な契約はカウンターパーティに英文通知を実施⑵ 監査・金融機関へのレポーティング書式を更新 附則の「行政文書の継続効力」 決議14条は、旧自治体名義の公文書・証拠力を全面承継すると明示しており、権利義務の連続性は確保されています。 労働移籍・人員整理ルール 省庁職員の再配置基準は別途政府令で定められ、2025年末までの経過措置期間中は強制解雇を伴わない暫定配置が原則です。 今後想定される下位法 内務省通達(7月予定):行政コード・印章・公式レターヘッドの新規格 財務省ガイダンス:予算配分・決算報告の科目再編 税総局通知:TIN(税番号)体系の更新とAPI仕様 登記上の本店所在地欄を確認し、改訂不要か判断 ERP・給与・税務ソフトの行政コードを7月1日付で更新 銀行・主要顧客への所在地名称変更通知(必要に応じ英文) 建設許可・環境許可など長期案件は新主管庁の窓口を確認 2025年下期の社内規程改訂スケジュールに「省名更新」を組込
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- 2025.06.13
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現金決済上限「2,000万VND → 500万VND」への引下げ案(2025年7月1日施行)
ベトナムでは、2025年7月1日〜、現金決済の上限を2000万VND→500万VNDに引き下げる法令案が検討されています。これが施行される場合、500万VNDを超える現金支払が認められなくなり、現金取引や接待交際費の立替も難しくなる見込みですので、重要な影響がありそうです。 まだ最終案が決定されていませんが、現時点の案について解説します。 根拠 ポイント 発効日 VAT法2024(法48/2024/QH15)第14条2項b号 入力VATを控除する条件として「非現金決済証憑の保有」を義務化。金額上限を明記せず、政令で詳細を定めると規定 2025/7/1 VAT法施行細則・第3次ドラフト政令(第10条案) 従来20 百万→5 百万VND以上(VAT込み) の請求書は非現金決済が必須。小額(< 5 百万)取引は例外 2025/7/1(予定) 旧ルール(VAT法2008改正・Circular 219/2013) “< 20 百万VND/回” までは現金払いでも入力VAT控除・CIT損金算入可 現行(~2025/6/30) 接点と注意点 企業所得税(CIT)の損金要件 は、これまでもVATルールに連動(Circular 78/2014等)。正式なCIT改正通達は未公布ですが、同じ5 百万基準に統一される可能性が高いとみられます。 非現金決済が必須となる金額 商品・サービス購入額 税込5 百万VND以上/回(複数回の同日購入合算含む) 包括される費用:会議費、接待交際費、旅費、設備仕入れ等あらゆる経費 認められる非現金手段 銀行振込(インターネット・モバイルバンキング含む) 会社クレジット/デビットカード決済 小切手、委任(lệnh chi) 正規電子マネー・eウォレット 例外(ドラフト政令10条2項) 契約で規定された相殺(bù trừ công nợ) 三者間支払(ủy quyền thanh toán bên thứ ba) 行政執行に伴う国庫口座納付 など 項目 現状(~2025/6) 2025/7以降のリスク 入力VAT控除 20 百万超のみ非現金必須 5 百万超は非現金必須。現金払いは控除不可 CIT損金算入 20 百万超は非現金必須 改正通達で5 百万超へ連動する見込み 接待交際費 例:8 百万VNDの会食→現金可 同額はカード/振込必須。現金精算は税務否認リスク 社内精算フロー 現金払いが主流 申請額5 百万超=カード決済を新ルールに 2025/Q2:社内支払規程改定案を法務・経理でレビュー 銀行/カード発行:利用枠・担当者を確定し発行申込 会計システム:現金/非現金フラグを5 百万基準に自動判定 従業員研修:新ルールとカード精算手順を周知 正式政令公布後:最終条文を反映し、CIT通達動向をモニタリング 2025年7月から非現金決済要件が20 百万→5 百万VNDに大幅強化される見込みです。接待交際費をはじめ、5 百万VND超の支払いは会社カードや振込へ切り替えない限り、入力VAT控除・損金算入が認められなくなる可能性があります。早期の内部規程整備とキャッシュレス決済インフラの導入で、税務・監査リスクを回避しましょう。 個人での立替がカードや送金であれば問題ないのでしょうか?