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【ベトナム労務】2027年1月1日からの最低賃金改定|政令399/2026/NĐ-CPのポイントと企業の実務対応
速報 2026年11月3日 / CastGlobal Law Vietnam ベトナム政府は2026年11月2日、労働契約に基づき働く労働者の最低賃金を定める政令第399/2026/NĐ-CP号(以下「政令399号」)を公布しました。2027年1月1日から、地域別の月額最低賃金は31万〜39万ドン(平均約7.8%)引き上げられ、第1地域では月額570万ドンとなります。本稿では、新しい最低賃金額、適用地域の判定ルール、社会保険・失業保険への波及、違反時の罰則、そして年内に企業が進めるべき実務対応を、ベトナム現地の日系法律事務所の観点から整理します。 本稿のポイント 2027年1月1日施行。現行の政令293/2025/NĐ-CPは同日で失効します。 月額最低賃金は第1地域570万ドン、第4地域404万ドン。上昇率は第4地域が最も高く約9.2%です。 失業保険料の算定上限(最低賃金の20倍)も連動し、第1地域では月1億1,400万ドンに上がります。 ハイフォン・フンイエン・ダナン・ドンナイ・ホーチミン市の一部で地域区分の見直しが行われており、「金額」と「地域」の二重の変更に注意が必要です。 最低賃金を下回る支払いは、組織の場合最大1億5,000万ドンの罰金に加え、不足額と利息の支払いが命じられます。 政令399号は、ファム・ティ・タイン・チャー(Phạm Thị Thanh Trà)副首相が政府を代表して署名し、2026年11月2日に公布されました。2027年1月1日から施行され、2026年1月1日から適用されている政令293/2025/NĐ-CP(以下「政令293号」)に代わるものです。 適用対象は、労働法に基づく労働契約で働く労働者と、これを雇用する使用者(企業、機関、組織、協同組合、世帯、個人)です。外資系企業・日系企業も当然に対象となります。 今回の改定額は、2026年7月16日に国家賃金評議会が全会一致で合意した「平均7.8%引き上げ」の勧告をそのまま採用したものです。なお、労働側(ベトナム労働総同盟)は当初、平均9.8%または8.5%の2案を提示していましたが、最終的に7.8%で労使が歩み寄った形です。前回(政令293号、2026年1月施行)の平均7.2%に続き、2年連続で7%を超える引き上げとなります。 政令399号第3条1項は、地域別の最低賃金を次のとおり定めています(上昇率は当事務所算出)。 地域 現行 (政令293号) 2027年1月1日〜 (政令399号) 増加額 上昇率 第1地域 5,310,000 5,700,000 +390,000 約7.3% 第2地域 4,730,000 5,080,000 +350,000 約7.4% 第3地域 4,140,000 4,450,000 +310,000 約7.5% 第4地域 3,700,000 4,040,000 +340,000 約9.2% 地域 現行(政令293号) 2027年1月1日〜(政令399号) 増加額 第1地域 25,500 27,400 +1,900 第2地域 22,700 24,400 +1,700 第3地域 20,000 21,400 +1,400 第4地域 17,800 19,400 +1,600 金額の上がり幅は第1地域が最大ですが、上昇「率」では第4地域(約9.2%)が最も高くなっています。地方の工場など第3・第4地域に拠点を持つ企業ほど、人件費への影響を相対的に大きく見積もっておく必要があります。 適用される最低賃金は、会社の本店所在地ではなく「使用者が活動している場所」で決まります。政令399号の判定ルールは次のとおりです。 原則:使用者が活動する地域の最低賃金を適用します。 支店・事業所:最低賃金の異なる地域に支店等がある場合、各支店等が所在する地域の最低賃金を適用します(本社が第1地域でも、第3地域の工場には第3地域の金額が適用されます)。 工業団地等:工業団地、輸出加工区、ハイテクパーク、集中デジタル技術区、特別経済区、自由貿易区、ハイテク農業区が複数の地域にまたがる場合は、そのうち最も高い最低賃金を適用します。 名称変更・分割:地名の変更や分割があった地域では、新たな規定が出るまで変更・分割前の地域の最低賃金を一時的に適用します。 新設・統合:最低賃金の異なる複数の地域から新設された地域では、新たな規定が出るまで最も高い最低賃金を適用します。 地域ごとの区分は政令399号の付録(Phụ lục)で定められています。2025年7月の地方行政再編(34省・市体制、郡レベルの廃止)以降、区分はコミューン・坊(xã・phường)単位で指定されています。 内務省が2026年9月に公表した政令草案では、ハイフォン市、フンイエン省、ダナン市、ドンナイ市、ホーチミン市の5地方で区分の引き上げが提案されていました。たとえばホーチミン市では、旧バリア・ブンタウ省のBà Rịa、Long Hương、Tam Long、Long Hải、Long Điền、Châu Đức方面のほか、Cần Giờ、Côn Đảo特区などを第2地域から第1地域に引き上げる案が示されていました。該当地域では、金額の改定と地域の格上げが同時に生じるため、実質的な上昇幅が大きくなります。 ご注意 上記の区分見直しは草案段階の情報です。最終的な区分は、公布された政令399号の付録で拠点ごとに必ずご確認ください。特に、統合後の新しい坊・コミューン名と、従来の住所表記(旧区・旧県名)の対応関係を取り違えるケースが見られます。行政再編による地域区分の変化については、最低賃金の区分変更へ|128/2025/NĐ-CPの要点と実務影響もあわせてご参照ください。 最低賃金の根拠は労働法(法律第45/2019/QH14号)第91条で、「通常の労働条件の下で最も単純な業務を行う労働者に支払われる最も低い賃金」と定義されています。地域ごとに月額・時間額で定め、政府が国家賃金評議会の勧告に基づいて決定します。 政令399号第4条は、月給制の労働者について、所定労働時間を勤務し合意した労働基準・業務を完了した場合の「業務または職位に応じた賃金(mức lương theo công việc hoặc chức danh)」が月額最低賃金を下回ってはならないと定めています。労働法第90条は賃金を「業務・職位に応じた賃金額」「手当」「その他の補助」で構成されるものとしており、最低賃金と比較されるのは手当を除いた基本給部分であると解されています。手当を含めた総支給額で最低賃金を上回っていても、基本給が下回っていれば違反となる点にご注意ください。 また、週給・日給・出来高給・請負給の労働者については、所定労働時間を基準に月額または時間額に換算したうえで、最低賃金を下回っていないかを判断します。 月額換算:週給×52週÷12か月、日給×月の所定労働日数、または月の所定労働時間内の出来高給・請負給 時間額換算:週給・日給÷週・日の所定労働時間、または出来高給・請負給÷所定労働時間 政令399号は、使用者に対し、労働契約、労働協約、社内規程の内容を見直し、必要な調整を行うことを求めています。そのうえで、残業代、深夜労働手当、現物での補給などの法定の賃金制度を廃止・削減してはならないと明記しています。 さらに、労働契約や労働協約などで既に合意している、政令399号より労働者に有利な条件は、当事者間で別段の合意をしない限り引き続き適用されます。政令は例として次のような制度を挙げています。 職業訓練・学習を要する業務・職位について、最低賃金より少なくとも7%高く支払う制度 重労働・有害・危険な業務について、通常条件の同等業務より少なくとも5%(特に重労働・有害・危険な業務は7%)高く支払う制度 これらの「7%・5%上乗せ」は、2022年以降の政令では一律の法的義務とはされていませんが、旧制度に沿って労働契約や賃金規程に組み込んでいる企業は少なくありません。その場合、最低賃金の改定に合わせて上乗せ後の金額も見直す必要があります。上乗せ規定を廃止したい場合は、労働者との合意が必要となり、一方的な廃止は紛争の原因となりますので慎重な対応をお勧めします。 雇用法(法律第74/2025/QH15号、2026年1月1日施行)第34条2項により、失業保険料の算定基礎となる賃金の上限は「地域別月額最低賃金の20倍」とされています。そのため、今回の改定により上限額も自動的に上がります。 地域 2026年の上限(VND/月) 2027年1月〜の上限(VND/月) 第1地域 106,200,000 114,000,000 第2地域 94,600,000 101,600,000 第3地域 82,800,000 89,000,000 第4地域 74,000,000 80,800,000 管理職やエンジニアなど、基本給が上限を超える高所得のベトナム人従業員を多く抱える企業では、失業保険料の会社負担・本人負担がともに増える点にご注意ください。 これに対し、強制社会保険・健康保険の算定上限は、社会保険法(法律第41/2024/QH15号)上、地域別最低賃金ではなく「基準額(mức tham chiếu)」の20倍とされています。