CastGlobal Law Vietnam
(CAST)についてABOUT US
私たちは、2013年にベトナムに設立した日本人弁護士とベトナム人弁護士の所属する日系の弁護士事務所です。ハノイ市とホーチミン市に拠点を有しています。
ベトナムでは、大きなトラブルにならないように日常的に法務を意識して経営することが重要ですが、実際には何が問題になりうるのかや日本との違いもわからず、法的な事柄によって日々の業務に集中できないことも多く生じています。
お客様に憂いなくビジネスに集中いただくため、"法務面からベトナムビジネスを伴走する身近なパートナー"として貢献していきます。
CASTの特徴FEATURES
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ビジネスの現状・ベトナムのスピード感に合わせたスピーディーかつ柔軟な対応
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タイムチャージに基づかないリーズナブルで相談しやすい顧問契約の設定
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ベトナムのM&A、不動産、企業運営に関わる法務、知財戦略などの専門分野の支援実績
活用例
- 現地の担当弁護士にチャット・メールでいつでも気軽に相談できる環境。
- 自社の担当・駐在員が変わっても、過去の経緯から把握してアドバイスしてもらうことが可能。
- 会社の総務・法務スタッフとも普段からやりとりし、社内のコンプライアンス体制・意識向上にも。
導入事例CASES
ニュースNEWS
- コラム
- 2026.07.16
- CastGlobal
ベトナムの「一時滞在申告」を再点検 ― 2025年12月施行の新政令282/2025/NĐ-CPで罰則規定が刷新【駐在員・日系企業向け】
2026年7月15日 / CastGlobal Law Vietnamベトナムに滞在する外国人には、宿泊の都度、「一時滞在申告」が必要です。旅行者に限らず、駐在員やその家族、短期出張者も対象です。2025年12月15日には出入国・在留等の行政処罰を定める新政令282/2025/NĐ-CP(2025年12月15日施行。旧政令144/2021/NĐ-CPを代替)が施行され、罰則規定が刷新されました。足元では一部のレジデンス等で運用が厳格化しており、出張・一時帰国が多い方ほど申告が抜け落ちがちです。本稿では、ベトナム現地の日系法律事務所の観点から、制度と罰則を改めて整理します。
本稿のポイント
申告義務の主体は原則として宿泊施設側(到着から12時間以内、僻地・遠隔地では24時間以内)
新政令282/2025/NĐ-CPにより、未申告人数に応じて最大2,000万VND(法人は2倍)の罰金
社宅・会社借り上げ物件を持つ日系企業は、自社が「宿泊施設側」として申告義務を負い得る
宿泊施設の活動を直接管理・運営する者は、外国人が宿泊施設に到着した時から12時間以内(僻地・遠隔地の地域では24時間以内)に、申告用紙に情報を十分に記載し、宿泊施設の所在地の公安又は公安の駐在所・分署に送付する責任を負います。
根拠は、外国人のベトナムにおける入国、出国、通過、居住に関する法律(法律47/2014/QH13、2015年1月1日施行。法律51/2019/QH14(2020年7月1日施行)及び法律23/2023/QH15(2023年8月15日施行)により改正)の第33条です。改正後の同条の和訳(抜粋)は次のとおりです。
<第33条 一時滞在申告(和訳・抜粋)>
1.ベトナムに一時滞在する外国人は、宿泊施設の活動を直接管理・運営する者を通じて、宿泊施設の所在地を管轄する公安又は公安の駐在所・分署に一時滞在申告をしなければならない。宿泊施設は、外国人の一時滞在に同意する前に、一時滞在申告を実施するため、旅券又は国際渡航に有効な書類、ベトナムでの居住に関連する書類を提示するよう外国人に求める責任を負う。
2.外国人の一時滞在申告は、電子申告又は一時滞在申告用紙を通じて実施する。申告用紙により申告する場合、宿泊施設の活動を直接管理・運営する者は、外国人が宿泊施設に到着した時から12時間以内(僻地・遠隔地の地域では24時間以内)に、申告用紙に情報を十分に記載し、宿泊施設の所在地の公安又は公安の駐在所・分署に送付する責任を負う。