その場合、会社と個人の間の精算も送金対応であれば、現金決済を挟んでいないため問題ないようにみえます。しかし、この点CITの損金算入に関するCircular 96/2015/TT-BTCの規定が問題になります。 500 万 VND超でも「出張経費」に限り、個人カード→会社銀行精算を “非現金決済” とみなして控除・損金に出来る余地が残ります。 ただし接待・会食など日常交際費については例外扱いされておらず、原則使えません。 したがって、これに代わる新たな規定が出ない限り、個人カード立替等での決済もCITの損金不算入になる可能性は大きく、推奨はできません。上記の会社カードでの精算や会社からの送金対応をできるだけ行うべきと考えています。 区分 要件/根拠 実務ポイント CIT側(現行) Circular 96/2015/TT-BTC Art.4出張旅費・航空券等を個人カードで決済しても、①正規インボイス②出張命令書③社内規程で個人カード使用を許可――の3条件を満たせば「非現金決済」として損金算入可 ・対象は出張関連費用に限定。交際費は射程外 VAT側(新法) VAT施行政令ドラフト Art.10 b.3/b.9「購入者が第三者へ委任し、その者が非現金で支払い、後に購入者が非現金で精算した場合」控除可と明記 ・委任状+二重振込明細+会社名義eインボイスの4点証憑が必須 非適用領域 接待交際費・備品購入等、業務上不可避の出張に当たらない支出 ・税務当局は「委任払い=出張など限られたケース」を想定しており、交際費で使うとVAT控除もCIT損金も否認リスク高
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- 2025.06.13
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新VAT法48/2024/QH15によるEPEへの影響(2025年7月1日施行)
2024年11月に成立した改正VAT法は、輸出指向型経済における“ゼロ税率”の範囲を再定義し、「輸出製造を直接支援するか否か」を新たな判定軸として導入しました。これにより、EPE(輸出加工企業)向けサービスの多くが 0 % 適用外となる可能性があります。 項目 現行:Circular 219/2013/TT-BTC 改正法:VAT法2024 実務的意味合い 0 %対象となる輸出サービス FTZ/EPE向けでFTZ内消費なら包括的に0 % FTZ/EPE向けで「輸出製造を直接支援」かつFTZ内消費のみ0 % 法律・会計・IT等の間接サービスは0 %外になる公算大 旧規定の定義は「海外又はFTZ内消費なら0 %」と広範でしたが、新法では“直接支援(phục vụ trực tiếp cho sản xuất xuất khẩu)”との文言が追加され、原材料・部品・加工費など製造工程と一体不可分な費用に限定されています。 サービス例 「輸出製造を直接支援」該当性 2025/7/1以降の税率見込み 原材料供給、製造委託費 ◎ 0 % 設備保守、産業廃棄物処理 △(判定次第) 0 % or 10 % 法務・会計・コンサル・IT保守 ✕ 10 %(暫定8 %適用終了後) ※実務では税務局の見解が分かれる可能性が高く、重要度の高い項目については事前照会(Official Letter)取得が推奨されます。 コスト増加 間接サービスに対し10 %VATが課税されると、EPEの年間外注費が平均5〜8 %上昇する試算もあります(当事務所試算)。 キャッシュフロー圧迫 VAT還付対象か否かの指針が未公表のため、支払時に一時負担が発生し資金繰りがタイトになります。 契約・ERP改修 税率変更条項とシステム自動計算式の更新が必須です。 コンプライアンスリスク 税率判断を誤ると追徴・延滞利息のほか、0 %適用分の還付取消しリスクがあります。 時期 具体的ステップ 即時 ①利用中サービスの直接/間接区分リスト作成②サプライヤーと税率負担条項を再交渉 Q3-2025 ③所轄税務局へ事前照会を提出④ERP・請求書フォーマットの新税率テスト 施行後 ⑤各仕入VATの別建て管理と還付可否判定⑥月次で税負担シミュレーションを実施し、価格転嫁の要否を検討 財務省通達で「直接支援」の詳細定義や還付手続きが示される見込みですが、2025年6月時点で未公布です。追加ガイダンスが出るまでの間は、保守的適用(=10 %課税)を選択し、後日返還・還付を申請する方法がリスクを抑えます。 今後の運用についてはまだ実務を待つ必要がありますが、直近の対応としてVAT課税項目が増える可能性が高いため、各社の対応を検討される必要があります。