現在の基準額は2026年7月1日以降の基礎給と同額の253万ドンで、上限は5,060万ドンです。この上限は今回の政令399号では変わりません。「最低賃金が上がる=すべての保険料の上限が上がる」わけではない点は、給与担当者の方とも共有しておくと安全です。 基本給を最低賃金ぎりぎりに設定している従業員については、基本給の引き上げに伴い、社会保険・健康保険・失業保険の算定基礎、および労働組合費(社会保険算定賃金総額の2%)も連動して増加します。 労働分野の行政違反処罰を定める政令283/2026/NĐ-CP(2026年9月10日施行、旧政令12/2022/NĐ-CPに代わるもの)第23条は、最低賃金を下回る賃金の支払いに対し、違反した労働者数に応じて次の罰金を定めています。 違反対象の労働者数 個人の場合(VND) 組織(会社)の場合(VND) 1〜10人 2,000万〜3,000万 4,000万〜6,000万 11〜50人 3,000万〜5,000万 6,000万〜1億 51人以上 5,000万〜7,500万 1億〜1億5,000万 組織に対する罰金は個人の2倍とされています。罰金に加え、不足していた賃金の全額と、国営商業銀行が公表する要求払預金の最高金利で計算した利息の支払いが是正措置として命じられます。罰金額そのものよりも、従業員全員分の差額と利息を遡って支払うことになる点が、実務上の大きなリスクです。 施行まで約2か月です。2027年1月分の給与計算に間に合うよう、次の順で準備を進めることをお勧めします。 拠点ごとの地域判定:本社・支店・工場・倉庫など、すべての事業所について政令399号の付録で地域区分を確認します。区分見直しの対象となった5地方に拠点がある場合は特に入念に確認してください。 基本給の点検:手当を除いた基本給が新しい最低賃金(および上乗せ規定がある場合はその金額)を下回っていないか、従業員ごとに確認します。 賃金テーブル全体の調整:下位等級だけを引き上げると、上位等級との差が縮まり、不公平感や離職の原因になります。等級間の差をどう維持するかを含めて検討します。 書面の見直し:労働契約(付録の締結を含む)、賃金規程、労働協約、就業規則など、最低賃金に言及する社内文書を整合させます。賃金テーブルを改定した場合は、職場に公示する必要があります。 保険料の再計算とシステム設定:社会保険・健康保険・失業保険・労働組合費の算定額を再計算し、失業保険の新上限を給与システムに反映します。 取引契約の価格改定条項の確認:警備・清掃・社員食堂・人材派遣・構内請負など、人件費が中心の外注契約では、最低賃金の改定を理由とする値上げ要請が想定されます。逆に、自社がサービスを提供する側であれば、価格改定条項の有無を確認し、顧客との交渉を早めに始めることをお勧めします。 2027年度予算への反映と社内周知:日本本社への予算説明では、最低賃金そのものの上昇だけでなく、賃金テーブル全体の調整や保険料の増加を含めた総額で示すと、承認が得やすくなります。 2026年1月の平均7.2%に続き、2027年1月にも平均約7.8%の引き上げが実施されます。ベトナムでは最低賃金が毎年のように7%前後のペースで上がっていく前提で、中長期の人件費計画を立てることが現実的です。 今回は金額の改定に加え、一部地方で地域区分の見直しも行われています。「自社の拠点はどの地域か」「基本給だけで最低賃金を満たしているか」「上乗せ規定や外注契約への波及はないか」という3点を年内に確認しておくことで、施行後のトラブルを防ぐことができます。賃金規程や労働契約の見直し、地域判定でご不明な点があれば、お気軽に当事務所までご相談ください。 関連コラム ベトナム最低賃金案 2026年7.2%UP|地域別新額と企業が取るべき対応 【ベトナム労務】2024年7月1日からの最低賃金の変更について 最低賃金の区分変更へ|128/2025/NĐ-CPの要点と実務影響(2025年7月1日〜) 【資料ダウンロード】ベトナム労務Q&A 情報ソース:政令399/2026/NĐ-CP全文および付録(ベトナム政府電子情報ポータル xaydungchinhsach.chinhphu.vn、2026年11月3日掲載)/国家賃金評議会第2回会合の結果(同ポータル、2026年7月20日掲載)/内務省「2027年1月1日からの最低賃金適用地域リスト(草案)」(同ポータル、2026年9月29日掲載)/労働法(法律第45/2019/QH14号)/雇用法(法律第74/2025/QH15号)/社会保険法(法律第41/2024/QH15号)/政令283/2026/NĐ-CP/当事務所独自調査。上昇率・保険料上限額は当事務所の算出によります。 免責事項:本記事の内容は2026年11月3日時点の情報に基づいています。制度の詳細や運用は今後変更される可能性があります。個別の案件については専門家にご相談ください。
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- 2026.10.31
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ベトナム法人税30%減額(2026・2027年度)|日系子会社は対象?親子合算・注意点を整理
速報 2026年10月31日 / CastGlobal Law Vietnam ベトナムで、売上100億VND(約38万USD)以下の企業の法人税を、2026・2027年度の2年間に限り30%減額する政府令が、2026年10月29日に施行されました。日系の100%子会社も対象になり得る一方、売上の数え方や見込み違いの際の追納など、実務上の注意点もあります。本稿では、ベトナム現地の日系法律事務所の観点から、制度の背景と要点、グループ会社の扱いを整理します。 本稿のポイント 売上100億VND以下の企業・組織は、2026・2027年度の法人税額が30%減額されます。 既存の軽減税率(15%・17%)と重ねて使え、実効税率は最も低い場合で10.5%になります。 売上の判定は法人単位で、親会社やグループ会社の売上とは合算しません。 判定に使う売上には金融収益やその他の収入も含まれ、見込みが外れた場合は追納が必要です。 今回の減税は、2段階で制度が整いました。まず、法人・個人の所得税減税に関する国会決議(国会決議 43/2026/QH16、2026/8/24)で枠組みが決まりました。その細則を定める政府令(政府令 398/2026/NĐ-CP、2026/10/29)が施行されたことで、実際の申告に反映できる状態になりました。 項目 内容 対象 ベトナム法に基づき設立された企業、協同組合、公的事業単位、その他の組織 売上要件 各年度の年間売上が100億VND(約38万USD)以下 減額の内容 納付すべき法人税「額」の30%(税率の引下げではありません) 対象年度 2026年度・2027年度(2026年度は年度全体に適用) 適用方法 四半期の予定納付の段階で、会社が自ら減額を計算 なお、同じ国会決議・政府令で、売上100億VND以下の個人事業主の所得税も30%減額されています。本稿では、法人税の部分を中心に解説します。 2026年は、国際的な紛争の影響で燃料価格が高騰しました。政府はガソリン等にかかる税を引き下げるなど、物価対策を重ねてきました。6月には、法人税・付加価値税・個人所得税・土地賃料の納付期限を延長する措置もとられています(政府令 245/2026/NĐ-CP、2026/6/27)。 納付期限の延長は資金繰りを助けますが、最終的な税負担は変わりません。今回の30%減額は、税額そのものを減らすもので、支援を一段進めた形といえます。財務大臣は国会で、小規模事業者の困難を和らげて生産・事業を安定させるとともに、インフレ抑制とマクロ経済の安定にもつなげると説明しています。 政府は、VCCI(ベトナム商工会議所)などが行った調査で、売上規模がごく小さい事業者ほど苦境にあり、耐える力も弱いことが示されたとしています。そこで、対象を売上100億VND以下に絞りました。税収減は、2年間で約6.7兆VND(約2.55億USD)と見込まれています。 当初は10月の国会会期で審議する予定でしたが、これを前倒しし、8月の臨時会で出席議員481人中480人の賛成により可決されました。国会決議は成立と同時に施行されています。 当事務所の見方 制度の主眼は、個人事業主と零細企業の支援です。日系子会社が対象に入るのは、副次的な効果と思われます。後述のとおり、外資子会社の扱いについて細かな定めがないことも、この制度設計から理解できます。 ベトナムでは、法人所得税法(Law 67/2025/QH15)により、年間総売上30億VND以下の企業に15%、30億VND超500億VND以下の企業に17%の軽減税率が適用されています(標準税率は20%)。 今回の30%減額は、税率ではなく「税額」を減らす仕組みです。そのため、軽減税率と重ねて使えます。30%減額後の実効税率は、次のとおりです。 区分(年間総売上) 適用税率 30%減額後の実効税率 30億VND以下 15% 10.5% 30億VND超〜100億VND以下 17% 11.9% 100億VND以下だが、関連会社要件により標準税率が適用される会社 20% 14% 他の優遇税制を受けている会社は、優遇分を控除した後の税額に30%減額をかけます。