3.外国人は、一時滞在場所を変更した場合、または、常住カードに記載された住所以外の場所に一時滞在する場合、又は旅券の情報に変更があった場合、本条第1項の規定に従い一時滞在申告をしなければならない。
このとおり、申告義務の主体は原則として宿泊施設側です(ホテル・サービスアパートは運営者、賃貸物件・個人宅はオーナーや管理者等)。もっとも、外国人本人にも、一時滞在申告の実施のため宿泊施設に旅券等を提示する義務があります(同法第44条2項đ号。法律23/2023/QH15により追加)。
宿泊施設が法定の一時滞在申告を行わない場合、未申告の外国人の人数に応じ、以下の罰金が科され得ます(政令282/2025/NĐ-CP第21条)。
未申告の外国人の人数
罰金額(個人)
根拠条項
1~3名
300万~500万VND
第21条3項e号
4~8名
1,000万~1,500万VND
同条5項c号
9名以上
1,500万~2,000万VND
同条6項đ号
上記は個人の場合の金額で、組織(法人)が違反した場合は2倍となります(同政令第5条2項)。また、外国人本人が申告のための旅券等の提示を怠った場合や、虚偽情報でオンライン申告用アカウントを作成した場合も、300万~500万VNDの罰金対象です(第21条3項e号)。
金額自体は極端に高額ではありませんが、「申告されていない状態」が続くこと自体が、各種行政手続やトラブル対応、公安とのやり取りの場面で不利に働くおそれがあります。
法律23/2023/QH15第2条9項による改正で第45a条が新設され、機関・組織・個人は、外国人がベトナムに合法的に居住している場合に限り、当該外国人の雇用、観光ツアーの催行、一時滞在の受入れができることが明記されました。合法的に居住していない外国人を雇用・滞在させた場合や、出入国・在留に関する違反の兆候を発見しながら当局に通報しない場合、2,000万~2,500万VND(法人は2倍)の罰金があり得ます(政令282/2025/NĐ-CP第21条7項đ号)。
ポイント
社宅や会社借り上げ物件に駐在員を住まわせている日系企業は、自社が「宿泊施設側」の立場に立ち、申告義務を負い得る点に留意が必要です。総務・人事部門において、駐在員・帯同家族・出張者の入居時の申告フローを定めておくことをお勧めします。
ホテルや管理体制の整ったサービスアパートでは運営側が申告済みのことが多いものの、パスポートコピーの提出=申告完了とは限りません。フロントや管理事務所に確認するのが確実です。
個人賃貸・友人知人宅・民泊等は「誰も申告していない」状態が生じやすい典型例です。オーナー・管理者と申告主体を明確にし、未了であればオンライン申告又は管轄公安で速やかに対応してください。
転居時や旅券更新時にも再申告が必要です(第33条3項)。一時帰国後の再入国時も、都度の申告を前提に運用されている点にご注意ください。
申告漏れに気づいた場合、過去日付で取り繕うことは避け、気づいた時点で正直に補完・相談する方が結果的に安全です。
一時滞在申告を含む管理体制の整備についてご不明な点があれば、当事務所までお気軽にご相談ください。
免責事項: 本記事の内容は2026年7月15日時点の情報に基づいています。制度の詳細は今後変更される可能性があります。
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CastGlobal Law Vietnam Co., Ltd.
ベトナム・ホーチミン市拠点の日系法律事務所。日系企業向けの企業法務、M&A、コンプライアンス、労務、知的財産を中心にリーガルサービスを提供。日本国弁護士と現地ベトナム人弁護士の協働により、日本語で完結するリーガルサービスをワンストップで提供しています。
- コラム
- 2026.07.12
- CastGlobal
ベトナム日系企業に迫る「ハラスメント告発」リスク
「ベトナムはまだハラスメント規制が緩い」――こうした認識は危険です。2021年1月施行の現行労働法(No.45/2019/QH14)により、ベトナムのハラスメント規制は高水準となっておいます。また、労働者の権利意識の高まりから、労働者によるハラスメント告発事案が近年大幅に増加しています。