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- 2025.06.12
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【ベトナム】プラットフォーム事業者からの源泉徴収に関するDecree 117/2025/NĐ‑CP(2025年7月1日〜)
2025年6月9日、新Decree 117/2025/NĐ‑CPが成立しました。プラットフォーム型電子商取引・デジタルプラットフォーム上で事業を行う個人・世帯の税務管理に関する規定であり、プラットフォーム側が個人事業主等への支払いの際に税金を源泉徴収しなければならないとされています。実務上はプラットフォームに大きい改正のため、本コラムでまとめます。 近年の「プラットフォーム課税」をめぐる流れを時系列で整理すると次のとおりです。 年月 施策・法令 法令レベル 主な内容 2021/06 Circular 40/2021/TT‑BTC 省令 個人・世帯の税率表を新設。第8条で「ECプラットフォームが将来ロードマップに沿って源泉徴収」と示唆 2021/11 Circular 100/2021/TT‑BTC 省令改正 40号通達を改正し、「プラットフォーム源泉徴収は 任意(委任制)」に変更、義務化を事実上延期 2022‑2024 電子インボイス全国義務化 政令123/2020→全国実施 2022/7/1に紙→電子へ完全移行。年商100 百万VND以下の個人は免除と明記 2024/11 改正税務管理法(法56/2024/QH15) 国法 「プラットフォームの源泉徴収義務」を法律レベルで明文化(施行期日を最遅2025/7/1と規定) 2025/06/09 Decree 117/2025/NĐ‑CP 政令 施行細則を定め、義務化を確定。施行日は 2025/7/1 ポイント 2021年に一度“義務化”がうたわれたものの、実務面の反発で頓挫。 2024年改正法で国会レベルの根拠が整い、今回の政令でいよいよ 強制施行 となります。 政令は6章構成ですが、実務に直結する主な規定を表にまとめます。 項目 内容 根拠条文(抜粋) 施行日 2025/7/1 Art. 29 対象プラットフォーム ①決済機能付き EC モール/スーパーアプリ②ライブコマース等の決済仲介型プラットフォーム Art. 3.1 源泉徴収義務 取引成立時に自動計算し VAT+PIT を控除 Art. 5.1 税率 (%/売上) VAT:商品1 %/サービス5 %/運輸3 %PIT(居住者):商品0.5 %/サービス2 %/運輸1.5 %PIT(非居住者):商品1 %/サービス5 %/運輸2 % Art. 5.2 売上判定タイミング 暦年ベース(1/1〜12/31)の累計 Art. 4 申告方式 月次または四半期 e‑Tax 申告(様式01/NĐ 117) Art. 7 情報連携 2025年内:CSV一括可2026/1/1〜:リアルタイムAPI接続必須 Art. 15 罰則 源泉漏れ 2,000万〜5,000万 VND/回・再犯で売上1 %まで Art. 17 還付制度 年間総売上が最終的に1億VND以下に確定した場合、個人は還付請求可 Art. 12 法令 年間売上基準 有効期間 VAT法2008 Art. 5(25) 100 百万 VND 以下は非課税 〜2025/12/31 新VAT法2024 Art. 5(25) 200 百万 VND 以下は非課税 2026/1/1〜 区分 年間売上 決済機能 納税方法 VAT PIT 典型例 ① 居住者・決済PF >1億VND あり PFが源泉 1/5/3 % 0.5/2/1.5 % ECモール(Tiki) ② 居住者・非決済PF >1億VND なし 本人が自己申告 同上 同上 掲示板型C2C ③ 非居住者 >1億VND あり PFが源泉 1/5/3 % 1/5/2 % 越境ドロップシップ ④ 小規模セラー ≤1億VND※ いずれも VAT・PIT免除(情報提供義務のみ) ― ― ハンドメイド少額販売 ※2026年からは「≤2億VND」。 留意点 売上はプラットフォーム横断で合算。複数PF利用者は総額で判定。 PFは売上モニタリング義務を負い、閾値超過月から即時源泉徴収。 最後に、プラットフォーム運営側・利用企業側の双方が 7 月 1 日までに取るべきアクションを一覧化します。 