また、減額の対象となる税額は、キャピタルゲインなど法人所得税法第18条3項の所得を含む、その年度の全所得にかかる税額です(政府令 398/2026/NĐ-CP 第3条2項)。 対象は「ベトナム法に基づき設立された企業・組織」です。ベトナムで設立した日系の100%子会社も、これに当たります。一方、駐在員事務所や、外国契約者税(FCT)で課税される外国法人は、ベトナム法に基づき設立された組織ではないため、対象外と考えられます。 売上100億VND以下かどうかは、法人ごとに判定します。同じ法人の支店・事業所の売上は、年次の合算財務諸表に基づき合算します(政府令 398/2026/NĐ-CP 第3条3項b)。しかし、親会社や兄弟会社など、別法人であるグループ会社の売上と合算する規定はありません。 したがって、日本の親会社の売上が大きくても、ベトナム子会社が単独で100億VND以下であれば、条文上は対象になります。ベトナム国内に複数の子会社がある場合も、それぞれ単独で判定します。 15%・17%の軽減税率には、「ベトナム法人である子会社・関連会社で、関連する企業が要件を満たさない場合は適用しない」という除外規定があります(法人所得税法施行政府令(政府令 320/2025/NĐ-CP、2025/12/15)第11条4項c)。税務当局も、この除外規定は関連会社が要件を満たさない場合に限られると回答しています。 一方、30%減額には同様の除外規定がありません。そのため、大手グループの小規模なベトナム子会社では、次のような状態が生じます。 軽減税率(15%・17%)は、関連会社の除外規定により使えず、税率は20%のまま ただし30%減額は受けられるため、実効税率は14% 例外として、2026年8月24日(国会決議の施行日)より後に、会社の分割(chia)・分離(tách)によってできた会社は、分割・分離後の全社の売上を合計して判定します。合計が100億VNDを超えれば、どの会社も減額を受けられません(政府令 398/2026/NĐ-CP 第3条1項・3項c)。 条文上は、「分割・分離」ではなく別会社を新たに設立して事業を分けた場合を直接とらえる規定はありません。しかし、国会審議の段階で、売上の分割・付け替えを防ぐ手立てを政府に求める意見が出ています。また、関連会社間の取引には移転価格規制がかかり、売上を付け替えれば移転価格の調査リスクが生じます。100億VNDは約38万USDにすぎず、節税額に対して再編の手間とリスクが見合わないと考えます。 判定に使う売上には、本業の売上(売上控除後)に加えて、金融収益とその他の収入が含まれます(政府令 398/2026/NĐ-CP 第3条3項)。本業が小さくても、為替差益、預金利息、固定資産の売却益などで100億VNDを超えることがあります。清算前の資産売却や不動産の処分を予定している会社は、特に注意が必要です。 日系子会社に多い4月〜3月の事業年度で、どの期間が「2026年度」「2027年度」に当たるかは、政府令に明記がありません。現時点では不明確なため、所轄の税務当局に事前に確認されることをお勧めします。 実際の売上が100億VNDを超えた場合は、減額分を含む不足額を納付します。個人事業主については、一定期限までは延滞金を課さないと明記されています。一方、法人にはその明文がなく、延滞金の扱いは税務管理法の施行政府令(政府令 252/2026/NĐ-CP)第24条3項に委ねられています。見込み違いのリスクは、法人の方が重いといえます。 政府令の施行は10月29日で、第3四半期の予定納付期限(10月30日)の前日でした。実務上は、第4四半期の予定納付か、年次の確定申告(12月決算の場合は2027年3月末まで)で反映するのが現実的です。 実効税率14%は15%を下回ります。グローバル・ミニマム課税の対象となる大規模グループ(連結売上7.5億ユーロ以上)は、ベトナムの国内ミニマム課税(国会決議 107/2023/QH15、2023/11/29)との関係も確認しておくとよいでしょう。ベトナム国内のグループ全体の売上・利益が小さければ、少額除外が使える可能性が高く、多くの場合は実害はないと思われます。 各子会社の2026・2027年度の売上見込みを、金融収益・その他の収入も含めて確認する 売上100億VND前後の会社は、予定納付の段階では減額せず、確定申告で反映する 暦年でない事業年度の会社は、どの期間が対象年度に当たるかを税務当局に事前確認する 減額だけを目的としたグループ再編は避ける
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- 2026.10.23
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【重要】Beneficial Owner(BO)情報の速やかな申告の推奨
最近、財務省は公文第13767/BTC-DNTN号を発出し、省級事業登録機関に対して、年末の4か月間に企業のBOに関する事項を重点的に検査するよう要求するとともに、公文書第3164/DNTN-GS号で、2025年7月1日から現在までに設立または変更登録を行ったものの、BOに関する申告情報がない企業のリスト(以下「2025年7月1日以降に変更したもののBO未申告の企業リスト」といいます。)を作成しました。これは、地方当局がBO情報の申告に関する規定の遵守状況を優先的に検査すべき企業のリストです。 詳細なリストは、THƯ VIỆN PHÁP LUẬT(ベトナム法令データベース)の掲載ページをご参照ください。 本稿では、BOに関する法律規定の概要、及びBO申告に関する規定を遵守するために企業が行うべき手続についてご説明いたします。 2025年改正企業法第1条1項d号によれば、BOとは、企業の定款資本を実質的に所有する、または企業に対する支配権を有する個人をいいます。BOを特定するにあたり、企業は以下の基準に基づきます。 (i) 所有基準:直接もしくは間接に、または直接及び間接の双方により、定款資本/議決権付株式総数の25%以上を所有する個人。 本基準(i)を満たす個人がいない場合、企業は次の基準(ii)を検討します。 (ii) 実質的支配基準:法令の定めに従い、企業の一定の事項について支配権を有する個人。 (iii) 経営責任基準:上記基準(i)、(ii)を満たす個人がいない場合、企業は、企業を代表して行動する最大の権限を有する企業の管理者である個人1名をBOとして特定し、申告します。 2026年7月23日より前に有効であった規定では、企業にBOが存在しない場合もありました。しかし、現行規定においては、2026年7月23日以降、すべての企業に少なくとも1名のBOが存在するものと理解できます。 BOの特定方法の詳細については、2026年7月23日施行の政令第296/2026/NĐ-CP号第3条の規定をご参照ください。 BO情報の申告には、初回申告と、申告済みBO情報に変更があった場合の通知が含まれます。 ① 初回申告(2025年改正企業法第3条第1項参照) 2025年7月1日以降に設立された企業:企業設立時に、企業設立登録書類とともにBO情報を申告します。 2025年7月1日より前に設立登録された企業:直近の企業登録内容の変更登録/変更通知手続(以下「企業情報変更手続」といいます。)を行う際に併せてBO情報を申告します。また、企業が希望する場合は、それより早く申告することも可能です。 ② 申告済みBO情報の変更通知:変更が生じた日から10日以内(政令第168/2025/ND-CP号第52条1項ご参照)。 申請書類: 企業登録内容変更通知書(通達第121/2026/TT-BTC号 Template No.12) 企業のBOリスト(通達第121/2026/TT-BTC号 Template No.10) 申請方法:国家企業登録ポータル(dangkykinhdoanh.gov.vn)にてオンラインで行います。操作方法は、企業情報変更手続を行う場合と同様です。 (政令第288/2026/NĐ-CP号第2条ご参照) 違反行為 罰金 直近の企業情報変更手続を行う際にBO情報を申告しなかった場合 7,000万ドン以上1億ドン以下 BO情報に変更が生じたにもかかわらず、申告済みBO情報の変更通知が遅延した、または通知しなかった場合 遅延期間に応じて1,000万ドン以上7,000万ドン以下 ① 企業が「BOなし」と申告していた場合 2025年7月1日以降、企業が企業情報変更手続を行う際、一部の省・市の事業登録機関はBOに関する申告を企業に求めていました。そして、当該時点でBOが存在しないと企業が判断した場合、当局は通常「BOなし」と明記するよう求めていました。 しかし、過去に企業が「BOなし」と申告したことは、BOに関する申告を行ったものと判断される可能性があります。 上記1.で分析したとおり、新規定により、2026年7月23日以降、すべての企業に少なくとも1名のBOが存在することになったと考えられるため、企業は、新規定に基づきBOが存在することとなった時点(2026年7月23日)から10日以内に、BO情報を「BOなし」から「BOあり」に変更通知手続を行い、具体的なBO情報を申告しなければならなかったと解釈される可能性があります。 そのため、罰則を受けるリスクを最小限に抑えるため、申告済みBO情報の変更通知手続を速やかに行うことを推奨いたします。