労働法第3条第9項はセクシャルハラスメントを「職場における他者に対する性的な性質を有する行為であって、その他者が望まず又は承認しないもの」と定義し、政令145/2020/ND-CP第84条で身体的・言語的・非言語的セクハラを具体化しています。なお「職場」には出張先、会食、通勤車両などまで幅広く含まれています。
また、使用者には以下の義務が課されます。
セクハラ防止措置の実施(労働法第6条第2項d号)
就業規則へのセクハラ対策規定の整備(労働法第118条第2項d号、政令145号第85条)
また、労働法第35条第2項により、ハラスメントや侮辱的言動を受けた労働者は事前通知なく労働契約を即時解約でき、損害賠償請求に発展するリスクもあります。またSNSでの書き込みなど、レピュテーションリスクが発生する場合もあります。
SNSによる告発の増加、若い世代の権利意識の高まり、労働市場の流動化により、現地従業員は「嫌なら辞める」「公にする」という選択を躊躇しません。当事務所にも、駐在員に対する告発、退職者からの法的請求、不正経費の内部告発、SNSへの書き込みなどのご相談が急増しています。
他方、社内通報窓口は「身内に話しにくい」「報復が怖い」という理由で機能しないケースが大半です。
問題が表面化してからの対応は、和解金・訴訟費用・レピュテーション低下という大きな代償を伴います。そのため、予防的対策が重要になります。具体的には、
ハラスメント研修による認識共有
外部通報窓口による安心できる相談ルートの確保
定期ヒアリングによる兆候の早期検知と抑止効果
の3つを組み合わせることで、ハラスメント・内部告発リスクを大幅に低減できます。
当事務所は、ベトナム現地に拠点を構える日系法律事務所として、以下の3サービスを単体およびパッケージにてご提供しています。
① 外部通報窓口の設置・運用
日本語・ベトナム語の専用メールアドレスで通報を受付。駐在員に関する告発は日本本社へ、ベトナム人従業員に関する告発は現地法人へ報告します。
② ハラスメント研修
駐在員向け(日本語)・現地従業員向け(ベトナム語)に分けて、ベトナム労働法の規制、NG言動、文化的配慮、ケーススタディを解説。対面・オンライン両対応。
③ 定期オンラインヒアリング
当事務所担当者が駐在員・現地従業員に1対1のオンラインヒアリングを定期実施。通報を待つのではなく能動的にアプローチし、兆候を早期検知。結果は匿名化レポートとして経営層へご報告します。
料金は貴社の規模・現状の体制等を踏まえてお見積もりいたします。まずはお気軽にお問い合わせください。
- コラム
- 2026.07.09
- CastGlobal
ベトナム労働法と日本労働法の違い【寄稿のお知らせ】
ベトナムと日本では労働法の規制が大きく異なり、人事担当者にとって実務上の違いを把握することが重要な課題になっています。弊社弁護士が、ベトナムと日本の労働法の違いを整理した寄稿記事を公開しました(公開日:2026年4月27日)。
ベトナム労働法と日本労働法の違い | リンオペベトナムへの進出にあたっては、現地の労働法制を十分に理解し、日本の労働法との相違点を把握することが重要です。日本とベトナムはいずれもアジア圏に位置していますが、
寄稿の主な論点
日本とベトナムの労働法の違い
雇用契約の締結に関する違い
労働契約の種類と期間
試用期間(試用契約)の取り扱い
労働契約の言語と就業規則の登録
労働条件に関する違い
法定労働時間と休日
時間外労働の上限規制と割増賃金
年次有給休暇と法定祝日
賃金体系と最低賃金制度
社会保険制度と福利厚生
労務管理と契約終了に関する違い
解雇
解雇予告期間と退職時の補償
労働組合の役割
労働紛争の解決
ベトナム法人の人事労務を担当される方
ベトナムの労働法規制を把握したい本社海外事業担当の方
- コラム
- 2026.07.02
- CastGlobal
ベトナム個人データ保護法 日系企業が押さえるべきポイント【寄稿のお知らせ】
2026年1月からベトナムで個人データ保護法が施行されました。昨年まで施行されていた政令からアップデートがされており、実務対応を把握することが重要な課題になっています。弊社弁護士が、個人データ保護法のポイントを整理した寄稿記事を公開しました(公開日:2026年6月9日)。
ベトナム個人データ保護法 日系企業が押さえるべきポイント | リンオペ2025年6月26日に国会で可決された個人データ保護法(Law No.