項目 プラットフォーム事業者 ① eTaxアカウント 「源泉徴収者」区分で事前登録 ② KYC強化 税コード/ID100 %収集・未登録は出荷停止 ③ 決済システム改修 VAT/PIT自動控除+分別保管 ④ データ連携 2025内:CSV→2026〜:API v2.0本番 ⑤ 社内監査 月次で源泉漏れチェック、罰則回避 ⑥ 契約条項 利用規約に「源泉徴収義務」明記 ⑦ 教育・周知 出店者向け FAQ/セミナー開催 罰則リスク の最小化には、7月施行時点で 「人・システム・書面」 の3点セットがそろっているかがカギです。 プラットフォーム利用者について、日系企業はすでに法人で取引されている会社が多いと思いますが、個人が関与しているケースでは注意が必要です。 Decree 117/2025 は、2024 年改正法で義務化された「プラットフォーム代理納税」を具現化する政令です。2021 年に一度見送られた仕組みが 2025/7/1 から本格稼働。VAT1 %/PIT0.5 % などの税率は当面据え置きですが、リアルタイムAPI対応など運用負荷は大幅に増します。年間売上閾値は現行 1 億 VND、2026 年から 2 億 VND に拡大予定。しきい値を跨ぐ瞬間に課税義務が発生するため、売上モニタリング体制の構築が必須です。 今後実務がどの程度厳しく管理されるかは不明ですので、実務上の動向も注目です。
- コラム
- 2025.06.12
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ベトナムにおいて労働者が退職する際に労働者から回収すべき書類についてまとめてみました。労働者の退職時の手続きについては過去記事をご参照ください。 【ベトナム労務】労働者が退職時に行うべき会社側の手続について 健康保険証、就労許可証(外国人の場合)、ビザ・レジデンスカード(外国人の場合)になります。以下、一つずつ詳しく見ていきます。外国人労働者については、労働許可証やビザ・レジデンスカードの返却手続に時間を要することが予想されるため、早めに準備することが求められます。 健康保険証 社会保険停止手続きのために回収が必要となります。労働者が被用者保険の被保険者でなくなる時点で会社が回収し、社会保険機関へ返納する義務があります。退職日当日にカードを受領して当局に減員申請し、その後カード原本を返送するのが一般的です(ベトナム健康保険法25/2008/QH12 第20条1項b、その他当局ガイドライン) 就労許可証(日本人含む外国人の場合) 会社が労働者から就労許可証を回収し、退職から15日以内に発給元(労働・傷病兵・社会省/DoLISA)へ返納する義務(政令152/2020/ND-CP 21条)があります。その際には、返却理由を明記した文書も添付する必要があります(実務慣行上の記載内容は、企業情報、外国人労働者情報、就労許可証の情報、返却の理由、退職日になります)。回収できなかった場合にも、回収できなかった理由を記載する必要があります。特に最近は就労許可証の返却について厳格に管理されるようになってきていますが、発行官庁が返却の確認書を発行しないことがあるため、返却の際には2通の返却文書を用意し、1通に発行官庁の押印・確認をもらうことが推奨されます。 ビザ、レジデンスカード(日本人含む外国人の場合) 外国人が退職する場合、労働許可証に加えて、ビザ、レジデンスカードを回収し、入国管理局に返却する必要があります(ベトナムにおける外国人の入国・出国・乗継・居住に関する法律第45条2項e)。返却方法については、企業が労働者から回収したあと発行官庁への返却通知書を準備し、出国準備のために一時滞在の延長(約15日間)を申請するという順番で行うことが通常です。 終了合意書 終了合意書の詳細についてはベトナム法で規定されていませんが、以下の内容を明記すべきです。 ・契約当事者の基本情報 ・契約開始日・終了予定日 ・解約理由・責任の所在 ・清算項目(報酬・退職金・休暇清算等) 会社資産 ノートPC、携帯電話、USB、社章・社員証など。 秘密保持誓約の再確認書 NDAや労働契約で定めがある場合に、あらためて確認しておくと紛争予防に役立ちます。 業務引継書 必須ではありませんが、後日の業務が円滑になります。 社会保険手帳原本 本人へ返却しなければなりません(労働法45/2019/QH14 48条3項a) 従業員の業務プロセスに関連する文書のコピー(従業員から要請あった場合のみ) 労働法45/2019/QH14 48条3項bに定めがあります。