現在、各省・市の財務局はBO申告に関する指導公文を発出しており、検査・処罰を行う前に、企業が補充手続を行うための一定の期間を設けています。企業は、地方財務局の通知を自主的に確認し、適切に対応することをお勧めします。 ② 2025年7月1日から2026年7月23日より前までの間に企業情報変更手続を行い、BOに関する申告をしなかった場合 手続実施時点において、旧法令上BOが存在せず、BOに関する事項を一切申告しなかった場合、法的な問題はありません。 なお、新法令により、2026年7月23日以降、企業には必ず少なくとも1名のBOが存在するため、次回の企業情報変更手続を行う際に、BOの初回申告を行うようご留意ください。 ③ 2026年7月23日以降に企業情報変更手続を行い、BOに関する申告をしなかった場合 上記1.でご説明したとおり、2026年7月23日以降、企業には少なくとも1名のBOが存在し、企業情報変更手続を行う際に初回申告をしなければなりません。当該申告を漏らしていた場合は、罰則を回避するため、速やかに補充申告を行う必要があります。 新法令により、2026年7月23日以降、企業には必ず少なくとも1名のBOが存在するため、次回の企業情報変更手続を行う際に、BOの初回申告を行うようご留意ください。 BO情報の特定には、企業の資本構成及び権限構造について明確かつ具体的な理解が必要となるため、各企業の担当者の方には自ら主体的に社内確認を行い、BOを特定した上で、法令に従って申告することを推奨いたします。弊所によるサポートをご希望の場合は、お気軽にご連絡ください。 関連コラムは以下。 ベトナム受益所有者(BO)規制改正|政令296の三段階基準と罰則強化
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- 2026.10.20
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このたび、株式会社スタディストが運営する生産性向上の専門メディア「リンオペ」に、当事務所代表弁護士・工藤拓人による寄稿記事が掲載されました。 リンオペ|ASEAN・海外展開|寄稿記事(2026年10月19日公開) ベトナム商標制度の基礎 日本法との違いから見る出願・登録と権利保護 執筆:工藤 拓人(CastGlobal Law Vietnam Co., Ltd. 代表弁護士) 記事を読む(外部サイト) › 本記事では、ベトナム知的財産法に基づき、商標の出願・登録から権利保護までの基本的な制度を、日本の商標法との比較を交えて解説しています。主なトピックは以下のとおりです。 商標権の発生と保護要件(識別力、不登録事由など) 出願人の範囲と出願から登録までの流れ 存続期間の起算点(日本法との違い)と期限管理上の注意点 権利の内容と侵害行為の類型 不使用取消しその他の取消し事由 譲渡・ライセンスの要件と登録の効力 民事・行政・刑事によるエンフォースメント ベトナムへの進出や現地での事業展開を検討されている企業の皆様にとって、商標戦略を考えるうえでの基礎資料としてご活用いただければ幸いです。 当事務所では、ベトナムにおける商標出願・登録、模倣品対策、ライセンス契約の作成・レビューなど、知的財産に関するご相談を日本人弁護士とベトナム人弁護士が連携してお受けしております。お気軽にお問い合わせください。
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- 2026.10.13
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【ベトナム】2027年の祝日・休日一覧|年間6回・法定12日と実務対応
速報 2026年10月13日 / CastGlobal Law Vietnam 2027年のベトナムの祝日・休日が出そろいました。政府官房公文10065/VPCP-KGVX(2026年10月2日付)と内務省通知11483/TB-BNV(2026年10月9日付)により、テトと国慶節の日程が確定しています。現地では「年間6回・計22日」と報じられていますが、これは週末や振替休日を含めた公的機関ベースの日数です。本コラムでは、ベトナム現地の日系法律事務所の観点から、法定の祝日12日の内訳、民間企業での日程の組み方、振替休日・割増賃金・契約上の期限への影響を整理します。 本稿のポイント 2027年の法定祝日は12日(2026年に新設された「ベトナム文化の日」を含む)。報道の「22日」は、週末と振替休日を含めた公的機関の休暇日数です。 テトは公的機関が2月4日(木)〜2月10日(水)の7連休。民間企業は「1+4」「2+3」「3+2」の3パターンから選択します。 5月1日(メーデー)が土曜日のため、土日休みの会社では5月3日(月)が振替休日となり、4/30〜5/3の4連休となります。 国慶節は公的機関が9月2日(木)〜9月5日(日)の4連休。民間企業は9/2に加え9/1か9/3を選択します。 休日は契約上の期限計算にも影響します。テト前後に期限が来る契約・行政手続は早めの確認をお勧めします。 労働法(法律番号45/2019/QH14、2021年1月1日施行)第112条1項は、労働者が就労せず賃金全額を受ける祝日を定めています。2026年からは、文化発展に関する国会決議(国会決議28/2026/QH16、2026年7月1日施行)により、11月24日の「ベトナム文化の日」が加わりました。2027年の暦に当てはめると、以下のとおりです。 祝日 法定日(2027年) 法定日数 公的機関の休暇期間(週末・振替含む) 太陽暦の元日 1月1日(金) 1日 1/1(金)〜1/3(日)3日 テト(旧正月) 元日は2月6日(土) 5日 2/4(木)〜2/10(水)7日(振替2日を含む) フンヴオン王の命日(旧暦3月10日) 4月16日(金) 1日 4/16(金)〜4/18(日)3日 南部解放記念日・メーデー 4月30日(金)・5月1日(土) 2日 4/30(金)〜5/3(月)4日(振替1日を含む) 国慶節 9月2日(木)+9月3日(金) 2日 9/2(木)〜9/5(日)4日 ベトナム文化の日 11月24日(水) 1日 11/24(水)1日 合計 12日 22日 「22日」の読み方に注意 現地報道の「22日」は、法定祝日12日に、連続する週末と振替休日を足した公的機関の休暇日数です。賃金全額で休める法定の祝日は12日であり、土日休みの会社では、これに週休日との重複による振替休日3日(テト2日・メーデー1日)が加わります。 人事・給与担当の方は、社内カレンダーや予算(稼働日数)の計算で「22日」をそのまま使わないようご注意ください。 1日のみの祝日です。土日休みの会社は1/1〜1/3の3連休となります。年末年始の追加休暇を設ける場合は、年次有給休暇の計画付与や会社独自の特別休暇として整理します。 内務省通知11483/TB-BNVにより、民間企業は次の3パターンから選択できます。使用者は選択した日程を少なくとも30日前までに労働者へ通知する必要があり、公的機関と同じ日程の採用が推奨されています。 パターン 法定5日 振替休日(土日休みの場合) 連続休暇 年末2日+年始3日【推奨】 2/4(木)〜2/8(月) 2/9(火)・2/10(水) 2/4〜2/10(公的機関と同一) 年末1日+年始4日 2/5(金)〜2/9(火) 2/10(水)・2/11(木) 2/5〜2/11 年末3日+年始2日 2/3(水)〜2/7(日) 2/8(月)・2/9(火) 2/3〜2/9 詳しくは【ベトナム】2027年のテト休暇|公的機関・民間の休暇日程と実務対応をご覧ください。 旧暦3月10日にあたる祝日で、2027年は金曜日です。土日休みの会社は4/16〜4/18の3連休となります。 2027年は5月1日が土曜日にあたります。週休日が祝日と重なった場合、労働者は次の勤務日に振替休日を取得するため(労働法第111条3項)、土日休みの会社では5月3日(月)が振替休日となり、4/30〜5/3の4連休です。一方、土曜日が勤務日(日曜のみ休み)の工場等では、5月1日は通常の祝日として休むだけで、振替休日は生じません。 法定2日のうち1日は9月2日に固定され、もう1日は前後いずれかとされています(労働法第112条1項đ号)。公的機関は9/2(木)・9/3(金)を休日とし、週末と合わせて9/2〜9/5の4連休です。民間企業は、内務省通知に基づき9/1(水)または9/3(金)のいずれかを選択します。土日休みの会社であれば、9/3を選ぶことで4連休を確保できます。 2026年に新設された祝日で、2027年は水曜日の1日のみです。国会決議28/2026/QH16が根拠となっており、労働法第112条に明記する改正は審議段階と報じられています。法改正の動向によっては細部の扱いが変わる可能性があるため、本稿では最新の動きを確認次第、更新します。 ベトナムで労働契約を締結して就労する外国人労働者には、上記12日に加えて、自国の伝統的な旧正月1日と、自国の国家の独立記念日(建国記念日)1日の休日が認められています(労働法第112条2項)。 日本人の場合、どの日を充てるかは法令上明確ではなく、会社ごとに運用が分かれています。