寄稿の主な論点
適用範囲
個人データの分類
必須の届け出・義務
行政手続
罰則
ベトナム法人の個人データ保護を担当される方
ベトナムの個人データ規制を把握したい本社海外事業担当の方
- コラム
- 2026.05.22
- CastGlobal
ベトナム条件付き事業の追加削減提案|投資法2025に続く政府決議草案のポイント
速報
2026年5月26日 / CastGlobal Law Vietnam
2026年5月5日、ベトナム財務省が、投資法(法律第143/2025/QH15号、2026年3月1日施行)の条件付き投資事業分野から58分野を削除する政府決議草案を公表し、意見聴取が始まりました。カジノ・カラオケ等が削除候補に挙がりますが、これは規制の撤廃を意味しません。ベトナム現地の日系法律事務所が、草案の原典と関連法令を踏まえ、その内容と日系企業への実務的な影響を解説します。
本稿のポイント
財務省が、投資法の条件付き事業から58分野の削除・12分野の修正を提案(意見聴取段階の草案)。
核心は「事前審査(tiền kiểm)」から「事後監督(hậu kiểm)」への転換。
リストから外れても、カジノ・カラオケ等の個別業法は存続。規制撤廃ではない。
国会決議第206/2025/QH15号の特別メカニズムにより、法改正でなく政府決議で削減する建て付け。
M&A・進出実務では「ライセンス保有」より「コンプライアンス体制」の比重が上昇。
ベトナムの投資法は、原則として投資・事業活動の自由を認めつつ、国防・国家安全保障・社会秩序・社会道徳・公衆衛生といった理由から特定の分野について「条件付き投資事業分野」(ngành, nghề đầu tư kinh doanh có điều kiện)を定め、各分野ごとに事業条件(ライセンス、資本要件、施設要件等)を課しています。この一覧が、投資法の附録IV(Phụ lục IV)です。
今回の財務省草案は、この附録IVのリストそのものを縮小しようとするものです。除外対象には、日系企業の関心が高い分野が多く含まれています。
カジノ、ベッティング(賭博)
カラオケ・ナイトクラブ、宿泊サービス
再保険、保険ブローカー、保険代理店
会計サービス
コメ輸出、酒類、自動車の製造・組立・輸入 など
草案は6条構成で、本則のほか、削除分野を列挙した付録1と、修正分野を列挙した付録2が添付されています。各条の概要は次のとおりです。
第1条(適用範囲):投資法附録IVの一部分野を削除・修正する旨と、適用対象(投資家、権限ある国家機関、関係する組織・個人)を規定。
第2条:削減の6原則(下記に整理)。
第3条:58分野を削除(付録1)。
第4条:12分野を修正(付録2)。
第5条:効力と施行責任。
第6条:実施組織。第6条2項(b)は、削除対象分野について2026年7月1日より前に技術基準・規格・職業基準を策定し、事前審査から事後監督へ移行する手続を構築するよう各省庁に求める。
投資法第7条1項の理由(国防・安全保障・社会秩序・社会道徳・公衆衛生)から条件を課す必要がない、または国民・企業の権利を直接保護しない分野
施設・運営品質・学歴経験資格などの要件に紐づき、技術基準・規格・職業基準の策定により「事前審査」から「事後監督」へ転換できる分野
条件が不明確・定性的で、定量化が困難な分野
他分野と類似する、または他の管理によって既に審査されている分野
産出する製品・サービスの品質を市場が決定でき、国防等への危害リスクがない分野
規定以来いまだ事業条件が制定されていない、または既に条件規定がなくなった分野
特に第2原則に「事前審査(tiền kiểm)から事後監督(hậu kiểm)への転換」が明文で掲げられている点は、本草案の思想を端的に表しています。
修正は、削除ではなく規定内容の絞り込みが中心です。
賞金付きゲーム事業(No.30):「電子」「外国人向け」という限定が外れる
食品事業(No.44):専門管轄から商工省が外れ、農業環境省・保健省の管轄へ整理
水産飼料・肥料(No.125、No.142):「事業(kinh doanh)」から「製造(sản xuất)」へ対象概念を限定
数字についての注記
2026年5月初旬の一部報道では「60分野削除・14分野修正」とされていましたが、5月5日に政府ポータルで公開された草案本文は「58分野削除・12分野修正」と明記しています。本稿は草案本文の数値に拠っています。また、削除候補の一部(自発的な薬物依存治療・高齢者ケア等。附録IV No.60)には、保健省と公安省が削減の是非を協議すべき旨の脚注が付されており、最終的な削除分野数は58から変動し得ます。