日本の正月(1月1日)はベトナムの祝日と重なるため、たとえば1月2日を充てる、建国記念の日(2月11日)を充てるなどの考え方があり得ます。2027年は2月11日が木曜日で、テト明けと近接しますので、テト休暇と連続させるかどうかも含め、就業規則や労働契約で具体的な日付を定めておくことをお勧めします。 祝日・テト当日の勤務:少なくとも300%。日給制の労働者には、これとは別に祝日分の賃金が支払われます(労働法第98条1項c号)。 週休日の勤務:少なくとも200%(同条1項b号)。振替休日に勤務させた場合の割増率は明文がありませんが、週休日扱いとして200%以上とする解釈が一般的です。 夜間勤務(22時〜翌6時):さらに30%以上、夜間の時間外勤務はさらに20%を加算(同条2項・3項)。 振替休日の特定:社内通知で「どの日が振替休日か」を明記しておくと、出勤させた場合の割増率をめぐる争いを防ぎやすくなります。 祝日の情報は人事部門だけのものではありません。民法(法律番号91/2015/QH13、2017年1月1日施行)第148条5項は、期間の末日が週末または祝日にあたるときは、その後の最初の勤務日の終了時に期間が満了すると定めています。契約書で「営業日」「暦日」の定義が曖昧だと、支払期限や通知期限がテト明けにずれ込み、相手方との認識が食い違うことがあります。 契約書:「営業日」の定義(ベトナムの祝日か、日本の祝日も含むか)を明記する。テト前後に期限が来る支払・納品・通知条項を年初に洗い出す。 行政手続:投資登録・企業登録の変更、労働許可証の更新などは、テト前と4月末〜5月初に申請が集中しやすいため、1か月程度の余裕を持って申請する。 年休の計画付与:使用者は労働者の意見を聴いたうえで年次休暇の取得計画を定め、事前に通知する責任があります(労働法第113条4項)。4/16(フンヴオン王の命日)〜5/3は、間の平日に年休を組み合わせると長期休暇を設計しやすい期間です。 稼働計画:工場では、2月と4月末〜5月初に稼働日が大きく減ります。受注・出荷計画や日本本社への報告スケジュールに早めに反映してください。 2026年11月中:ベトナム文化の日(2026/11/24・火)の休日を社内に周知する。 2026年12月中:テトの休暇パターンを決定し、法定休日と振替休日の日付を明記して通知する(遅くとも2027年1月5日頃まで)。 2027年3月中:4/30〜5/3の連休と振替休日(5/3)を周知する。 2027年7月末まで:国慶節で9/1か9/3のどちらを休日にするかを決定し、30日前までに通知する(遅くとも8月2日(月)頃まで)。 通年:外国人労働者の追加休日2日の扱いを就業規則で確定させる。契約の「営業日」定義を点検する。 就業規則の改定、外国人の休日の定め方、契約上の期限条項の見直しについては、労務Q&A資料もご参照のうえ、お気軽に当事務所へご相談ください。
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- 2026.10.03
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【ベトナム】2027年のテト休暇はどうなる?|公的機関・民間の休暇日程と実務対応
速報 2026年10月3日(最終更新:2026年10月13日) / CastGlobal Law Vietnam 【更新】2026年10月13日 内務省が通知11483/TB-BNV(2026年10月9日付)を発出し、公的機関の日程(2/4〜2/10の7連休)とあわせて、民間企業は「年末1日+年始4日」「年末2日+年始3日」「年末3日+年始2日」の3パターンから選択できることが確定しました。また、使用者には少なくとも30日前の通知が求められ、公的機関と同じ日程の採用が推奨されています。本文の該当箇所を更新しました。2027年の祝日全体(年間6回・計22日)は2027年のベトナムの祝日・休日一覧をご覧ください。 ベトナム政府官房は、公文10065/VPCP-KGVX(2026年10月2日付)により、2027年のテト(旧正月)休暇を公的機関について2027年2月4日(木)〜2月10日(水)の7連休とすることを通知しました。2027年は旧暦元日が土曜日にあたるため、2026年(9連休)より短い日程です。本コラムでは、ベトナム現地の日系法律事務所の観点から、公的機関の確定日程、民間企業の休暇設定パターン、割増賃金・振替休日の考え方、金融・物流面の実務対応を整理します。 本稿のポイント 公的機関:2027年2月4日(木)〜2月10日(水)の7連休(旧暦12月28日〜正月5日)。法定5日+振替休日2日の構成です。 2027年のテト元日は2月6日(土)。旧暦12月は29日までのため、2026年に続き「30テト」はありません。 民間企業:内務省通知11483/TB-BNV(2026年10月9日付)により、法定5日を3パターン(1+4/2+3/3+2)から選択。土日休みの会社は、元日・2日目が週休日と重なるため振替休日2日が加わり、実質7連休となるのが基本形です。 当事務所の推奨は、公的機関・銀行と日程が揃う「年末2日+年始3日」(2/4〜2/10)。従業員への通知は遅くとも2027年1月5日(火)頃まで(30日前)に。 ベトナムのテト(Tết Âm lịch)は太陰暦で定まり、労働法上5日間の有給の祝日とされています(労働法(法律番号45/2019/QH14、2021年1月1日施行)第112条1項b号)。2027年は丙午(Bính Ngọ)年から丁未(Đinh Mùi)年への年替わりで、太陽暦との対応は以下のとおりです。 太陽暦(2027年) 旧暦 備考 2月3日(水) 12月27日 公的機関は通常勤務(休暇前最終営業日) 2月4日(木) 12月28日 公的機関の休暇初日 2月5日(金) 12月29日 大晦日(Giao thừa)※「30テト」なし 2月6日(土) 1月1日 元日(Mùng 1)・週休日と重複 2月7日(日) 1月2日 週休日と重複 2月8日(月) 1月3日 2月9日(火) 1月4日 公的機関は振替休日 2月10日(水) 1月5日 公的機関は振替休日(休暇最終日) 2月11日(木) 1月6日 公的機関の仕事始め 内務省の上申書(10033/TTr-BNV(2026年9月11日付)および10137/TTr-BNV(2026年9月14日付))を受け、ファム・ティ・タイン・チャー(Phạm Thị Thanh Trà)副首相が同省の提案を承認し、政府官房が公文10065/VPCP-KGVX(2026年10月2日付)でこれを通知しました。 【確定情報】 通知文書:政府官房公文 10065/VPCP-KGVX(2026年10月2日付) 公的機関の休暇期間:2027年2月4日(木)〜2月10日(水)の7日間 該当する旧暦:丙午年12月28日〜丁未年正月5日 内訳:法定5日(年末2日+年始3日)+週休日(2/6土・2/7日)との重複による振替休日2日(2/9火・2/10水) なお、内務省は当初、「年末1日+年始4日」としたうえで2月12日(金)の勤務日を2月27日(土)と入れ替え、2月5日〜14日の10連休とする案も併せて意見照会していましたが、最終的には休暇前の準備期間を確保しやすい7連休案が採用されました。教育機関や一部の行政サービスは、各省・市の個別決定で運用が異なる場合がありますので、所在地の人民委員会や所管官庁の告知もご確認ください。 労働法第112条3項により、テトの具体的な休日は毎年首相が決定し、民間企業は法定5日を旧暦の「年末○日+年始○日」に配分して設定します。また、週休日が祝日・テトと重なった場合、労働者は次の勤務日に振替休日を取得します(同法第111条3項)。 内務省は通知11483/TB-BNV(2026年10月9日付)で、民間企業について次の3パターンからの選択を認めました。あわせて、使用者は選択した日程を少なくとも30日前までに労働者へ通知すること、また公的機関と同じ日程を採用し、労働者に有利な取決めを行うことが推奨されています。 年末1日+年始4日 年末2日+年始3日(公的機関と同じ) 年末3日+年始2日 パターン 法定5日 振替休日 連続休暇/仕事始め 年末2日+年始3日【推奨】 2/4(木)〜2/8(月) 2/9(火)・2/10(水) 2/4〜2/10の7連休/2/11(木)〜。公的機関と同一 年末1日+年始4日 2/5(金)〜2/9(火) 2/10(水)・2/11(木) 2/5〜2/11の7連休/2/12(金)の1日だけ出勤して週末へ 年末3日+年始2日 2/3(水)〜2/7(日) 2/8(月)・2/9(火) 2/3〜2/9の7連休/2/10(水・旧暦正月5日)〜 どのパターンでも合計は7日間ですが、取引先の官公庁・銀行と休暇が揃う「年末2日+年始3日」が、手続の停滞や連絡の行き違いを最も起こしにくいと考えます。「年末1日+年始4日」は2026年に多くの企業が採用した形ですが、2027年は休暇明けが金曜日1日だけとなる点に留意が必要です。 土曜日が勤務日の会社では、週休日と重なるのは2/7(日)の1日のみのため、振替休日は1日となり、連続休暇は6日間が基本です(例:年末2日+年始3日なら2/4〜2/9)。シフト制・交替勤務の職場では、各労働者の週休日ごとに振替休日の有無が変わりますので、個別に勤務表で確認してください。 発想を変えた休暇設計:年次有給休暇の計画付与 2027年は「7連休+数日の平日」が残る暦のため、年次有給休暇を組み合わせると長期休暇を設計しやすい年です。例えば「年末2日+年始3日」に2/11(木)・2/12(金)の年休を加えると2/4〜2/14の11連休、「年末1日+年始4日」に2/12(金)の年休を加えると2/5〜2/14の10連休となります。帰省距離の長い地方出身の従業員が多い工場では、テト明けの欠勤・離職対策としても有効です。 使用者は労働者の意見を聴いたうえで年次休暇の取得計画を定め、事前に通知する責任があります(労働法第113条4項)。他方、民間企業が土曜日等との「勤務日の入れ替え(振替出勤)」を行う方法については法令上の明文がなく、手続が不十分だと振替出勤日が週休日労働(割増200%以上)と評価されるおそれがあります。実施する場合は、就業規則・労働契約との整合を確認し、労働者の同意と事前通知を書面で残すことを推奨します。 少なくとも30日前までに従業員へ休暇計画を通知(内務省通知11483/TB-BNV)。2/4開始なら遅くとも2027年1月5日(火)頃までですが、帰省の交通手配を考えると12月中の周知が望ましいです。 社内通知には、法定休日と振替休日の日付を明記してください(「どの日が振替か」が曖昧だと、出勤させた場合の割増率で争いになりやすいためです)。 工場・24時間稼働の拠点は、交替勤務の体制図・呼出し規程・緊急連絡網を更新し、休日出勤者の割増賃金の計算方法を事前に給与担当と確認してください。 テト賞与(いわゆる13か月目給与)は法令上の義務ではなく、労働契約・就業規則・労働協約の定め次第です。支給条件の定めがある場合はその条件どおりに運用してください。 同じ公文10065/VPCP-KGVXでは、テトのほか以下の休日も承認されています。特に「ベトナム文化の日」は2026年に新設された祝日ですので、年末の勤務計画にご注意ください。 ベトナム文化の日:2026年11月24日(火)の1日。文化発展に関する国会決議(国会決議28/2026/QH16、2026年7月1日施行)により、毎年11月24日は労働者が就労を免除され賃金全額を受ける日とされました。民間企業も対象です。なお、同日を労働法第112条に明記する改正案が審議されている段階です。 太陽暦の元日:2027年1月1日(金)。土日休みの会社は1/1〜1/3の3連休となります。 国慶節(2027年9月2日・木):公的機関は9/2(木)〜9/5(日)の4連休(法定2日+週末)。民間企業は9/2に加え、9/1(水)または9/3(金)のいずれか1日を選択します(同通知)。9/3を選べば土日休みの会社は4連休です。 銀行:国家銀行(SBV)の通知と各行の営業案内に連動します。公的機関の休暇前最終営業日は2月3日(水)となるため、給与・テト賞与の振込、外貨送金、信用状(L/C)決済は1月末〜2月2日頃までの前倒しをご検討ください。 証券取引所(HOSE/HNX):政府の休日日程に合わせて休場となるのが通例です。配当・権利確定・受渡(T+2)の日程は各取引所・証券会社の告知をご確認ください。 税関・物流:電子通関システム自体は稼働していても、現場の人員対応は限定的になりがちです。D/O切替、CYカット、港湾ゲートの締切は各オペレーターの告知を必ず確認してください。 許認可・登記:投資登録・企業登録、労働許可証の更新など行政手続は休暇前後に申請が集中します。期限が2月中旬に到来する案件は、1月中の申請完了を目安に逆算してください。 祝日・テトの勤務には少なくとも300%の賃金を支払う必要があります。日給制の労働者には、これとは別に祝日分の賃金が支払われます(労働法第98条1項c号)。夜間(22時〜翌6時)の勤務はさらに30%以上、夜間の時間外勤務はさらに20%の加算が必要です(同条2項・3項)。 振替休日は「週休日の振替」であるため、週休日の勤務として少なくとも200%(同法第98条1項b号)とする解釈が一般的です。ただし、振替休日の勤務の割増率を正面から定めた明文規定はないため、当事務所では、トラブル防止の観点から、社内通知で振替日を特定したうえで、割増率の扱いを就業規則等で明確にしておくことを推奨しています。 ベトナムで労働契約を締結して就労する外国人労働者には、テト5日に加えて、自国の伝統的な旧正月1日と国家の独立記念日1日の休日が認められています(同法第112条2項)。日本人の場合の扱いは会社ごとに整理が分かれますので、就業規則で明確にしておくと安心です。 内務省通知11483/TB-BNV(2026年10月9日付)により、使用者は選択した休暇日程を少なくとも30日前までに労働者へ通知することとされています。2027年は2月4日開始の場合、遅くとも1月5日頃までの通知が必要です。 2027年のテトは、元日が土曜日にあたるため振替休日の扱いが例年以上に重要になります。①内務省通知の3パターンから自社の日程を決める、②原則として公的機関と同じ「年末2日+年始3日」(2/4〜2/10)を採用する、③振替休日の日付と出勤時の割増率を社内通知・就業規則で明確にする、④12月中に従業員へ周知し、金融・通関手続は1月中に前倒しする、という順序で準備を進めることをお勧めします。就業規則の改定や年休の計画付与、テト賞与の設計については、労務Q&A資料もご参照のうえ、お気軽に当事務所へご相談ください。 過去のテト休暇の運用は、以下のコラムもご参照ください。 【ベトナム】2026年のテト休暇|公的機関・民間の休暇日程と実務対応 【ベトナム】2025年のテト休暇(Tet Holidays)について
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- 2026.09.04
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ベトナム個人データ保護法の対応支援サービス|書類作成から公安省への提出まで
2026年1月1日、個人データ保護法(法律91/2025/QH15号、2026年1月1日施行)と、その細則を定める政府令356/2025/NĐ-CP号(2026年1月1日施行)が施行されました。ベトナム法人には、公安省への影響評価書類の提出をはじめとする具体的な手続義務が生じています。本稿では、当事務所の対応支援サービスの内容をご案内します。 本稿は当事務所のサービス内容に絞ってご説明します。法令そのものの内容や、違反した場合の制裁金の水準については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。 関連記事 ベトナム個人データ保護法の全体像|法律91/2025/QH15号の内容を解説 個人データ保護法違反の罰則|売上高連動型の制裁金と実務上の留意点 ベトナムに拠点を持つ日系企業の多くは、従業員データ、顧客データ、取引先担当者の連絡先を日常的に取り扱い、さらにこれらを日本の親会社やグループ会社のシステムに送信しています。この時点で、個人データ処理影響評価(DPIA)と越境個人データ移転影響評価(TIA)の双方が必要となる可能性がございます。その他の対応事項を含めた主な期限は次のとおりです。 対応項目 提出書類・対応内容 期限 個人データ処理影響評価(DPIA) 影響評価報告書を、公安省サイバーセキュリティ・ハイテク犯罪防止局(A05)へ提出 個人データの処理を開始した日から60日以内 越境個人データ移転影響評価(TIA) 越境移転影響評価報告書をA05へ提出。日本の親会社へのデータ送信や海外クラウドの利用が対象となり得ます 越境移転を開始した日から60日以内 社内規程・同意取得書式 個人データの安全管理措置を定めた社内規程と、データ主体からの同意取得書式の整備(個人データの保管、削除、廃棄、安全管理措置その他関連する個人データ保護規定を含む) 処理開始前に整備 担当部署・担当者(DPO)の選任 担当部署・人員の指定または外部サービスの起用 影響評価書類の提出時までに選任し、社内決定書を整備 契約面の手当て 親会社・グループ会社との間、および顧客・との間の合意書・条項の整備 既存契約の棚卸しと順次改定 なお、小規模企業等については、施行日から5年間、影響評価、DPO選任等の一定の義務を実施するか否かを選択できる特例が設けられています。ただし、個人データ処理サービスを事業として行う企業、センシティブな個人データを直接取り扱う企業、大量のデータ主体の個人データを処理する企業は対象外です。自社が特例の対象となるかは、事業内容とデータの取扱状況に即した個別の検討が必要です。 当事務所では、影響評価書類の作成・提出から、社内規程・契約書類の整備まで、一連の対応を日本語またはベトナム語でご案内しながらワンストップでお引き受けします。ご依頼は下記のパッケージ単位でも、必要な項目のみの単発でも承ります。 No. 書類 様式 業務範囲 1 個人データ処理影響評価報告書 政令356/2025/NĐ-CP号 様式第10号 申請書類の作成、公安省への提出、および公安省における審査・処理状況のフォロー 2 個人データ処理影響評価書類の提出通知書 政令356/2025/NĐ-CP号 様式第02a号 同上 No. 