条件付き事業のリスト(附録IV)は投資法という「法律」で定められた事項であり、本来その変更には国会による法律改正の手続が必要なはずです。それを、なぜ「政府決議」というより簡易な形式で削減できるのでしょうか。
その根拠が、困難・障害処理に関する特別メカニズム決議(国会決議第206/2025/QH15号、2025年6月24日可決。以下「決議206」)です。決議206は、法令の規定が矛盾・重複・不明確であったり、過度なコンプライアンスコストを生じさせて経済・社会の発展を阻害している場合に、これを「困難・障害」と判定し、通常の立法手続によらず処理できる特別メカニズムを定めたものです。決議206第4条1項が認める処理方法は、次の3つです。
(a) 法律の解釈・適用指針
(b) 簡易手続による法令の制定改廃
(c) 法律改正までの間、政府決議または国会常務委員会決議で現行法律の一部規定を一時的に調整すること
今回の財務省草案は、このうち(c)を用いています。投資法附録IVの本格的な改正を待たず、政府決議によって暫定的にリストを縮小する、という建て付けです。
草案冒頭の「Số: 66…/2026/NQ-CP」という一見中途半端な番号は、記入漏れではありません。決議206第4条2項は、この特別メカニズムに基づき発布される政府決議について、「66.1」から始まる専用の連番で付番すると定めています(条文の例:Nghị quyết số: 66.1/2025/NQ-CP)。つまり「66番台」という番号自体が、通常の政府決議ではなく、法律事項を一時的に調整するための特別決議であることを示す印になっています。
この授権には、複数の手続的な歯止めが設けられています。
経済社会・国防・安全保障・外交に大きく影響する内容や未規定事項を扱う場合は、事前に党の権限機関の意見を聴くこと(第4条2項b号)
司法省を常設機関とする独立審査評議会が、各省庁の代表を交えて審査すること(第5条)
政府および国会常務委員会は、この権限を再委任・分権できないこと(第6条8号)
効力期間に関する論点
決議206第4条2項d号は、この種の政府決議が効力終了時点を「2027年3月1日より前」に明示すべきと定め、決議206自体の効力も2027年2月28日までとされています。本草案の効力期間(2026年7月1日〜2027年3月1日)はこの枠組みに対応しますが、草案第5条1項の「2027年3月1日まで」(同日を含む趣旨)は「3月1日より前」と1日ずれており、正式発布時に調整される可能性があります。確定版の確認が必要です。
本草案は単発の動きではなく、ベトナムが進める一連の規制緩和の流れの中に位置づけられます。時系列で整理すると、次のとおりです。
2025年12月11日:投資法(法律第143/2025/QH15号)可決。条件付き事業を237分野から199分野へ整理(38分野削除)。2026年3月1日施行(第7条・附録IVの条件付き事業リスト部分は2026年7月1日施行)。
2026年3月31日:投資法施行政府令(政府令第96/2026/NĐ-CP号、2026年3月31日施行)が発布・即日施行。従来の政府令第31/2021/NĐ-CP号を置き換え、市場アクセス条件や事後監督の枠組みを規定。
2026年5月5日:本決議草案の全文公開、意見聴取開始。199分野からさらに58分野削除(実現すれば、条件付き事業はおよそ141分野規模に)。
こうした流れの背景には、民間経済の発展を国家の重要課題と位置づけた党中央の決議(決議第68-NQ/TW号)があります。「禁止される分野以外は自由に事業を行える」という方向性のもと、ベトナムは事前許可によって参入を絞る制度から、自由参入を認めたうえで事後監督によって規律する制度へと、明確に舵を切りつつあります。ベトナムの産業・投資分野の政策動向については、ベトナム半導体政策2026もあわせてご参照ください。
本草案の本質は、削除される分野の一覧そのものよりも、その背後にある制度設計の転換にあります。すなわち、「事前審査(tiền kiểm)」から「事後監督(hậu kiểm)」への移行です。両者の違いを整理すると、次のとおりです。
観点
従来(事前審査 / tiền kiểm)
提案後(事後監督 / hậu kiểm)
手続フロー
企業登録(ERC)→ 投資登録(IRC)→ 各省庁の事業ライセンス取得 → 営業開始
企業登録(ERC)→ 投資登録(IRC)→ 営業開始
行政・参入コスト
高い(三段階の関門)
低い(事前のライセンス取得が不要に)
行政の関与
参入前に審査
営業中に随時、監査・実地検査。違反があれば事後制裁