書類 様式 業務範囲 3 越境個人データ移転影響評価報告書 政令356/2025/NĐ-CP号 様式第09号 申請書類の作成、公安省への提出、および公安省における審査・処理状況のフォロー 4 越境個人データ移転影響評価書類の提出通知書(法人向け) 政令356/2025/NĐ-CP号 様式第01a号 同上 No. 書類 様式 業務範囲 5 個人データ保護に関する社内規程/ポリシー(個人データの保管、削除、廃棄、安全管理措置その他関連する個人データ保護規定を含む) 法定様式なし 書類の作成またはレビュー 6 データ主体による個人データ処理への同意書のテンプレート 法定様式なし 書類の作成またはレビュー 7 個人データ保護担当部署・担当者の選任・任命に関する会社決定書、および担当者の実務経験に関する会社確認書 法定様式なし 書類の作成またはレビュー 8 個人データの取扱いに関する外国法人(親会社等)との間の合意書 法定様式なし 書類の作成またはレビュー 9 個人データの取扱いに関する貴社と顧客/サプライヤー/取引先との間の合意書 法定様式なし 書類の作成またはレビュー 「自社に提出義務があるのか分からない」「日本の親会社へのデータ送信が越境移転に当たるのか確認したい」といった入口のご相談から承ります。現状をお伺いしたうえで、必要な対応の範囲とスケジュール、お見積りをご提示します。制度そのものの内容や制裁金の水準については、個人データ保護法の解説記事および罰則の解説記事もあわせてご参照ください。 免責事項: 本記事の内容は2026年9月4日時点の情報に基づいています。制度の詳細は今後変更される可能性があります。個別の案件については専門家にご相談ください。
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- 2026.08.28
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【2026年8月施行】ベトナム個人データ保護法の罰金額がついに明確化|政府令330/2026/NĐ-CP を解説
速報 2026年8月19日、ベトナムでサイバーセキュリティ及び個人データ保護分野の行政違反処罰に関する政府令330/2026/NĐ-CP(2026年8月19日施行)が公布・即日施行されました。これまで上限額しか定められていなかった個人データ保護法の罰則について、違反行為の類型ごとの具体的な罰金額がついに明示されています。本稿では、ベトナム現地の日系法律事務所の観点から、日系企業が押さえるべき罰金額の読み方と特に注意すべき違反類型を整理します。 本稿のポイント 個人データ保護分野の罰金額は「組織」が基準。企業にはそのままの金額が適用される 上限は原則30億VND(約1,700万円超)。ただし、売買は違反収益の10倍、越境移転違反は前年度売上高の5%まで 越境移転・人事労務・監視カメラは日系企業が抵触しやすい領域 2026年1月1日、ベトナムでは個人データ保護法(法律91/2025/QH15)と、その施行政府令(政府令356/2025/NĐ-CP)が施行されました。もっとも、これらの法令では罰則の上限が規定されていたにとどまり、「実際に違反した場合にいくら課されるのか」が不明確な状態が続いていました。詳細は当事務所の過去の寄稿記事「ベトナム個人データ保護法 日系企業が押さえるべきポイント」もあわせてご参照ください。 この空白を埋めたのが、サイバーセキュリティ及び個人データ保護の分野における行政違反処罰に関する政府令(政府令330/2026/NĐ-CP、2026年8月19日施行。以下「政府令330」)です。同令は公布日である2026年8月19日から即日施行されています。個人データ保護に関する罰則は第2章第6節(第39条〜第71条)に集中しており、行為類型ごとに罰金額が明記されました。 政府令330第7条1項は、金額を読み解くうえで極めて重要なルールを置いています。 第2章第1節〜第5節(サイバーセキュリティ分野)の金額は個人が基準。組織はその2倍。 第2章第6節(個人データ保護分野)の金額は「組織」が基準。個人が同じ行為をした場合は2分の1。 つまり、以下で紹介する個人データ保護に関する罰金額は、そのまま企業に適用される金額ということになります。 罰金の上限は政府令330第7条4項が定めています(個人データ保護法第8条と同内容)。 区分 上限 根拠 個人データの売買 違反により得た収益の10倍 第7条4項a号 個人データの越境移転規定違反(組織) 前年度売上高の5% 第7条4項b号 その他の個人データ保護違反 30億VND(約1,700万円超) 第7条4項c号 ※収益・売上高を基準として算出した額が30億VNDを下回る場合や、そもそも収益・売上高がない場合には、30億VNDが適用されます(第7条4項a号・b号但書)。なお、処罰の時効は1年と短く設定されています(第3条1項)。 政府令330のうち、日系企業にとって特に重要と考えられるのは以下の4類型です。 個人データ保護分野における最も重い類型です。原則として、違反により得た収益の2倍から10倍の罰金が課されます(第53条1項)。収益がない場合には、対象となったデータ主体の人数に応じた定額が適用されます(同条3項)。 対象規模 罰金 基本データ1,000名未満/センシティブデータ200名未満 7,000万〜1億VND 基本データ1,000〜2,000名未満/センシティブデータ200〜400名未満 1億〜3億VND 基本データ2,000〜10,000名未満/センシティブデータ400〜2,000名 3億〜5億VND 基本データ10,000名以上/センシティブデータ2,000名以上 5億〜10億VND 国防・安寧・対外関係・マクロ経済、生命・身体・名誉・財産を侵害するもの 10億〜30億VND 形式不備も「売買」に該当しうる 「有償の移転であるのに移転合意書がない」といった形式面の不備も、第53条1項b号〜e号により売買とみなされ、この枠で処罰されうる点に注意が必要です。有償のデータ提供や、業務委託先へのデータ提供の対価が発生している場合は、契約書の記載内容を今一度確認すべきです。 2,000万〜3,000万VND(第55条1項):影響評価書を作成・保管しない、処理開始日から60日以内に専門責任機関へ提出しない、定期更新をしない等。 5,000万〜1億VND(同条2項):処理影響評価報告書において故意にデータを偽造する、虚偽情報を提供する、報告書の訂正・補完の要請を拒否する等。 日系企業が最も高い頻度で抵触しうる領域です。日本本社へのデータ共有、クラウドサービスの利用、グループ共通の人事システムの利用などは、いずれも越境移転に該当し得ます。 3,000万〜5,000万VND(第56条1項):越境移転影響評価書を作成しない、移転開始日から60日以内に専門責任機関へ提出しない、要求から30日以内に補正しない、定期更新をしない等。 5,000万〜1億VND(同条2項):受領者との責任分担契約がない、データ主体への通知・同意がない、移転後の安全確保策がない、停止決定後も移転を継続した等。 売上高比例罰(同条3項):影響評価書を作成せずに移転しデータ漏洩を招いた場合等は、ベトナム市場における前年度売上高の1〜2%(被害者1万〜10万人)、2〜3%(10万〜100万人)、3〜5%(100万人以上、または停止決定後の継続移転により国防・国家安全に損害を与えた場合)。 付加的処罰として6〜12か月の越境移転停止(同条5項b号)。 技術的・工学的手段を用いて違法に個人データを収集した場合、対象者数に応じて1億〜8億VNDの罰金が課されます。基本データ5,000名以上またはセンシティブデータ1,000名以上の場合は5億〜8億VNDとなります。ウェブサイトのトラッキングツールやアプリの権限設定なども、同意取得の設計次第ではこの類型に触れうる点に留意が必要です。 場面 主な違反行為 罰金 根拠 同意 同意なしの処理、同意の記録・ログを保存していない等 3,000万〜5,000万VND 第43条1項 同意 停止要求後も処理を継続、沈黙を同意とみなす等 5,000万〜7,000万VND 第43条2項 権利対応 データ主体からの有効な請求に2営業日以内に応答しない、手続きを周知しない等 1,000万〜2,000万VND 第44条1項 権利対応 同意撤回15日、閲覧・修正10日、削除20日等の期限を徒過 3,000万〜4,000万VND 第44条3項 人事労務 採用目的外のデータ要求等 2,000万〜5,000万VND 第61条1項 人事労務 退職後、法定期間を超えてデータを保持、通知なしの監視カメラ・PC監視ソフト導入 5,000万〜7,000万VND 第61条2項 人事労務 違法に収集した従業員データの利用 7,000万〜1億VND 第61条3項 漏洩対応 発見から72時間を超える通報遅延(国防・安寧・本人の生命身体等に損害のおそれ) 4,000万〜6,000万VND 第54条3項 漏洩対応 阻止措置・結果是正を行わない、専門責任機関に協力しない 6,000万〜8,000万VND 第54条4項 体制 DPO(個人データ保護担当者)の指定文書を発行しない、学歴・実務2年の要件を満たさない者を指定 2,000万〜3,000万VND 第57条2項 監視カメラ 公共空間・顧客対応区域で録音録画の掲示・通知をしない 1,000万〜2,000万VND 第71条1項 監視カメラ 映像を商用利用・行動分析・顔認証プロファイリングに転用 3,000万〜5,000万VND 第71条2項 ※上記は主要な類型の抜粋です。