草案第6条2項(b)は、削除対象分野について技術基準・規格・職業基準を策定し、事前審査から事後監督への移行手続を構築するよう各省庁に求めており、投資法施行政府令(政府令第96/2026/NĐ-CP号)もこの事後監督の枠組みを定めています。この転換には両面があります。事業者にとっては参入時の行政コスト・時間的コストが大きく下がる一方、各国の事例に照らせば、コンプライアンス違反が確認された場合の制裁はむしろ厳格化する傾向があります。参入の容易さと、運営段階での規律の厳しさは、いわば表裏の関係にあるといえます。
最も誤解されやすいポイント
ある分野が条件付き事業のリストから外れても、その分野の規制が撤廃されるわけではありません。外れるのは投資法上の総論的な参入規制だけであり、各分野を規律する個別の業法(業種別の法令)は引き続き存続します。
カジノ事業政府令(政府令第03/2017/NĐ-CP号):最低投資額20億米ドル、5つ星ホテルの併設、カジノ面積を施設の3%以下とする制限、投資登録証明書(IRC)の取得義務
マネー・ロンダリング防止法(法律第14/2022/QH15号、2023年3月1日施行):報告義務
ベッティング事業政府令(政府令第06/2017/NĐ-CP号):ベッティング個別ルール
土地法・建築法・消防・救助法(法律第55/2024/QH15号、2025年7月1日施行):個別審査
カラオケ・ナイトクラブ事業政府令(政府令第54/2019/NĐ-CP号):防火・営業時間・治安に関する要件
つまり、本草案が変えるのは「投資法という入口の総論的な参入規制」であって、「各業法に定める実体規制」ではありません。この区別を正確に押さえておくことが、実務上きわめて重要です。
業種ごとに想定される影響を整理したうえで、日系企業に推奨される対応をまとめます。
エンタメ・観光(カジノ、カラオケ・ナイトクラブ、宿泊、電子ゲーム等):参入手続の迅速化が見込まれる。M&AのDDでは「ライセンス保有状況」より「コンプライアンス体制」の比重が上がる。
輸出入・流通(コメ輸出、酒類、自動車、ガス、鉱物、危険物輸送、各種運輸等):新規参入・事業拡張がしやすくなる可能性。一方、無資格に近い事業者の流入で価格競争が激化するリスクも。
金融・保険(再保険、保険ブローカー、保険代理店、免税品販売、非信用機関による外国為替業務等):保険3業態が揃って削除候補に。ただし保険事業法(法律第08/2022/QH15号)等の業法規制は別途存続。ベトナム国家銀行(SBV)・財務省(MOF)の個別ガイダンス要確認。
M&A・コーポレート全般:DD・契約交渉の重心が「ライセンスの有無」から「事後監督リスクの評価」へ移行。表明保証条項やコンプライアンス誓約条項の重要性が一段と上昇。
推奨アクション
自社の事業が、削除・修正の候補分野に含まれるかを附録IVの番号で確認する。
仮に削除されても存続する個別業法(業種別の政府令等)を洗い出し、遵守状況を点検する。
事後監督に備え、社内のコンプライアンス体制・証跡管理・内部監査の仕組みを整備する。
M&A・出資では、表明保証・コンプライアンス誓約条項を厚くするなど、事後監督リスクを織り込んだ契約設計を検討する。
事後監督モデルのもとでは、参入そのものは容易になっても、日々の運営における証跡の管理、内部監査、是正対応こそが事業継続の鍵になります。許認可という「お墨付き」が事業を守る盾になりにくくなるぶん、平時のコンプライアンス体制の巧拙が、そのまま事業リスクに直結する構造です。もともとコンプライアンス意識の高い日系企業は、相対的に有利な立場に立ち得ると考えられます。
本決議は現時点で意見聴取段階の草案であり、削除分野の数・内容、効力期間の終期などは、正式発布までに変動する可能性があります。当事務所では、本決議の今後の動向について、次の観点から続報を順次お届けする予定です。
正式発布の有無と確定内容
業種別の具体的な影響
施行後の事後監督の運用実態
情報ソース: ベトナム政府電子情報ポータル「条件付き投資事業分野の削減に関する政府決議草案」全文(xaydungchinhsach.chinhphu.vn)、投資法(法律第143/2025/QH15号)、投資法施行政府令(政府令第96/2026/NĐ-CP号)、困難・障害処理に関する特別メカニズム決議(国会決議第206/2025/QH15号)。当事務所による草案原典の確認に基づく。
免責事項: 本記事の内容は2026年5月26日時点の情報に基づいています。本決議は意見聴取段階の草案であり、制度の詳細は今後変更される可能性があります。個別の案件については専門家にご相談ください。