原文には他の類型についても規定が置かれています。 個人データ保護法においては、罰金額の上限は定められていたものの、違反行為ごとの個別具体的な罰金額は定められていませんでした。政府令330の施行により、今後は取締りが強化される可能性があります。特に越境移転については、日系企業の通常の業務フローに組み込まれていることが多く、意図せず違反状態となっているケースが少なくありません。 当事務所では、個人データ保護法対応に関するアドバイスを行っております。お気軽にお問い合わせください。 情報ソース: サイバーセキュリティ及び個人データ保護の分野における行政違反処罰に関する政府令(政府令330/2026/NĐ-CP、2026年8月19日施行)/個人データ保護法(法律91/2025/QH15、2026年1月1日施行)/個人データ保護法施行政府令(政府令356/2025/NĐ-CP、2026年1月1日施行) 免責事項: 本記事の内容は2026年8月25日時点の情報に基づいています。制度の詳細は今後変更される可能性があります。個別の案件については専門家にご相談ください。 C CastGlobal Law Vietnam Co., Ltd. ベトナム・ホーチミン市拠点の日系法律事務所。日系企業向けの企業法務、M&A、コンプライアンス、労務、知的財産を中心にリーガルサービスを提供。
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- 2026.08.24
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ベトナム受益所有者(BO)規制改正|政令296の三段階基準と罰則強化
2025年7月にベトナムで受益所有者(Beneficial Owner, BO)規制が導入されてから約1年、2026年7月23日付の政令第296/2026/ND-CP号(以下「政令296」という)が公布・即日施行され、政令第168/2025/ND-CP号(以下「政令168」という)のBO関連規定が全面的に書き換えられました。あわせて、政令第288/2026/ND-CP号により制裁金の上限が1億ドンへ引き上げられています。本稿では、昨年の寄稿記事でご紹介した旧規制からの変更点と、日本企業に求められる対応を整理します。 政令296は政令168の改正政令であり、2026年7月23日から施行されています(政令296第22条第1項)。企業登録手続全般に及ぶ改正ですが、実務上最も影響が大きいのは、BOの認定基準を定める第17条と、その申告義務を定める第18条が丸ごと差し替えられた点です(政令296第3条・第4条)。 旧規定の下では、25%基準を満たす個人が存在しない企業について「該当者なし」として申告が完結し得ましたが、政令296は最終的な個人に到達するまで所有構造を遡ることを求めております。 旧政令168第17条第1項は、(a)25%以上の直接・間接所有、(b)重要事項に関する支配権のいずれか一方に該当すればBOと認定される並列型の基準でした。改正後第17条は、(1)所有基準 →(2)支配基準 →(3)最上位経営者、という優先順位で検討することを企業に義務づける段階構造に改められています。 「直接・間接・その双方の合算により、定款資本の25%以上または議決権付株式総数の25%以上を保有する個人」 旧規定は「直接または間接」の別建てでしたが、合算して判定することが明文化されました。 間接保有の経路として、他の組織に加えて「その他の法的取決め」が追加されました(旧第17条第2項は他の組織を通じた保有のみを想定)。 企業法第4条第22項の家族関係にある個人グループ、または契約に基づき共同で25%以上を保有する場合、グループ内の全員がBOとなります。 合名会社では、出資比率・議決権にかかわらず全ての合名社員がBOとなります。 企業における国家資本の代表者はBOから除外されます(改正後第17条柱書)。 第一段階に該当する個人がいない場合、または第一段階で特定した個人が実際にはBOではないと認めるべき根拠がある場合に検討します。列挙される支配権のうち、企業の財務・投資・事業方針の決定権が追加され、他方で法定代表者の任免権が削除されました(旧第17条第1項b号との対比)。株主間契約や定款上の予算・投資計画の承認権が、25%基準を満たさない個人をBOに引き上げる可能性がある点に注意が必要です。 第一・第二段階のいずれでも該当者が特定できない場合、企業を代表して行動する最大の権限を有する管理者を1名特定します(国家資本の代表者を除く)。すなわち、「該当者なし」で申告を終えることは原則としてできなくなりました。 改正後第18条第1項は、所有構造の各階層を順に精査し、最終的な所有権または支配権を有する個人に到達するまで遡ることを企業の義務として明記しました。所有構造にマネーロンダリング防止法上の法的取決めが含まれる場合、当該取決めのBOは同法に従って特定します。申告は改正後第18条第2項a号〜c号の順序に従います。 2026年7月21日付・同日施行の政令第288/2026/ND-CP号は、政令第122/2021/ND-CP号を改正し、BOに関する違反類型を新設しました。主な制裁金は図表のとおりです。 違反行為 制裁金 設立登記時にBO情報を申告しない 5,000万〜1億ドン 2025年7月1日前設立の企業が直近の変更登記・変更届出時にBO情報を補充しない 7,000万〜1億ドン BO情報の変更届出の遅延・不通知 遅延期間に応じて1,000万ドン以上7,000万ドン以下の罰金。 いずれもBO情報の補充・届出という是正措置が併せて課されます。特に留意すべきは、2025年7月1日前に設立された既存企業が、直近の変更手続の際にBO情報を補充していなければ制裁の対象となる点です。設立年次を問わず、すでに変更登記を経ている現地法人は提出済み書類の確認が必要です。 BO規制は、単なる登記実務ではなく、グループ全体の所有構造の透明性に関するコンプライアンス課題です。実務対応としては、①最終個人まで到達する所有構造図を作成し、三段階の順序で検討した過程を証跡として保存することが重要です。 情報ソース: 政令第296/2026/ND-CP号(2026年7月23日施行)/政令第288/2026/ND-CP号(2026年7月21日施行)/政令第168/2025/ND-CP号/政令第122/2021/ND-CP号 免責事項: 本記事の内容は2026年8月21日時点の情報に基づいています。制度の詳細は今後変更される可能性があります。個別の案件については専門家にご相談ください。 C CastGlobal Law Vietnam Co., Ltd. ベトナム・ホーチミン市拠点の日系法律事務所。日系企業向けの企業法務、M&A、コンプライアンス、労務、知的財産を中心にリーガルサービスを提供。
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- 2026.08.21
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ベトナムにおけるセクハラ対応 ~日系企業が見直すべき就業規則と初動対応~【寄稿のお知らせ】
お知らせ ベトナムに進出する日系企業において、セクシャルハラスメント対応の重要性が高まっています。近年は、ベトナム人従業員から日本人駐在員やベトナム人管理職に対する告発も見られます。これは単にトラブルが増えたというより、ベトナム人従業員側の権利意識が高まっている表れといえます。このたび、当事務所代表弁護士 工藤拓人が、ベトナム法上のセクハラの考え方と実務対応について解説した寄稿記事が、専門プラットフォーム「リンオペ」に掲載されました。 セクハラの定義 「職場」の範囲 就業規則への明記の必要性 セクハラに対する懲戒処分 通報を受けた後の初動 行政処罰とレピュテーション棄損等のリスク 日系企業がすぐに確認すべき実務対応 ベトナム法人の人事労務を担当される方 ベトナムの労働法規制を把握したい本社海外事業担当の方 ベトナムでは、セクハラ対応を人事マナーの問題としてではなく、就業規則の整備と手続の設計という労務コンプライアンスの問題として捉える必要があります。当事務所では、就業規則の改定、社内研修、通報窓口の整備をあわせてご支援しています。 掲載媒体: リンオペ(株式会社スタディスト運営)https://lean-operation.com/media/global/castglobal_2608/(公開日:2026年8月21日) 免責事項: 本記事及び寄稿記事の内容は2026年8月21日時点の情報に基づく一般的な情報提供であり、個別の事案に対する法的助言ではありません。制度の詳細は今後変更される可能性があります。個別の案件については個別にご相談ください。 C CastGlobal Law Vietnam Co., Ltd. ベトナム・ホーチミン市拠点の日系法律事務所。日系企業向けの企業法務、M&A、コンプライアンス、労務、知的財産を中心にリーガルサービスを提供。